公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
あこがれの池内先生(板尾創路)が訪ねてくるというので、朝から大忙しの町子(藤山直美)だったが、小川(上杉祥三)が連れてきたのは町医者の「先生」である健次郎(國村隼)。町子は落胆するが、3人で機嫌よく飲んでいた。しかし、町子と健次郎の間で口論となる。その後、筆が進まず締め切りだけが近づく町子は、会社を辞めたいと考えるようになる。ある日、池内から中之島公園に誘われた町子は自分の家族のことを語り始める。
冒頭が昨日の振り返りからやるところが新しい朝ドラだと感じる。16年前ですけどね。
小川「僕はけどね、料理よりもこの人には、もっともっと小説の腕をあげてほしいんですよ。ライバルとしては」
町子「そういうこと、もう言わんで…」
健次郎「小説って、そんな…おなごがそんなもん褒められてもしゃあないがな。ねえ」
町子「え!?」
健次郎「そんなもんに赤目つって必死になっとったら、おなごのかわいげちゅうもんがなくなるやろ。女の役割忘れて、小説で褒めてもらうて…そりゃあ、どうかな~」
町子「ちょっと待ちなさいよ、おっさん!」
小川「は…花岡さん」
健次郎「おっ、何か反論ありますか?」
ここまで昨日の分。でも昨日は「は…花岡さん」のセリフはなかったような?
町子「遊びのつもりで書いてるみたいな言い方すんのやめてください! 作家は男も女も命を削って書いてるんですよ!」
健次郎「は?」
町子「命を削って創作しているんですよ! 軽々しい口たたかんといてください!」
健次郎「どっちが軽々しい!」
小川「ちょっと先生もな…」
健次郎「あんたな、世の中に命懸けて削ってせなあかんような商売なんかないの! 命より大事なものはないの!」
町子「作家というのは、みんなそういうもんなんですよ」
健次郎「医者はね、命助けてなんぼや。自分の身、大事にせんような、そんなの作家だろうが何だろうが、そんなもんただのぼんくらや!」
町子「何で作家のこと、あんたが『ぼんくら』って言うんですか?」
小川「花岡さん!」
町子「あんた、関係ないでしょ!」
健次郎「ほらまた女のくせにすぐ手ぇ出す」
町子「あんた好きやね。さっきから何か言うたら『おなごのくせに』とか『女のくせに』とか。あなた、頭古いですね。進化してないんですか。進化できないんやったらね、恐竜と同じように滅びてしまいなさいよ!」
健次郎「誰が恐竜やねん!」
町子「あんたやないの!」
健次郎「どこに尻尾がついとる? 私の」
町子「滅びなさいよ! 頭が古いんやから!」
健次郎「失礼なこと…」
小川「先生も何、子供みたいなことを!」
町子「あんたが作家をバカにしたからでしょ!」
小川「今日はもうな失礼しましょ!」
激しく言い合う健次郎と町子。
小川「失礼…失礼しましょ!」
健次郎を引っ張り外へ連れ出そうとする。
町子「逃げるんですか! ほんまにひきょうもん! 逃げんの? あんた!」
健次郎「あ~、分かった! ほな、この続きはまたこの次や!」
町子「あ~、望むとこやね」
小川「花岡さん、やめて、もう!」
町子も玄関までついていき反論。
町子「何か言うたら『女のくせに』とかほんまに…。何で作家バカにせなあかんのですか?」
健次郎「あんたが命のこと軽々しく言うからやろが!」
小川「とにかくごちそうさまでした! 先生!」
町子「あなたは違うんですか? 恐竜!」
健次郎「誰が恐竜や!」
町子「あんたが恐竜や! 滅びたらええねん、あんたみたいの! ほんまに気分の悪い。何考えてんねんな。『おなごが小説うまなったってしかたがない』って、あんたに言われたないよ。人のこと考えんと、ほんまに。訳分らんくせにベラベラベラベラしゃべって、ほんまに気分の悪い! ムッカムカしてきた、私!」
「あんたが恐竜や!」が昨日流れたミニ予告だね。あ~、面白い。
佐々木商店
怒っている町子の似顔絵を伝票に書いている雪子。町子は淡々と仕事をこなす。
吉田「平井チン、これ売っといで」
平井「えっ、何すか? また灰皿ですか?」
吉田「アホ! どんなもんでも売ってくるのが商売人いうもんやろ」
平井「もう! じゃあ、妹の嫁入りということでお願いしますよ、もう!」
妹の嫁入りとは姉と相談「ネエと相談」値段次第ということ。
平井「こんなもん、鬼の死骸ですやん、こんなん!」
鬼の死骸とは引き取り手がないの意味。大阪独特のシャレ言葉です。
吉田「生意気言うてんやあらへんで! こんなやったらあかんやろが! ほらほら、はよ行っといなはれ!」
平井「はいはいはい!」
島野「暑~! 暑い!」
吉田「あ~、島やん。富岡商店の方は回ってくれたんか?」
島野「あ~、桶屋の前垂れですわ! しもた」
吉田「お前はほんまに八月の槍や」
島野「すいません。今日、必ず集金しますんで」
吉田「あ~、頼むね、もう」
伝票に、妹の嫁入り、鬼の死がい、桶屋の前垂れ、八月の槍とメモしている雪子。
キヨ「『桶屋の前垂れ』は輪が擦れたで『忘れた』。『八月の槍』は『ぼんやり』のこと。ほんまにもうきょうびの若い子はそんなことも知らんねんな。もう、ちゃっちゃと覚えや」
吉田「平井チン!」
平井「あ~、はい!」
吉田「何グズグズしてまんねんな! はよ、行っといなはれ!」
平井「行ってきます!」
吉田「花岡君、お茶でも入れてくれへんか」
町子「(にらみつけ)私、今、ものすごう忙しいんですけど」
吉田「あ…そやな」
キヨにすがる吉田。「今日はまた更に機嫌悪いがな」
キヨ「朝からああだすわ」
吉田「やっぱり大東工業か?」
いつもの喫茶店
みすずも加代子も笑っている。
みすず「池内先生の代わりにおっさん!」
加代子「しかも大げんか!」
町子「『女は小説うもうてもしゃあない』て化石みたいなおっさんやがな」
加代子「そやけど、その藤木さんて、亡くなりはった藤木さんて並木賞候補になった藤木澄子さんでしょ?」
みすず「私、何度かお会いしてたからお葬式行かせてもろうてんけど若いのに急やったからびっくりした。確か小さいお子さんがいはったわ。そやけど、あのご主人さん、そんなに横暴に見えへんかったけどな」
町子「そんな席ではね、ライオンかて殊勝になるんですって」
加代子「池内幸三とのデートは幻になりにけりやね」
みすず「あっ、で、卒業制作書けたん?」
町子「ううん」
加代子「初めてやね、町子のこんな難産」
町子「私、やっぱり今日教室休むわ。うちで書くし。ほな…」
加代子にお金を渡して帰っていく。2人とも心配そう。
町子の自宅前。純子の長屋みたいなセットじゃなく後ろにビルとかが見えて本物? 町子が帰ると、孝子と信夫がご飯を食べながら迎えた。
町子「あんた、まだいてたの?」
孝子「お待ちしてました。お仕事、ご苦労さまです」
町子「愛想ようしてもお小遣いあげませんからね」
孝子「ケチやね」
町子は台所に行き、和代に空のお弁当箱と給料袋を渡す。
町子「お母ちゃん、今月分です」
和代「あ…おおきに。ご苦労さまです。あっ、懸賞小説の通知、来てたで」
町子「ほんま? いや~、うれしい!」
孝子「小説のお金ってだいぶ稼いでんの?」
町子「う~ん…ここ1年分合わせて、やっとお給料1ヶ月分くらいかな」
孝子「え!? それだけ? 徹夜して書いたりしてんのにそれだけ?」
信夫「そりゃ、プロやあらへんねんから。なあ」
孝子「何や…」
町子「えらい悪うございましたね」
ごはんは後で。信夫から「受かってるとええな」。
返却原稿とともに紙が入っていた。
花岡町子様
厳正なる審査の結果、残念ながら貴殿の作品「恋の五月雨、午前零時」は今回落選となりました。今後とも、弊社をご愛顧下さいますようお願い致します。
昭和40年8月22日
株式会社文芸優社編集部
第六回「文芸優社」新人賞
担当 菊池章一
町子「3連敗…」
町子はこのところ、自分の小説が評価されないことに悩んでいました。焦っても思うようにいいものが書けない。いわゆるスランプです。
第三回新人文学賞、第5回月島文芸、今回の封筒がずらりと並ぶ。原稿用紙にも3行しか書けていない。
佐々木商店
吉田「誰や? この請求書の宛先、書いたんは? 『名古屋県名古屋市』て!」
雪子「えっ!? 間違うてます?」
吉田「早乙女君…」
町子「誰や、誰や? 小学校、卒業さしたんは」と言いつつ、帰りの挨拶をする町子。
吉田「花岡君、直しといて」
町子「!?」
夜、自室で原稿に向かう。
町子「はあ…。…と。はあ…」
健次郎の「女の役割忘れて小説で褒めてもらうて、そりゃあ、どうかな~?」を思い出す。気を取り直して原稿に向かおうとするが、鉛筆の芯が折れた。
町子「ああ、もう、会社辞めたい!」
和代から徳永さんという人から電話だと言われるが「『いてへん』て言うて!」と居留守を使う。
徳永醫院
健次郎「そうですか。あ~、いえいえ、別にその急ぎというわけではないんで…。はい。あの~、そしたらまた電話さしてもらいますわ。はい。ほな、どうも。ごめんください」
娘の由利子から「明日、算数の問題集買うから、お金」と言われ、80円を手渡す。清志という男の子はズボンが破けてたと報告に来た。由利子は汚らしいと繕うのを嫌がり、診察室にはさらに隆、登が入ってきて、「兄ちゃんのパンツ丸見え!」と清志をからかう。子だくさん。健次郎の父・喜八郎から呼び出された。小さな女の子がもう一人。
考え事をしている町子に再び電話。
町子「しつこいな! もう『いてへん』て言うて!」
和代「池内さんから!」
町子「お母ちゃん」態度が急変し、いそいそ下におりていく。
大阪・中之島
池内「花岡さん、ラジオドラマの脚本、書きませんか?」
町子「ラジオドラマですか?」
池内「ええ。週に1本、30分のレギュラー始めたんですけど、作家が足りなくてね。局の人に誰か紹介してくれって言われたんです」
町子「私なんかでお役に立てますでしょうか?」
池内「僕ね、小川君から花岡さんの作品、ず~っと見せてもろてたんです。筆力のある人やな思てました。花岡さんやったら面白いもん書けるんちゃうかな」
町子「そんなうれしいこと言うてくれはんの池内先生だけですわ」
池内「どないしはったんですか?」
町子「今、正直ね、何を書いたらええのか分からんようになってしもうてるんです。一つも面白うないしね」
池内「物書きやったら誰でも経験することですよ」
町子「そんなもんなんでしょうか?」
池内「あ~、せや! 徳永先生とけんかしたんやて?」
町子「アハハハ。もう、失礼なんですよ! あの人、女の小説家のことバカにしてるんですよ! おっさんが!」
池内「おっさん?」
町子「カモカの顔して」
池内「カモカ?」
町子「ちっちゃい時、よう言われませんでした? 『そんな悪さばかりしてたら、しまいにはカモカが来るで~!』て」
池内「ああ、『噛んでやろうか噛もうか』の『カモカ』ね」
町子「本の挿絵で見た、あのカモカそっくりでしょ? あの人」
池内「うまいこと言うなあ。カモカか。そら、ええわ」
町子「ちっちゃい時、よう言われました。お父ちゃんに怒られて。『カモカモ カモカモ カモカモカ~』言うて」
池内「お父さんに? へえ~。花岡さんて生まれどこですか?」
町子「福島区です。うち、写真館やったんです」
池内「へえ、写真館!」
町子「そうそう、ちょうどこれに沿うて、ちょっと行った北側。堂島大橋と福島西通りの真ん中辺りです。祖父が建てた写真館があった場所。家の2階がスタジオ。当時、写場(しゃじょう)言うてたんですけどもね。祖父も父も朝から晩までじ~っとカメラのぞいて忙しそうに働いてました。私が生まれ育った家、花岡写真館がそこにあったんです」
川の流れから
すごい大掛かりなセットだなあ。
幼い頃の家族のことを語っていた町子に当時の懐かしい思い出がよみがえりました。
花岡寫眞館の看板前には忙しそうに働く人と、友達と帰ってきた10歳の町子。
ミニ予告は10歳の町子の「あいびきや」。
カモカで検索しても田辺聖子さん絡みのものしか出ないね。元ネタが知りたかった。
子供を寝かしつける時に噛みに来る妖怪?らしいです。子供時代から始まるんじゃなく大人になったヒロインの回想形式というのも面白いなあ。