公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
塚田(日下武史)はマリ子(熊谷真実)を連れて、流行作家・菊池寛(フランキー堺)の屋敷を訪ねる。菊池のほどけた浴衣の帯を見て、咄嗟に締め直してしまうマリ子。煙たがる菊池だが、マリ子は意に介さず、転ぶと危ないだの、子どものようだの、菊池の体型にまで言及してしまう始末。慌てる塚田をよそに、遠慮なく物を言って仕事ができそうだとマリ子を気に入る菊池。そのまま、天下の菊池と雑誌の写真撮影をするマリ子だが…。
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ここは天下の大流行作家・菊池寛氏のお住まいです。
大緊張しているマリ子。
塚田「大丈夫だよ。なにも菊池先生だからって取って食うってわけじゃあるまいし、そうあんまり硬くなるなよ」
マリ子「はい」
塚田「弱っちゃったな~。そんなことじゃ先生がせっかくお見えになったって話にもなりゃしないじゃないか」
マリ子「はい…いいえ、努力します」
それでも緊張しているマリ子に塚田は水を一杯頂戴するように言う。
菊池「あんたが磯野君か」
マリ子「はい、磯野マリ子です」
菊池「略歴は塚田君から聞いとる。うん、まあよろしく頼むよ」
マリ子「いえ、私の方こそ一生懸命頑張りますのでどうぞよろしくお願いいたします」
塚田「いや、先生にお目にかかれるっていうんでだいぶ硬くなっておりますけれども大変な勉強家でしてね、先生のお作もだいぶ読んでおるようですしファンだったそうです」
菊池「う~ん、そうか。それはどうもありがとう」
マリ子「い、いえ…あ…そんな…」
菊池「それで…。ん?」
マリ子は菊池の帯が気になり、立ち上がって直した。
菊池「君はそんなことが気になる方?」
マリ子「はあ?」
菊池「いや、僕はね体に悪いからあんまり帯をギュッと締めるのは嫌いなんだ」
マリ子「はい」
菊池「だから往来でもよく引きずって歩いてることはあるらしいんだが、そんな時、わざわざ人に注意されるのは嫌なんだ」
塚田「どうも後でよく言い聞かせておきますんで」
菊池「いやいや、後でってそんな今言うてやったらいいじゃないか。ん? 帯ぐらいのことで後で言い聞かせるほどのことはないよ」
塚田「はあ」
菊池「いや、帯なんていうのものはね解けていても気が付かなければ僕は平気な方なんだ。自分自身が平気なことをね、わざわざ人から指摘されるのが嫌なんだ」
マリ子「はい」
菊池「そんなことはね、人に注意されなくてもやがては気が付くやろ? なっ? 人生の重大事もそれと同じようなことだろうと思う。だから今後僕とつきあうのだったらまあそんなことよく覚えておくことだね」
マリ子はよく分からないと言い、夢中になると自分のことも気が付かないが、でも危ないという。ほどけている分ならいいけど、今みたいに転ぶこともある。注意せずにいられないというより、先に手が出ている。子供が走ってきて車にひかれそうになったら、危ないと注意するより、先に飛んで行って抱きとめる。
菊池「あ~…するとつまり僕は子供みたいなものか」
マリ子「はい。あっ、あのほら、先生みたいな体形の方ですと、それでよく転ぶことがおありでしょうし、下手に手をついたりすると…ねっ? 大事な腕を折ってしまいますし。骨折っていうのは痛いですし、それに治るのも遅いですから」
菊池「ん~…あの体形って、そんならわしの体形は、つまりデブか?」
マリ子「はあ?」
塚田「先生、どうかもう勘弁してやってください。まさかこんな失礼な訪問になるとは思わなかったもんですから」
マリ子「えっ? 私、何か失礼なことでも?」
塚田「当たり前じゃないか!」
菊池「いや、いい、いい…なかなか面白い。正直でいい」
マリ子「はい、でも母が申しますには私には上にバカが付くバカ正直なんだそうです」
菊池「いやいや、しかし、それはだね率直というふうにも翻訳できるやろ。ええ、うん。なかなかいいじゃないか。これで遠慮なく物が言えて仕事ができそうだ」
塚田「あっ、先生ということは…」
菊池「うん。君が推薦してきた人やろ? もっと後押しをせんでどうして人材が育つ」
塚田「はあ」
菊池「いいよ、いいよ、うん。え~今後は磯野君はそういう人やと思うて僕はつきあうことにするから」
マリ子はバカ正直に特別ファンじゃないことを告白し、菊池からそれ以上言ったら塚田君の立場がなくなると話をさえぎった。その後、打ち合わせ風写真を撮影。12月号の巻頭グラビアの予告に使う。
昭和12年(1937年)の『婦人倶楽部』より。
— 戦前~戦後のレトロ写真 (@oldpicture1900) December 15, 2020
当時の連載陣(小説家+挿絵画家のコンビ)です。
(1)菊池寛と長谷川鞠子。鞠子は長谷川町子の姉ですね。
(2)吉川英治と岩田専太郎
(3)川口松太郎と須藤しげる
(4)林芙美子と宮本三郎
いずれも凄いコンビです。 pic.twitter.com/GvzQqe3EUh
この左上が当時の写真か。すごいな~、こんなのが残っているなんて。
無我夢中だったマリ子もこのフラッシュを浴びて、再び菊池大先生の前にいるという実感を取り戻しておりました。
磯野家では朝男がマリ子を心配している。マチ子は細谷に電話して、塚田と出かけたと言ってたというが、タマまで塚田が変なやつだったらといい、ヨウ子もマー姉ちゃんがあまり寝てなかったので病気になったら…と心配する。
はる「大丈夫です。あの子も私たちもまっとうに暮らしてきたんですから神が決してお見捨てになるわけがありません」
マチ子「私、信じないわよ! だって、マー姉ちゃんの無事な顔見るまで私、絶対に信じません!」
そこに訪ねてきたマドカは「姉と一緒にミートローフを焼きましたのよ」と持って来た。パンに挟んでお夜食にいかがかな~なんて思って、それで持ってまいりましたのよと皿を差し出す。
マドカ「ゆうべも遅くまで電灯がついていらっしゃいましたこと。お嬢様方、随分とおつむを使われるお仕事なんざんすわね」
マチ子「いえ、それほどでも…」
マドカにカードに誘われたが、そこにポーっとしたマリ子が帰ってきて、倒れた。
朝男がお姫様抱っこで運んで、座布団を並べたところに寝かせた。家に帰り着いて気が緩んだマリ子は、菊池寛と写真を撮ったこと、何枚も撮られるうちにボ~ッとして来たと語る。
マリ子「どうしよう、マチ子~!」
マチ子「マー姉ちゃん!」
マリ子「私、菊池寛先生の挿絵描くの」
マチ子「えっ…?」
マリ子「『女性倶楽部』の新年号からですって」
マチ子「うそ~!」
マリ子「本当なんだってば~! ああ~、目が回る…」
マチ子「マー姉ちゃん!」
はる「そうですとも。これも神の試練です。乗り越えなさい、マリ子」
マリ子「だから私、お受けして…」
マドカ「あっ! あの菊池寛先生っちゅうのは、もしや小説家の菊池寛氏では?」
急に口調が変わるマドカ。
マリ子「そうなんです! それ、私、私…デブだなんて…ああ…」
はる「マリ子、マリ子」
マリ子「ああ~、カメラが、カメラが…雷さんみたい。ああ…ゴロゴロピカピカ…」
朝男はタマに例の薬と言われて作ってくるからなと言い、マドカも慌てて姉のウララに報告に行った。姉妹揃って菊池寛のファン!?
マドカ「お姉様こそ、『真珠夫人』を読みながら、まるで…まるで私のことみたいなんて泣いてらしたくせに」。マリ子が熱を出したので特効薬を出してやってというマドカ。
タマ&朝男の薬とウララ&マドカの薬が揃う。
朝男たち近所の方たちがウララとマドカで「ウラマドの奥さん」と呼んでいたことが判明。
朝男が作ったのはこいの生き血をサイダーで割ったもの、肺炎で死にかけてる病人も治る。ウラマド姉妹の薬は卵の黄身をコトコト火にかけて、ニンニクをおろしたのを練り上げたもの。マリ子は体を起こしてもらっていたけど、また倒れた。
哀れ、こうショッキングなことばかり続いてはさすがのマー姉ちゃんも目を回すだけでした。
フランキー堺さんはこの間「あ・うん」を見ました。
いつも快活な人のほうが多い気がするから、菊池寛みたいな感じ、面白かった。大造さんが「純ちゃんの応援歌」のあきさんと実生活では夫婦だったのを今回の再放送で初めて知ったけど、「あ・うん」はフランキー堺さんと「純ちゃんの応援歌」のナレーションの杉浦直樹さんの共演作で、また共通点が見つかり面白いなあと思います。