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【連続テレビ小説】本日も晴天なり(120)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

大原家は無事退院した正道(鹿賀丈史)とともに家族全員で正月を迎えた。年始回りに来た順平(斎藤建夫)と福代(谷川みゆき)は子供たちにお年玉をやり、順平は一家のあるじ然とする。吉宗には洋三(上條恒彦)と絹子(茅島成美)も来ていて、宗俊(津川雅彦)やトシ江(宮本信子)らと福代の噂話でもちきりだ。元子(原日出子)が年始回りで編集室を訪れると、福井(三木弘子)から元大臣の取材に行くよう命じられる。

昭和39年 正月

 

一家のあるじが無事退院し、家族全員で正月を迎えられたのは、本当にうれしいことでした。

 

大原家茶の間

道子が習字をし、家族が見守る。ホワンホワンした一月一日が流れる。

一月一日

一月一日

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↑こんな正統派な感じじゃないやつ。

 

正道「うん、『希望』か…。なかなかよく書けたぞ、道子」

道子「そう?」

元子「大介ももう一枚書いて松江のおばあちゃまに送ったらどうかしら?」

大介「ちゃ~んとそのつもりです」

元子「まあ」

 

大介「だって僕の初めてのお習字の先生は、ひいばあだもの」

正道「あ~、そうか。きっとひいばあも喜ぶぞ。なあ」

道子「だったら道子も送る」

元子「そうね。今年こそ希望の年にしなくちゃ。ね」

正道「そうだな。お父さんも負けないように頑張んなくちゃな」

 

大介「では、お母さんに新年の抱負をひと言」手でマイクを作り向ける。

元子「まあ、やだわ、大介」

正道「ハハハハ…。よし…じゃあ、そういう大介君はいかがですか?」

大介「そうですね、できれば今年中に剣道初段は取りたいものですねえ」

道子「私も、私も」

正道「はいはい、大原道子さん」

道子「え~っと…。え~っと…」

正道「うん?」

元子「ほら、頑張って」

正道「また、お父さんとかけっこしたいです」

大介「抱負っていうのは、そういうんじゃないの」

正道「いやいや、いいからいいから。よし、それじゃ、お父さんも早く道子と一緒にかけっこがしたいです」

元子「まあ、よかったね、フフ…」

 

戸が開く音

⚟順平「ごめんください。順平です。明けましておめでとう」

 

大介、道子は顔を見合わせて玄関へ走る。

元子「どうぞ! いらっしゃい! 上がってちょうだい! さあ、ちょっとね…」テーブルの上の道子の習字もさっと片づける。

 

⚟道子「ありがとう」

 

ダイニング

道子「お母さん、叔父さんにお年玉頂いた」

元子「まあ、よかったわね」

正道「おい、ちゃんとお礼言えたのか?」

道子「言えた」

大介「僕も」

正道「うん」

元子「フフフ…」

 

茶の間

正道「いやぁ、すまんな」

順平「いやぁ、今までさんざんもらったし。これでも今年は一家のあるじだからね、しかたないね」

元子「新年早々、物入りでごめんなさいね」

 

茶の間の前の廊下で挨拶を始める福代。「明けましておめでとうございます。昨年は…」

 

順平「あ~、ここんちは、そういう面倒くさいのは抜きでもいいんだよ。ほら、中入れ」

元子「何よ。たった今、一家のあるじだって威張ってたくせに」

正道「ハハ…まあ、いいから。年末は忙しかったでしょう。本当にね、ここんちは全然遠慮のいらないうちだから、ゆっくり息抜きしてってください。ねえ、福代さん」

福代「はい」

順平「まあ、新年だし、退院したし、いろいろとおめでとうございます」

 

正道「去年はね、お互いにいろいろブランクがあったけども今年こそ頑張んなくちゃな」

順平「けどね、僕はブランクはブランクでもこうしてちゃんといい嫁さんを連れてきたんだからね。ねえ、福ちゃん」

福代「はい」

元子「まあ、新年早々お熱いこと」

 

ダイニング

大介「しかたないさ、まだホヤホヤだもの」

元子「大介」

大介「ハハッ」

道子「逃げろ~!」

元子「もう…」

 

茶の間

順平「あれじゃ、大ちゃんもすぐだよね」

元子「えっ? まだよ。さあさあ、ほら、どうぞどんどん召し上がってちょうだい」

正道「さあ、ほら」

順平「あっ、どうもすいません」

 

店先が正月仕様の吉宗

桂木家茶の間

絹子「いや私もね、ただいまって順平ちゃんが帰ってきた時は、びっくりしたけど、いい子じゃないの。ねえ」

宗俊「俺だって、おめえ、別に悪い女だとは思っちゃいねえよ」

洋三「初めっから帰るまでニコニコ、ニコニコおんなじ顔して、あの笑顔はどうにもいい笑顔だねえ」

宗俊「『笑う門には福来る』ってな、福ちゃんとは、よく言ったもんだ。ハハハハ…」

トシ江「ああ、そうか。そうなのよね」

宗俊「何だよ」

 

トシ江「え? 何かはなっから何かの感じに似てるなって思ってたけど大福餅よ」

洋三「そりゃありませんよ、義姉(ねえ)さん。若いお嬢さん捕まえて大福餅だなんて」

トシ江「そうじゃないのよ。見た目も人(しと)当たりもこうふっくらとしててね、何かホッとするようなところがなあい?」

絹子「うんうん、あるあるある。そういえば、そういう感じよね」

宗俊「ケッ…バカバカしい」

 

洋三「いやぁ、義兄(にい)さん気に入らなきゃ、こっちで引き取ったっていいんですがね、いやまさか順平ちゃんと別れさせるわけにもいかないし」

トシ江「当たり前でしょ、そんなこと」

絹子「あら、じゃ、お義姉さん、気に入ってんの?」

トシ江「うん…といってもまだ顔合わして10日もたってないんだけどね、朝6時には夫婦そろってキチッとおはようございますって、やって来るのよ。それでもうね、自分のうちで朝ごはんは済ましてきてんの。まあ近頃の東京じゃ、めったに探せない娘さんかもしれないわよね」

宗俊「まあ、しばらく様子を見てりゃな、本物か、おめえ、メッキが剝がれるかはすぐ分かるだろうよ」

 

洋三「で、どういういきさつで2人は一緒になったんですか?」

トシ江「あら、洋三さんも聞いてないの?」

洋三「えっ」

絹子「あら、そうすると、まさかお宅でも?」

トシ江「うちはわざとこの人が聞かないせいもあるんだけど、順平たちもね、別に何にも言わないの」

宗俊「聞くこたあねえやな。おめえ、人柄なんてのはな、見てりゃ、おのずから分かるもんだ」

洋三「ハハ…相変わらずだな、義兄さんも」

トシ江「けどね、順平が頼ってった藍玉職人の身内だってことは確かなのよ」

絹子「ふ~ん。そう」

 

大原家茶の間

おせちを食べている福代。

元子「そう。そのおじいさん亡くなられたの」

順平「うん。福ちゃんはたった一人の身内だったから、じいさんの面倒見てたんだけど、いわば孫みたいなもんでね、死ぬ前にこいつを頼むと言われてね」

正道「えっ? そう言われたから結婚したわけじゃないんだろ?」

順平「いや、そうなんだ」

元子「順平」

 

順平「だって、最終的に俺に紺屋を継ごうと思わせたのは、この福ちゃんだもん」

福代が食べてるのは白いカマボコだろうか?

順平「それにじいさんが藍玉職人の現役のままで死んでいけたのも福ちゃんがいたからかもしれないし。それに俺、この前、あにきのけがで帰(けえ)ってきた時、おやじやおふくろを見て老けたなと思ったんだ」

正道「あの時はね、僕の手術に立ち会ったり、あまり寝てなかったりで、いろいろ心配かけた時だったからな」

順平「いや、それにしてもだよ、自分のことしか考えられなかった時は、おやじたちのそういう姿に全然気付かなかった」

元子「すると、あんたもそれだけ大人になったってことね」

 

順平「まあね。紺屋のせがれでありながら藍のことは、じいさんに教えてもらうまでろくに知らなかったし、昔の人が野良や山仕事に行く時、藍で染めた手っ甲や脚絆をつけたっていうのも藍の匂いを嫌う毒蛇や毒虫を避けるためだったっていうのも、じいさんから初めて聞いたし、そういう昔の人の知恵や伝統は残さなきゃいけないだろ。それに『青は藍より出(い)でて』ってやつもじいさんから聞いた福ちゃんから教わったんだ。親を肥やしにして子は更に伸びていかなきゃいけないってことなんだろ」

元子「ええ」

dictionary.goo.ne.jp

www.nhk.or.jp

関係ないけど、山田太一脚本の朝ドラ見たいな~。残念ながらフィルムが残ってない。

 

順平「ということは、俺にとっての肥やしは、おやじであり、じいさんだったわけだ。俺が藍染めをやるっつったら、じいさん、本当に喜んでくれたよ。藍と…藍玉職人と紺屋とは違うかもしれないけど『お前は俺という藍より出でて青になれ』そう言ってくれたんだ」

正道「うん、そうか…そうだったのか」

 

順平「でも、こういう話は、てれくさいからここだけだぜ」

元子「どうして?」

順平「やだよ、あの河内山にウダウダ説明するなんて」

元子「ん…しょうがない人ね。こういう人なんだから福代さん、よろしくお願いしますね」

福代「はい」

 

元子「あっ、お雑煮召し上がる?」

福代「はい、頂きます」

元子「じゃ、ちょっと待っててね」

福代「あっ、教えてもらえば自分でやりますけん」

元子「一緒にやりましょう。ねっ」

 

こうして、お正月も三が日を過ぎると世間の歯車は再び動き始めます。

 

女性時代編集部

淡いピンクの晴れ着を着て出社した元子。「おはようございます」

 

壁に貼り紙

 

編集員募集

資格 高卒以上

女性二名

 

一、泉七々江との

  キャンペーン旅行

二、新家庭訪問

 

福井「あ、ちょうどよかったわ、大原さん」

元子「明けましておめでとうございます。旧年中は、いろいろとお世話になりましたが、本年も相変わりませず、どうぞよろしくお願いいたします」

福井「こちらこそよろしく。早速だけれども、今すぐ取材に行ってもらえるかな」

元子「はっ?」

福井「元大臣のお宅でね、お孫さんが生まれたの」

元子「はい…?」

福井「いい着物も着ているし、鶴見事故のルポ、あれからもいろいろ褒められて、あなた評判いいのよ」

元子「あ…ありがとうございます」

 

福井「閣僚だった時はね、あんな無愛想なやついなかったんだけれども、今日はどんな意外な面を見せるか、それはあなたの腕次第。カメラマンつけるから頑張ってちょうだい」

元子「カメラマンをですか?」

福井「実はね、インタビューだけは取り付けたんだけれども、相手は大の写真嫌いで有名なの。頑張ってね」

元子「えっ…」

 

福井「だから腕次第だって言ったでしょう。駄目なら駄目でしかたがないんだけれども初孫(ういまご)インタビューで目尻下げてる写真がなかったら何にもならないじゃないの」

元子「はい…」

福井「船田さんだから大丈夫。インタビューには慣れてるし、それにOKさえ取れればシャッターチャンスは絶対逃さないわ。インタビューでまごついたらね、助け船も出してくれるわよ。そこでパチッて一枚でも撮れたら、これは大原さん、アッというお手柄なんですからね」

元子「はい」

福井「じゃ、いいわね。的は一応大きいし、初仕事としては悪くないわよ」

元子「はい。やらせていただきます」

 

大原家ダイニング

ダイニングテーブルで勉強している正道。

ノートに書かれているのは”能率可動線”くらいしか分からない。

 

電話が鳴る。

松葉杖をついて立ち上がる正道。

大介「僕が出る」

正道「あ~、いい、いい。何事も訓練だからな。よいしょ…」

大介「切れちゃうよ」

正道「ああ、大丈夫だ。用があるのは向こうなんだから。急用だったらまたかかってくるよ。よいしょ…はあ。はい、もしもし大原です」

元子「私です。すいません、これから取材に出ることになっちゃったの。お夕飯、おせちの残りが少しあるし、さけも残ってます。それから…」

正道「あ~、大丈夫だ。冷蔵庫のぞくから。うん、こっちのことは心配いらないよ」

元子「すいません。それじゃ、行ってきます」

正道「気を付けてね。はい」受話器を置く。

 

大介「お母さん、もう仕事?」

正道「うん、そうらしいな」

大介「ねえ、机、もっと電話のそばに置いたら?」

正道「え? うん、今な、ぼちぼち考えてるとこだ」

大介「何を?」

正道「え、能率可動線

 

大介「何? それ」

正道「え、よいしょ…一定の空間内で一番機能的に動くには、ものの配置や高さがどうあったらいいかっていう研究だ」

大介「ふ~ん」

正道「椅子から立つのとな、畳から立つのとでは、人間のエネルギーの消費量ってのは全然違うんだよ」

大介「へえ~」

正道「食事だけならいいんだけどね、この机で書き物をするとなると、お母さんの体には合わないんだな。つまりな、姿勢に無理がかかって疲れる。ということは内臓の機能にも障害が出てくるっていうわけなんだよ」

 

大介「そういう研究、何て言うの?」

正道「まあ、人間工学もこの一つだな」

大介「ふ~ん」

正道「ハハ…。あっ、いけない、いけない、冷蔵庫を調べるんだよ…」

大介「いいよ、僕が見るから」

正道「よしよし、それじゃ一緒に点検だ」

大介「はい」

正道が大介の方を借りて立ち上がり、歩き出す。

 

トシ江「こんにちは」

正道「はい。あっ、お義母(かあ)さんですか」

トシ江「福代さんがいてくれてるんでね、まあちょいとどんな様子かと思って見に来たんだけど、どんな具合?」

正道「ええ、まあ、ボチボチと」

トシ江「気ぃ付けてくれなくちゃね。で、元子は?」

正道「はい…」

 

女性時代編集部

デスクで原稿を書く元子。

 

船田「どうですか、この顔」

福井「どれどれ。うわぁ、目尻下げちゃって。ハハハ…」

白黒写真に写るパイプをくわえた恰幅のいい元大臣。クレジットに名前なし。

 

船田「いやぁ、僕もびっくりしちゃったな。選挙の当選では思わず素顔を見せますがね、政界の大物がここまで手放しに目尻下げたのは初めてだな」

福井「もしやとは思ったけどこうバッチリ撮らせてくれるとは思わなかったわ」

船田「やばいから初め、カメラは玄関に置いといたんですけどね、彼女が人形町のお父さんのあの親ばかっていうか、じじばかぶりを次から次ともう話すもんだから元大臣も、もうおなか抱えて『そのとおり、うん、そのとおり』っつって大笑いでしたよ」

福井「そう」

船田「はい。とにかく大原君が坊やが生まれた日にお父さんが行方不明になったって話したら、そしたらどうしてだって体乗り出してきてね、本当かうそか写真屋へ写真嫌いのお父さんが写真を撮りに行ったっていうんですよ」

福井「ふ~ん」

船田「これがお前の生まれた日のおじいちゃんだって孫が大きくなったら見せてやるんだって聞いたら、私は泣けましたって。本当に涙ぐむもんだから、つい乗せられちゃったんすかね、こりゃ」

福井「へえ~、大原さんにそんな芝居心があったのかしらね」

船田「いや…それでまた延々とお父さんの写真嫌いについて始めて、けどもね、孫のおかげで今では自分で写すとまで言うもんだから、この大臣が初心者用のカメラは、ありゃどんなものがいいかって聞かれて、ついに僕がカメラマンだっていうのがバレの、とにかくもうしっちゃかめっちゃかで大笑いでしたよ」

福井「よしよし」

 

船田「へへ…それでね、そうやって笑わしといて母性保護の問題をスッと挟み込んで聞くんだから、いやぁ素人は怖いと思ったけど、あれはれですかね、あの、子持ちライターの強みですか、ありゃ」

 

初登場でよくしゃべる船田…河原裕昌さん。1982年に河原さぶに改名したそうだから、このあと間もなく?

peachredrum.hateblo.jp

しかし、wiki見て驚いたのはバイプレイヤーで今でもたくさんのドラマに出ていると思っていたのに2011年、病気のため帰郷したそう。2013年に故郷の広島のキャンペーンに出演した動画は見つけました。

 

福井「当たり前でしょ。取り柄のない者を私が使うわけないんだから」

 

元子「何かおっしゃいましたか?」

福井「ん? あっ…いえいえ」

元子「え~っとですね、お宮参りの取材の許可も頂いたんですけど」

福井「お宮参り?」

元子「ええ。そのスペースどうしたらいいでしょうか」

福井「お宮参りっていうと…」

元子「約ひとつき後です」

 

福井「あ~、いらない」

船田「あら、いいんですか? もったいないよ」

福井「ううん、そこまでつきあう必要ないわよ。それにニュースはどんどん生まれるものなのよ」

元子「分かりました。すいません、あと2枚ぐらい長くなりそうなんですけど」

福井「いいわ。書いといてちょうだい」

元子「はい」

 

暮れに37歳になった元子さん。お母ちゃんルポライターとしての真価を発揮し始めたようです。

 

つづく

 

母性保護というのはこれのこと?

ja.wikipedia.org

大正時代の与謝野晶子平塚らいてうの議論で、平塚らいてうは妊娠・出産・育児期の女性は国家によって保護されるべきという主張で、与謝野晶子は婦人は国家にも男子にも寄りかかるべきではないという考え。今にも通じそうな話題…というかさっぱり解決しないまま100年以上たってしまった。