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【連続テレビ小説】マー姉ちゃん (132)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

実の娘のように一緒に暮らす道子(光丘真理)の将来を思い、磯野家へ託したいと三郷(山口崇)から手紙が届く。早速、北海道に迎えに行くはる(藤田弓子)。そんな中、復員した三吉(福田勝洋)は、一緒に、さよ(香川久美子)の実家にいるウメ(鈴木光枝)たちに会いに行って欲しいと言う。実家に向かったマリ子(熊谷真実)と三吉は、うつろな眼差しのウメと再会する。三吉は酒田の看板をもらい、店を立て直したいと言い…。

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磯野家に手紙が届いた。

 

手紙は北海道の三郷さんからでした。

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東京都世田谷区新町四丁目二十三番地

磯野はる様

 

三郷の手紙をマリ子が読む。

「北海道の新聞にも毎日『サザエさん』の続編が連載され、マリ子さん、マチ子さんお二人の目覚ましいご活躍にただただ驚きと喜びの声を上げるばかりです。それに引き換え、私の方は相変わらずの生活が続いておりますが、実は今日、思い切ってご厚情に甘え、お願いしたいことがあり筆を執りました」

 

はる「はい、何でしょうか?」

 

手紙の続き

「我々に与えられた開拓地はかなりの奥地です。いや、奥地であることは覚悟の上で別段それにくじけているわけではありませんが、問題は道子ちゃんのことです」

 

はる「はいはい」

 

手紙の続き

「まるで実の娘のように私の身の回りのことから農場の仕事まで全く苦にする様子も見せず、毎日明るく働いておりますが、それだけに時々これでいいのかと、ふっとそんな思いにとらわれることがあります。

私がいかに命を懸けてあの子の父たりえようと努力をしても母親になることだけは不可能です。彼女がやがて人の妻となり、人の子の親となる日のためには、思い切って彼女を手放すべきではないかと思う、この日このごろです。この開拓地は若い娘にとって過酷の一語に尽きましょう。

しかし、それ故にこそここで暮らした私との1年半に人間とは信じるべきものであるということだけは学び取ってくれたように思えます」

 

寒そうな家にいる三郷さん。渋いな。

 

はる「まあ、なんてすばらしいことなんでしょう」

マリ子「はい」

はる「お引き受けしましょうよ。三郷さんから道子ちゃんを私たちの所へ」

マリ子「はい」

はる「でもまあ、あなたたちを見ていて道子ちゃんを世間並みの娘さんに育てられるかどうか、お母様にはあんまり自信がないけれど…」

マリ子「まあ! それ、どういう意味ですの?」

はる「どんな意味だっていいじゃないの」

マリ子「はいはい」

 

はる「さて、それでは早速支度をしてちょうだい」

マリ子「支度って一体何の支度ですか?」

はる「もちろん北海道行きのですよ」

マリ子「お母様~!」

はる「早速北海道に行って私が引き取ってきますよ。三郷さんの手から道子ちゃんをね」

 

またまた出ました! ホームラン一本! かくして、はるが北海道へたって1週間後のことでした。

 

ヨウ子「わあ! 明日帰るですって!」

千代「どげんしたとですか?」

ヨウ子「お母様が明日帰ってらっしゃるのよ」

千代「まあまあ…」

マリ子「道子ちゃんも一緒だって」

 

そんな話をしていると、植辰さんがやってきた。

三吉「こんばんは! 三吉です!」

マリ子「三ちゃん!?」

 

慌てて玄関へ

マチ子も2階から降りてきた。「三ちゃん!」

三吉「成田三吉、おかげさまをもちまして、ただいま帰還してまいりました!」

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この回は冒頭が昭和14年の天海朝男の出征で、同じ回で昭和15年も過ぎ、昭和16年春に翌年兵役を控えた三吉が志願兵となった話までとなかなか濃い。新八郎のコネで行った料亭だったね。

 

マチ子「足はあるのね、三ちゃん!」

三吉「はあ、ちゃんとこのとおり」

マリ子「まあ…夢のようだわ…。本当によくご無事で」

三吉「はあ、皆さんもご無事で」

マチ子「ええ、無事ですとも! みんなピンピンしていますとも!」

植辰「ほら見ろ、言ったとおりだろ」

三吉「はあ」

 

千代「まあまあ、どうぞお上がりになってつかあっせ」

植辰「そうですか?」

マリ子「さあ、どうぞ」

マチ子「はい、三ちゃん」

 

座布団を用意するヨウ子。

植辰「おめえは今日はお客さんだからそこに…」

三吉「失礼します」

植辰「大丈夫ですか? どうもどうも。あれからね、私、あの日暮里の大将の店の前にね、私の名前を書いた立て札をね、立て直してきましたよ」

マリ子「まあ、おじさんが?」

 

植辰「ええ。ところがまあ憎たらしいじゃございませんか。ねえ。あれをまきの代わりにするらしいんですよ。だからこれが2日ともたしねえんだよね。今日も新しいの持っていったら、こいつがこんな格好して突っ立ってるじゃねえですか。ねえ。となりゃあ、やっぱり何つったって一番先にここへ引っ張ってこなきゃいけねえと思いましてね」

マリ子「もちろんよ、植辰さん。さすが、江戸っ子よ!」

植辰「アハハハハハッ! だいぶくたびれた江戸っ子ですがね」

マリ子「まあ!」

 

マチ子「でも…よく帰ってきてくれたわね、三ちゃん…。ううん、私は絶対に帰ってきてくれるって信じていたけれどね」

三吉「はい」少し伸びた坊主頭に無精ひげ。

マチ子「苦労したんでしょ? どこから復員してきたの?」

三吉「はい。しかし、その前にお願いがあります」

 

マリ子「いいわよ。私たちでできることだったら何でも言って」

三吉「はい。道々、旦那さんのこと、ご隠居さんのこと植辰の親方から伺ってきました」

マリ子「そう…」

三吉「それで明日にでも栃木まで自分と一緒に行ってはいただけませんでしょうか?」

マリ子「栃木?」

三吉「はい。おかみさんのお里なら2度、お使いに行ったことがあります。お願いです!」

 

マリ子「もちろんよ。でも…」

三吉「ご無事なのにもし出てこれないのなら、きっと何かの事情があるのだと思います。ですから行ってこの目で確かめて…」

マチ子「そのとおりですとも。私が行くわ、私が!」

三吉「いえ、マチ子さんにはお仕事が山のように来ていると植辰さんから伺いましたし」

マチ子「まあ…。余計なことをおっしゃるの、植辰さんは!」

植辰「はあ、どうもすいません」

マリ子「大丈夫、私が一緒に伺います。明日一番の汽車で行きましょう」

 

マリ子のセリフにかぶさるように汽笛の音がして、蒸気機関車の映像。「おしん」だとわりと車輪のアップとかだったけど、「マー姉ちゃん」の蒸気機関車の映像は結構パターンが多い気がする。背景も風景も合ってるのかな。

 

こうと決まればダッシュがいいのがさすがに親子。東京へ向かっているであろう春と入れ違いにマリ子は三吉とともに栃木の山村へと向かっておりました。

 

大造の妻・さよがマリ子の手を引いて、家へ。ウメは布団で寝ていた。

マリ子「おばあちゃま」

ウメは目を覚ました。

マリ子「おばあちゃま! 私です、磯野のマリ子です! おばあちゃま!」

マリ子と三吉は家の中へ入る。三吉は帽子を脱ぎ、カバンを置く。

 

さよ「おっ母さん、訪ねてきてくだすったんですよ! マリ子さんが東京から」

ウメ「東京から…?」

三吉「ご隠居さん、三吉です! 三吉がお迎えに上がりました!」

ウメ「三吉…? 三吉…」

三吉「はい! どんなにご案じ申し上げていたか分かりません!」

ウメ「三吉か! 三吉!」と抱きついたものの「違う…違う…そんなことあるもんか…」と信じようとしない。

 

マリ子「おばあちゃま!」

ウメ「違う…いいんだ、いいんだ…。これは夢なんだから夢に決まってんだ。なっ、さよさん? 夢だね?」

さよ「いいえ、夢なんかじゃありませんよ。本当にマリ子さんと三吉が東京から…」

ウメ「いいんだよ、いいんだよ! 私が昔のことばっかり言って愚痴こぼすから、あんたがこんな手の込んだ夢見せてくれたに決まってんだ。あんたは優しい嫁だ…本当に優しい…」

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おばあちゃまがさよさんに優しいだと…!?

 

さよ「何をおっしゃるんです。ほら! 夢なんかじゃないって言ってるでしょう?」

三吉「そうですとも! うそだと思ったら殴ってください! どなってください! ほら、このとおり、私は昔のまんまの三吉ですから」

ウメ「三吉…。本当だ…」

三吉「はい!」

ウメ「三吉だ…! お前、本当の三吉だ!」

三吉「はい!」

 

ウメは両手で三吉の顔を触り、ぺちぺちたたく。ちょっと痛そう。

ウメ「三吉…! 三吉…!」

三吉「ご隠居さん!」

マリ子もさよも涙。

 

さよ「ありがとうございました! 私までまるで夢のようだ」

マリ子「私も随分、お捜ししたんですよ」

さよ「はい。焼けたあと、一度、加津子さんの所にもお手紙出したんですけど、あんな時ですから着いたのかどうかお返事もなくて、とにかくこの実家までおっ母さんをお連れしたんですけどね、その後、福岡も全滅したというニュースでしたし」

マリ子「でも、私たちの一角だけは残りました。おばあちゃま、おばさんはご無事です」

 

ウメ「それじゃあ、加津子は…」

マリ子「はい!」

さよ「ああっ、おっ母さん!」

ウメ「マリ子さん、ありがとう…ありがとう…。加津子のことも気になったんだけど、このさよさんがね、一旦、酒田のうちへ嫁に来たんだから、おっ母さんの死に水は私が取るってそう言ってくれて…。だから、さよさんにおぶさっちまってね…」

さよ「何をおっしゃるんです。あの人がそれこそ命懸けで私たちをあの火の海から逃がしてくれたんですもの。私があの人の分までおっ母さんの世話をしなきゃどうするんです!」

美しき嫁姑!なーんて。

 

マリ子「それじゃあ、おじさんは…」

さよ「うっ、はい…」

三吉「クソッ!」

マリ子「三ちゃん…」

三吉「いいえ…どんなに旦那さんがご無念だったかと思うと、それが…」

 

ウメ「三吉」

三吉「はい! はい、三吉がいます! 三吉が帰ってきたんです。今度は私がご恩返しする番ですからね、ご隠居さん、おかみさん」

マリ子「三吉さん…」

三吉「お願いです、お嬢さんからも酒田燃料店の看板をこの三吉に下さるようお口添え願えませんでしょうか?」

マリ子「酒田さんの看板を?」

 

三吉「はい。裸一貫からのやり直しです。でも、その看板を頂ければ、三吉、もう一度酒田燃料店の店を構えて、ご隠居さんとおかみさんを東京へお迎えしたい。そう、道々考えてきたんです」

ウメ「三吉…三吉よ…!」

 

磯野家

はる「それで?」

マリ子「ええ、初めは今更、若い人の荷物になるのは嫌だとおばあちゃまもおっしゃってたんですけど、私も応援しましたし、何より三吉さんの熱意に負けて改めて三吉さんが迎えに来るのを待つということに」

はる「まあ、なんてすばらしいことなんでしょう。構いません。『サザエさん』の2巻目をもう2万でも3万でも増刷なさい」

マリ子「えっ?」

 

はる「もうけるんですよ、じゃんじゃんと」

マチ子「お母様」

はる「ええ。北海道でも『サザエさん』の人気は大したもんでしたし、帰りの汽車の中でもゲラゲラ笑いながら2巻目を回し読みする人たちの姿をお母様はちゃんとこの目で見てきましたよ。ねっ、道子ちゃん?」

道子「はい」

今までずっと道子が見えないカメラアングルだったのに、道子はヨウ子の隣に座っていた。前より髪も伸びている。

 

マリ子「それにしたって…」

はる「それもこれもありませんよ。その足でおばあちゃまをお連れできなかったのは三吉さんにお店がなかったからでしょう?」

マリ子「ええ」

はる「だったら貸してさしあげるんですよ、もうけたお金を。それでバラックでも何でも住む所を作って、そして三吉さんのお仕事が軌道に乗りさえすれば、それだけ早くおばあちゃまに来ていただけるという計算ではありませんか」

 

マチ子「本当だわ。お母様って意外と頭がおよろしいんですね」

はる「『意外』だけは余計ですよ。要は熱意です、誠意です」

マチ子「はい!」

 

ヨウ子「ご覧のとおりの家族なのよ。めんくらわないで仲よくやっていきましょうね」

道子「はい! 三郷のおじ様からいろいろ伺っていますので大丈夫です」

ヨウ子「まあ、おじ様は一体何て?」

道子「はい、『頑張れ』って言ってくださいました。おじ様はいつも私に一番いい方法を考えてくださいました。ですから、今度もおじ様のその気持ちに応えるように一生懸命働きます。どうかよろしくお願いいたします」

 

マチ子「いや、働くって道子ちゃん…」

道子「だって、私、東京見物に来たんじゃないんですもの!」

ヨウ子「あら、でも…」

はる「ええ、私だってね初めからそのつもりで迎えに行ったわけではないんですけどね、道中、道子ちゃんともいろいろと話し合ってきたんですよ。道子ちゃんにはこれからこのうちでお手伝いさんとして働いてもらいます」

千代「えっ!?」

 

はる「だってこの若さと元気とで働かない方が間違っとるでしょう?」

千代「あ…それだったら、こんうちはどげんするとですか?」

道子「いいえ! 分からないことだらけです。一生懸命覚えますからどうかよろしく教えてください。お願いいたします!」

マチ子「しっかり、お千代先生!」

 

マリ子「そうよ、今日からお千代ねえやを道子ちゃんの教育係に任命いたします」

道子「どうぞしっかりと教えてください! お願いいたします!」

千代「あ…あの、こちらこそですたい」

マチ子「嫌だわ、お千代ねえやの方がずっとあがってしまってるじゃないの」

千代「あれ~…」

 

さてこの年、一体どんな年になるかと思いましたが、物事は一つ一つ進んでいくもののようでした。

 

今日も濃かったな。燃料店なら昭和54年の「3年B組金八先生」の第1シリーズにも出てくるだからまだまだ大丈夫。前田吟さんのガハハハッと豪快な江戸っ子っぷりもいいけど、落語家さん的な江戸弁の猫八さんの言葉もいいなあ。