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【連続テレビ小説】本日も晴天なり(11)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

10倍の競争を経て32人の合格者が集まった。元子(原日出子)の友達は、満州出身の立山のぼる(有安多佳子)、横浜の向井恭子(小島りべか)放送局の秘書課で働いていた五十嵐悦子(渡辺佐和子)などなど、みんな元気でおしゃべり好きの娘たちだ。放送員の立花(渥美国泰)、本多(山本紀彦)の二人が養成にあたり、一か月半で即戦力に養成するという。厳しくも楽しい特訓の日々だが、元子は宗俊(津川雅彦)を怒らせてしまう。

雨の放送會館

 

10月5日 4階秘書課に出頭した合格者たちの教室は銀座別館を借り受けたものでした。

 

10倍の競争を突破して東京採用組17名、各地方から合格してきた者15名、合わせて32名が16期生となるのですが、この中にはなぜか黒一点の男性もいたのです。

 

研修室

眼鏡のおとなしそうな男性。まだ一言もしゃべってないな。

 

トモ子「ねえねえねえ、ここにいる人たちで全部ですか?」

悦子「ええ、そうよ」

トモ子「わぁ、よく東京へ来られたって、つくづく思うわ、私」

恭子「ねえ、でもあの関西なまりのきれいな人、あの人は駄目だったみたいね」

元子「本当だ。そういえばすごくきれいな人はみんな落ちたみたいですね」

悦子「ということは?」

みんなで大笑い。落ちた人を笑いものにするんじゃないのがいい。きれいな人と言ってるしね。

 

トモ子「いいのよ、ラジオなんだから声さえきれいならば問題ないの」

悦子「では、そういうことにいたしましょう」

 

元子「私、桂木元子です。どうぞよろしく」

恭子「向井恭子です。よろしく」

のぼる「私は…聞き返さないでね。立山のぼるです」

元子「あの、それ、本名なんですか?」

のぼる「だから聞き返さないでって言ったでしょ」

トモ子「でも覚えやすいわよ。要するに立ってる山にのぼるんでしょ」

のぼる「読んで字のごとしです」

 

光子「フフッ、私は九州から来ました青山光子です。どうぞよろしく」

トモ子「私、飯島トモ子。仙台から来ました。本郷の寄宿舎に入りましたから家出希望者はご利用ください」

悦子「あら、今からそんな物騒なこと言ったら合格取り消されるわよ」

トモ子「嫌~! だったら前言取り消し」

笑い声

 

元子「残念ながら、ただいまのは既に円盤録音されております」

トモ子「わぁ、本当に放送員になったみたい」

悦子「え~、私は五十嵐悦子。五十嵐は五十の嵐と書きます」

恭子「先輩なんだから、いろいろ分からないことは教えてくださいね」

 

トモ子「えっ、この方、先輩なんですか?」

悦子「ううん。建物の中と偉い人の顔ぐらいしか分からない先輩なのよ。現場のことはみんなと同じ、全然分からないから期待しないで」

元子「よかった」

トモ子「何が?」

元子「だって差がつき過ぎるもの」

 

悦子「あら、差をつけてるのはあなたの方よ」

元子「私がですか?」

悦子「そう。ねえねえ、みんなの中でこの人が一番若さを誇ってるのよ。19なのはこの人だけで、あとはみんな20代突入のおばあばかりですって」←おばあ!!

のぼる「あ~。こら! よくもおばあって言ったわね!」

光子「いや~、ほんなこつ口先から生まれてきたごた人ばっかりがそろっていなはるわ」

トモ子「だから放送員になれたんだいっちゃ」←うわ~、すごいリアルな方言。

笑い声

 

のぼる「着席!」

 

立花、本多が入ってきた。

立花「元気ですね。私は一瞬、女学校の教室に紛れ込んだのではないかと思いました」

元子、あちゃ~って感じの表情。こういうイヤミよくあったね。

 

立花「まず自己紹介からします。試験ではもう既に何回か皆さんとお会いしておりますが、放送員の立花です。これからこちらの本多放送員と一緒に皆さんの養成にあたることになりましたので、よろしく。え~、今日、ここに集まった32名の皆さんが日本放送協会放送員の第16期生になるわけですが、皆さんが今までの研修員と異なることは養成期間が僅か1か月半で即戦力になってもらうことにあります。したがって我々も何が何でも育てる決意ですから32名、力を合わせて一人も落後することなく卒業してほしいと我々、関係者一同、心から願っているわけです。では、出席を取りますが、今日は自己紹介を兼ねて一人一人出身地と名前を言ってもらいます。そこの席から順に名乗ってください」

後ろの席から~!?

 

喜美代「東京出身、浅岡喜美代です」

ゆき子「はい、今村ゆき子、福岡から来ました」

幸江「石堂幸江、北海道はどさんこです」

和代「小栗和代、横浜です」

安子「升田安子、宮城県石巻から参りました」

次は黒一点の男子!というところで画面が切り替わってしまった。

 

茶の間

新聞を読んでいる宗俊。「ん? え~『新人放送員、研修始まる』か。『出ていく男子に代わってマイクを守り、警報放送に戦況報道に活動しようという女子放送員の研修が去る10月5日 日本放送協会が借り受けた銀座別館で開始された。11月下旬には全国一斉にマイクに立とうという意気込みである』。フッ、なるほど」←優しそうな父親の表情をしてる。

 

敵性用語を交えて言えば全く明るくてユニークな娘ばかり集まったのが、この16期生です。とにかくみっちりしごかれて昼になると銀座別館から放送会館の5階食堂まで昼食をとりに行くのも彼女らの楽しい日課の一つでした。

 

放送会館

わちゃわちゃと入っていく女性たちの後に男性一人。

 

食堂

トモ子「ねえねえ、ねえねえ、私、不思議でしかたないんだけれど、東京のうどんってどうしてこんなに短くしてあるの?」

のぼる「決まってるじゃないの。女子放送員は何と言っても品位が大切だし、これはその訓練のためにおちょぼ口でも食べられるようにって食堂の人がわざわざこうしてね」

悦子「ぬけぬけとまあ、あなたもよく言うわね。これはちぎれうどん」

元子「ちぎれうどん?」

光子「へえ~、なるほどねえ」

悦子「分かったのかしら、この人」

笑い声

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元子も分かってなかったし、別に東京のうどん云々ってことじゃないんだよね。切り落としの寄せ集め? 東京の食糧事情が厳しいことの現れ?

 

笑った恭子のうどんがトモ子の丼の中に飛ぶ。

トモ子「あっ! 私の中に飛び込んだ!」

のぼる「よかった、頭よくなるわよ、飯島さん」

トモ子「そうです。戦地で戦ってる兵隊さんを思いましょう」

元子「どう? ひと味違います?」

トモ子「もう、やめてぇ~」

笑い声。楽しそう。

 

研修室

テーブルの上には筆記用具とアナウンス読本。

 

本多「では、これから放送員の任務についてお話します。放送員たらんと志した皆さんにはこの道を志すにあたって、それぞれ異なった動機があったに違いありません。例えば、自らの自由な精神と個性を生かすために放送員を望んだ人もいたでしょう。また、社会公共の事業に専心するためにこの道を選んだ人もいるでしょう。

あるいは単に生活の手段として選んだ人、更には放送員として名を上げたいと思って、この道を選んだ人。動機はそれぞれあると思います。動機が違うということは、この仕事に対しての認識もそれぞれ違うということです。

しかしながら、一度放送員になった以上は一つの組織に入ったものだと考えてもらいたい。すなわち、仕事をするのは日本放送協会の一員としてで、その放送員の仕事も日本放送協会の仕事の一部であるということです。日本放送協会は電波という手段を通じて国民の思想ならびに感情を組織し、それをある一定の方向に動員する機関でもあります。それはまた国民に健全な娯楽を供給し…」←長台詞スゴイ!

 

驚きましたねえ。今ではとても考えられないことですが、戦争中では全ての職場はそのまま戦場に通じ、国民の生活の全ては勝利にささげなければならないという政府の考え方の下に結集されていたのです。そこのところが国民の知る権利、及び、文化向上を目的としている戦後の日本放送協会の在り方と根本的に違っていたのです。

 

ナレーションベースで流れた資料映像は白黒映像なんだけど赤っぽい着色なんだねえ。トラック運転手の若い女性、機関士の女性、タイプライター?の女性たち、穴を掘ったり、土を運んでいる上半身裸の少年たち。

 

モンパリ

絹子「あら、それどういう意味?」

のぼる「ええ、私の認識不足っていうか少し思い違いをしていたようで。放送局っていうのはもっと面白い仕事ができる所かと思っていたもんですから」

恭子「そうね。最初にかなりびしりと厳しく決められた感じなんです」

元子「私、お勤めしたことないせいかもしれないけれど何か一定の枠の中で働けって言われると、こう、息が詰まってくる感じ」

洋三「しかたないよ。お前みたいなのに勝手にしゃべらせてみろ。それこそ何をしゃべりだすか分からないだろ」

元子「でも、ただそういう意味だったのかしら」

洋三「まあ、いずれにしてもラジオは我々国民の情報の窓なんですから、お嬢さんたちに頑張ってもらわなくちゃ。はい、じゃあ頑張ってくださいよ」コーヒーを出す。

 

トモ子「わぁ~、さっきからいい匂いはするし、気になって気になって」

洋三「お金の心配ならいらないですよ。何しろ商売できないんだから」

のぼる「それじゃ悪すぎます」

恭子「でもこの本物の匂い、何か月ぶりかしら」

絹子「私たちもね、店を閉めさせられてから、こんなイキのいいお嬢さんばっかり見えたの何か月ぶりかしら。本当に遠慮しないで時々、遊びに来てくださいね」

のぼる「そんなこと言ったら、この連中、本当に遠慮ないんだからどんなことになるか分かりませんよ」

洋三「いいですよ。この程度のコーヒーなら私用のが少し残ってるし、はい」絹子にカップを手渡す。

 

トモ子「もう、涙が出てきます」

恭子「大げさなんだから、ふれちゃんは」

絹子「ふれちゃん? あら、珍しいお名前ねぇ」

元子「嫌だ、叔母さん」

絹子「え?」

洋三「何だ何だ」

のぼる「いえ、正式にはトモ子さん。友達のトモだからフレンドでふれちゃん」

絹子「なるほど」

 

面白いあだ名。

 

のぼる「私なんか、お山にのぼるっていうんで六根清浄って言うんですからひどいんです」

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あだ名一つに知性を感じる。

 

絹子「まあ、六根清浄ですか」←普通にのぼると言った方が早い。

洋三「ハハハ…で、ガンコちゃんのは?」

恭子「ほら、やっぱりガンコでいいんじゃない」

元子「叔父さん、もう…」

洋三「あれ、いけないこと言っちゃった?」

のぼる「いえ、いいんです。やっぱりガンコでよかったのよ」

恭子「ほら、ねえ」

笑い声

 

絹子「みんな楽しそうでいいことね」

トモ子「あの~」

絹子「はい?」

トモ子「もしかしたらこのお店、明治の終わりにお店を開いて有名な小説家や絵描きさんが出入りしたりっていう、あのカフェ・モンパリ―じゃないんですか?」

洋三「そのモンパリですよ」

恭子「ああ、やっぱり。するとこの椅子に竹久夢二芥川龍之介が座ったかもしれませんね」

洋三「まあ、そういうこともあるでしょうね」

 

のぼる「感激です、私」

恭子「ねえ、それじゃあ、ガンコちゃんはいろんな文化人とあったことあるんでしょう」

絹子「そうねえ、遊びに来てて六代目のお膝におしっこしちゃったし」

のぼる「あっ、あの、六代目って尾上菊五郎丈のことですか?」

絹子「ええ。そうですよ」

トモ子「羨ましい。ガンコはすごいご親戚持ってるじゃない」

 

元子「でもそういうのはここ一軒だけ。この叔父さんがいなかったら私なんかただの下町育ちのおちゃっぴいなんですからね」

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この回でトシ江が言ってた「お茶を挽いてる芸者衆」の意味が分からなくて調べたら、お茶を挽いてる=暇な遊女で、おっちゃっぴいもお茶を挽いてるから来てるというのが面白いなあ。お茶を挽いてる=暇=おしゃべり?

 

洋三「駄目駄目、これ以上持ち上げたって今日のコーヒーはこれでおしまい」

恭子「構いません。大事にチビチビ飲みますから」

 

絹子「まあ、フフフ…。本当にね、パリジャンの話なんか、もうしたくてしたくてたまらないんですよ」

のぼる「えっ、洋行なさったことがあるんですか?」

洋三「若い時、ちょっとヨーロッパをあちこちね」

トモ子「わぁ、話してください。聞きたいです」

洋三「あのね、今は非常時なんですよ。外国の話なんて危ない危ない」

恭子「でも、ドイツは同盟国です。ドイツはいらっしゃらなかったんですか?」

洋三「まあ…ね」

 

元子「うそ。ライン下りの話やベートーベンの家の話をしてくれたじゃないの」

トモ子「ずるいわ、ガンコにだけ聞かせて」

恭子「そうよそうよ」

トモ子「お願いします」

洋三「ハハハハハ、弱ったなぁ。また今度ね、ハハハハハ…参ったな、こりゃ」

 

路地を歩いている元子。

 

既に明かりの消えている吉宗に入っていく。「ただいま」

 

彦造「シ~ッ!」奥を指さし、両手を頭の上に出し、鬼のジェスチャー。そうっと玄関を閉める元子。

 

宗俊「バカ野郎! お前は自分を何だと思ってんだ。れっきとしたまだ嫁入り前の娘なんだぞ!」

元子「申し訳ありません。何が何でも1か月半で育てられるため本当に朝から晩までびっしりと…」

宗俊「そんなこたぁ聞けねえな! 9時はとっくに回ってんだ。毎晩こんな具合なら俺は断固、放送局の一番大将(てえしょう)に談じ込む」

元子「すいません。放送局は7時で退(し)けたんです」

宗俊「この野郎! じゃあ今までどこで何をしてたんだ!」

 

元子「はい、地方から出てきた友達が急に病気になっちゃったもんですから」

トシ江「あ~、そりゃかわいそうにね。下宿なんだろ? その子」

元子、うなずく。

トシ江「親元離れて心細かったに違いないよ。そりゃやっぱり面倒見てやんなくちゃね…」

宗俊「そんなところで調子を合わせんな!」

トシ江「はい」

 

元子「でもあの…同じ同期の桜としては苦しいこともうれしいこともみんな心を一つに合わせるようにと放送局に入った時、訓示されたから、やっぱり…」

宗俊「だからって、うちには電話という便利なものが置いてあるんだ。そうだろ!」

元子「はい」

 

ここで叔父さんの名前を出したら最後、大好きなカフェ・モンパリへのお出入り禁止は火を見るより明らかとあれば元子はこの際、必死に夜遊びの原因を空恐ろしくも日本放送協会に押しつけてしまいました。

 

つづく

 

今日はいつもより時間が余ったのか、「マー姉ちゃん」でもたまにあった、ブルーバックで「ただいまの出演者」として出演者の名前がいつものオープニングのインストバージョンが流れました。

 

明日も

 このつづきを

  どうぞ……

 

一人一人がもう少しゆっくりしゃべれば十分間に合うんだけどね。尺余りだけど内容はぎっちり。

 

peachredrum.hateblo.jp

昭和19年3月に公開された映画を観ました。これ見たら、敵性語はそこまで厳密ではないことが分かりました。大体、この「加藤隼戦闘隊」の歌の出だしは”エンジンの音~”ですからね。

いろんな地方から人が集まるのが東京の面白いところだな。

www2.nhk.or.jp

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16期生の方々。近藤富枝さんが元子のモデルになった方ですが、村岡花子さんの名前をあげてるのは同期の武井さん。いろんな方のお話から元子ができた感じかなあ。