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【連続テレビ小説】マー姉ちゃん (89)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

疎開準備が終わった夜。食べ物に不自由している磯野家を福岡へ連れ帰るために、一平(益田喜頓)と千代(二木てるみ)が談判にきた。戸惑うマリ子(熊谷真実)たちだったが、二人の磯野家を思う気持ちと、一平とヨウ子(早川里美)の再会を見て、福岡行きを決意。時を同じく、岩村鹿児島市長になったため、鹿児島に移り住むと言う。そこへ、田河(愛川欽也)たちが別れの挨拶にやってきて、漫画はどこでだって描けると言い…。

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疎開準備が終わった夜、はるばると福岡から一平老人とお千代が不意に上京してきたのです。

 

荷造りしてしまったため座布団もないと言うマリ子に「そげんことは構いまっしぇん」という千代。ヨウ子はこっそり起きてきて1階に降りていた。

一平「いや、実はこの春の例大祭に大和田高男君が靖国神社に祭られることになってな。それでその遺族としてお千代ねえやがそこでお参りすることになったとですよ」

はる「そうでしたわね。まあまあ、お千代、もっと近くにいたらすぐにでも飛んでいって一緒に泣こうと思っていたんですけどね」

千代「そげんこつじゃありまっしぇん」

はる「でも…」

 

千代「いいえ! 靖国神社もさることながら遺族には幸い切符も優遇してくれることだし、この機会に食べ物も不自由になっとるっちゅう東京で奥様たちがどんな具合かこの機会に是非上京するつもりになったとです。ばってん初めての東京のことだし牛尾のご隠居様にもご相談申し上げたところ、よか折りやけん、わしも一緒に行ってあげる、そう言うてくださいました」

はる「まあまあそれでわざわざ遠い所を」

 

一平「話はその先ですたい」

はる「はい」

一平「疎開するならば、わしはどんなことがあってもあんたたちを福岡へ連れて帰る! その覚悟で、まあ大祭にはちょっと早かばってん、お千代ねえやと2人で談判に来たとです」

はる「まあ…」

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春季例大祭 今年は4月21日~23日。まだ3月なんだからだいぶ早くに来たんだな。

 

千代「さあ、その荷札、宛名を福岡に書き直してつかあっせ、お嬢様」

マリ子「でも…」

千代「はい、福岡にお帰りになったらうちもおります。牛尾の皆様も教会の皆様も石井先生も戸田海運のトミ子さんだっておらっしゃるやありませんか! 奥様たちのためならうちたちは走り回りますばい! お仕事のことなら何も明日のことを思い煩うことなかれです」

マリ子「ありがとう、お千代ねえや。でもね、私たちできるだけ皆さんに迷惑をかけないようにやっていこうって東京に出てきた時、誓い合ったの。だから皆さんに負担になるようでは福岡に帰るわけにはいかないわ。それに帰るうちだって…」

 

一平「そのうちのことならば、あの村田さんがあのうちをば空けてくださるようにもう交渉ば始めとるですたい」

はる「まあ…私たちのうちを?」夫の遺影をチラ見。

千代「そのためにお貸しなさったとでしょう? こげん時のためにお売りにならなかったのと違いますか?」

はる「ええ、それは…」

一平「それにヨウ子ちゃんの病気のことば聞きました。居ても立ってもおられんようになって2人で出てきたんじゃが…。いいかな? あの…ニワトリの太郎…あの花子も孫ばいまだにこのわしは飼うております。毎朝、ヨウ子ちゃんに卵ば食べさせて、わしはどんなことがあったってヨウ子ちゃんの病気ば治してみせます。奥さん、マリ子さん、マチ子ちゃん」

 

廊下で立ち聞きしていたヨウ子が部屋に入ってきた。

ヨウ子「おじいちゃま」

一平「ヨウ子ちゃん…。ヨウ子ちゃんか…」

ヨウ子「はい!」

一平「大きゅうなってきれいか娘になりよった…! ヨウ子ちゃん(両手を広げる)」

 

ヨウ子「おじいちゃま!」一平の手を取り、抱きつく(語弊のある書き方(-_-;))

一平「よかった! 会えたな~、ヨウ子ちゃん」

千代は一平の隣で涙を拭く。

一平「また会えたな~、ほんなこつ」

ヨウ子「はい!」

 

一平「いや、これでな、おじいちゃん、頑張って元気で長生きしたかいがあった」

ヨウ子「はい!」

一平「いいか? ヨウ子ちゃん。わしと一緒に帰るんじゃ。おじいちゃんが迎えに来たんじゃけんのう。帰るよ」

ヨウ子「はい」

一平「うん、うん」

 

マチ子「いいわ…私、自分をトンテントンテンたたいてみる」

マリ子「マチ子」

マチ子「帰りましょう、お母様。福岡へ。ねえ、マー姉ちゃん。学校の先生じゃなくたって構わないじゃないの。元の磯野ワイヤーだって炭坑だってどこでだって働こうと思えば働けるんだもん」

はる「そうよね。そうですよね」

マリ子「そうと決まったらマチ子、私は荷札を書き直すから、あなたは行き先が変更になったと大宗さんに電話をして」

マチ子「分かった!」

 

そうとなったらパッと切り替えが早いのが昔からこの一家の特色でしたが…。

 

夜遅く、田河邸に電話が入り、均は突然、マチ子から九州行きを告げられた。

 

ともかく均ちゃん大奮闘の結果、急きょ変更した福岡へ無事、荷物も送り出し、ヨウ子の寝台車の切符も手に入れることができました。

 

花江さんがモンペ姿で磯野家を訪れ、「まあ、これは一体どうしたことなの!?」と驚いていた。

はる「あら、あの…私たち福岡へ行くことに」

花江「福岡へ?」

マリ子「あっ、均ちゃんとの切符のことでつい言われていた伯母様との連絡をすっかり…」

はる「忘れたの?」

マリ子「はい」

はる「まあ、どうしましょう。またお兄様に大目玉だわ」

 

花江「いえ、大丈夫! 助かりましたわ、私」

はる「えっ?」

花江「実は私たちも九州へ行くことになりましたのよ」

マリ子「えっ? 伯母様たちも福岡に疎開を?」

花江「そうじゃないの。岩村が今度、鹿児島の市長を拝命することになって」

ja.wikipedia.org

はる「まあ、お兄様が鹿児島の市長さんに」

花江「急なことでしょう。それはしかたがないとしても、私にとっては初めての土地で暮らすことになるんですもの。どんなに心細かったか分からないわ。でも福岡といったら同じ九州のうちじゃありませんか。そこへあなたたちが戻られたら私、どんなに心強いことか。ああ~よかった! 本当によかったわ! はるさん、ありがとう」

 

2013年の「長谷川町子物語」でも鹿児島市長の叔父さんは出てきたのですが、漫画の波平さん的な見た目だったので、別の親戚の人かと思ってたけど、ダンディーな透一郎伯父さんだったのですね。

 

そこにまたまたお客様。お座布団がないじゃありませんかと慌てる花江さん。田河水泡が妻の順子と共にと訪れた。

順子「いいえ、もう私たち、マチ子さんの顔見たらすぐに帰りますから」

マチ子「先生! 奥様!」

水泡「体に気を付けるんだよ」

マチ子「はい! 先生には本当にお世話になりました。今夜にでもこちらから先生のお宅へ伺って心からお礼を申し上げようと思っておりましたのに、わざわざおいでいただきまして」

 

順子「いいのよ、そんなこと気にしなくても。あなたの体は一つでしょう。そしたら時間のある方が会いに来るのが当然ですもの」

マチ子「奥様…」

水泡「それにね、改めて荻窪のうちに来られたりしたら僕たち玄関に鍵を掛けて帰さなくしてしまったのかもしれんよ」

花江「まあ…」

順子「だって…マリ子さんと初めて先生訪ねて見えた時、まだおさげのかわいい女学生だったんですもんね。私たちあの時からあなたのこと…」

 

水泡「おやめなさい。もうそのことは言わん約束だったじゃないか」

順子「だってあなた…」

水泡「バカだね。こちらへ来てそんな顔しないために、あんたはゆうべあれだけ泣いておいたんじゃないか」

マチ子「先生…」

水泡「僕、帰る」

マリ子「先生!」

 

はる「お待ちあそばせ…」

水泡「もういいの、もういいの。もういいの。もうマチ子さんの顔、見れたんだからね、これでいいの。さあ、奥さん」

順子「はい。失礼します」

はる「どうも」

 

玄関

水泡「それじゃあ、さようなら」

マリ子「先生」

水泡「とにかく均ちゃんには最後までちゃんと面倒みるように言っておいてあげるからね」

マチ子「はい」

 

水泡「それから…どこへ行っても絵を描くことを忘れてはいけないよ」

マチ子「はい」

水泡「たとえ紙がなくても雑誌が消えてなくなっても漫画はどこへだって描ける!」

マチ子「はい」

水泡「地べたにだって心の中にだって漫画は描くことができる。これから世の中はますます苦しくなっていく。そういう時にこそ漫画は必要なんだ。泣きべそかきそうな人がいたらプッと吹き出すようなそういう漫画を君は胸の中に決してなくしてはいけないよ」

マチ子「はい!」

 

水泡「うん。それじゃあ僕の言いたいことはもうこれでおしまいだ。本当にさようなら」

順子「(マチ子の手を取り)必ず東京へ帰ってきてね。それまで…さようなら」

水泡「さあ」玄関を開ける。

マチ子「先生!」

マリ子「奥様!」

 

マチ子とマリ子が玄関を出て行った水泡たちを追いかけて外に出た。

マチ子「先生~! あ…ありがとうございました!」

マリ子「奥様もお元気で!」

水泡「さようなら」

水泡たちが見えなくなるとマチ子は泣きだし、マリ子にすがってさらに泣いた。

 

みんなみんなつらい切ない別れでした。でもその中で一番悲しんだのがこの人だったでしょう。

 

大造「おっ母さん、そろそろ尻上げないと皆さん、明日出発なんだから」

ウメ「だったら、お前一人で帰ったらいいだろ」

ウメはこの家に泊まると言い張る。布団がないと千代が言うと、2階のヨウ子、マリ子、マチ子、みんなで寝ると言う。

ウメ「どの布団だってみんな潜り込んじゃいますからどうぞお気遣いなく」

はるはぜひそうしてほしいと言う。

 

大造「そのかわりと言っちゃ何ですが、牛尾のおとうさんは今夜、私と一緒に…」えー! 忘れがちになるけど、一平の息子の妻の加津子の兄が大造なんだもんね。どういうルートで知り合ったんだろう。加津子さんも連れてこれればよかったのに。まあ、このご時世、難しいだろうけど。大造さんは50歳くらいということが判明。

 

dot.asahi.com

長谷川町子 佐久”で検索したらこちらの記事を見つけました。

”実は、長谷川家の最初の計画では、長野県の旧佐久郡に疎開する予定だった。荷づくりまで終えたところに福岡の知人がやって来て「水くさいじゃないか。福岡に帰っていらっしゃい」と長谷川家を説得。行き先を急きょ変更したのだという。このエピソードは昭和19(1944)年3月のこととして、町子の自伝漫画『サザエさん うちあけ話』にも掲載されている。”という文章がありました。へえ~今日のドラマの通りのことがあったんだね。この記事、他の部分はドラマでは恐らくこの先描かれるであろうことが書かれてますので、ネタバレ注意です。

 

ほんとにあったことだったんだね…しかし、佐久は、細谷さんや塚田さんの思いは…明日報われて欲しい。