TBS 1968年7月9日
あらすじ
食事の支度や子どもたちの世話と、愛子は目の回るような忙しさ。そんな母親に同情した三郎が学校を休んで愛子の手伝いを始めた。ここまでは良かったのだが、調子のいい三郎が、昼間からイネにお酒を出したから、さあ大変。そこに正子までやって来て…。
2023.8.16 BS松竹東急録画。12話からカラー。
鶴家
亀次郎:進藤英太郎…大亀建設株式会社を一代で立ち上げた。2月5日で61歳。
妻・愛子:風見章子…5月で56歳。
長男・武男:園井啓介…亀次郎の会社で働いている。3月3日で30歳。独身。
次男・洋二:西川宏…ピアノや歌が得意。空襲で足を悪くした。28歳。
長女・秋子:香山美子…出版社勤務。26歳。
次女・幸子:高梨木聖…女子大生。1月の成人式に出席。
四男・敬四郎:あおい輝彦…浪人中。
三女・かおる:沢田雅美…4月から高校生。
*
正子:小夜福子…亀次郎の兄嫁。高円寺の伯母さん。58歳。
*
お手伝いさん
お敏:菅井きん…愛子の4つ下。6月で52歳。
*
イネ:岸輝子…お敏の母。結婚3回目。
電話が鳴る。
女性「あっ、ツルちゃん? ゆうべは悪かったわ。マダム、怒ってたでしょ?」
愛子「もしもし、あなた何番へおかけになったんですか?」
女性「あら、黒猫じゃないの?」
愛子「違いますよ」
女性「失礼しちゃうわ」とガチャ切り。
愛子「まあ、失礼なのは自分のほうじゃないの」
この前も黒猫のエミちゃんあてに電話があったね。
三郎が遅くに起きてくる。「ゆんべ遅かったんですよ、ノートの整理で」。ゆんべという言い方が面白い。台所に来た愛子と三郎。冷蔵庫に干物がある、おみおつけはあっためなくちゃいけないと愛子は言うが、干物はなかった。海苔と卵でいいと言われると、炒り卵を作ってくれるお母さん。
三郎「だって今日はお母さんが大変だなと思うから出ないことにしたんですよ」
愛子「そんなのちっともありがたくないわ。授業料払ってんのは親ですからね」
三郎「どうしてこう子供の誠意は親に通じないんだろう。断絶してるんだな、現代の親と子は」
愛子「子供のほうがずるいからですよ」
三郎「どうしてですか?」
愛子「ノートの整理なんてうそばっかり。もう夏休みに入るっていうのに、あんたがノートの整理なんてしますか」
三郎「痛いこと言うんだな、お母さんは。まだ朝っぱらなんですよ。僕はこれから手伝おうと思ってるんですよ。さっきお母さんっていいもんだなって言ったばっかりなんですよ」
炒り卵はちょっとやわらかいほうがいいんでしょと話しながら黙々作業を進める愛子さん。三郎がちょっとお酒の匂いがしてと言うと、愛子はお酒なんていれなかったわとそっけなくなる。
愛子は広間に移動。イネも掃除をしている。愛子は一服しましょうと話しかける。
イネ「大変ですね、広いお宅は」
愛子「隣のうちが余計なんですよ。それでも余計な子供はありませんしね」
イネ「そうですとも」
愛子「大きくなるとそれぞれ部屋がいるんですよ」
イネ「一人も欠けなかったんですか?」
愛子「随分貧乏したんですけどおかげさまでみんな育っちゃったんですよ。お父さんも見たとこあんな頑固おやじですけどね、あれで子煩悩なんです。いまだに一人も外へは出したくないんですからね。子供たちは出たくてバタバタしてますよ」
愛子が手を伸ばして壁の機械のスイッチを入れる。エアコンかな?
イネ「親の心、子知らずですね」
愛子「自分が世間の荒波に揉まれたもんだから子供たちにはそんな思いをさせるのが嫌なんですよ。並大抵の苦労じゃなかったんですからね」
イネ「焼け野の雉、夜の鶴ですね」
愛子「そうなんですよ。世間ではかわいい子には旅をさせろって言いますけどね、お父さんにはそれができないんですよ、心配で」
イネ「ありがたい親心ですね」
愛子「さあ、どうでしょう。子供たちは少々迷惑してるんですよ」
愛子が茶の間でお茶を飲みましょうと言うとイネは「はい!」と元気な返事。
茶の間へ向かうと、インターホンが鳴る。三郎が出ると洗濯屋だった。電話番や御用聞きに一人ではとっても対応しきれないという愛子。お敏は夕方までには帰ってくる。
三郎は愛子に何をしたらいいか聞く。台所にいて電話や御用聞きへの対応、掃除に使ったバケツの水の処分、電気掃除機の片づけ、イネへお茶菓子を持ってくるように言う。イネに今の子は何番目の子ですか?と聞かれた愛子は4番目だけど男では3番目で三郎。大学も3年生だと答えた。子供たちはお父さんの子だから、真面目で頑張りが利いて人に親切な人間になってくれればいいと思っていると言う。
愛子「大学といってもこのごろは猫も杓子も大学ですからね」
調べてみたら昭和43(1968)年の大学進学率は19.2%だった。まあ、鶴家の子供たちの大学進学率はすごいけど、一般的ではないね。
愛子は大学では急に休む先生もいるし、学生が麻雀を覚えるのはそんな先生のおかげだと話す。
三郎がお茶菓子に持ってきたのはチーズとシャケの燻製。これじゃお酒のおかずだという愛子にこれしかなかったという三郎。愛子は冷蔵庫にはみつ豆や桃の缶詰もあったと言うが、もったいないからやめたと返す三郎。
しかし、イネは甘いほうより辛いほうが好きと言う。
三郎「ゆんべ一本つければよかったですね」
イネ「まあ、あなたったら」
三郎「へヘヘッ」
イネ「とっても出来た大学生じゃありませんか。おっちょこちょいどころじゃありませんよ」
おっちょこちょいと言われて心外といった様子の三郎だったが、イネにゆんべでなくたっていただきますよと言われびっくり。
台所
三郎がお酒を注ぎ、杯で酒を飲み始めたイネ。コップを勧めた三郎だったが、イネは杯がいいと言う。昼間のお酒はおいしいと満足げ。三郎がうちわであおぐと「もったいなくて目がつぶれますよ」と遠慮する。
三郎「気にしなくたっていいのに」
イネ「いいえ、いいえ、人間は分を知らなくちゃいけません。昼間っからお酒なんかいただいちゃってバチが当たらなきゃいいと思ってるんですよ」
お銚子がさっぱり減らないと思っていたイネ。すでに3本目で1時間以上もこうしていると三郎が教えると、びっくり。三郎はもう少し飲めたらモテちゃうと言う話から、あんまりお酒が強くないのかも?
イネ「それでもまあなんて情の細やかな殿方なんでしょう。この年になってこんな美しい殿方からお酌をしていただくなんて私は夢みたいな気がして泣けてくるんですよ」と泣き出す。僕がお酌をしてあげますよと三郎が言うと、はい!とぴたりと泣き止んで杯を差し出す。
電話が鳴る。愛子は茶の間で三郎が昼間から酒を飲ませていることに怒っていた。老眼鏡姿が珍しい。三郎は受話器をあげたものの、亀次郎が会社からかけてきたと分かると、愛子に代わるように言う。
あんまり出てこない大亀建設の社長室
亀次郎はお敏はまだ帰ってないのか、イネはどうしてるか聞いた。おばあちゃんって言いますけどね、同じ60代だから!(亀次郎61歳、イネ※推定68歳)
亀次郎は何の用か忘れてしまいガチャ切り。「全くわけ分からん。あれでも一家の主婦なんだからイカれちゃうよ」
亀次郎のデスクには黒電話とアイボリーに水色の受話器の電話。黒電話は今使ってたので、アイボリーは内線用だろうか。
愛子は三郎に「いつまで飲んでるの。お酒が惜しいわけじゃないけど体を壊しますよ」イライラした様子で言う。三郎は泣きだしたからもう終わりですよとニヤニヤ。イネが三郎を「若旦那」と呼ぶのに愛子は顔をしかめる。
愛子「ハァ…家計簿つけてる身にもなってごらんなさい。お酒だって値上がりしてるんだから」
老眼鏡にそろばん。このドラマから2年後の「二人の世界」でようやく電卓を買ったくらいだからまだまだそろばんの時代か。
台所
イネは三郎をあなたぐらいの若旦那を見たことがないと褒める。「親には孝行、年寄りには親切。大学には行ったり行かなかったり、そこが人間の味ってもんですよ」
年寄りなんだから体に毒だと言っても、年なんか問題じゃありません。私は今でも恋をしてるんだからねと言って、三郎を驚かせる。今の亭主なんか遠からずおっぽり出しちゃいますよ、だって。
インターホンが鳴る。愛子は面倒だから鍵はかけなくていいと言う。そうか、裏玄関じゃなくて門に鍵がかかってんのか。そりゃ面倒だ。
愛子「初子も初子ですよ。いなくなれば困ること分かってんのに勝手に自分の都合でお嫁に行っちゃうんだから、フン。まるで人情なんてありゃしない。ああ、どうしてこくそろばんが合わないのかしら」
今日は毒舌愛子さんだけど山田太一脚本ではないんだよな。
さっきのインターホンは高円寺のおばちゃん。敬四郎も一緒の電車で帰ってきて、正子持参の重箱を持たされた。学生結婚の2人はおばちゃんのアパートに入れた。ちょうど夏休みで帰ってる部屋があった。けど、夏休みが明けたら? でも元々の住人からしたら嫌だなあ。
おばちゃんのアパートだが、建てたのは亀次郎。気に入らなきゃ何を言いだすか分からないということで亀次郎には内緒。
敬四郎はイネがお酒を飲んでいることに驚く。お土産はキャンディー。イネはめんどくさいからとコップでお酒を飲んでいた。ありがとう存じますとお礼を言うもののこれからはおつまみにいいものをお願いしますと敬四郎に言う。敬四郎に酒を勧めるが、敬四郎は洋酒のほうだからと遠慮する。しかし、飲める方だと分かると気に入った気に入ったと喜ぶ。
酒を飲んで騒いでいるイネの声をしかめっ面で聞いていた愛子。「あれなんですからね、昼間っから」
正子「まあなんてのびのびしたおばあちゃんかしら」
正子はあれっぽっちのお酒が家計簿に響くわけがないと言うが、愛子はさっきから何べんもそろばんを入れていると話す。
愛子「あるようでないのがお金ですからね」
正子「そう思ってりゃどんどんたまるでしょ」
正子が持ってきたのはチラシ寿司。お敏不在でお敏のお母さんが来てると言うので気が揉めたのだと言う。正子は取り皿を取りに台所へ。
台所では敬四郎がビールを飲んでいた。
イネ「イカす、イカす! かわいい若旦那も大したもんだ。これでこそ鶴と亀が舞い遊ぶよ、このうちは」と喜ぶ。
高円寺のおばちゃんだと紹介されたのに「おばあ様ですか?」というイネ。
正子「違いますよ、伯母ですよ」( ー`дー´)キリッ
これはこれはとフラフラしながら立ち上がろうとするイネにお敏さんにお世話になってるのは私のほうだと言う正子。
敬四郎たちは正子にお酒を勧める。ほんの少しと言いながら嬉しそうな正子。
愛子「おばちゃん何してんのかしら。人をお預けにしておいて」
敬四郎たちは冷房の部屋だと調子が出ないと移動。愛子はイライラした様子で三郎を呼びだす。台所は蒸すのでうちわであおぐのも大変だし、座ってる方が楽だからと広間へ行った。
愛子「お母さん月末でそろばん弾いてるんだから」
三郎「大変ですよね。物価は上がるし、税金は取られる一方だし」
愛子「そう思ったら少しお母さんの身にもなってちょうだい」
三郎「なってますよ。だから年寄りに親切にしてるんですよ。恐らくあのおばあちゃんにしてみたらこんな楽しいことは一生に一遍なんですよ。このうちには鶴と亀が舞い遊ぶって祝ってくれてるんですよ」
愛子「鶴亀次郎なら初めっからおめでたいですよ」
三郎「だけどその亀は怒鳴ってばっかりいるじゃありませんか。だから今日は厄払いなんですよ。おばあちゃんだってこのうちに来てあんなにニコニコしてることは珍しいんですよ」
愛子「人をお預けにしといてニコニコもないもんですよ」
三郎は正子の持ってきたチラシ寿司を見て、酒の肴がないからと持っていこうとした。食べてみておいしかったら持ってきますからね、と重箱ごと持ち去る。
インターホンが鳴るが、三郎は台所で取り皿と箸を用意していて、裏門は開いてると無視。
愛子が「泥棒だったらどうするんでしょ」と裏玄関を開けると亀次郎だった。忙しいと思うから裏から来たと玄関に入るなり、背広を脱ぎ始める。
愛子「お敏さんのお母さんが大変なんですよ」
亀次郎「えっ、ポックリ逝っちゃったのか?」
愛子「逝くもんですか。あれで危篤だなんて。よくまあいいかげんな電報打ったもんですよ」
亀次郎「とにかくお茶でも飲ませなさい」
愛子「聞いてびっくり見てびっくりですよ」
広間に車座になって酒を飲みだす正子、イネ、敬四郎、三郎。正子は羊羹でお酒が好き。イネも正子に一升瓶を片手で持って注ぐ。亀の子が酒も飲めないなんてと正子に言われた三郎だけど、コップにはビール。イネは私なんか泥亀だと言い、正子はこのうちの亀は怒鳴り亀だと笑う。
ステテコ姿の亀次郎は「なんたることだ、人が留守だと思って」と小走りで広間へ。しかし、イネの歌に聴き入ってしまう。
♪腰が痛うて
夜なべは つらか
つらかはずたい…
4人あらして
ハァ まだ…(つづく)
歌詞検索したけど腰痛の記事ばっかり出てきた。
イネの一人も欠けなかったんですかという言葉が時代を感じるな~。身近なところでは私の両親のきょうだい、そして、ファミリーヒストリーや昔の朝ドラ見てても小さな子供が亡くなることは割とよくあった。考えてみれば戦争挟んで7人無事に育つってすごいことだったんだな。
今日は兄弟のうち三郎と敬四郎のみの出演でした。