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【連続テレビ小説】本日も晴天なり(2)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

元子(原日出子)は女子放送員に憧れていた。放送局の願書も出し、初志貫徹を決意する。元子の兄・正大の入営通知が来て、宗俊(津川雅彦)は近所の旧友の神長幸之助(牧伸二) や吉田友男(犬塚弘)と酒を飲み酔いつぶれる。翌朝、宗俊は入営を祝うのぼり旗を作ると言い出し、元子は学徒動員の工場へ出かけようとして、正大の先輩の大原正道中尉(鹿賀丈史)とばったり出会う。心から尊敬する正道との会話に心弾むのだったが…。

夜、元子と美代子の部屋

元子「よ~し、こうなったら初志貫徹あるのみだわ。だって願書も出しちゃったんだし、もう後へは引けないし」

巳代子「え~、もう願書出したの?」

元子「そうよ。だって願書出さなきゃ試験も受けられないじゃないの」

巳代子「そりゃ、そうだけど」

 

元子「全国の皆様、おはようございます。ああ、日本の朝の隅々まで私の声が聞こえていくなんて思っただけでも胸が熱くなるわ。私はね、村岡花子さんのラジオを聴いていて、ああいう話のできる人になりたい、だから絶対に女子放送員になるんだって、ずっと思い続けてきたんだもん」

おお! ここで村岡花子さんが!

 

巳代子「ねえ、みんな帰るみたいよ。ねえ」

元子「えっ? あ…あっ、大変!」

 

玄関

幸之助「じゃあ、まあどうもごちそうさんでした」

トシ江「いいえ、本当、ありがとう存じました」

金太郎「おっとっと~。ハハハ…。ごめんなさいね、私のしたことが、まあ」幸之助のところによろける。

トシ江「芳町の金太郎ねえさんともあろう人に天ぷらまで手伝わせちゃってねぇ」

金太郎「あ~、ハハ。それはこないだまでの話。私たちもね、今度は徴用だぞって言われてさ、もう芸者稼業は、あがったりなんですから」

幸之助「お~、そうか。それじゃあ明日の晩もワ~ッといきましょう」

小芳「いいかげんにおしよ! もう本当に。すいませんね。迎えに来なきゃ、いつまで、くだ巻いてるおつもりなんだい」

幸之助「てやんでぇ、バカ野郎。吉宗の若大将のご入営だ、お前。言ってみりゃ大楠公の子別れじゃねえか、この!」

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太平記」の名場面で国語、修身、国史の教科書に必ず載っていた逸話。へえ~。

 

トシ江「いいんですよ。うちの人もにぎやかにしていただいてね」

金太郎「全くもう、いい若い衆が持ってかれちまって、もう私は生きてるかいがないわよ」

友男「ふん! ひねたのばっかり残って悪うございやしたね」

幸之助「そうだよ、お前」

小芳「ちょっといつまでおだあげてんだよ。さあ、早く…」

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幸之助「分かった分かった、ちょ、ちょ、ちょ…。とにかく灯火管制だからな、お前。頼むよ、びっちり黒幕閉めてな」着ている服からして警防団員かな?

小芳「人のことより自分の足元」

幸之助「分かった、分かった…」

トシ江「気を付けてくださいね」

小芳「すいませんでした、遅くまで」

トシ江「気を付けて…。ありがとう存じました、本当に」

元子「おやすみなさい」

 

寝っ転がっている宗俊。

巳代子「あ、いいですよ、叔母さん。もう遅いから」

絹子「うん、だけどさ、この大鯨どこかへ片づけなきゃなんないでしょ」

テーブルの上のものを片づけている絹子と巳代子。国井先生(違)の砕けた口調が珍しい。

洋三「いいよいいよ、布団敷いとくれ。俺がなんとか引きずっていくから」

いびきをかく宗俊。

洋三「本当にもう、しょうがないね、もう」持ってきた座布団を宗俊の頭の下に置く。

キン「だらしがないったらありゃしないよ。昔からシャンとしなきゃならない時に限って、この旦那、いっつもへべれけなんだから」

巳代子「叔父さん、私、布団敷いときます」

洋三「ああ、頼んだよ」

キン「男なんてものは飲んでりゃいいんだろうけど、夫婦なんだから、こんな時こそ息子を兵隊に送り出す、女将さんの胸の内もちったあ考えてやったらどうだっつってんですよ」

彦造「おんなじこったよ。つれえのは旦那だっておかみさんだって」

キン「おや、女房も子供も持ったことないお前さんが、どうして親の気持ちが分かるんだよ!」

洋三「まあまあ、キンさん。彦さん、ちょっと手ぇ貸して。これ、運んじゃおうや」

彦造「さあ、旦那…。よいしょ。いいですかい」

 

菅井きんさんはしゃべりながらちゃっちゃかちゃっちゃかちゃぶ台の上を片づける。昭和のドラマと今のドラマ一番違うのはこれかな。常に手を動かしながらセリフをしゃべるというか、特に女性は手仕事しながらが多い。

 

トシ江「彦さんもおキンさんも遅くまですいませんでしたね。あと、私たちがやるから。大丈夫ですか、気を付けて…」

キン「そうですかい。どうせ私は用なしなんだから。それじゃ…おやすみなさいよ」ちゃぶ台の上のものをそのままに部屋を出ていってしまった。

 

元子「どうしたの? おキンさん」

絹子「寂しいんだろうねぇ。あ、そういえば、おキンさんのせがれ、達者でいるのかしら」

元子「うん、この前ね、『南方洋上より』って葉書が来て、それをおなかに巻いてるみたい」

 

裏庭に出たキンは一人涙を拭きながら去って行く。住み込み? 自宅が別にある?

 

朝、鳥の鳴き声が聞こえる。風鈴の音、目覚めたトシ江は隣の布団が無人になっていることに気付く。蚊帳を出て階下へ。

トシ江「ちょいと! あんた何してんのよ!」

宗俊「おう、極上の白生地が確か2疋(しき)ほど残ってな」

トシ江「ええ…。だけど一体…」

宗俊「旗ぁ染めるんだ、旗ぁ。祝す入営、桂木正大君ってやつをな。江戸染吉宗のこの8代目が型から切って一世一代ののぼり旗作ってやろうってんだい」

トシ江「あんた」

宗俊「情けねえと思わねえか。昔ゃ、兵隊送りといやね、ずら~っと戸板並べてよ、すしにカマボコ、スルメに煎餅、南京豆から人形焼、こもかぶりの2つや3つはたたき割って大人にも子供にもだ、たらふく振る舞ったってのが相場だったのによ」

ほ~、樽酒のこと?

 

トシ江「ご時世でしょう。お砂糖だって今月から家庭用の配給はないっていうし、お米だって一日2合3勺だっていうのに」

宗俊「だからこそ、ド~ンとやってやりてえじゃねえか。まあ食いもんの方は、おめえに任すから、俺ぁ、旗ぁ作る。あ~あ、職人どもが出ていった時には盛大におったててやったのによ、特配の日の丸がスフだってのが我慢ならねえ」

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↑この回、衣料切符の説明やマリ子による東条英機のモノマネなど面白かったな。

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トシ江「んなこと言ったってねぇ」

宗俊「うるせえ! はばかりながら緋縮緬(しぢりめん)の大巾、シメ込んだって、ご先祖さんを仰ぐ吉宗だ。羽二重や錦紗の旗ぐれえ作ったって驚くこたぁねえんだい! 分かったらさっさとそろえねぇか、バカ野郎!」

トシ江「分かりました。こんな時も来るかと思ってね」家紋入りの行李?を宗俊の前に持ってきた。「ほれ。ほら、旗の生地なら、ほら、ここに」

宗俊「おい、彦さん起こせ」素直にありがとうを言え!

トシ江「はい」

 

台所

みそ汁をよそっているトシ江。配膳している元子。

トシ江「元子、彦さんに声かけてきておくれ」

元子「はい」

 

作業場

元子「彦さん、ごはんよ」

彦造「冗談言っちゃいけねえよ」

元子「え?」

彦造「紺屋っていやぁ、昔っから朝飯前まで段取りがちゃんと決まってたもんだ。きりがつかねえと、そんなもの食えねえな」

元子「彦さん…」

彦造「この期に及んで、いいころ加減したら、11の時からみっちり仕込んでくれた大旦那にあっち行って大目玉だい。ヘッヘッヘッヘ…」

 

宗俊は店の作業台で型紙を作っている。麻の葉模様の着物がおしゃれ。

↑こんな感じの模様

 

元子「ごはんよ、父さん」

宗俊「仕上がりが生きるも死ぬも型の切れ味一つで決まるんだい。大事なところで声かけるんじゃねえ」

元子「そんなこと言ったって、ごはんにしないと工場に遅刻するわよ」

宗俊「今日は工場休む」

巳代子「また始まった」

宗俊「俺が1日休んだところで負けるようじゃ、この戦争は、はなからおしめえだよ。病気だ、病気。盲腸でも脳膜炎でも何でもいいから好きな名前付けて電話しとけ」

 

このころは、企業合同といって事情が悪くなった原料・人手・運送の節約で、たとえ何代続いた老舗の旦那でも製造業を営んでいた人たちは工場と称する1か所の作業場へ弁当提げて通うご時世だったのです。

 

宗俊の作業に見入る元子。

 

茶の間

トシ江「元子は?」

巳代子「ミイラ取りがミイラになってる」

順平「何? ミイラって」

トシ江「いいから、そんじゃお上がり。順平も学校菜園遅れちゃうからね」

順平「うん、頂きます!」

巳代子「頂きます!」

キン「はいはい、どうぞ。あ~、昔っからお嬢は物好きでしたからねえ。縁日の綿菓子屋のペダル踏ませてくれって談判したり、焼きそば買えば包んである新聞紙の文句を全部読まなきゃ気が済まなかったくらいですからねえ。久々に旦那の気合いの入った仕事っぷりをしっかり見といてもらうのもようござんすよ、おかみさん」

トシ江「うん、でも、この商売、元子に継がせるわけにはいかないしね」

キン「そりゃまあそうですけどね」席を立つ。

トシ江「(順平に)姿勢悪い」

 

勤労動員の資料映像が流れる。妙にクリアな画像に感じる。

 

このころはみんな工場工場で元子や巳代子たちも夏休み返上、動員学徒の産業戦士です。

 

順平・巳代子「行ってきま~す!」

元子「行ってまいりま~す!」

トシ江「気ぃ付けてね!」

巳代子「は~い!」

 

路地

巳代子「放送局、どうするつもり?」

元子「いざとなったらモンパリの叔父さんも力になってくれるって」←洋三?

巳代子「かえってやぶへびじゃないかな。あいつはハイカラさんだからって、お父さんすぐひがむし」

元子「大丈夫よ、その時はその時。弾丸となってぶつかっていくだけだから。バ~ン!」手を前に突き出して、軍服姿の男性にぶつかる。

正道「あっ!」←あ、水色字幕!

元子「すいません!」

正道「ああ、ガンコさんじゃないですか」

巳代子「あ~、大原さんだ」

元子「大原中尉殿」

正道「はい?」

元子「私の生命は桂木元子。ガンコガンコと気安く呼ばないでいただきたいんであります」

正道「ハハ…申し訳ない。正大君がそう呼ぶもんですから、つい。元気ですか? 兄貴は」

 

巳代子「それが入隊通知が来たの」

正道「いつ?」

元子「4日までに佐倉の連隊に入隊すべしって」

正道「そうですか…」

元子「今晩か明日の朝までには帰ってくると思いますけど」

正道「それじゃ、お父さんとお母さんにご挨拶してきます」

 

この中尉さん、元子の兄の正大には中学の先輩にあたり、目下、元子があんちゃんの次に尊敬している若者でした。

 

正道は鹿賀丈史さん。予告でも見たし、水色字幕だし、結構早く出てくるもんだね。

 

元子「私、忘れ物したみたい」

巳代子「もう、本当にそそっかしいんだから」

元子「ごめん、先行ってて」

巳代子「当たり前よ。こっちが遅刻しちゃうもん」

 

引き返して走り出した元子が声をかけられた。

千鶴子「あの…」

元子「はい」

千鶴子「もし間違えたらごめんなさい。あなた桂木ガンコさんじゃありませんかしら」

元子「あいにくですけど、私、桂木元子と申しますのよ。ガンコじゃございません」

千鶴子「どうしましょう…いつも正大さんからガンコガンコって伺っていたから」

元子「正大って…あなた、どうしてうちの兄のことを?」

 

千鶴子、元子の肩を押さえて路地の端に寄せる。「北海道から電報が」

元子「電報!?」

千鶴子「入隊なさるのは何日の何時かしら」

元子「え、ええ…」

千鶴子「教えてください。決してご迷惑はかけないわ。皆さんの後ろからそっと武運長久を祈らせていただくだけですから。お願い。ね?」

 

元子の心の声「あんちゃんの恋人よ、きっと…。どうしよう、この人、あんちゃんの恋人なんだわ!」

 

千鶴子「じゃあ…間違いなく4日の午前9時ですのね」

元子「はい」

千鶴子「どうもありがとう、ガンコさん…じゃなかった。元子さんだったわね」

元子「フフ…いいんですよ。兄がそう呼んでたんだったら、その方が私も」

千鶴子「ありがとう。あの…それに甘えるようで申し訳ないんだけど…」

元子「いいのよ、何でもおっしゃって。責任持って兄に伝えますから」

千鶴子「それじゃ…。これ、渡していただけるかしら」折り鶴の絵が描かれた封筒を渡して立ち去ろうとする。

 

元子「あ…ちょっと!」

千鶴子「はい」

元子「お宅、電話あります?」

千鶴子「はい」

元子「うまくいったら連絡しますから電話番号教えて」

千鶴子「すいません、あの、それじゃあ…」メモを渡す。「これ、呼び出しなんですけど、お願いします」

千鶴子から受け取った手紙をかばんに入れ、走り去る千鶴子を見送る元子。

 

今日はナレーション少なめ。セリフが多いんじゃなく、今はしない言い回しが多く、調べるから時間がかかるんだな。

 

昨日、感想を見ていて思いのほか、80年代の街並みを歩く元子に混乱していた人が多かった。初めて見たらそりゃそうか。

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私も初めてこのドラマでそういう演出を見て驚いた。これは帝銀事件の証言をもとに犯人とされた平沢を演じた中谷昇さんが町を歩いてて、半ドキュメンタリーっぽい演出だったように感じました。

 

しかし、その”現代”の映像が40年前だから混乱する人も増えるのか。

 

マー姉ちゃん」といい「本日も晴天なり」といい、細かな戦時中の暮らしが描かれているのが好き。

 

千鶴子役の石井めぐみさんは昔、よく見たな~。