公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
結婚して、二週間たつが、純子(山口智子)はまだ秀平(髙嶋政宏)を「あなた」と呼べずにいることを少し気にしている。正太夫(笑福亭鶴瓶)が、純子たちの様子を伺いに来て、向かいに住んでいるあき(伊藤榮子)たちと酒を飲み、酔っ払って、純子の家にも顔を出す。もう寝るところだった純子と秀平だが、正太夫に付き合い、酌み交わす。結婚以前は秀平のことを勝手に敵視していた正太夫だが、秀平と握手するほど打ち解けて…。
朝、2階で洗濯物を干す純子。秀平はまだ寝ている。
純子と秀平の新婚生活がスタートして早くも2週間が過ぎようとしています。
向かいで布団を干しに来たあきと顔を合わせる。
純子「お母ちゃん、おはようさん」
あき「おはようさん。秀平さんは?」
純子「まだ寝てはんのや。ゆうべは2時近くに帰ってきはって」
あき「うちの恭子もちょうどそれぐらいやなかったかな。まだよう寝てるわ」
純子「体、大丈夫やろか」
あき「うん、毎日というわけでもないさかいな」
純子「宝塚にいてた方が楽やったみたいやね」
あき「そやなあ。そやけどそれこそ自分で選んだんやから」
純子「はよう大きな劇場で歌えるようになるとええのにな」
あき「そやなあ」
秀平「おはようございます!」
秀平も純子の洗濯を手伝い始める。それをほほえましく見ているあき。
あき「お似合いやで」
純子「あっ、嫌やわ、お母ちゃんゆうたら。もう秀平さん、あっち行って」
秀平「どうして? いいですよね、おかあさん」
あき「へえへえ。お母ちゃんが遠慮するさかい」その場を去る。
純子「(秀平に向かって)もう何のつもりや、一体」
朝から書をしたためる清原。
「僧敲月下門」
推敲のもとになった言葉。
秀平「ゆうべは遅く帰ってすいませんでした」
清原「何の何の。僕は一旦眠ると目が覚めないたちなんでね。君が帰ったのは気が付かなかったよ」
秀平は顔を洗いに外に出て、純子は清原におぶをいれる。
清原「僕たちの新婚生活はね、東京の本郷の西片町という所でね。4畳半と6畳、二間続きの借家だった。家内がどうしても『あなた』と言えなくてね。『あのぉ』というのが半年続いたな」
本郷というだけで、東大?と思ってしまう。
清原先生のなれそめ。
純子「私もあなたなんてよう言いませんねん。どないしても秀平さんと言うてしまうんです」
清原「秀平さんでいいじゃないか」
純子「そうですか? そやけど何や奥さんらしないような気がして。お母ちゃんは最初からあなたと言うてはったんやろか…」
そんな純子をほほえましく見ている清原。
あきが秀平にと、たこのやわらか煮を持って来た。
清原「奥さん。あなたは最初からご主人をあなたと呼んでいられましたか?」
あき「は?」
純子「先生! 嫌やわ」
清原「純子さんが気にしておられるようだから僕が代わってお尋ねしている次第ですよ」
あき「さあ、どないでしたやろ。昔のことやから忘れてしまいました。確か私は結婚してすぐにあなたと言うてたような気がしますけど」
純子「ほんまに?」
あき「何で?」
純子「ううん。私、まだどないしても、あなたてよう言わんねん」
あき「それは愛情が足らんからや。ほんまに好きやったら言えるはずやで」
純子「そんな…」
清原もあきもニコニコ。
あき「ちょっと言うてみ。聞いててあげるさかい」
純子「何言うてんの。知らんわ、もう」
帰ってきた秀平がお茶でもどうぞとあきを誘う。秀平が食べるのを見守るあき。
清原「いや、僕はここに来て本当によかったと思ってますよ。身近に聞く人の声にはぬくもりがありますね。僕が下市にいた頃は3日も4日も誰とも口を利かない日がありました。その時、ふと気が付くと独り言を言ってますなあ」
あき「独り言?」
清原「人間というのはたとえ自分自身とでも話をしたい。そんな生き物かもしれませんな」
あき「ほんまにそうかもしれませんね」
ほんまにそうかもしれませんねと私も思いました。
5月の爽やかな朝であります。ほほえましい若夫婦のささやかな朝の食事であります。
清原先生、あくびをかみ殺す。純子も気付く。一旦寝たら目が覚めないなんて嘘だな!
小野家では恭子がひとり朝食をとっていた。
恭子「あ、今頃から行くの?」
昭「うん、今日は昼前は授業ないんや。お母ちゃんは?」
恭子「お姉ちゃんとこや」
昭「何や。僕らにはお姉ちゃんとこあんまり行ったらあかんとか言うてるくせに。よいしょ。で、今日はどこで歌うんや?」
恭子「今日は伊丹や。あそこの進駐軍の将校クラブで歌わせてもらうことになってん」
昭「缶詰とか何やらまたもうてきたらええのにな」
恭子「そやけど、これがほんまの浮草稼業やね。あっちこっち転々として」
昭「僕らに言わしたら、もぐら稼業やで。お日さんに縁のない暮らししてるやろ」
恭子「何言うてんの。そやけどなあ、このごろあかんて思うようになったわ」
昭「何でや」
恭子「いや、ジャズかてな、そこそこまでいくけど一流にはなられへんし。まあ、もともと声量がないねや。口先だけでごまかして歌うてんねや」
昭「…」
恭子「昭、あんたには分からんやろけど自分の限界が分かるいうことは怖いことやで」
昭「そんなんよう分かってるて。僕なんか高校の時からずっと補欠の人生やで。お姉ちゃんなんかよりよっぽど挫折の連続やで。精神的に鍛えられてんの。見てみ、この厳しいええ顔」グイッとどや顔を近づける。
恭子「フフッ。アホ」
昭「痛っ。もう何すんの、痛いなあ」
恭子「よし、頑張ったろやないの」
昭、再び食事を始めた恭子の顔を見ている。子役昭と顔立ちは違うけど、キュンとするようなかわいい表情するよね。昭と恭子の2人きりというのもレア。
昭と雄太は大人になって顔のイメージは逆になったけど、雄太の方が自信があって堂々としてる感じがして、やっぱり唐沢さんの方が雄太っぽく感じる。唐沢さんと西川さんだと唐沢さんの方がだいぶ年上だしね。当時唐沢さんが25歳。西川さんは18歳。
正太夫が小野家に来て酒を飲んでいる。純子が人妻という感じがあまりしないと話す。お酒を飲み続ける正太夫を心配する恭子。
雄太「お姉ちゃんに失恋してやけ酒で鍛えたんや」
どうでもいいことだけど、この家はお姉ちゃん2人いるのにマー姉ちゃん、マッちゃん姉ちゃまみたいな感じに特に使い分けしてないね。
正太夫「こら。アホなこと言いな、ほんまに。怒るで」
昭と雄太ニヤニヤ。
あき「正太夫さん、たこのやわらか煮どうぞ」
正太夫「うわ~、これうまそうやな、いただこう。おいしい。恭子ちゃん、今、どこで歌うてはんねん」
恭子「決まってないねんけど、来週はキタのフラワーいうキャバレーで歌うことになってんねん」
正太夫「あ、ほんま? ほな一遍行ったろ、見に」
恭子「いや~、来んといて。恥ずかしいわ」
「向かい、もう寝たかな」と純子を気にする正太夫に「行ったらあかんで」と昭。
正太夫「分かったある。当たり前やがな。もう10時半過ぎたあんねんで。そんなことしまっかいな。ちょっと聞いてみただけやん」というが、昭、雄太、あきみんな心配そうな顔。
正太夫「今日はめちゃめちゃ楽しいでござります~や」
純子たちは寝室で、そろそろ寝る準備をしているところに階下から声が聞こえた。
清原「君、こんなに遅くにいかんよ」
正太夫「ちょっとだけですがな。おい! 起きとるか? 上がるで!」
清原「君!」
純子「正太夫さんやわ。何やろ?」
正太夫「お~い、階段の半分のとこまで来たさかいな。かまへんか?」←一応少し気を遣ってる?
秀平「どうぞ!」
正太夫「興園寺正太夫ただいま参上。行ったらあかん言われたんやけどな、チラッとだけ。すぐ帰るさか」
もうやめてあげてよ。純ちゃんのお母ちゃんには内緒で来たという。
秀平「いいじゃないか、入ってよ」と布団を片づけ始め、純子も歓迎。
結局、寝間着から着替えて熱燗を作る純子。秀平と正太夫、清原は酒を飲んでいる。秀平は正太夫と飲みたいと思っていたと話す。
清原「いやいや、構わんよ。僕だって若い頃は夜を徹して飲んだもんだ。今だって原稿を書く時にはね徹夜になることもあるよ」
そうなんだ!
正太夫「しかし、先生はもっと怖い人やて思ってたけど、何やこないして見たらただのおじいちゃんやな」
清原「ワハハハハ、そうかね」
秀平の仕事のことについて正太夫に尋ねられると、「ザ・ワールド」に時々載るようになったからなんとかなると答えた。正太夫は林業組合の年末に出すカレンダーの写真を撮ってみないかと依頼した。正太夫は真面目に働いているため、今は組合の理事をしている。秀平と純子は是非にと頭を下げた。
昨日の敵は今日の友、今まではライバルやったけど、今日からは友達だ!と陽気な正太夫。握手を求めた秀平とがっちり握手。
正太夫「そのかわり言うとくで。純子ちゃん、幸せにしたってや。不幸な目に遭わして離婚やいうことになったら、すぐに僕が引き受けるさかな」
秀平「分かってる。大丈夫」
握手した手を離し、一旦姿勢を正して真面目な顔をして「頼んます」。
翌朝、一転低姿勢の正太夫が速水家から出た。
正太夫「えらいすんまへんでした。新婚家庭にほんま…。昨日、酔うてたもんやさかい」
純子「そんなこと気にせんとまた遊びに来て」
秀平「ほんとに遠慮しないで」
正太夫「あの…清原先生にもくれぐれもよろしゅう言うといておくんなはれ」
純子「かまへんて」
正太夫は恐縮してぺこぺこしながら帰って行った。
秀平「いい人だなあ、正太夫さんて」
秀平と同じように大きく伸びをする純子でつづく。
次の放送は21日という絶望的テロップを目撃。割と区切りのいいところで終わったからよかったけどね。次が待ち遠しい。