徒然好きなもの

ドラマの感想など

【ネタバレ】約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯

2013年 日本(2012年6月30日 東海テレビ)

 

あらすじ

1961年(昭和36年)に三重県名張市で起きた「名張毒ぶどう酒事件」の犯人として投獄され、無実を訴え続けた奥西勝死刑囚の半生を、実際のドキュメンタリー映像も交えながらドラマ形式で描く。いつ訪れるか分らない刑執行におびえ、事件から50年以上にわたり再審請求を繰り返した奥西の孤独や恐怖を描き出していく。主人公の奥西役に仲代達矢、息子の無罪を信じ続ける母タツノ役に樹木希林。奥西は本作の公開後、2015年に獄中で89歳の生涯を終えた。

ja.wikipedia.org

yakusoku-nabari.jp

2020.9.19  日本映画専門チャンネル録画

キャストの中に樹木希林さんを見つけたので録画。「はね駒」の再放送の最終回あたり。元々は東海テレビで放送されたものを映画化した。

 

奥西勝 35歳。演じてるのは山本太郎さん。まだ俳優やってた時期!? 妻子と川辺を歩く懐かしい日を夢に見ていた。目が覚めると86歳。独房で袋貼りをして暮らしている。そんな日々を過ごして50年近くになった。

 

昭和36年 三重県名張市葛尾。農業をしている奥西は妻と二人の子供と幸せに暮らしていた。

 

地域の集まりの生活改善クラブの懇親会。男には日本酒、女にはぶどう酒が振る舞われた。まもなく一人の女性が苦しみ出し、続けて何人かの女性が倒れた。ぶどう酒を飲んだ女性15人のうち、5人死亡。事件から6日後に奥西勝が逮捕された。

 

事件の映像は実写。マスコミの前で記者会見とかしてたんだ。妻と愛人の三角関係に悩んで関係を精算しようとぶどう酒に農薬を混ぜたという見立てだったが、物的証拠は乏しく一旦無罪。しかし、その後の裁判で逆転判決で死刑になった。死刑囚は拘置所で過ごし、私服で刑務作業もない。死刑囚が罪を償うのは労働ではなく死ぬこと。

 

昭和62年 奥西勝 61歳。独房から出て面会室へ。人権団体の川村という男が訪ねてきた。死刑囚は家族と弁護士以外面会できないが、何度も掛け合って会いにきた。

 

母・タツノは81歳。勝に手紙を書いていた。樹木希林さんが81歳を演じてるけど、亡くなったのがもっと若いんだと思うと切ない。

 

川村との面会で無実だと訴えた。ぶどう酒を会長の家から公民館に運んだせいで疑われた。嘘の自白をしたのは妻が亡くなり、中学1年の息子と小学校入学を控えた娘がいて、早く家に帰りたかった。奥西と同じように懇親会の会長もまた自白を強要されていた。

 

事件から6日後。マスコミの前で謝罪する奥西。昔の映画俳優みたいに整った体の大きい人だな。

 

タツノに会いに行った川村。妻の千恵子の他にヤス子という愛人がいたのはいたんだね。犠牲者の中には懇親会会長の妻もいたから会長も疑われたのか。事件から50年。集落の人は今でも奥西が犯人と信じ、恨んでいた。

 

ぶどう酒に農薬を入れられる人間は奥西しかいないと言われていたが、午後2時過ぎに酒を買いに行った村人が会長宅に酒を届け、それを5時過ぎに公民館に届けたのは奥西だったが、会長宅に3時間も酒が置かれたことになり、奥西以外にも可能性があるのに、酒屋と酒を運んだ人が証言を変えた。矛盾が出ると曖昧にしてごまかした。

 

村の共同墓地にあった奥西家の墓が一基だけ追い出され、畑の中にぽつんとあった。田舎の怖さ、出てるねー! 古畑任三郎の「灰色の町」を思い出す。

 

新しい弁護士も加わり、次々捜査の矛盾点を突く。

 

回想。捜査中、手錠をかけられて村中を連れ回されたとき、罵る村の衆をかき分けて子供達が「父ちゃん!」と声をかけた。子供達は別々の親戚に預けられていた。タツノとは元々同居していなかったみたいだし、いまでもタツノは正月も一人で暮らしている。母のタツノは名古屋拘置所に通っていたが、昭和63年に84歳で亡くなった。

 

第5次再審請求も棄却。川村達が再審に向けて動いてくれると聞き、涙を流してお礼を言う奥西。

 

2002年 第7次再審請求。奥西勝 76歳。ぶどう酒に含まれた毒物に着目。農薬ニッカリンTは40年前に製造停止になっており、入手困難と思われたがインターネットを使って入手できた。最新の機械でしらべると、ぶどう酒の毒は奥西の自供したニッカリンTではなかった可能性が出てきた。

 

川村は街頭で署名活動をしていたが、明日にでも死刑執行されるかもしれないという情報を得た。しかし、奥西ではなかった。川村役の人がリアルで本当に活動してた人?とか思ったけど、「はね駒」で、りんの姑役の山田昌さんの旦那さんか〜。劇団「劇座」代表の天野鎮雄さん。

 

奥西がぶどう酒の王冠を歯で開けたという自白も怪しくなってきた。昔はホント、こういう歯で王冠開ける人いたね。それを周りの人にも振る舞う。今では考えられない。歯が悪くなるからやめましょうと歯医者にポスターが貼られていたような。

 

逮捕から44年で再審開始。再審を決めた裁判官はこの後辞職。本物の川村さん、似てる! 検察から異議申し立てをしたが、別の裁判官の元、審議は続けられたが、半年後、川村さんが心筋梗塞で亡くなった。葬式で奥西の書いた弔辞が代読された。

 

2006年12月 再審請求が棄却された。新証拠も全て否定し、自白を重視した。再審請求を棄却した裁判長は東京に栄転。うわー、こんなことあるの!?

 

事件から半世紀。事件のあった公民館は取り壊された。懇親会に出席した村人32人のうち17人死亡。奥西の両親、会長、死刑判決を下した裁判長など関係者も亡くなり、2010年 奥西の息子も62歳で亡くなった。

 

2012年5月 再審請求棄却。

 

肺炎で入院した奥西の細い腕には手錠がされていた。奥西勝 86歳。司法は何を狙っているのか。

 

エンドロールの後、歳をとった奥西が「岸壁の母」を歌いながら川辺を歩いていて、カメラに向かってにっこり。そこに響く刑務官の「起床!」の声。(終)

 

この映画の公開が2013年。奥西勝さんは2015年に獄中で死亡。死後も奥西さんの妹が再審請求したが、これも棄却された。不倫の清算にしても関係ない女性たちが亡くなってるし、一人を犯人に仕立て上げて、みんなで口裏を合わせるというのは田舎では…可能なんじゃないか、田舎で生まれ育った私は思ってしまう。結局冤罪じゃないんじゃないの?と思う層に向けても再審してほしいよなあ。モヤモヤゾワゾワ。

 


映画『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』予告編