公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
女子放送員の試験まであと2日となった。元子(原日出子)は叔父の洋三(上條恒彦)に相談に出かけるが、その留守に、入営した正大(福田勝洋)からの手紙が家に届く。宗俊(津川雅彦)が上機嫌で手紙を読み上げていると、元子が女子放送員の試験を受けることが書かれていて、大騒動に。怒った宗俊は絶対許さないといきまくが、トシ江(宮本信子)に説得されてしぶしぶ折れる。試験当日、元子は神棚に柏手を打って試験場に向かう。
monparis
絹子「あっ、お帰りなさい」
元子「お帰りなさい」
洋三「おっ、来てたのか」
元子「ちょっと寄らせてもらったの」
絹子「暑かったでしょう、今日も」
洋三「ああ、徴用じゃないだけ、まだましだけどさ、えっ? モンパリのマスターが工員さんの雑炊作りでもって大釜の前でふうふう言ってるなんぞは昔のおなじみさんには見せられないねえ」
テーブル席に全部布がかかってるから今は店自体はやってないのかな。
元子「贅沢は敵です」
洋三「はいはい」
絹子「もっちゃん、はい」カウンターからおしぼりを手渡す。
元子「はい」そのおしぼりを洋三へ。
洋三「おお、ありがとう。お父っつあん、どうしてる?」
元子「うん…ポケ~ッとしてる」
絹子「何つったって正大ちゃんに出ていかれたのがこたえちゃってんのよね~」
洋三「あれでなかなか子ぼんのうだもん。こういう時世になりゃ、俺たち子なしの方がずっと気が楽ってもんだよ」
服部先生の時はこんな早口だったかな~?
元子「大丈夫よ。そのかわり、私がうんと悩ませてやるから」
洋三「ヘッヘッヘ…」
絹子「もっちゃん、あなたに相談したいことがあるんですってよ」
洋三「へえ~、ガンコちゃんの相談なら、叔父さん喜んで乗るよ」
服部先生も国井先生も進路指導は得意!(違) どうもこの2人が並ぶと「金八先生」が浮かぶんだよね~。第2シリーズ終わって半年後くらいだしねえ。
元子「女子放送員のことなんだけど…」
洋三「ああ…。そのことなら正大君にくれぐれもよろしくってくどいほど頼まれてるからね」
元子「え…あんちゃんが?」
洋三「うん。まあ、こういう時代に自分のやりたいことがあるってことだけでもすばらしいことだもの。叔父さん、とことん応援するぞ」
元子「本当?」
洋三「うん…。ただ叔父さんね、せっかくの専門学校が中退になってしまうってのがちょっと気になるな」
絹子「だけどさ、その前に、あの兄さんが受けさせるかどうかが問題じゃない?」
洋三「そのことならもはや黙って受けてしまうよりしかたがないだろう。大変なのは受かってからだよ。受かるかな?」
元子「受ける以上、私だって頑張るわよ。募集要項にだって専門卒と同等の学力を有する者ってあるんだし、私が同等の学力を発揮すればいいんでしょ? フフッ。それに…はい、叔父さん」灰皿を手渡す。
洋三「はい、ありがとう」
元子「私みたいのが工場へ行って大事な兵器のオシャカばっかり作るより放送員の方がず~っと向いてると思うのよ」
洋三「フフフ…向いてるかどうかは放送局の人が決めるんでしょ? まあ、芝居好きは親譲りなんだからそういう方でもってやらせてもらえるんだったら、その方が向いてるに決まってるさ」
元子「やっぱり叔父さんは話せる人でした」
洋三「で、願書はもう出したんだろ?」
元子「はい」
絹子「試験はいつ?」
元子「あさって」
絹子「頑張って!…って言いたいところだけど、受かったら受かったで、また一騒動ありそうだねえ…」
洋三「はあ~…」
元子「だから、その応援を頼みに来たんです。その時はどうぞよろしくお願いいたします!」
笑顔でうなずく、洋三と絹子。
吉宗
郵便配達員「郵便ですよ~、吉宗さん」
順平「は~い」
配達員「おっ、坊や。はいよ」
順平「あんちゃんからだ! わ~い、あんちゃんから手紙が来たよ~!」
茶の間
宗俊「お~、来たか! おいおい、ハサミ、ハサミ!」
縁側で上半身裸になっていた宗俊。トシ江が順平から手紙を受け取る。
宗俊「ほらほら! これはお前、俺に来たんだ」トシ江から手紙を取る。
トシ江「危ないじゃないの!」
宗俊「何だと!? 手紙が来てんだぞ? 正大から俺ん所へ!」
トシ江「そんな能書きはいいから、早く開けてくださいよ」
順平「早く読んでくれってば!」
宗俊「よ~し、そこへ座れ」
順平「早く、早く!」
宗俊「うるせえな」
巳代子「早く」
宗俊「今、やってるだろう、お前。よし。(せきばらい)『前略 父上様はじめ、皆々様、過日は不肖私の為に盛大なる送別会とお見送りを頂きまして誠に感謝にたえず、熱く御礼申し上げます』。バカが、他人行儀に何言いやがる」
巳代子「いいから先へ進んでちょうだい!」
宗俊「バカ。こういうものは間が大事(でえじ)なんだ。せかすんじゃねえ! え~『ただ、この世に生を受け、山より高きご恩をこうむりながら子としての孝養もつくせぬうちにお手元をはなれなければならなかったことが」
トシ江、顔を覆って涙を拭いている。
宗俊「返すがえすも心残りにて何とぞ不孝の段、お許し頂きたく伏してお願い申し上げます』。(トシ江に)バカ、こういうもんは決まり文句なんだ!」
トシ江「分かってますってば」
宗俊「だったらいちいち人(しと)の腰を折るんじゃねえ! (せきばらい)『さて、いま一つ四人兄妹の総領として心残りがございました。元子のことです。何度かお願い申し上げようと試みながら、ついにその機会がないままに出立の時を迎えてしまいましたが、元子はこの度、放送局の女子放送員なるものを受験いたしたき希望を持ち』…」無言で手紙を読み進め始める。
トシ江「ねえ、あんた。ちょっと」
巳代子「ねえ、放送員がどうしたの?」
宗俊「うるさい!」
順平「ケチ。自分一人だけずるいや」
宗俊「うるさい! これは俺に来た手紙だ」
あんちゃん、立派な手紙だな~。
吉宗
元子「ただいま!」
店先に出てきた宗俊(シャツ着てる)。「俺は承知しねえからな」
元子「え?」
宗俊「放送局なんざ俺は承知しねえっつってるんでい!」
元子「お父さん」
トシ江「何ですよ、そんな店先で大きな声出してみっともない」
宗俊「声の大きいのは俺の地声だ!」
トシ江「だからと言ってなにもそんなに…」
宗俊「そんなこんなもあるか。正大が出ていった時のことを胸に手ぇ当てて、よ~く考えてみろ」
トシ江「それと元子の希望とどう関わり合いがあるんですか?」
宗俊「おめえにゃ、それも分からんのか。このウスラトンカチ!」
元子「ちょっと待ってよ、お父さん」
宗俊「てやんでえ! あのラジオを見てみろ、あのラジオを!」
トシ江「ラジオが一体どうしたっていうんですか?」
宗俊「おめえ、母親としてよくもそんなのんきなことが言えるな。あの朝、東部軍管区情報とか何とか言いやがって、正大の一世一代の壮行会をおじゃんにしやがったのは放送局の野郎どもなんだ!」
元子「そんなバカな」
宗俊「すると何か? あれはラジオが自分で勝手にしゃべったってのか? そうじゃねえだろ! えっ? アナウンサーのキザな野郎が『ただいま警戒警報が発令されました』とか何とか、こっちの都合も考えず、気取った声でしゃべりやがったからよ!」
元子「むちゃくちゃだわ、もう!」
宗俊「いいか? この話はご破算だ。どうしても行きたけりゃ親子の縁を切ってから行きやがれ! (巳代子に)どけ!」大きな物音を立て、奥へ。
夜、元子たちの部屋
巳代子「それでお姉ちゃん、どうする気?」
元子「決まってるでしょ。こうなったら徹底抗戦あるのみよ」
巳代子「だからってまさか家を出ていくなんてことはしないでしょ?」
元子「それは成り行き次第です」
巳代子「お姉ちゃん…」
元子「ともかく一人にしておいて」
巳代子「変なこと考えるつもりじゃないでしょうね?」
元子「何言ってんのよ。大学、高専卒と同等の学力がいるんだもの。試験まではみっちり勉強しなくっちゃ」
巳代子「フフ…フフフッ。そうかあ…フフフッ」
元子「何よ?」
巳代子「受かるとは限ってないものね。お父さんだってあんなに頭から湯気立てることなかったんだわ」
ぷーっと頬を膨らます元子。「純ちゃんの応援歌」の純ちゃんにちょっとヒロイン像は似てるかもな??
縁側
宗俊と芳信が将棋を打っている。宗俊はまた麻の葉柄浴衣。
芳信「そうだよ。勘当だ、何だって騒ぐのは、まずめでたく合格通知が来てからのことですよ」
宗俊「何がめでてえもんかい。女はね、黙って嫁に行って丈夫な子供産んで育てりゃ、それが一番だい。そもそもあれだけ反対したのに専門学校なんてもんまで行きやがるからろくでもねえもんにかぶれんだ」
茶の間
繕い物をしているトシ江。「私は別に放送局がろくでもないものとは思いませんけど」
宗俊「何だと?」
トシ江「えっ、独り言ですよ。聞こえましたか?」
宗俊「聞こえるように言いやがって何が独り言だ」
芳信「ほれ、これで王手飛車取りだ」
宗俊「えっ? あら? そりゃないよ、ご隠居」
芳信「まあ、女ってものは嫁に行くのが一番幸せだろうが、女学校出たまま、ず~っとうちにいる百合子みてえに縁遠いのもうっとうしいもんだよ」
謎の近所の女性、百合子は友男の妻かと思ったら、芳信の娘(未婚)か。
宗俊「いや、だからってさ、この8代続いた吉宗から、えっ? 女の給料取り出してみなさいよ。稼業を傾けたみてえでご先祖様に申し訳が立たねえ」
芳信「でも、お前さんが稼業、傾けたわけじゃなし。日本って国が傾きかかってんだ」
トシ江「シッ! 『壁に耳あり』。そんなこと誰かに聞かれたらどうするんですか?」
宗俊も辺りをキョロキョロ見渡す。
芳信「でもさ、そうは思わねえかい?」
宗俊「ええ…そりゃまあ…」
芳信「東条内閣が辞めたんだってね、ありゃ、サイパンを取られたからなんだろ? ああ、旗色が悪いんなら悪いでしょうがねえじゃねえか。それを転進だなんて言い方が気に入らねえな」
転進…「芋たこなんきん」にも出てきたね。こっちは昭和18年ガダルカナルからの転進という話だったけど。
芳信の過激な考えに宗俊もトシ江も気まずく目を合わせる。
芳信「そもそも江戸っ子なんてものは判官びいきなんだから、はっきり負け戦って言ってくれりゃあ、こっちもその覚悟で一緒に心中でも何でもやらかそうじゃねえか。進め、一億火の玉だ」
宗俊「まあまあ、まあまあ…。いや…ご隠居、ほら…」
宗俊の慌てっぷりにクスッと笑うトシ江。
「ヘボ将棋 天下国家を斬る 夕べかな」字余り。
順平が部屋に入ってきてラジオをつけようとしている。
宗俊「さてと…」
順平「ほら、今日は『宮本武蔵』のある日だろ?」
宗俊「おっと、そうだった。聴き逃すところだったい」ラジオのそばに行きチューニング。ラジオから『宮本武蔵』の朗読が聞こえる。こっちには字幕付けてくれないのね。芳信もトシ江も宗俊の顔を見る。
宗俊「俺はラジオを聴くんじゃねえ。『宮本武蔵』を聴いてるんだよ!」
ドッカと座って目をつぶりラジオに聞き入る。トシ江はまたクスッと笑う。
時期がちょっとズレてるけど、これかな。
カーテンを閉め、文机に向かう元子。鉢巻きを締めてる。
ともあれ、必勝を期した元子はまず常識問題から猛勉強。受験戦争のスタイルはいつの時代も変わりはないようです。
1階
カーテンを閉めるトシ江。「ねえ、放送局、受けるだけ受けさせてやってくださいな」
ひとりで将棋盤に向かう宗俊。
トシ江「そしたら元子だって気が済むんだしさ。それに正大だってそうさせてやってくれって言ってきたんでしょ? あの子の顔も立ててやってくださいよ」
宗俊「そんなら、受けるだけでいいんだな?」
トシ江「ええ…」
宗俊「よ~し、仮に受かったところで、その先の話は別だ。いいな?」
さて、そうこう言ううちに試験当日の朝が来ました。
神棚に手を合わせる元子。
心の声「神様、仏様、明神様に水天宮様、どうぞよろしくお願いいたします」
宗俊「ふん! かなわぬ時の神頼みか」
元子「お父さん!」
宗俊「おい、彦さん行くぞ!」
彦造「へい! ああ、行ってまいりやす」
元子「もう~」
トシ江「受ける以上はしっかりおやり。奮発して卵焼き入れといたからね」
元子「ありがとう、お母さん」
トシ江「お礼を言うなら、あんちゃんにお言い。間違ったことじゃなきゃ、どんなことでもさせてやってくれって、あんちゃんそう言ったんだから」
元子「はい」うつむいて涙を拭く。
トシ江「頑張るんだよ」
元子「うん…」
巳代子「お姉ちゃん、途中まで一緒に行こう!」
元子「うん。行ってきます」
トシ江「うん」
巳代子「行ってきます」
トシ江「はいよ。行ってらっしゃい!」
元子・巳代子「行ってきます!」
当時、放送会館は日比谷公園の近く、内幸(うちさいわい)町にありました。
元子の後ろの背景はボケてるけど、絵。
放送会館に入っていく元子。
来週も
このつづきを
どうぞ……
「3年B組金八先生」第2シリーズから半年後に始まった朝ドラですが、80年代から90年代は金八先生が数年ごとに再放送していたことに比べると、朝ドラの再放送はBS2だったこともあり見る機会もなく、初視聴。
セリフの量が多いのは2年半前の「マー姉ちゃん」と同じだけど、しかしこの1週間、ヒロイン・元子のセリフは必ずしも多くない。金八シリーズもそうだけど、毎回、いろんな生徒にスポットが当たるし、群像劇みたいで面白いなと思います。金八好きとしてはキャストがかぶってるのがまた最高。
戦時中の暮らしが丁寧に描かれてるのがいい。でもこの1週間、ツイッターを見ると、さすが戦争が近い世代の描いた戦争は違うという人と古すぎて見てられないって人とで分かれる感じ。
これを真に受けて平成のばっかり続きませんように。気の早い話だけど次の朝ドラは多分平成の作品が来るだろうと思うけど、昭和→平成のペースが崩れませんように願います。ツイッターの声が視聴者全ての声と思わないで!