公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
ソ連の参戦にいきどおる宗俊(津川雅彦)は友男(犬塚弘)と言い合いになる。けんかを止めるトシ江(宮本信子)も満州の正大が心配だ。宗俊は「満州は絶対安全だ」と言い張るが…。元子(原日出子)は放送の順番を軍に都合のいいように変えろと将校に乱入されるが引き下がらず、本多(山本紀彦)に気の強さを心配される。いよいよ敗戦が決定となり、日本放送協会は、ポツダム宣言受諾のニュースを海外向けに放送する。
8月10日 朝
新聞紙面 読めないところもありましたがこんな感じ。
を戰宣日對 聯ソ
(ソ連 対日宣戦を・・)
東西から國境を侵犯
滿州國内へ攻撃開始
北満北鮮へ分散空・
我方、自衞の邀撃戰展開
激という字の旧字体かと思ったら、邀撃(ようげき)という言葉があったことを初めて知りました。
調停の基礎を失ひ
米英蒋の提案受諾
ソ聯宣戰理由・・
↑米英+蒋介石(中国)ってことなんだよねえ?
茶の間
宗俊「くそぉ、これじゃ闇討ちじゃねえか、え。そもそも日本とソ連の間にはな、日ソ不可侵条約ってもんがあるんだ。そうだろ! え、中の湯」
友男「あたぼうよ。ソ連がドイツにやられてた時によ、日本がそのケツをちょいとたたけば完全にお手上げだったんだ、ソ連は。だけど、日本はよ、その条約を守って同盟国のドイツに手を貸さなかったんだ。こんなバカな話がどこにあるってんだ」
宗俊「寄ってたかりやがって、え、やつらのすることは、まるでおおかみだ」
友男「ああ」
トシ江「せっかく正大は満州に行けていいあんばいだって思ってたのにね…」
宗俊「なに、大丈夫だい。な。満州はまだ内地と違ってな、無傷だ。それにおめえ、世界一強(つえ)えってぇ関東軍がいるんだ。満州は絶対安心だ。正大のことは心配いらねえ」
巳代子「それじゃ、行ってきます」
トシ江「あっ、警報が出てるから気ぃ付けてね」
巳代子「はい」
友男「巳代ちゃん、落下傘のついたのが新型爆弾だからな。そういうのが落ちてきたらな、どこのうちでも構わねえから飛び込んで光避けなきゃ駄目だぞ」
巳代子「はい」
トシ江「さあ。気ぃ付けんだよ」
巳代子「はい。それじゃ、行ってきます!」
友男「おう、行っといで」
トシ江「行っといで」
友男「河内山、おめえ、出かけねえのかよ」
宗俊「警報が出てるじゃねえか」
友男「出てるったって、巳代子ちゃん、出かけたじゃねえかよ」
宗俊「俺は今、考え事してんだ」
友男「何を?」
宗俊「いろいろなことをだよ」
友男「ハッ、考える間があったら、もっちゃんに聞いた方が早いんじゃねえか」
トシ江「元子はゆうべ泊まりでね、まだ帰ってないんですよ」
友男「ヘッ、そんじゃどうしようもねえや」
宗俊「どうしようもねえって、一体どういうことだ、え?」
友男「おめえが考えたってどうなるわけでもあるめえ」
宗俊「てめえこそ御託並べてる間があったら、え、焚きもんでも拾い集めてきやがれ、この野郎」
友男「大きなお世話だ、このとうへんぼく!」
宗俊「とうへんぼくだ?」
友男「ああ」
宗俊「この野郎、黙って聞いてりゃ…」
トシ江「な…何するの!」
友男「何だ、てめえ…」
ケンカになってしまう2人。
ソ連の参戦はヤルタ会談におけるアメリカ、イギリスとの約束によるもので日本政府は当然予想していたものの、それらの事情は無論、宗俊辺りには知る由もありません。
放送会館の廊下
本多「室長! どうでした、結果は」
立花が廊下の隅に寄せる。
本多「やはり閣議では?」
立花「ああ。これ以上、戦争を続けると日本は滅亡するということで首相は陛下のご決裁を仰いだらしい」
本多「するとポツダム宣言を?」
立花「大御心(おおみこころ)は、ご受諾を決意されたと漏れ承ったが、恐らく軍部は阿南(あなみ)陸相を突き上げて、このまま引き下がるとは思えないね」
事実、阿南陸相は戦争終結に激しく抵抗し、閣議は紛糾に紛糾を重ねた結果、一つの方向を見いだしたのですが…。
すごいボリュームで読み切れなかった…が、とりあえず8月10のところだけ探して読んだ。
放送員室
時計は6時38分ごろ。
突然、将校が入って来た。将校役は浜田晃さん。「7時のニュースを読む放送員は誰ですか」
立花「失礼ですが、どんなご用件ですか?」
将校「あなたが当番ですか」
立花「いえ、私は放送員室長です」
将校「7時に情報局総裁の談話が発表されると聞いたが、順はどうなっておりますか」
立花「順…と申しますと?」
将校「阿南陸相布告との順です」
立花「ああ、それでしたら、まず情報局総裁の談話があって、そのあとに陸相布告ということになっております」
将校「それでは、それを逆にしていただきたい」
立花「いや、失礼ですが…」
将校「逆にしていただきたい」
立花「お断りいたします」
将校「逆にしてほしいと自分はお願いしてるんです」
元子「室長がお断りした以上、放送員は順を変更することはできません」
将校「婦女子は引っ込んでいてくれ」
元子「婦女子でも私たちは放送員です」
将校「よ~し、では、自分が責任を取るから、君、阿南陸相の布告を一番に読んでくれ」
元子「そんなことできるわけないでしょ!」
立花「桂木君」
元子「室長!」
立花「大変申し訳ないんですが、報道の編成は報道部に権限があって、私たちには、いかんともできないんです」
将校「その報道で、らちが明かないから直接自分は放送員に頼みに来たんです」
立花「では一応、報道部と検討いたしますが、何しろ放送時間が迫っておりますし」
将校「そこを曲げてお願いしたい」
立花「しかし、陸相はこのことをご存じなんですか?」
将校「(やや間があって)責任は自分が取る。自分は命を懸けて頼んでる」
立花「分かりました。では時間もありませんし、一応、私と一緒に報道部へおいでくださいませんか。沢野君、放送の準備に入ってくれたまえ」
沢野「分かりました」
立花「さあ、どうぞ」
将校、立花、沢野は部屋を出ていく。
元子「本多先生」
本多「室長のことだ、大丈夫だよ」
元子「でも、あんまりです」
本多「あんまりなのは君の方さ。意外と気が強いんだね。こっちの方が肝が冷えたよ」
元子「だって、私たちだって国のために働いてるんです。それなのに」
本多「まあ、これからは同じように国のためを考えながら、いろいろ食い違いが出てくると思う。しかしだ、我々は室長の指示に従って動く。いいね」
元子「はい」
放送室
沢野「阿南陸軍大臣は全軍将兵に向けて、次のような布告を発しました。『ソ連、ついに矛をとって皇軍に冠す…。たとえ草をはみ、土をかじり、野に伏するとも断じて戦うところ死中自ずから活あるを信ず。これすなわち七生報国…』」
放送員室
立花「事故があっては何もならんからね。それに時間もなかったし、要求どおりにしたよ。そのかわり9時のニュースは情報局総裁の方を先にする」
本多「いや、新聞社の方にも軍の方からは陸相布告をトップにしろと言ってきてるし、内閣書記官長はそれを差し止めろと言ってきてるし、だいぶん混乱してるらしいです」
立花「それよりだね、報道部で陸相に連絡をしたところ、そんな布告は知らんとさ」
元子「え!」
本多「何ですって!?」
のぼる「どういうことなんですか、一体!」
立花「それだけラジオの持つ力が大きいということだ。まあ、これからいろんなことがあるだろうが、こんなことは序の口かも分からんぞ。しかし、慌てないことだ」
元子「はい」
本多「けど案外、逆効果になるかもしれんな」
元子「どういうことですか?」
本多「総裁談話は後から放送することにより陸相布告を否定する形になるじゃないですか」
立花「あ~、なるほどね。ハハハ、そうか」
このしたたかさ、やはり男だと元子は思いました。
モンパリ
ラジオ・沢野「では続きまして、情報局下村総裁の談話をお伝えいたします。『敵米英は…』」
この空間、カンカンの話を聞く服部先生、国井先生という桜中学空間!
情報局の内容は原爆投下とソ連参戦という現実に直面して降伏という表現がないものの終戦へ向けての予備放送とも言えるものでした。
15日になって急に終わったというわけじゃないんだね。
放送員室
8時8分ごろ
原稿を下読みする元子とのぼる。
立花が部屋に入るなり、両手を上げている。
元子「どうかしたんですか?」
立花「これだよ。とうとうこれだ」
のぼる「まさか…」
立花「そのまさかのまさかで日本は終わりだ」
本多「室長」
立花「外務省の指示で、今、ポツダム宣言受諾を海外放送で放送してる」
のぼる「外務省?」
元子「軍の検閲を受けずにですか?」
立花「ああ、一刻を争うからね。まあ、いずれ軍がストップをかけてくるだろうが協会としては止められるまで海外向け放送に入れる覚悟だ」
元子「じゃあ、外国では、もうその放送を?」
立花「ああ。日本お手上げのニュースは今頃、全世界を駆け回ってるだろう」
元子「六根…」
立花「立山君のご両親は大連だったな」
のぼる「はい」
立花「大丈夫。降参した以上、戦争は停止になるだろうし、それだけ被害も少なく食い止められるってもんだ」
のぼる「はい…」
大連は港町だから、いち早く日本に来れたらいいんだけどなー!
本多「しかしね…こんな結果に終わるとは」
元子「私もです。勝つとは考えられませんでしたけど、まさか降参するなんて」
立花「広島、長崎の被害は予想以上にひどいらしい」
元子「ええ」
立花「そいつを今度は東京に落とすと敵は言ってきてるんだ。それにポツダム宣言受諾は陛下のご意志でもあるわけなんだから。まあ、負けるなら負けるでこれ以上、被害を大きくすることもないだろう。いや、むしろ遅すぎたのかも分からんな」
本多「これからはどうなるんでしょうかね」
立花「いや、そいつはさっぱり分からんが、いずれ占領されるんだろうし、少なくとも我々放送員はラジオを通じてアメリカの悪口を言いたい放題言って戦争に協力してきたんだから下手をすると絞首刑かな」
元子「嫌です! 室長が絞首刑になるぐらいだったら私たち最後まで戦います!」
立花「桂木君」
元子「だって、戦争なんだから敵の悪口を言うのは当然じゃありませんか。それに欧米には戦って、後、降伏しても、それは恥辱ではないという思想があると私、聞いています」
立花「そう、むきになりなさんな。要するに日本は開闢(かいびゃく)以来、外国に負けたことがないんだから誰にも見当がつかんのさ」
元子「でも…」
立花「いや、いずれにせよ国としても公式に国民に知らせることになるだろうな。どんな混乱が起きるか、そいつは全く予想がつかない」
元子「はい」
立花「まあ、だから我々放送員としては、ここまで来た以上、国民に真実を伝えなきゃならない。言ってみれば最後の幕引き役だ。とにかくみんな落ち着いて私の指揮に従ってほしい。いいね」
吉宗
電話が鳴る。
トシ江「はい、もしもし人形町、吉宗でございます」
元子「あっ、私、元子です」
トシ江「ああ、何かあったの?」
元子「うん、仕事で2~3日帰らないかも分かんないの。別に心配しなくてもいいけど、着替え、ついでがあったらモンパリまで届けといてもらえないかしら。あそこなら走っても取りに行けるし」
トシ江「ああ、それは構わないんだけど何かあったの?」
元子「うん…。都合で泊まり番が増えちゃったのよ」
トシ江「それは大変だ」
元子「だから、くれぐれも気を付けてね」
トシ江「それは、あんたの方でしょう」
元子「だけど…もうちょっとの辛抱だから、お母さんも頑張ってよ」
トシ江「元子…?」
元子「そんじゃ、おやすみなさい」
トシ江「ああ、おやすみ…」
何となく察してる感じ? 元子は放送室にとどまり、トシ江は玄関を閉めた。
その夜遅く、16期生東京組は続々と集まってきていました。
宿直室
集まった女性たちは8人。
和代「しばらくだわ、ガンコ」
元子「しばらく。泊まりの時、和代が明けだから私たち顔を合わせられなかったもんね」
房江「ふれちゃん、どうしてる?」
のぼる「元気で頑張ってるみたい」
悦子「でも、広島の三重子、まだ消息分かってないんでしょう?」
恭子「ええ…放送局は全壊だっていうし、うちにいたとしても彼女は市内だって言ってたから」
和代「うん…」
恭子「こうなれば早いとこはっきりと片をつけた方が一人でも助けられるんだし」
悦子「けど、2~3日はかかるんだって」
喜美代「どうして?」
元子「うん、政府は、いきなり敗戦を告げるよりは少しずつ国民の気持ちをその方向へ向けようとしているらしいの」
和代「だって、そんなことしてるうちにもし新型爆弾でも落とされたらどうするの」
房江「でも、そうされないために海外放送でポツダム宣言受諾の放送をしたんでしょ」
元子「だけど、軍部はこのままじゃおさまらないんじゃないかしら」
自己紹介によれば、和代は横浜出身、喜美代は東京出身。房江は初台詞!?
ノック
恭子「はい。あっ」
洋三「こんばんは」
恭子「モンパリのおじ様」
洋三「元子は?」
恭子「はい」
元子「こんばんは! すいません。私、取りに行くつもりだったのに」
洋三「いいんだよ、散歩のついで。はい、こっちかな。これは六根」それぞれ風呂敷包みを渡す。
のぼる「どうもすいません」
洋三「ううん。それよりいよいよだね」
のぼる「おじ様…」
元子はドアを閉める。
洋三「うちの短波にね、あの放送入ったんだ」
元子「じゃあ…」
洋三「うん、いよいよ、来るべき時が来たって感じだな」
元子「まさか、うちの河内山には…」
洋三「いや。今、叔父さんにできるのは、あと何時間か何日か、とにかく一人でも無駄死にや無駄なけがをしないように、それとなく注意することだよ」
のぼる「ええ…」
洋三「で、決着がつくまで2人は帰んないつもり?」
元子「どんな形で決着がつくか分からないけど、私…最後までマイクと一緒にいるつもり」
のぼる「私もそうです。それにここにいたら満州の様子も分かると思って」
洋三「うん、分かった。じゃあ、くれぐれも気を付けてね」
元子「ありがとう、叔父さん」
洋三「頼んだよ。この先どうなるか分かんないけれど、とにかく最後まで希望は失わないこと。いいね」
元子「はい」
洋三「じゃあ、これで帰るから」
元子「気ぃ付けてね」
洋三「うん」
のぼる「おば様によろしく」
洋三「おやすみ」
元子「おやすみなさい」
明日に向かい、元子は懸命にけなげな闘志をかきたてていました。
つづく
明日も
このつづきを
どうぞ……
いや~、朝ドラとして軽く鑑賞するには向かないやね~。私はこういうの好きだけど。ほんわか系の原日出子さんが気の強い元子役をやってるからいいのかもしれない。なんとなく。