公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
風呂に入り、見違えるほど可憐な少女になった道子(光丘真理)。空き缶に入れていた父の遺骨を、綺麗ななつめに入れ替えたらと差し出すマリ子(熊谷真実)たち。三郷(山口崇)が満州で、友人でもない父をおぶって3日も歩いてくれたと話す道子。翌日、百地の海を眺めて決心した三郷は、静かに満州での悲劇を語り出す。異郷で死んだ自分の家族への、せめてもの罪滅ぼしをするため、道子の父の遺骨を故郷北海道に納めると言い…。
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磯野家
マリ子「これはね、なつめといって本当はお抹茶を入れるお道具なの」
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道子「はい」
マリ子「あなたには今日まで肌身離さず持っていらして思い出も多いと思うのよ。でもこうしてお父様も帰っていらっしゃれたんだし、あの空き缶からこのなつめに移っていただいたらどうかしら?」
道子「はい」
はる「いいえ。なにも無理にとは言いませんよ。ただもしよかったら使っていただけたら、そう思っただけなのよ」
道子「ありがとうございます。頂かせていただきます」
はる「はい」
マリ子「大変だったのね、本当に…」
道子「はい。でも…」
マリ子「いいのよ。胸に詰まってることは全部お話しておしまいなさい。もうあなたはうちに来たんですから」
道子「はい」
マチ子「でも、そうは言っても何から話していいか分からないわよね」
道子「はい…。いいえ! 私、おじさんに感謝しています。本当に感謝しています。あのおじさんがいなかったら、私はとても生きては日本に帰ってこれなかったと思います。私の髪…こんなふうに切ってくれたのもおじさんです。そうでなかったら、とても無事では済まされない時が何度もありました。でも、おじさんは本当に命懸けで私のことを守ってくれました」
マチ子「じゃあ、三郷さんとお父様はお友達だったの?」
道子「いいえ、違います」
はる「まあ」
道子「父がもう歩けなくなった時にあのおじさんに会ったんです。それで私のことを日本に連れてってくれって、父がおじさんに頼んだんです。そしたらおじさんだってフラフラだったのに3日間も…動けない父のことをおぶって歩いてくれました。でも…寒くって…食べ物もなくって…小さな村の手前で、とうとう父は…し…し…」
はる「ごめんなさいね。つらいことを思い出させて悪かったわね」
道子「おば様…」
はるは道子に近づき、道子ははるにすがって泣いた。
一緒に満州へ渡った家族のことをついにひと言も聞かなかったマリ子たちの思いやりを胸に智正は何としても寝つけない帰国第一夜を送ろうとしていました。
夕空のもと、年老いて腰の曲がったトセと妻のミチと男の子が歩いてきて、男の子が手を振る。
翌日、マリ子が百道の浜を歩いていると砂浜に一人佇む三郷がいた。
この海の向こうで全てを失ってしまった三郷智正。彼の胸に今、去来しているものはマリ子にも痛いほど分かっておりました。
合成丸出しだ~。三郷さんはロケに来れず、マリ子だけは本当にその場で撮影したというのが丸わかり。背中越しはいいのよ、まだ。
三郷が磯野家に戻ると、服が洗濯して干してあった。
はる「まあ、お帰りなさいませ」
智正「ああ、どうも申し訳ありません」
はる「いいえ。それはもうあきれるほどに汚れておりましたんですよ」
智正「恐縮です」
はる「はい。ですからきれいさっぱりと洗い落としておきました。きれいさっぱりとね」
智正「はい…あの道子ちゃんは?」
はる「もう先にお食事を済ましてヨウ子と一緒にお買い物に出ております」
智正「そうですか。それはすいません。海辺の散歩があまりにも気持ちよかったものですからつい時間がたつのを忘れてしまいました」
はる「それでは気持ちよくおなかもおすきになったでしょう? さあどうぞ」
智正「はあ、すいません」
はるはマリ子を呼んだ。
マリ子「もう、お支度できていますから」
智正「どうも申し訳ありません。あの、これ…お言葉に甘えてお借りいたしました」
はる「やっぱり和服をお召しになると日本に帰ってきたなっていう気分になりますでしょう?」
智正「ああ~、それはもう」
マリ子「ですからいつ新八郎さんがお帰りになってもいいように縫っておいたものなんです」
智正「そうだったんですか」一瞬の三郷さんの表情がいい!
マリ子「さあ、どうぞ、こちらからお上がりになって」
マチ子はサザエさんに引き揚げのことを描いた。
1コマ目
サザエ「ごくろうさまでした」
かりあげ男性「ありがとうございます」
2コマ目
かりあげの男性に見えた人は女性で子供から「かあちゃん」と呼びかけられていた。
おばさん「きけんだったのでだんそうしてきました」
3コマ目
子供「とうちゃん、おんぶ」
おばさん(に見える人)「ボクはようふくがないのでこんなかっこうで…」
4コマ目
帰って行く家族を驚いた表情で見送るサザエさん
真剣な表情で描き上げるマチ子。これもやっぱり1979年に描き直したものなんだろうなあ。ほんとにすごい。
客間
智正「どうもごちそうさまでした」
はる「お粗末さまでございました」
智正「こんなにごやっかいになるつもりはなかったんですが…」
マリ子「何をおっしゃいますの。ご無事なお顔を見てずっと心配していたことが一つ消えて私たちどんなにうれしいか」
智正「ありがとう、マリ子さん。これで私もやり直す決心がつきました。あの服が乾き次第、出発させていただきます」
マリ子「出発って一体どこへ?」
智正「はい、北海道へ渡ります」
はる「北海道?」
智正「はい」
マリ子「待って。一体北海道へ何をしに?」
智正「はい、北海道開拓団の話がありましたので、それに応募することにしました」
マリ子「駄目です、そんな! 北海道といったって知り合いも何もないじゃありませんか!」
はる「そうですとも。取り消していらっしゃいませよ、すぐ。いえ、あとでマリ子にやらせますわ」
智正「しかし…」
はる「一体何を遠慮していらっしゃるんですか。幸いこのうちも焼け残りましたし、道子さんとお二人のお部屋ぐらいはございますのよ。ですから当分ここでゆっくりなすって、お疲れが取れたところでまた新しいお仕事をお探しになったらいいじゃありませんか」
マリ子「お願いします。そうしてください、是非」
智正「お気持ちはうれしいんですが、それはできません」
マリ子「三郷さん…」
智正「私はご覧のとおり…のめのめと一人生き残って帰ってまいりました。満州のいてついた土になってしまった母や妻や子供たちのことを考えますと私…」
マリ子「どうぞもうそのことをおっしゃらないで…」
智正「聞いてください。でも決して捨ててきたわけじゃないんです。あれは終戦のすぐあとでした。私たちの開拓団は男だけが駆り出されて、その日のうちに男女別々にされてしまったんです。お互いに行方も知れないまま三月(みつき)ほど過ぎてしまいました。年が明けたら順々に帰国できる、そんなうわさも流れてきました。でも一方では無残に死んでいった多くの人たちのうわさも耳に入ってきたんです。私、思い切って収容所を脱走いたしました」
マリ子「まあ…」
智正「家内たちのいる所までは百数十キロの道のりでした。ようやくたどりついたもののその村では誤った情報から全員集団自殺していたんです。私とても一人生き残っておめおめと帰国する気力など毛頭ありませんでした。その時なんですよ、道子ちゃん親子に出会ったのは」
はる「そうだったんですか」
智正「父親からあの子を託されなかったら私こうして皆様にお会いできることは二度となかったと思います。あの子だけはどんなことがあっても…どうしても日本へ連れて帰らなければならない。それがむなしく異郷で死んでいった母や妻や子供たちへのせめてもの償いだと私、決心したんです」
はる「よう帰ってくださいました。よう無事で連れてきてくださいましたわ」
智正「ありがとうございます」
智正「道子ちゃんのお父さん、北海道が出身でしてね、せめてそこへお骨を納めてやりたいと思ってるんですよ」
マリ子「でもそれが終わったら、なにもあちらにお住みになることはないんでしょう?」
智正「はい。でも決めてしまったことなんです」
はる「分かりました。それではお引き止めいたしませんわ。でも決してご無理はなさいませんように」
マリ子「ここにいつも私たちがいること道子ちゃんのためにも忘れないでくださいね」
智正「ありがとう、マリ子さん、奥さん」
はる「どんな所にいらしてもお体だけはお気を付けくださいましね」
智正「はい」
マリ子は涙を流した。
ヨウ子「ごめんなさい。すっかり荷物を持たせてしまって」
道子「いいえ。ほとんど私のものばっかり買っていただいたんですもの」
ヨウ子「でも気に入ったのがあってよかったわね」
道子「はい!」
ヨウ子たちは元気よく家に入っていった。
テーブルの上に買ったものを並べる道子。
智正「へえ~、よかったじゃないか、道子ちゃん」
道子「はい! クリームも買っていただきました」
智正「クリームも?」
道子「はい! これ」
マチ子「じゃあ、せっせとつけてどんどんきれいになることね」
道子「はい! あっ、でもでも…」照れている。
道子が本来の少女らしさを取り戻したことは三郷さんにとってどれほどの喜びだったでしょう。そしてその喜びは、そのままマリ子たちにも分かち合える喜びであり、感動だったのです。
純子の父、陽一郎は先に引き揚げてきた人から陽一郎がいた班は集団自決したと言われ、絶望したんだよねえ。
しかし、雄太に助けられて何とか生き残っていた。
サザエさんの謎本で読んだのか、今日、劇中に出てきたサザエさんのネタ、見たことある。三郷さん、今度こそ幸せになってほしい。