徒然好きなもの

ドラマの感想など

【ネタバレ】 あしたからの恋 #11

TBS 1970年6月30日

 

あらすじ

「菊久月」で働く菓子職人の正三(小坂一也)は、修一(林隆三)の幼馴染であるトシ子(磯村みどり)を10年間も思い続けてきた。しかしトシ子から正式に断られ、仕事も手につかず、しまいには寝込んでしまった。

2023.11.30 BS松竹東急録画。

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谷口福松:進藤英太郎…和菓子屋「菊久月(きくづき)」主人。

*

谷口和枝:尾崎奈々…福松の長女。21歳。(字幕黄色)

野口勉:あおい輝彦…直也の弟。大学生。20歳。

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野口直也:大出俊…内科医。28歳。(字幕緑)

井沢正三:小坂一也…「菊久月」の職人。30歳。

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谷口桃子岡崎友紀…福松の次女。高校を卒業し浪人。

谷口修一:林隆三…福松の長男。26歳。(字幕水色)

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中川トシ子:磯村みどり…修一の幼なじみ。26歳。

中川アヤ子:東山明美…トシ子の妹。20歳。

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中川ます:山田桂子…トシ子とアヤ子の母。

トメ子:丘ゆり子…「やぶ清」の店員。

*

谷口常子:山岡久乃…福松の妻。46歳。

 

踏切の警報音。商店街と街を歩く人々。たまにこういう当時の街並みが見られるのがいいなあ。

 

久月

桃子「姉さん、水羊羹と淡雪4つ」

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おいしそう~、でもめちゃくちゃ甘いみたい。

 

女性「鮎焼きって中に何が入ってるの?」

和枝「求肥(ぎゅうひ)でございます。さっぱりして風味がよろしいんですよ」

女性「じゃあ、それも入れて10個」

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かわいい。

 

作業場から正三が商品を運んできた。「いらっしゃいませ。艶袱紗(つやぶくさ)出来ましたよ」

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和風のクレープみたいな感じ。

 

作業場

機械であんこをかき混ぜていた福松は手にあんこがついたから?結婚指輪を外そうとしている。

 

正三「旦那、水羊羹作っといたほうがよさそうだ」

福松「うん」

正三「もうすぐ7月だし、こうムシムシしちゃ、さっぱりと水羊羹の冷たいのが食いたくもなりますよ」

福松「いや、食いたきゃ食いな。冷やしてあるだろ」

正三「なにも俺が食いたいってわけじゃないけどさ」

福松「さてと…あっ、今のうちに昼飯にするかな」

 

正三「仕事場にクーラーぐらい入れりゃいいんだよ。こう暑くちゃたまんないよ」

福松「クーラーは入れないよ」

正三「菓子の味が変わることはないと思うけどね」

福松「体に良くありませんよ。7月になったら扇風機出すからいい」

正三「年寄りの相手はこれだからね」

ジロッとにらむ福松。

 

そこにアヤ子が入ってきて、母がちょっと伺うので何時ごろが手すきですか?と福松に聞きに来た。いつでもいいと言う正三だったが、福松は3時過ぎにと返事をした。

 

正三「ねえ、トシちゃんのことかな」

福松「いや、そうだろ。返事が遅すぎるとは思ったんだ」

正三「ああ、イヤだ。もう胸がつっかえちゃって、とてもあんなんか煮てられやしねえや」

福松「バカ。菓子屋がそんなことで商売になるか」

正三「旦那はこういう思いしたことないからダメなんだよ」

福松「バカなこと言いなさい。わしだって一緒になるまでは大変だったんだ」

正三「そうでしょうね。どう見たって釣り合いが悪(わり)いや」

福松「なんだ、その言い方。ぼんやりしてるとあんを焦がしますよ」

あんをかき混ぜてる?機械を慌てて止める正三。あん練り機というものなのかな?

 

2階客室?

ます「せっかくのお話でしたが何しろまだトシ子に結婚する気がないもんで…」

福松「すると待っておれば、その気になることがあるかもしれんということですか」

ます「そうおっしゃられると困るんだけど、ねえ? 奥さん」

常子「うん…やっぱり無理なお話でしたかしら」

 

ます「うちもアヤ子は嫁にやってトシ子に店の商売を継がせようと思っとるし、正三さんじゃ、どうも釣り合いが…」

福松「いや、釣り合いなんてものは一緒になってみりゃどうってことはないがなあ」

常子「そう言っても一生のことですから本人がイヤなものならしかたがないわ、お父さん」

福松「しかし、いい男だぞ、正三は」

常子「そりゃそうですよ。それでなきゃ、こういうお話をお願いに上がりゃしませんよ」

ます「もうなんとなく気が重くて、ご返事も延び延びにしとったんですがね」

 

福松「何年待っても見込みなしか。いや、トシちゃんに好きな人でもあんのかなあ」

常子「そんなこと失礼ですよ」

ます「いや、かまいませんよ。私もいるんじゃないかと思って聞いてみたんだけども、あの子はちっとも口にも顔にも出さんから」

常子「正三さん、がっかりするわ。それだけがつらくて」

福松「ああ」

 

ます「お宅でも大事な職人さんにぼんやりされてもお困りね」

常子「長年、一緒に暮らしてるでしょ。情が移ってますからね」

福松「しかし、こればっかりはごまかしておくわけにもいかんしなあ」

ます「トシ子に結婚する気がないってことで、そのうちには正三さんだって誰かいい人を見つけてくるでしょ」

福松「いや、女にかけちゃ不器用なヤツで…ハァ…そうか、トシちゃんに振られたか」

 

常子「奥さん、あの…もしものことですが正三さんに店を1軒出させることができたら、また考えてくださいます?」

ます「いえ、それが…口先のこと言っててもしょうがないから、はっきり申しますがね。私としてはせめて、うちと同じ程度のものを持ってる人でないと将来のこともあるし、気乗りせんとですよ」

福松「まあ、そのことは気になってたんだが、あんたも苦労した人だから分かってくれると思い込んでいたもんだから」

 

ます「トシ子はかまわないって言うとですよ。あのとおり人物本位の子だからね」

常子「ええ、ほんとにいい娘さんですよ。それだから私も人物本位を心頼みに正三さんのお話、持ってったんですもの」

ます「そのトシ子が正三さんはいい人だけど結婚する気はない。無理ないでしょ。結婚なんてお互いに経験して分かってますよね。惚れてなきゃ一緒に暮らせやしない。朝から晩まで何十年も顔つきあわせとるとだもんねえ。まあ、あとはあととして踏み切るときはね」

常子「そうですわね」

ます「惚れてないんですよ、あの子が」

 

福松「分かりました。正三には諦めさせます」

常子「いろいろ気を遣わせて、かえって申し訳ありませんでした」

ます「奥さん、私…別のことでちょっと…」

 

作業場から2階を見上げる正三。

桃子「正三さん、水羊羹早く切ってよ」

正三「もう切りましたよ」

桃子「あら、桜の葉は?」

正三「今、包みますよ。うるさいなあ」

桃子「待ってんのよ」

正三「こんなときに限って、お客がゾロゾロ来るんだから」

桃子「勝手なこと言ってるわ」

 

ますからアヤ子が修一を好きだと聞かされ、びっくり顔の常子。

福松「修一なんざまだまだ嫁もらう年じゃないから」

ます「25でしょ? 世間的にはいくらでもいますよ。早い人は2人ぐらい子供抱えて」

常子「苦労してますよね」

ますは修一が見合いを控えているからアヤ子の気持ちを知っといていただきたいと言う。「親バカねえ」

 

福松「当然ですよ。しかし、アヤちゃんじゃね…」となぜかニヤニヤして常子に止められる。「いいじゃないか。うちうちの話なんだから」

ますもみんな子供のときからの友達だから遠慮がなさ過ぎてかえってダメなもんかもしれんけど、修一の気持ちも一度確かめてみてくださいと頼む。常子はアヤちゃんなら明るくていい娘さんだしと褒めるが、福松は「子供だよ、あの子は」とバッサリ。

 

正三が新しいお茶を運んできた。ますは日曜は店が忙しくて…と帰ろうとするが、正三はせっかく入れたんだからとお茶を勧める。じっととどまる正三に「正三さん、あとでゆっくり」と常子が声をかけ、正三は「よろしくお願いいたします」とますに頭を下げて出て行った。

 

ます「よろしくって言われてもね」

常子「あ~あ、どう話したらいいのか」

福松「独り者(もん)があっちにもこっちにもいるんだからたまったもんじゃない」

 

ますはトメ子と正三はどうなってるのか聞く。

福松「いや、冗談じゃない。トメ子なんぞ、あんた…」

ます「でも、この間いきなり入ってきてトシ子にすごいこと言ったとよ。あいつと結婚したら不幸になるとか、あいつに惚れてる女がいるんだとか」

その女というのがトメ子自身のことらしい、気をつけた方がいいとますが言う。「あの女、パッパとなんでもやるほうだから」

福松「なんてことだ、正三のヤツ。とっちめてやる」

常子「分かりゃしませんよ。トメちゃんの言うことなんか」

 

どさん子前をトメ子が鼻歌を歌って歩いている。

♪二度が三度に たび重な…

恋泥棒

恋泥棒

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奥村チヨ「恋泥棒」1969年10月1日発売。

 

歌っている間に通り過ぎ、戻って、岡持ちを持ったまま店に入って行く。

トメ子「あら、修ちゃんいないの?」

勉「いますよ、奥に」

 

修一は奥で食事中。奥に入ってきたトメ子は「ねえ、店にいる男の子さ、あれで役に立ってんの?」と聞き、あんたが困ってるなら私が来てやってもいいと言う。困ってやしないと返されると、中途半端なアルバイトなんてクビにしちゃって、トメちゃんのほうがいいでしょうと売り込み。あんたのそばで面倒見てあげようかなと言うが、当然、修一にはどんぶりバンバン割りやがってと断られた。

 

修一「金の卵でもダイヤの卵でもお前だけはいらないよ」

トメ子「今に見てろ。修一のバカ」と岡持ちを店の椅子にぶつけながら店のガラス戸を開けて「ベッ!」と舌を出して帰っていった。

勉「あれでそば屋の出前持ちですか」とあきれ顔。

 

中川文房具店

店番はアヤ子。店の奥でトシ子はますにお茶を入れていた。

ます「ああ、こっで一役済んだわ」

トシ子「正三さん、イヤな顔してた?」

ます「今頃、情けない顔してるだろうけど」

トシ子「なんだか悪いことしちゃった」

ます「気にすることなかよ。イヤなら断るしかないとだから」

トシ子「そのうち私からも正三さんに話すつもりだけど」

ます「サバサバしちゃうこっだよ。お互いにまたいい相手が見つかるたい」

 

アヤ子も店番をやめて会話に入ってきた。「正ちゃんあしたからばったり買い物に来なくなるわよ」

ます「面白がってんじゃなかよ」

アヤ子「だって正ちゃんってなんとなく感じ悪いからさ」

 

そうか。アヤ子は元々あまり正三が好きじゃなかったのね。客が来て、再びアヤ子は店へ。ますはアヤ子が修一を好きだということを隣に話したとトシ子に報告。「今思うと黙ってるほうがよかったかねえ」と少し後悔しているますにお母さんから話したんならいいじゃないとトシ子は明るく言う。

 

ますは修一のことに不足はないが、隣ではアヤ子が子供扱いされてることが気にかかる。なんだか立場が逆になっちゃって変な気持ちだと言う。

トシ子「修一さんがアヤ子をもらってくれたら、ほんとに安心ね」

ます「でもどっちかっちゅうと修ちゃんはお前と仲が良かったね」

トシ子「同級生だもの。それこそ竹馬の友よ」

ます「なんだね。まるで男同士みたいなこと言うとる」

フフッとほほ笑むけど、表情は曇るトシ子。

 

正三が裏口から出て行くのを常子が止めた。

福松「待ちなさい! よく話も聞かずに」

正三「もう分かりましたよ。いくら聞いたってダメなもんはダメさ」

常子「でもね、正三さん。こういうことは縁なのよ」

正三「縁がなかったんでしょ。初めからなかったんだ」

福松「落ち着いたらどうだ。30にもなろうって男がカッとして」

正三「30だって40だって失恋してヘラヘラしちゃいられませんよ。人のことだと思って落ち着け、落ち着けって」

常子は戻るように言い、福松はトシちゃんに聞こえると言う。

 

正三「聞いてもらいたいよ。この10年ずっと思ってたのに」とアパートに帰って寝たいと言い、「いろいろお世話になりました」と頭を下げて帰っていった。正三の言葉が気にかかった福松と常子は正三を追いかけた。

 

久月

店番をしている和枝。桃子は両親と正三が2階にもいないと和枝に言うと、修一の店に電話をかけるように言われた。

 

店の前をウロウロしていた直也が店に入ってきた。「こんばんは」

和枝「いらっしゃいませ」

直也「まだ怒ってるの?」

和枝「いいえ」

直也「それにしちゃ膨れっ面だよ」

和枝「もともとおたふくですから」

直也「おたふくっていうより君は般若のほうだ」

 

和枝の顔を見て笑う直也は、デートのやり直しのつもりで誘いに来たと言うものの、和枝はこりごりだと言う。

直也「随分待たせたからね、失敬したと思ってますよ」

和枝「お互いに交際なんかしないほうが無事だと思いますけど」

直也「無事じゃなくたっていいじゃないですか。男と女なんだから」

和枝「なんてことおっしゃるんです、店先で」

今になって鈴木の気持ちが分かると言う直也。

 

店の奥から桃子が出てきた。正三さんのことでゴチャゴチャしちゃってと内輪のことをペラペラしゃべり、和枝が注意する。直也は和枝を誘うのを諦め、桃子に「勉さんが兄の店にいますよ」と言われ、店を出ようとしながらも「約束は次の日曜の12時ね。キクさんにうまいものを作ってもらって待ってますよ」と勝手に約束を取り付けた。

 

和枝が怒っても、「僕のうちを見とくのもいいでしょ。この前、玄関で中を見たそうにしてたから」と続ける。あ~、箱根行きのときに野口家に行ったね。

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和枝「失礼な。わたくしそれほどのやじ馬じゃございません」

直也「そうね。君はじゃじゃ馬だ」

和枝「野口さん!」

直也「さよなら」と小走りで店を出て行った。

 

桃子「直也さんがいっぺんに野口さんに逆戻りね」

和枝「当たり前よ。店先でなきゃもう一度蹴っ飛ばしてやるわ」

 

どさん子に向かった直也とどんぶりを持った勉が店の前で会った。上がマージャン屋で出前が多い。「この商売、資本さえありゃ絶対だよ」と勉が言う。

 

日曜の夕方で店は混んでいる。直也はカウンターに座り、ビールを注文。修一に店番をしていた和枝に追い出されたことや、正三のことでゴタゴタしてるらしいと話した。修一は店に和枝と桃子だけしかいないことを不思議に思う。

 

トシ子が来店し、カウンターの隅の直也の隣に座る。トシ子は元気がなく、修一が心配する。修一に誘われ、ビールを注文したトシ子。トシ子のコップに直也がビールを注ぐと、勉が「僕の兄貴ですよ」と紹介し、トシ子も自己紹介する。

 

直也はキクがいつも中川家でごちそうになってるお礼を言い、トシ子も母も楽しみにしてるんですと返した。直也もトシ子も「いつもの」注文。

トシ子「今日はくさくさしちゃって」

 

正三の部屋

布団をかぶって泣いている正三を正座して見ている福松。常子は和枝に正三のとこにいると電話連絡した。

正三「いいかげんに帰ってくださいよ。重病人じゃあるまいし」

常子「でも、青い顔しちゃって…大丈夫?」

福松「男のくせになんだ、みっともない」

正三「これじゃ泣くに泣けやしない」

常子「私たちの力が足りなくてごめんなさいね」

正三「申し込みなんかしなきゃよかったんですよ。これから先、もう絶望だ」

 

福松「バカ! なんだ、女の1人や2人。女なんぞゾロゾロしちゃって余って困ってんだぞ」

常子「まあ!」

正三「いくらゾロゾロ余ってたってトシちゃんはこの世に1人だけなんだから」

福松「大体お前は軽率だよ。トメ子なんぞに惚れられるから」

 

正三には何の事か分からない。常子は福松を止めようとする。

福松「いや、中川さんだってあんな女にどなり込まれたら二の足踏むさ」

正三「冗談じゃない。何言ってるんですよ」

 

どさん子

店の客はトシ子と直也だけになっている。

修一「そうか。正ちゃんの話、断ったのか」

トシ子「だってその気になれないんですもん」

直也「面倒なもんだね、こういうことは」

勉「そんなもん、恋愛しちゃえば簡単なのに」

 

修一「いや、その恋愛ってやつがまた面倒なんだ」

トシ子「正三さん、どうしてるかしら」

修一「ほんとに全然ダメなのか? トシちゃん」

トシ子「なにもそんなに私と正三さんを結婚させたがることないでしょ」

修一「だっていい男だからさ」

トシ子「正三さんがいい人だってことぐらい、あなたにくどくど言われなくても10年見てれば分かってます」

 

修一「じゃあ、金がないとか?」

トシ子「お金の問題じゃないのよ」

修一「それじゃあなんだよ?」

トシ子「結婚する気がないって一日に何度言わなきゃならないの」

修一「26だよ。考えたほうがいいよ」

 

トシ子「人間って結婚しなきゃならないもんですか?」

直也「いや、これからは自分の好きな道を1人で歩いて十分幸せな男や女がたくさん出てくると思いますよ」←預言者

トシ子「修一さんって古いですわね」

修一「何言ってんだよ。せっかく考えてやってんのに」

トシ子「ご自分のことだけ心配なさいな。私は好きにしてるんですから」

修一「分かったよ。オールドミス志望ならそれもいいさ」

トシ子、ピキーン!

修一「俺はね、トシちゃんみたいな控えめな女は1人で生きてくより、いい亭主もらっていい女房になったほうが、ずっと幸せになれると思うから勧めたんじゃないか。それをなんだよ。俺が古いとか、さもうるさそうに」

トシ子「ごめんなさい」小銭をカウンターに置くと「さようなら」と席を立つ。

 

修一「トシちゃん」

トシ子「あなたみたいに憎らしい人知らない」

 

直也「追っかけたほうがいいんじゃないのかな」

勉「とうとう怒らせちゃって」

修一「なにもプリプリすることないじゃないか。だから女ってのは分かんねえや」

直也「君、彼女を好きなんじゃないの?」

修一「いや、好きですよ。だけどそれはなんでも言える友達だってことなんだ。なにも男とか女とかそんな惚れ方はしてないんだから」

勉「そうかね」

修一「そうさ。それでなくて正ちゃんと結婚したらなんて言うはずないだろ」

勉「あっ、そこんとこは確かにおかしいね」

直也「うん。分かるような気もするけど」

修一「惚れてるってのは別の気持ちのことだよ。俺とトシちゃんが? 冗談じゃないよ」笑ってビールを一気飲み。

 

家に入る前、そっと涙をぬぐうトシ子。

 

本日休業の「菊久月

正三を気にする福松に昨日の今日でまだ泣いてるでしょうねと言う常子。

福松「1日も2日もメソメソしてられますか。バカバカしい」

常子「バカバカしい気持ちになるのが恋愛じゃないのかしら。もう忘れちゃったけど」

福松「当たり前ですよ。いい年をして」

 

常子はこのごろなんとなく恋愛するなら最後のチャンスじゃないかと考えてしまう。

福松「何言ってる。亭主がいるのに」

常子「このままでいいのかしらね。一生あなたしか知らなくていいのかしら」

福松「いいに決まってますよ」

常子「あっ、そう」

福松「健全な家庭の奥さんが考えることですか。あきれてものも言えんよ」

常子「今度修一の意見も聞いてみよう」

福松「なんてこった、まったく」

 

そこへ修一が現れた。

常子「あのね、修ちゃん…」

福松「おい! やめなさい、そんな話」←慌てふためいててかわいい。

 

常子が修一に話したのは今度の木曜日に青木写真館の娘さんとお見合いが決まったこと。場所は谷口家の2階。山本のご隠居さんが連れてくる。

 

和枝は物干し場で洗濯物を干していた。和枝からアヤ子は見かけよりは女らしい、高校の成績もそう悪くなかったと言われたものの、当分結婚する気はないと言う修一。洗濯物を干しているのにタバコを吸うんじゃない!

 

修一は一生結婚しないかもしれない、一生1人で暮らしても幸せだと感ずる人間がこれからたくさん出てくるんだそうだと直也から聞いた話をする。

和枝「そんなの寂しいわ」

修一「直さんが言ったんだぞ」

和枝「ほんとに憎らしい人」

修一「憎らしい人か」

 

作業場

休みでも作業着を着て仕事をする福松に常子はのんびり座っててちょうだいとお願いする。

福松「お前さん、座ってりゃいいんです」

常子「あなたがウロウロしていると落ち着かないのよ」

福松「作りたい菓子があるの」

常子「あした作ればいいじゃないの」

福松「今日、作りたいの!」

常子「意地悪!」

福松「うるさい!」

常子「まあ憎らしい」と腕をつかまれ、小豆を入れたざるを頭からかぶってしまう福松でした。(つづく)

 

トシ子が修一を好きなことは野口兄弟にはバレバレ。修一はトメ子やアヤ子の気持ちもそうだけどモテモテなだけに鈍感!?