公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
菊池(フランキー堺)から春秋文学社で働くよう誘われたヨウ子(早川里美)だが、塚田(日下武史)が懸念するほど消極的。人見知りなヨウ子は公園で一人で弁当を食べており、マリ子(熊谷真実)もまた心配する。一方、我が道を行くはる(藤田弓子)は鉄くずを拾いに行く。その間に、均(渡辺篤史)が手土産を持って訪ねてきて、マチ子(田中裕子)に標本を絵にする仕事を紹介する。そこへ、呉服屋の金沢(西村淳二)がきて…。
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菊池寛宅。塚田とヨウ子が顔を合わせていた。
塚田「引っ込み思案だって聞いてたけど女学校に入った頃だったな、確か1回だけ会ったな」
ヨウ子「はい」
塚田「うん…。で、お姉さん元気?」
ヨウ子「おかげさまで」
塚田「うちの児童物もやってんだから社に寄ったらたまには顔見せるように言ってよ」
ヨウ子「はい」
塚田「本当におとなしいんだね、君は」
ヨウ子「すいません」
塚田「いや、謝ることはないけどさ。まあ、お姉さんは大物だった」
ヨウ子「はい」
塚田「うん…」
すぐに会話が終わってしまうことに戸惑う塚田さんが面白い。
ヨウ子「あの…」
塚田「ん? 何だ?」
ヨウ子「細谷さん、どうしていらっしゃいますか?」
塚田「ああ、細谷か。あいつ、ちょっと体壊してな」
ヨウ子「まあ、ご病気なんですか?」
塚田「いや、病気ってほどじゃないんだけども『のらくろ』を終了した時点からあんまりパッとせんな」
ヨウ子「お会いになりましたら、また、お遊びに来てくださるようおっしゃってください」
塚田「ああ、そうか。マチ子さんは、やつと仲よしだったな」
ヨウ子「はい」
菊池「やあ、すっかり待たせちゃったね。すまん、すまん」
塚田「いいえ、とんでもございません」
菊池「君じゃないんだよ、ヨウ子さんだ」
塚田「は…はあ…」
菊池「今ね、社から連絡があってね、どう? 君、社の方へ出勤しないか?」
ヨウ子「はあ?」
菊池「僕の春秋文学社がね新橋にあるんだ。そうだ! 来週から出てきなさい」
ヨウ子「あの…」
菊池「いやいや…大丈夫だよ。講義は今までどおりちゃんと続けてやるから。僕の気の利いた秘書がやめちゃってね。うん。まあそれで仕事といえばさ僕への電話のメモぐらいなもんなんだが、ちゃんとその分だけのお給料は払ってあげるよ。どうだ? 月30円くらいでどうかな?」
ヨウ子「はい、でも…」
菊池「いや、大丈夫。机上の学問よりも社会勉強の方がず~っと栄養になるんだから。僕なんか大学へちっとも行かなかったよ」
ヨウ子「はい、でも…あの…姉たちと相談してからでもよろしゅうございましょうか?」
塚田「おい、君。相談なんてこと言わずにこんな結構な話はまとあるもんか。今すぐにここでお願いするんだよ。よろしくお願いしますって」
菊池「君、それは内政干渉じゃないか、塚田君」
塚田「な…はあ?」
菊池「君は陽談社。これは春秋文学社の人事問題なんだから」
塚田「はあ…。いや、しかし、僕はマリ子さんの引っ張り出しの責任者でもあるわけですからね。彼女の妹ともなれば、まあ、アドバイスくらいはしてもいいんじゃないですか」
菊池「ハッハッハッハッ、まあそうかもしれんが。じゃあ、磯野君。今日はこれでよろしい」
ヨウ子「はい、それでは失礼いたします」
ヨウ子は帰っていった。
塚田「しかし、今どき珍しく欲のない子ですね」
菊池「だからさ」
塚田「はあ?」
菊池「あのおとなしさというものはむしろ珍重すべきものなんだが物書きになるとなると少し押しの足りんところがあると思ってね」
塚田「あ~、そうですね。まあお姉さんの半分くらいは必要ですな」
しょんぼりして帰ってきたヨウ子は家の前を通り過ぎようとしているところを乗馬ズボン姿のマドカに声をかけられた。ボーっとしていたのは小説のストーリーを考えていらっしゃいましたのでしょう?と決めつけられた。
マドカ「ええ、芸術家が作品のためにおのが魂を奪われるということは私だって存じておりますもの。それでこそベートーベンあり、ジョルジュ・サンドあり、シェークスピアがあったのだと思いますもの」
マドカが期待するのはできれば美しい恋のお話であったらうれしい。パリで言い寄られた時のパリジャンの恋の手管など参考になればお話しするとまで言う。
そうですとも。今のヨウ子はとてもそんな心境ではなかったのです。
磯野家に帰ったヨウ子は姉たちに相談。
マチ子「秘書って社長秘書のあの秘書?」
ヨウ子うなずく。
マリ子「いいお話じゃないの、ヨウ子」
マチ子「冗談でしょ。秘書なんていうのは私みたいにテキパキした人間じゃないと務まんないのよ」
マリ子「『私みたいに』は余計だけどね」
マチ子「まあ、この際、それは置いといてヨウ子が秘書なんかなってごらんなさいよ。知らない人とは口もきけないんじゃどういうことになると思ってるの?」
ヨウ子「お願い、マー姉ちゃん。なんとかお断りできないかしら?」
マリ子「まあね…それはヨウ子がどうしても気が進まないっていうんなら、うちは無理に働いてもらわなくてもいいんだけど…」
ヨウ子「困るの、私」
マリ子「困るって?」
ヨウ子「そんな所へ行ったら、私、お弁当どこで食べたらいいのか…」
マチ子「どこでって会社で食べなきゃどこで食べるのよ。変な子。今だって菊池先生のお宅で食べてるんでしょう?」
下を向くヨウ子。
マリ子「まさか、ヨウ子」
マチ子「そうじゃなかったの!?」
ヨウ子「私…」
マリ子「一体どこでお弁当食べてたの?」
マチ子「ねえ!」
ヨウ子「公園」
マリ子「公園!?」
マチ子「どうして!?」
ヨウ子「だって公園なら誰もいないし…」
マチ子が何か言いかけたところで、マリ子に塚田から電話があり、マリ子は階下へ。マチ子は話題を替え、ヨウ子に作るスーツのデザインを見せた。時折、マチ子とヨウ子は顔が似てるように思う。でも実際の洋子さんは写真を見た限り、どっちかというと毬
はるからどんな電話だった?と聞かれ、仕事の電話だったと答えたマリ子が振り向くと、はるは頭に手ぬぐい、口に白い布を当て、磁石を手に出かけようとしていた。くず鉄拾いをするという。
はる「あとの一発の弾で戦争が終わるというのなら折れくぎでも針金でも断固集めるべきです」
実行魔はいつどんなことでも実行魔でした。
マチ子とヨウ子が玄関に降りてきた。はるがくず鉄拾いに行ったことを妹たちに言う。
マチ子「お母様、いつからそんなご商売になったの?」
マリ子「ご商売じゃなくてお国のためなの」
はるさんが”お国のため”というのを毛嫌いするタイプかと思ったから意外。
そこに現れたのは均。お土産と耳寄りな話を持ってきた。その前にはるの話題。
均「えっ!? じゃあ、この先のドブさらってた人が? まさか~!」
マチ子「そのまさかがうちのヒトラーなのよ」
マリ子「もし、その一発の弾で戦争が終わるならって、そりゃあもうさっそうとしたものでした」
均「お宅のお母さんには参ったな~」
耳寄りな話とは帝大の分室で標本を絵にする仕事がある。魚、鳥、草木の標本。
均「便せんの仕事もなくなってしまったし、それにね、一人前の絵描きがさ、いつまでも姉さんのすねかじってるわけにはいかんだろ」
マチ子「いや~…そんな傷つけるようなこと言わないでよ。仕事がないわけじゃないのよ。ただ気に入った仕事がないから私…」
均「あのね、今は仕事を選んでる時じゃないんだな」
マチ子「弱いんだな、その話は…」
マリ子「いいのよ、マチ子は無理しなくたって」
均「いや、マリ子さんこれはね、できるだけ忠実に絵にすればいい仕事なんですから簡単なんですよ」
マチ子「忠実な絵ならマー姉ちゃんが専門です!」
笑い合う姉妹。
均「まあ、別に規制も圧力もないからマッちゃんにも抵抗なくできるんじゃないかと思って、僕、その…名前言って頼んできちゃったんだけども…」
マリ子「まあ、どうもありがとうございます」
均「いやいや、せっかくの腕があるんですからね。俺はいいと思うんだ」
マチ子「うん、考えてみる」
「さては南京、玉手箱」と均が風呂敷を広げると、かごの中に鶏が入っていた。かごから飛び出そうとするのをグイっと均ちゃんが押さえたところで、うわっと思ってしまった。均は僕がしめるから今夜僕も一緒にご相伴に預かりたいという。
しかし、ヨウ子が反対。殺してはかわいそうといい、飼うと言った。ヨウ子が卵を産むというと均は卵を産んでからしめても遅くはないと笑う。マリ子も卵を1日1個産めばみんなでオムレツが食べられると提案。
均「男はすぐひねることばかり考えるけどもさすがご婦人ですな」
小屋がないので庭にくくっておくことに…。均は散歩をしていた鶏を一緒に遊びに行かないかと誘った=盗んだ。
今度は良造が訪ねてきて、頼んだ男が衣料切符と前金を持ったままドロンを決め込んだと言って土下座した。
マチ子「わびで全部済むんだったらお巡りさんも警察もいりません!」と責めるような事を言うと、良造は態度が変わって、「私がインチキのように聞こえるじゃあござんせんか! ええっ? お嬢さん! ええ~?」と玄関に座り込んだ。
庭で鶏を追いかけていた均が玄関から登場「僕にもそう聞こえたぜ」。
良造「誰だ、あんたは!」
3人「正義の味方です!」
パイプをくわえた均がにらみをきかせる。
ギャグっぽい話になってるけど、鶏をしめる話か~。菜食主義者でもないくせによく言うよ! やっぱり天松屋は詐欺師であったか…。