TBS 1973年11月22日
あらすじ
脳腫瘍に侵された清一(小林桂樹)は、自制力を失い、意味もないことを口走っては麗子(久我美子)を困らせた。医師の江川(伊藤孝雄)は麗子を慰める。 ※脳腫瘍による様々な症状が表現されていますが作品上の演出です。ご了承ください。
2025.1.7 BS-TBS録画
稔のナレーション「例えば、あなたのうちのお父さんや旦那さんとかが倒れたとき、家族の人はどういう態度を取るだろうか。みんなで力を合わせて、その不幸せを乗り越えようとするだろうか。僕の家は正直言って、父が倒れる前はみんなバラバラだったと思う。しかし、父が入院してからは兄貴も妹もみんな力を合わせようとしていると思う。僕は、そんな僕の家族を誇らしく思っている。でも、父はそんなのはインチキだと言うのだ。ホントは父のことなど心配してないし、力を合わせようともしてないと言うのだ。もっともこれは本当の父の言葉ではない。父は脳腫瘍で意識がなく、こんなことをやたら口にするようになっているのだ」
企画:木下恵介
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脚本:山田太一
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音楽:木下忠司
主題歌作詞:山田太一
歌:中新井節子
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清一:小林桂樹
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稔:小倉一郎
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茂:林隆三
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陽子:高沢順子
唐木:火野正平
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守江:三戸部スエ
患者の男石光:桜井センリ
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大学の教師:平田守
看護婦吉村:土井かつえ
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教授:稲川善一
看護婦:宝生芙紗子
エースプロ
劇団いろは
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江川医師:伊藤孝雄
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麗子:久我美子
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プロデューサー:飯島敏宏
酒巻武彦
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演出:井下靖央
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制作:木下恵介プロダクション
TBS
大学の授業で居眠りしている稔。英語を聞き取って要点をまとめる。唐木はそっと稔の隣に移動し、稔を起こした。女のことで気まずくなりたくないと言い訳する唐木に生返事の稔は俺は降りた、好きなようにしていいと言う。教師に見つかり、怒っているわけじゃない、軽蔑している、出て行ってくれと稔たちの答案用紙をビリビリに破いた。
外に出た稔はうちじゅうで力を合わせて親父がなんとかなるため何とか切り抜けようとしていると唐木に話した。唐木は自身にもすげえこと起こらねえかなと思うもんと共感した。稔は、あの子のことは割り切ったと伝え、今までどおり友達通りでいることにして別れた。急に物事が簡単になった気がし、充実した気になっていた。
稔が病院に行くと、陽子は病室の片づけをしていた。両隣の患者に迷惑で個室が開くのを待っていて、ようやく移れることになった。おお、隣のベッドは桜井センリさんか。陽子が迷惑をおかけしましたと頭を下げると、陽子たちを気遣った。今までの回も桜井センリさんだったのかなあ? よく見てなかった。
「心」や「ちょっといい姉妹」など石井ふく子プロデュースドラマに度々出演してたけど、あの軽やかな声が好きなんだよね~。あと3話だけど今後も出るかな?
病室
清一はまた麗子に文句を言っていた。荷物を持って部屋に入ってきた陽子と稔。今日の清一は顔色が悪いな。ひたすら文句を言う清一の言葉をじっと聞く麗子、江川医師、茂。江川が少し休みましょうとベッドに横たわらせた。
面談室というか江川医師の控室?
江川医師は麗子と茂にお茶を運びながら、聞いてるほうも辛いけど、しゃべってるほうも記憶があったらやりきれないと言うが、麗子はお父さんあんなことを考えていたんだと感じ、本心だと感じていた。江川は今日伺っていると根も葉もないことばかりと言えないが、あまりに卑屈で病的なものだから本心ではないと言う。麗子は今まであまりしゃべらない人だったから、あんな細かいことを覚えていたんだとかわいく思えていると話した。江川は脳腫瘍を患った男性の90%は妻の悪口を言うと言う。
清一の手術はする。金曜日が手術日だが、明日の午後には返事をすると言う江川。やさしいとは申し上げられない手術。伊藤孝雄さんの声って説得力あっていいわ~。
稔が清一のそばについていると、日暮里のおばさんがやってきて、鬼門に御不浄を作ったからだと泣く。ご飯を食べるときに手を合わせる?と聞き、稔が首を横に振ると、清ちゃんは結婚してから頭が上がらなくなったと麗子の悪口を言い、今年は清一の星回りが悪いと言い出す。今年の夏は暑かったということを当てた先生は、清一は9月に事故に遭うと言い、10月だったけど遭ったでしょう!とまた泣く。お参りに行ってくれれば、人間は信仰がなきゃダメと熱心に語る。うぜ~。夏は大体暑いよ!
家に帰った稔。茂は麗子の革細工をしていた。稔が日暮里のおばさんが麗子と入れ違いに帰ってよかったと言うと、うるせえからな、あのババアと茂は笑う。先天性の脳腫瘍だと言い合って笑う。ブラックジョークだね。麗子は清一の言うことを気にしており、陽子がかわいそうだと泣いて、積極的に家事を手伝うようになった。夜に洗濯した陽子を手伝う稔。
翌日曜日、麗子と交代するため、3人で早めに病院に行くと、麗子は病室で散らばった食事を片づけていた。清一はボーッとして天井を見上げたままで茂や稔が話しかけても返事をしなかったが、突然、バカ野郎、甘ったれたようなこと言うな、連れ子の後家さんにいいように振り回されてる、お前らの情けなんか受けたくないとブツブツしゃべりだした。一生、あのときは大変だったと恩着せがましいことを言われるんだと言う清一に反論する稔を止めた茂。稔は病気のせいと言われてもお父さんの本音だと感じていた。
午後、江川と教授たちが日曜だと言うのに大勢、清一の様子を見に来て何も言わずに去った。教授の稲川善一さんは木下恵介アワーにも出てた。
注射で眠っている清一。買い物して戻ってきた陽子。結局、手術の日について何も言わなかった。麗子は医師たちへの付け届けにスコッチ2人分で14000円を陽子に買わせていて、茂が様子を見にいって渡せたら渡すと出て行った。茂さんがいてよかった、頼りになると麗子が言い、稔や陽子も慌ててフォローした。
茂は例の美人看護師に相談していて、手術後に渡したほうがいいという結論に達した。美人のほうがいいとか看護師という職業に何の関係もないのにな~。
江川が手術の日を火曜日だと伝えると清一は泣いた。しかし、言いだしたのはブルーのGパンを履いてみたい、細身のシャツで長い髪をなびかせて、女の子と銀座辺りを歩いてみたい。ゴルフも慰安旅行も嫌、Gパンを履いて布製のショルダーを下げてサンフランシスコに行きたい。こんな歳になって今更どうしようもないと泣く。ブルーのGパンがあ…と泣く清一をベッドに寝かせる江川。手術前の最後の言葉が失った若さを嘆く発言で麗子の言葉に耳を傾けることはなかった。
院内で麗子を捜し回る茂と陽子。清一についていた稔も捜すことにした。
病院の西門のそばの小さな喫茶店にいた麗子を捜し出した稔と陽子。麗子は脳腫瘍になったら若くなりたい、家族の世話をしたくないと言い出すんじゃないかと思ったが、家族と一緒にいたいとも思っているし、清一も心の一部が外に出ただけという。
母が喫茶店に一人でいたことに胸を突かれた稔は陽子とふざけたりして慰めようとしていた。
火曜日、麗子だけが手術する清一を見送った。(つづく)
見ごたえのあるドラマだし、小林桂樹さんってホントすごい。伊藤孝雄さんもめちゃくちゃ頼りになるカッコいい医師だ。林隆三さんも頼もしい兄さんだ。あと3回で終わっちゃうけど、どうなっちゃうんだろうな??