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【連続テレビ小説】本日も晴天なり(36)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

敗戦の翌日、占領される前にと、あらゆる書類が日本中で燃やされた。いつ進駐軍が来るのか、何をされるのか。宗俊(津川雅彦)はトシ江(宮本信子)や彦三(森三平太)らとうわさ話に夢中だ。そこへ幸之助(牧伸二)が早くも復員してくる。小芳(左時枝)は、大喜びで幸之助に飛びつき押し倒す。幸之助の話では、敗戦を受け入れず最後の一戦をやると息巻く将校もいるという。元子(原日出子)は正道(鹿賀丈史)が心配になって…。

無条件降伏の前にぼう然となった国民の中で一番先に火がついたのは、とにかくあらゆる書類を燃やすという作業でした。

 

放送会館裏?で書類を燃やしている。

 

放送員室でもご多分に漏れず、せっせとこのとおり。

 

放送員室

書類を整理する放送員たち。

立花「おはよう」白の上下のスーツに白いハットを手に出勤。

一同「おはようございます」

立花「おはよう」

 

恭子「室長!」

立花「うん?」

元子「どうなさったんですか? 一体」

立花「ハハハ…。こういうのをせっかく持ってるんだから何もヤボな国民服を着てることもないと思ってさ」

悦子「そうですとも! お似合いですよ、室長」

立花「こら。大人をからかうもんじゃないぞ」

恭子「いいえ。そのお洋服拝見して、私、やっぱり戦争は終わったんだって、そう思いました」

 

立花「いや、終わったんじゃない。負けたんだ。だから占領軍がやって来れば戦犯でやられるか収容所入りになるか分からんじゃないか。沢野君もせいぜい今のうちにおしゃれをして女子放送員諸君に見直してもらった方がいいんじゃないか?」

沢野「けど、本当にそういうことになりますかね?」

川西「まあ、君なら彼女たち並みだから絞首刑…ないな。ないない! ない」

沢野「冗談じゃありませんよ! 僕だって大げさな戦果や戦意高揚の放送を立派にやってきたんですから」

本多「八百屋お七だね」

沢野「八百屋お七?」

本多「『十四と言えば助かるものを十五と言ったばっかりに』」

沢野「侮辱です! これは最大の侮辱です!」

笑い声

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八百屋お七wikiはめちゃくちゃ詳しいけど、長かったので簡単なあらすじが載っている↑をリンクしました。正直に15歳といったばかりに死罪になったということか。

 

カンカンに怒ってる沢野さん。立花さん、本多さんは女子放送員の指導係もしてたし、沢野さんは男性の放送員の中では一番の若手でいじられキャラという感じ? カンカンも職員室の中では若くてこんなキャラだった。面白い。

 

立花「まあ、いずれ占領軍がやって来ればなるようになるさ。まあ、だから今のうちにやりたいことだけはやった方がいい」

 

ちょっと真面目なトーンになってるけど、元子や悦子は口を押えて笑ってる?

 

元子「占領軍は、いつやって来るんでしょうか?」

立花「うん…進駐は降伏調印式のあとだから調印が済まないうちは進駐はないはずだ」

元子「はい」

 

立花「さあ、仕事だ! フフフフ…」

 

ところがなんせ初めて負けたもんですから、負けるとどういうことになるのかさっぱり分からない人たちばかりです。

 

茶の間

宗俊「そんなバカな! おめえ、俺たちの大事(でえじ)なところを切り取ったところでよ、野郎どもの何の役に立つってんだい」

小芳「罰じゃないかしら、戦争やった罰」

友男「それじゃあ、生きてるかいがねえってもんだよ」

芳信「そんなことぐらいじゃありませんよ。これはね、種族を絶やそうってことなんです」

トシ江「種族?」

芳信「ああ、そうなんだ。種を絶やせばね、日本人ってものは、いずれ消えてなくなっちまうんだ」

彦造「そ…そんなむちゃな!」

宗俊「俺ぁ嫌だよ。トゲ抜くんだって、お前、気持ち悪(わり)いのによ、そんな、おめえ…。俺は直撃食らって死んだ方がマシだったよ、そりゃあ」

芳信「しかたがありませんよ、それが負けたってことなんだから」

彦造「ご隠居、あんた、えらく落ち着いていられますね」

 

小芳「あ~!」

宗俊「幸ちゃん!」

友男「あっ…」

店先に幸之助が立っている。

 

小芳「あんた~!」

幸之助「小芳!」

小芳「あんた~!」幸之助に抱きつく。「あんた!」

 

芳信「何てざまだ。こりゃまるで亀の子だ」

宗俊「ケッ、こんなのが兵隊だったらんだから負けるわけだい」

笑い声

小芳「何してんだよ! ええ? 命懸けでお国のために戦って帰ってきたっていうのに、ご苦労さんとか何とか、もっと歓迎してくれたっていいじゃないか!」

トシ江「どこも打ってはいませんでした?」

幸之助「いいえ、打ったところで帰(けえ)ってくりゃ、こっちのもんだい!」

 

宗俊「ご苦労さん、ご苦労さん。上がった、上がった!」

友男「あ~…よかった、よかった」

幸之助「ああ?」

友男「町内じゃ幸ちゃんがな、帰還兵第一号だよ」

幸之助「そうかあ。いや~、とにかくアメ公のやつが上陸したら、どうなるか分かんねえっていうからよ、なあ、命あっての物種だよ。尻に帆をかけて、さっさと逃げてきた」

笑い声

 

茶の間に上がった幸之助。「ああ…。とにかくな、女は逃がさなくちゃ駄目だぞ、おい」

小芳「逃げるって、どこへ?」

幸之助「どこだって構いやしねえよ」

トシ江「だってやられるのは男なんでしょ?」

幸之助「バカだねえ。女って女は、まずみんなアメ公の手込めにされると思って覚悟しなくちゃいけねえってんだ」

宗俊「おい! 誰がそんなこと言った!」

幸之助「古参兵だよ」

小芳「あんた…」

 

彦造「冗談じゃねえですよ! もしも、うちのお嬢たちを、そんな目に遭わせようとしやがったら、もう」

幸之助「あ~…。みんなアメ野郎はな、自動機関銃持ってんだから」

彦造「自動機関銃?」

宗俊「おい、おめえ、そういや丸腰だな」

幸之助「えっ? おう…」

 

芳信「ところであんた、どこで戦ってなすった?」

幸之助「いや…戦うったってさ、初めっから木の鉄砲に木のごぼう剣よ。靴だってねえんだから、地下足袋履いてな、毎日、松の根っこ掘ってたんだから」

トシ江「松の根っこ?」

友男「いや、松根油(しょうこんゆ)っていってね、その油からよ、飛行機を飛ばす燃料とってたってうわさだけど…本当にやってたのかい?」

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均ちゃんもやってた松の根っこ掘り。

 

幸之助「ああ。腹は減るし、ぶん殴られるし、毎日目ぇばっかり回してたよ」

小芳「かわいそうにねえ、あんた! かわいそうにねえ!」べたべたくっつく。

宗俊「おうおう、おうおう。おう、おまえ、それはお前、うち帰ってからやんなよ。ええ?」

トシ江「何言ってるんですよ、あんた」

宗俊「ヘヘヘヘ…」

 

幸之助「じゃ、そういうことでね…」

小芳「そいじゃ、失礼させていただいて」

宗俊「おう、帰れ、帰れ! おい、荷物はな、後でお前届けてやるから」

小芳「すいませんね!」

 

復員業務も始まらないうちに脱走同然で帰ってきた兵もあり、まさに敗戦の混乱を象徴するものだったのでしょう。

 

そうだねえ。手続きを待ってたらいつになるか…。近場だったんだろうね。幸之助と小芳は肩を組んで小走りに帰っていった。笑いながら見送るトシ江さん。

 

夜、茶の間

元子「まさか! 降伏の調印が済まないうちに米軍の進駐はありえないって局でも言ってたわよ」

キン「けど、それで手遅れになったらどうなるんです?」

巳代子「手遅れって何の手遅れよ」

キン「さあ…そこんとこは、よく分かんないんだけど」

トシ江「ともかく元子と巳代子だけでも、いざっていう時の逃げ場を考えておかなきゃいけないかもしれないわね」

 

宗俊「まあ、南京や上海へ行った日本軍もな、向こうの連中にはだいぶんひどいことやったらしいからな」

彦造「敵討ちされるんでしょうね」

宗俊「『勝てば官軍』ってな。負けりゃ、何やられてもしかたがねえんだが、むざむざやられてたまるかってんだ!」

トシ江「だけど、今も飛んでる航空隊の人(しと)たちは一体どうなるのかね?」

彦造「血気の強(つえ)え人たちだから、アメリカとやり合う覚悟じゃねえんですかい?」

 

元子「だけど、軍の統制、秩序の維持に努力するようにって命令が出てるのよ」

巳代子「でもさ、終戦反対のビラをまいたり、皇軍健在なり、だから工場へ戻って作業を継続しろって演説に来たわよ」

キン「そんなことしてアメリカを怒らせたら大変ですよ」

彦造「そうだよ! 軍人は戦って死ぬのが商売だから、それもいいだろうけど、こっちまで巻き込まれるのは、もう御免ですぜ!」

宗俊「けど、おめえ、連中だって、ただおさまるわけはねえわな」

トシ江「それは今まで頑張ってきた気持ちは分かるけど親御さんのこと考えたらね、今になって死ぬことはないわよ」

キン「でもね、私たちだって死ぬんだとばかり思ってきたのに、若い軍人さんたちは切り替えなんかつかないでしょうよ」

彦造「秀美堂さんの部隊でも降参は無念なりと腹ぁ切る将校さんがゴロゴロいるかと思えば上陸してくる占領軍と最後の一戦をやると言って、刀研いだり戦車磨いたりするのがいて、それで怖くなって逃げてきたと言ってるからね」

トシ江「まさか、正大もそんな仲間になって入ってんじゃないだろうね」

元子「そんなことないわよ! あんちゃんに限って、そんなこと絶対ないわ! 千鶴子さんのためにだって絶対…」走って部屋を飛び出し2階へ。

 

もう一人の人について、さっきから元子の不安が膨れ上がっていたのです。

 

ベランダから外を見る元子。「駄目よ…死なないで、大原さん! 大原さん!」

 

軍刀を手に叫ぶ大原と拳銃を自らの頭に当てる大原のイメージシーン。

 

元子「やめて!」

 

翌17日、東久邇宮内閣誕生。そして元子は一路、稲毛の戦車隊に駆けつけておりました。

 

応接室

正道「やあ。畑をやってたんでこんな格好で失礼します」首に手拭い。

元子「畑!?」

正道「どうも大変なことになって…」

元子「畑って塹壕のことですか?」

正道「はあ?」

元子「本当のことおっしゃってください! 私、知っているんです。今日も友軍機が飛んでいたし、軍では占領軍を迎え撃つために新しく陣地を築いたり、砲弾を隠したりしているような動きがあるということを」

正道「まあ、そういう部隊もあるにはあるでしょうが…」

 

元子「でももう戦争は終わったんです!」

正道「はい」

元子「生意気を言うようですけれど華々しく戦って死ぬことの方が、むしろ簡単なことじゃないんですか? それより職業軍人だった人が敗戦を初めて迎えた、この日本で新しく生きていくことの方がずっと難しいことなんだと思います。そして、生きていくことの方がずっと勇気のいることなんだと思います」

正道「ええ」

元子「お願いです! 勇気を持ってください、大原大尉!」

正道「はあ…」

 

元子「だって、私にひいおばあちゃまのおひなさまを見せてくださると約束したじゃありませんか! 男のくせに約束を破る気なの?」

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正道「いや…そんなつもりはありません」

元子「だったら突っ込んだりなさらないでください! 松江で待ってるご両親のことをお考えになってほしいの」

正道「あ、はい。今はその余裕はありませんが…」

元子「駄目よ! そんなの駄目!」思わず正道の手を握る。

正道「あ…。大丈夫ですよ」手を戻した元子の手に自らの手を乗せる。「本当に畑を耕していたんですから」

 

元子「大原さん…」

正道「困ったなあ…。あっ、それじゃあ、この手、見てください。情けないことにマメが潰れてるでしょう? これ、昨日から畑を耕してた証拠です。自分は当分ここに残るだろうし、まずは食料確保です」

元子「でも…」

正道「敗戦処理班に任されたんです。だから兵隊たちの復員の手続きや武器の引き渡しを完了させなければなりません。とにかくは自活です。ですから、お百姓さんのまね事を始めたんですよ。これはなかなか机上の作戦どおりにはいきません」

元子「それじゃあ…」

正道「はい。しばらくは、お宅へも伺えないなと思ってたところでした。元子さんの元気な顔を見て安心しました。お父さんにもお伝えください。大原は元気でやってますって」

元子「そんな…」

正道「何がですか?」

 

元子「いえ…。それじゃ、本当に突っ込んだり自決なんかしないと約束してくださいますね?」

正道「もちろんですよ。自分にはやらなければならないことも山ほどあるし、一時の感情で勝手な行動は取れません」

元子「あ…」ホッとして倒れそうになる。昭和だな~。

正道「あっ、あっ、ガンコさん!」

元子「あっ、すみません。大丈夫です」

正道「あ、いえ…しかし…」

 

元子「考えたら私、今朝から何にも食べてなかったものですから」

正道「ええ…」←ドン引きの声

元子「ごはんが喉を通らなかったんです!」

正道「どうしてですか?」

元子「鈍感なんだから! 大原さんなんて大っ嫌い!」

 

戸惑う大原。そりゃそうだよね~。

 

どうも変な具合になりましたが、気抜けと一緒に目下、元子最大の不安は消え去ったようでありました。

 

気抜け…爆笑問題田中さんが1980年頃、”オタク”という言葉がまだない時代にそういう人たちを”気抜け連中(略して抜け連)”と呼んでたことを思い出して笑ってしまう。関係ない話ですが…。

 

しかし、めちゃくちゃ昭和な表現な元子だけど、結構このカップル好きかも…。昭和の少女漫画みたい。大原さんのでっかい手に萌え。

 

ラジオのブザー音

川西「関東地区、関東地区、警戒警報解除。関東地区、関東地区、警戒警報解除。警報終わり。以上」

 

8月18日 午後0時7分。これが最後の防空情報でした。

 

そして、22日には天気予報も復活しました。

 

放送員室

恭子「3年8か月ぶりですか?」

立花「うん」

本多「そうだよ。昭和16年12月8日以来だから灯火管制も天気予報も、まさに3年8か月ぶりだ」

立花「うん」

川西「しかし、室長、せっかくの復活、第1日目は『本日は晴天なり』と出したかったですね」

立花「まあな。まあ、せいぜい天気予報のさびついた舌をかまないようにやってくるか」

笑い声

立花「じゃあ、行ってきます」

一同「行ってらっしゃい」

 

本多「まあ『雨降って地固まる』とは言うけどさ、何しろアメリカさんが進駐してこないことには、この放送局もどうなるか分からんな」

沢野「けど、海外放送はずっと続けるんですよね?」

川西「ああ。外地じゃまだ負けたのを知らずに戦っている部隊が相当数あるからね。何としてでもラジオを通じて敗戦の事実を伝えなければ。そこで諸君、くれぐれも舌をさびつかせないように。ねっ。はい、ご苦労さん」

本多「ハハハハハ…。室長のまねかい!」

川西「似てるかい?」

笑い声

 

すぐに分かって笑いだす本多と本多の顔を見て一瞬ポカンとする沢野が面白い。男たちは笑ってるけど、元子ものぼるもスンッて表情。元子は窓辺へ。

 

ソ満国境では8月末まで激戦が続き、のぼるの家族も正大の安否もいまだ分からず、本日晴天ならざる天気予報は戦後の苦しい庶民生活を暗示したもののようでありました。

 

つづく

 

来週も

 このつづきを

  どうぞ……

 

いや~、やっぱり面白い。最後の防空情報に戦後最初の天気予報。天気予報のない毎日なんて不便だよ。戦争が終わってよかった…とも単純に言えないか。まだ戻ってこない人たちがいるからね。