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【連続テレビ小説】マー姉ちゃん (143)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

新婚のヨウ子(早川里美)たちの生活が気になるマリ子(熊谷真実)たち。だが、当のヨウ子は正史(湯沢紀保)の面白い行動を楽しんでいる様子。そんな中、不眠症や胃けいれんが続いていたマチ子(田中裕子)は、自分の才能に疑心暗鬼になり、漫画を休みたいと言い出す。マリ子は早速毎朝新聞に出向き、休載を申し出る。紙やペンや本など、すべて燃やして漫画家廃業宣言したマチ子だが、磯野家一同はどこか晴れ晴れとしていて…。

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結婚の挨拶回りが終わると島村家のあるじは、いよいよ新居からご出勤です。

 

正史「ああ~、いい朝ですね。それじゃあ行ってきます」

ヨウ子「行ってらっしゃい」

正史「はい。行ってきます」

ヨウ子「行ってらっしゃい」

正史「行ってきます」

ヨウ子「行ってらっしゃい」

 

玄関先での出来事を窓から見ているマリ子とマチ子。う~む。

 

正史「あっ、音楽会の切符、今日、買ってきますから。行ってきます」

ヨウ子「行ってらっしゃい」

正史「なるべく早く帰ります」

ヨウ子「ええ」

正史「ケーキ、買ってきましょうか?」

ヨウ子「ええ。あっ!」

 

正史は後ろ向きに手を振りながら歩いているので、磯野家に自転車でやって来た植辰さんにぶつかりそうになる。

植辰「おお~…おお~…危ねえ!」

 

正史「じゃあ、行ってきま~す!」

ヨウ子「行ってらっしゃい」

正史「ヨウ子さ~ん、行ってきま~す!」

 

ダイニングに戻ったマリ子とマチ子。はるは新聞を見ている。

ヨウ子「おはようございます」

マチ子・はる「おはよう」

マリ子「ねえねえ、今朝のメニュー何だった?」

マチ子「マー姉ちゃん

マリ子「駄目! 昨日はマッちゃんが先に聞いてしまったんですもの」

 

はる「何でしょうね、2人とも。ヨウ子たちが何を食べようと関係のないことでしょう?」

マチ子「だって」

マリ子「そう、作家根性としては興味があるわよね、マッちゃんだって」

マチ子「そう、そのとおり!」

 

ヨウ子「コーヒーでしょう、目玉焼きでしょう、パンを2枚、一枚はバターのまま、一枚はイチゴのジャム」

はる「あら、お野菜はお付けしなかったの?」

マリ子「ほら、お母様だって」

はる「だってね、働いていらっしゃる方には栄養の釣り合いということを考えて差し上げないとね」

 

ヨウ子「付けました。バナナのサラダ」

マリ子「バナナのサラダ!?」

マチ子「変なの」

ヨウ子「あら、部屋に置いてあったんですもの。それに正史さんがそれを欲しいっておっしゃったの」

マチ子「そうか。そういうことじゃしかたないわね」

マリ子「そう。これ以上は内政干渉よ」

 

はる「と言いながら、当分、切りがなさそうだから私は出かけますよ」

マリ子「あら、どこへ?」

はる「畑」

娘たちに「行ってらっしゃい」と言われ、はるは退室。はるは意外と干渉しないというか関心が教会とか外に向いてるんだよね。

 

マリ子「ねえねえ、マリ子、お茶飲む?」

ヨウ子「あっ、頂きます」

マチ子「あっ、じゃあ、私がやってあげる」

マリ子「まあ、張り切っちゃって」

 

ヨウ子「いいんですか? マッちゃん姉ちゃま」

マチ子「あら、何が?」

ヨウ子「何がってここ2~3日、早くお起きになるし、お仕事のペースだって狂ってるんじゃないの?」

マチ子「いいの、いいのよ」

マリ子「そうそうそう。ヨウ子が気にすることないのよ」

ヨウ子「そうですか」

マチ子「でも、あんまりあっさり言われると何だか同情されてない子みたいで、かわいそうね、私」

マリ子「ぜいたく、ぜいたく」

マリ子「了解、了解」笑い

 

マリ子「ねえ、私、全然、気が付かなかったけど、彼、今朝も5時起き?」

マチ子「私、ちゃんと気が付いてたわよ」

マリ子「そう、マッちゃんはね、作家でいらっしゃるから敏感なのよね」

マチ子「あら経営者だって敏感じゃないといけないんじゃないの?」

マリ子「ううん、いいのいいの。売れ行きに敏感でさえあれば、あとは全く神経遣う必要なし。寝る時は寝ることに専心すべきよね」

 

マチ子「あ~、お母様の娘なのに、ちっとも分かち合ってくれないんだもん、私の不眠症

ヨウ子「でもよかった」

マチ子「何が?」

ヨウ子「マッちゃん姉ちゃまの不眠症がまた始まってたら今朝はまた一騒動起きるところだったわ」

 

マリ子「あら、また何か始まったの?」

ヨウ子「ううん、始まるところだったの。チリンと目覚ましのベルが鳴ったような気がしたからね。あっ、5時なんだな、また新聞取りにいらっしゃるんだなって思ったの」

マチ子「うん」

ヨウ子「仕事だから君は起きなくていいってこんこんと講義されていたでしょう。だから、私、そのままうとうとし始めたのね」

マリ子「そしたら?」

 

ヨウ子「ス~ッてどこからか冷たい風が入ってきたのよ」

マリ子「ちょっとやめてよ、朝っぱらから…」

マチ子「なんて声出すのよ、まだ話終わってないんだってば」

マリ子「ああ…それで?」

 

ヨウ子「でね、正史さんの出て行ったのを見て本当に泥棒でも入ったのかと思って…」

目を覚ましたヨウ子がふと窓を見ると正史が窓から身を乗り出していた。

ヨウ子「どうなさったの? 正史さん!」

正史「うん、また、お義姉さんたちを起こすといけないから庭を回って新聞を取ってこようかと思ってね」

ヨウ子「何をおっしゃるのよ! もうやめてください!」

 

マリ子「まあ~!」

マチ子「それで?」

ヨウ子「もちろんやめていただいたわ。だって植え込みの中、ゴソゴソと歩いたら、またマッちゃん姉ちゃまに泥棒って叫ばれるに決まってますもの」

マチ子「そりゃあそうよ。だって5時ごろ誰かが玄関を開けたら、それは正史さんだって承知してるけど、わざわざ外回りなんかされてごらんなさいよ。混乱のもとじゃないの」

マリ子「だから、ヨウ子ちゃんがやめてもらったってそう言ってるじゃないの」

マチ子「あっ、そっか」

 

ヨウ子「でもね、明日は何が起こるかなって思うととっても楽しみ」

マリ子「まあ! 何でしょう、この子ったら。それが新妻の言う言葉かしら?」

ヨウ子「変?」

マリ子「変よ。旦那様のことはもっともっと気にかけてあげなくちゃ」

ヨウ子「だから、私、そうしてるのよ」

マリ子「ヨウ子ちゃん」

 

ヨウ子「だって正史さんがね、最初に楽しい夫婦になりましょうっておっしゃったの。だから私、積極的に楽しむのがそれに応える方法だと思って」

マリ子「あきれた…」

マチ子「まあ、私には口を挟む資格はないけど」

 

ヨウ子「でも、お姉様たちだって私の旦那様には楽しい人の方がいいっておっしゃったじゃない」

マリ子「だけど楽しすぎるんじゃないの?」

マチ子「およしなさいよ。それ以上言うと内政干渉よ」

マリ子「だって…」

マチ子「ううん。ヨウ子ちゃんが幸せなのが私たちにとっても一番の幸せなんですもん」

マリ子「そうか…それもそうよね。楽しいことはいいことです。うん」笑い

毎朝、こんな感じじゃ内政干渉どころじゃないなあ。

 

しかし、楽しすぎるというのも考えものです。反動が来るからです。

 

マチ子は窓からぼんやり外を眺め、机の前に座りため息をついた。

マリ子「マチ子、入っていい?」

マチ子「どうぞ」

マリ子「はい。またファンレターみたいよ。どうかしたの?」

マチ子「マー姉ちゃん、どう思う? 果たして私に漫画家としての才能が本当にあるのかしら?」

マリ子「さあ?」

 

マチ子のこの疑問、2年に1回ぐらいの周期で勃然として頭をもたげてくるのです。

 

マリ子「それ、昨日来たファンレターでしょう? 何か鋭い意見でも言ってきたの?」

マチ子「とんでもない。めちゃめちゃに褒めてくれてるのよ。『今日の「サザエさん」には哲学があります』って」

マリ子「へえ~、哲学がね~」

マチ子「マー姉ちゃん、哲学、感じた?」

マリ子「全然」

マチ子「おまけにね、深~い真理があるんだって」

マリ子「へえ~、大したことじゃないの。あっ、だからね、それは潜在的に作者マチ子に潜在的にそういうものがあったっていうことかもしれないわよ」

マチ子「だからって私は別に毎日自信満々で描いてるわけじゃないのよ」

マリ子「あっ、そう」

 

マチ子「これは探究すべきテーマだと思うの」

マリ子「なるほど。それで探究するとどうなるの?」

マチ子「私に本当に才能があるかないかはっきりすると思うわ。人間、惰性で生きてはいけないと思うの」

マリ子「なかなかいいこと言うじゃないの」

 

マチ子「だったらお願いします」

マリ子「何が?」

マチ子「この問題が解決するまで『サザエさん』を休みたいの。ねえ、分かるでしょ? 私がこういう時にあれもこれも同時にできるほど器用じゃないってこと」

マリ子「分かるわよ。30年もつきあってるんですもの」

 

マチ子「あらそう」

マリ子「じゃあ行ってくるわね」

マチ子「どこへ?」

マリ子「毎朝よ。休むんだったら休むって言わないと向こうにも悪いでしょ? はい」

マリ子はにっこりとマチ子に笑いかけると部屋を出て行った。

 

毎度申し上げますようにこうと思い立ったらすぐに実行に移すのがこの一家の特徴でして…

 

玄関でマリ子と天海が鉢合わせ。

朝男「おう、お帰りなさい」

マリ子「あら、天海さん」

朝男「何かいいことあったな? ウキウキしてるよ」

マリ子「ええ、おかげさまでマチ子が『サザエさん』をやめるんです」

朝男「ハハッ、そうかい、そいつはよかった。今、ちょうどこの刺身届けといたから後で祝宴だ。なっ?」

マリ子「はい、どうもありがとうございます。それじゃあ失礼します。ただいま~!」

 

あ、もう出かけて帰ってきたマリ子と天海さんが鉢合わせしたのか。今から出かけようとしたマリ子だと思ってた。天海さんがお帰りと言ってるだろ!

朝男「おい! 何だと!? 『サザエさん』やめるだと!?」とノリツッコミ。

 

磯野家ダイニング

マチ子「ねえ、それで毎朝は何だって?」

マリ子「うん、まずやめさせてくださいってお願いしたの。そしたらやっぱり毎朝さんともなると大物ね。『やめるなんてよしましょう。まずゆっくり休ませてあげてください』ですって」

マチ子「万歳!」

はる「まあ、何でしょう」

ヨウ子「よかったこと、マッちゃん姉ちゃま」

 

お琴「おめでとうございます。『サザエさん』が見られなくなるのはちょっぴりさみしいけれども、でもゆっくりお休みになったらいいですよね~」

道子「本当! 私もマチ子先生の案を考え込んでいらっしゃる時のお顔見るのがつらくって」

植辰「よ~し! よし、分かった! それじゃあね、明日っからね、俺は先生を俺の弟子にしてやるよ」

一同「わあ~!」

植辰「同じ握るんだったら鉛筆よりはな、ハサミ握ってさ、お天道さんの下でチョキンチョキンと植木を相手にした方が気持ちがいいよ」

 

はる「そうですよね。それだったら休むなんて中途半端で気持ちが悪いわね」

マリ子「そうよ。もう、漫画なんてすっぱりやめちゃいなさいよ」

ヨウ子「そうよ! それがいいわよ、マッちゃん姉ちゃま!」

賛同の声

 

人間、反対が一つもないとかえって不安になってくるものです。

 

マチ子の不安そうな顔がいい。

マチ子「でもさ、あの…私が漫画やめたら姉妹出版はどうなるの?」

マリ子「ああ、あんなものはいつやめても構いません」

マチ子「あんなもの!?」

マリ子「そうよ。いざとなったらこのマー姉ちゃんが屋台引いてでもしっかりみんなを食べさせてあげますから」

一同「わあ~!」

 

植辰「ねっ! 畑だってばっちりあるしさ。ええ? 戦争に負けたことを考えればね恐ろしいことなんか一つもありませんよ。矢でも鉄砲でも持ってこいってんだよ!」

歓声が起こる。実感こもってるなあ。

マチ子「そうね…そうよね!」

マリ子「そうですとも!」

 

かくして…紙はもちろんペン、筆、物差し、ハケ、そして参考書の類いも全てかくのごとき運命をたどります。

 

庭で紙などを燃やす。フジテレビの「長谷川町子物語」にも漫画の道具を燃やすシーンはあったけど、今日みたいな明るいシーンじゃなかったので、表現の違いにびっくり。ドラマ自体「マー姉ちゃん」みたいな明るさはなかったけどね。

 

「類は友を呼ぶ」と申しましょうか。この家族たるや誰一人いさめる者も嘆く者もいないというのが不思議なことです。

 

朝男「ほら見ろ、お千代!」

千代「あら、本当だ!」

朝男「俺が言ったとおりだろ!」

千代「まあ…。でもまあまあ胃のことを考えたらばね、連載漫画なんてあんまりいいもんじゃありませんもの。そうでしょう? お嬢様」

マチ子「ええ、そうね。何だか胃がス~ッと軽くなっちゃった」

千代「本当に」

 

マリ子「よかった、よかった。これで我が家は万々歳ね」

千代「はいはい、そうですとも! あんた、ほら!」

マリ子「あ~、よかったわね」

千代「気持ちがよかですよ」

天海だけは腕組みして複雑な表情を浮かべる。

 

磯野家応接室

正史「すいません、こんな遅くに」

マリ子「構いませんわ。何でしょう? 私に話って」

正史「ヨウ子から聞きました。マチ子お義姉さん、漫画家を廃業したんですって?」

マリ子「ええ」

正史「どうしてですか? 何かトラブルでも…」

 

マリ子「いいえ、そんなものありませんわ」

正史「でしたら…?」

マリ子「マチ子がやめたいって言うから」

正史「理由はそれだけですか?」

マリ子「ええ」

正史「本当に?」

 

マリ子「だって『命あっての物種』っていうじゃありませんか」

正史「はあ」

マリ子「大体、あの子は神経質なのよ。それが神経すり減らして漫画を描いてる姿は見ている方がつらいっていうのが本当に理由かもしれないわね」

正史「なるほど…」

マリ子「いいの。本当に気にしないでちょうだい。追い詰めるとすぐに胃けいれんを起こすでしょう。それから解放されるだけでもマチ子の体にとってどんなにいいことか」

正史「それは確かにそうですね」

 

マリ子「そうでしょう。だから、あなたも気にしていると今度はあなたの方が胃が痛くなってしまうわ。アハッ、大丈夫よ。本当に平気。私たち、今、インディアンみたいにウキウキしてるの!」

正史「エンディアン!?」

マリ子「ほら、西部劇でよくやるじゃない、のろしを上げてここにお化粧してね、『ホッホッホッ』って。あれみたいな心境なの! アハハハッ!」

正史「なるほど…」

マリ子「うん、ねっ?」

正史「!?」

 

突如、マリ子、マチ子、ヨウ子、はるがインディアンの格好をして火を囲んで歩き回る。 

マリ子「ホッホッ! ヒヒヒッ! ホホホッ! ハハハッ!」

 

こういう考え方、生き方もあるのです。「明日を思い煩うことなかれ」。

 

微妙に尺余りでブルーバックの共演者紹介でつづく。原作に描かれたシーンをそのまま再現してるのかな?

ja.wikipedia.org

wikiによれば昭和26(1951)年4月16日から朝日新聞朝刊で連載が始まり、11/7~11/14に休載。昭和28(1953)年も1/16~3/31まで休載となっています。今日の回はこの辺の話なのかな。ヨウ子の結婚(昭和28年5月)と前後してるけど。

 

毎日、何かを生み出すのって苦しいだろうなと思います。家族がやめちゃえやめちゃえってなるのは分かる気がします。まあ、「サザエさん」の本が売れまくってるなら生活に心配もなさそうだけどな。