TBS 1973年7月3日
あらすじ
彩子(淡島千景)の夫の法事をすることになった。だが親戚につらく当たられる彩子を見てきた桂(松坂慶子)や多美(上村香子)は、親戚は自分たちで切り盛りするからと言って、彩子に四国巡礼の旅を勧めた。
2024.2.28 BS松竹東急録画。
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北晴彦:藤岡弘…トラベルチェーン開発課の社員。
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中西良男:仲雅美…鶴吉の息子。
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大須賀伸(しん):荒谷公之…織庄の一人息子。
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山下幸子:望月真理子…自殺未遂後、「二上」で働きだす。
店員:東谷弓子
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割烹旅館 二上
玄関の扉を開け、外に出た彩子。「ああ~、今日もいいお天気。武甲山(ぶこうざん)がきれいだこと」。「割烹旅館 二上」と書かれたブリキのバケツを左手に持ち、右手のひしゃくで打ち水をする。
帳場に戻り、仏壇の前に行くと、包丁の音が聞こえ、厨房に行くと、多美が料理をしていて、これからずっと早く起きることにしたと笑顔で彩子に言う。
彩子「それは感心だこと。いつまで続くか楽しみだわ」
多美「お母さん一人に負担かけちゃ悪いもん」
彩子「それはそれは感心ね」
多美「ここ、私やるから、お母さん休んでて」
彩子「鶴さん、起きてきたらびっくりするわよ」多美に手渡された魔法瓶をもって仏壇へ。
桂も起きて来て彩子は驚く。桂は水森亜土ちゃんエプロンと薄ピンクの上下。
桂「もう朝風呂は入ったんですからね」
彩子「どうりで顔が光ってる。分かった。多美さんと約束したんでしょ?」
何を約束したの?と彩子が聞いても、「フフフッ、秘密秘密」と濁す桂。今日は日曜日だと彩子が言っても、だから早起きした、と手伝う気でいる。
彩子「雨どころか台風が来るわ」
桂「地震かもしれなくてよ」テーブルを揺らす。
彩子「ああ~、もう。3日続いたら首あげる。フフッ」
桂「随分、見下げ果てたわね。よし、見てらっしゃい。うんと重労働させてよ。張り切ってんだから」
彩子「そう。仕事はいくらでもあるわよ」と新聞を取りに行かせた。
桂は「OK」と返事をし、仏壇に手を合わせて部屋を出た。
彩子「お父さん、女将さん。2人ともあんないい子になりました」鈴を鳴らして、手を合わせる。
厨房から皿が割れる音がして、彩子が声をかける。「多美さん、ケガない?」
多美「はい」
起きてきた鶴吉は多美の姿を見て驚き、「彩さんが若返ったのかと思っちゃったよ」
多美「あら、そんなに似てる? 私とお母さん」
鶴吉「似てるね。だんだん似てくるようだな。不思議なもんだな。血が繋がってるわけでもねえのに。もっとも多美ちゃんのほうがずっときれいだけどな」
彩子「聞こえてるわよ、鶴さん」
おはようと言い合うものの、鶴吉はヘヘヘと笑う。
桂も起きていて、これからずっと手伝うと言っていたと彩子が言う。
鶴吉「そりゃまたどういう風の吹き回しだい?」
多美「早起きは美容のためにいいっていうでしょ」←あら、字幕が黄色じゃない。
鶴吉「あっ、そうか。昔から早起きは三文の徳っていうからな。だけど、俺なんぞは40年もやってたって一文も貯まらねえや」
彩子「鶴さん、飲むからよ」
鶴吉「差っ引きゼロってわけか」彩子と笑い合っていたが、割れた皿を見つける。
多美「あっ、すいません」
鶴吉「早起きの税金か」
新聞を取りに行った桂が玄関ロビーで新聞を広げて読んでいた。「『暑さで食欲のない方のために』か。私とは関係ないな。う~ん、『眠られぬ夜のために』か」あ~あ、とあくびしている桂を彩子と鶴吉がほほ笑ましく見ている。
それにしたって、超絶美人の松坂慶子さんがこんな若いころから食いしんぼキャラなのがなんだか面白いな。
帳場
彩子「2人で相談したらしいの。私の負担を少しでも少なくしようって」
鶴吉「なあ、ありがてえじゃねえかよ。その心根がよ」
彩子「ホント。やってくれなくても、その気持ちだけで私は十分」
鶴吉「大ちゃんが生きてたらな、どんなに喜ぶか」
彩子「今だって見守っててくれると思うわ。私はそう信じてるんだもん」
鶴吉「うん。だけど、大ちゃんにも、そろそろ眠ってもらったほうがいいんじゃねえかな」
彩子「眠ってもらってどうすんの?」
鶴吉「彩さんだって、まだ若(わけ)えんだ」と彩子の手に自分の手を重ねる。
即座にパシッと手を叩く彩さん、ステキ。
良男が起きてきて挨拶した。
鶴吉「それに引き換え、このドラ息子はどうだい」
彩子「あら、よっちゃんだって、よくやってくれるじゃないの」
良男「いやいや、親父はね、板前の位置を息子に取られるかと思って戦々恐々なんです」
鶴吉「ハハッ、何を言ってやがるんだい。早くそうなってもらいてえや」
良男「いや、急に楽するとね、早死にするってよ」
鶴吉「バカ野郎、朝っぱらから縁起でもねえこと言うない。ほら、多美ちゃんのほう手伝ってやれ、早く」
桂が帳場に来て「オッス!」と良男にあいさつ。
良男「おはようっす」
桂は鶴吉に何か仕事はないかと聞く。彩子に新聞のことを聞かれると、分類して玄関に置いといたと言う。幸子も起きてきた。
桂「さっちゃん、日曜日はきちんとお休み取んなきゃダメよ。ゆっくり寝て、遊びに出かけて、そうじゃなくても平生(へいぜい)はハードなんだから」
良男「そうそう。そりゃまったくだよ」
幸子「あっ、でも…」
桂「デモはしなくてもいいの。日曜日は私たちで代わりするから、安心してゆっくりして」
彩子「ホント。私たちがいけないのよ。やってくれるもんだから、つい重宝がっちゃって」
良男「質問。俺も従業員に入んのかな?」
鶴吉「何? おめえも一緒に休もうってのか?」
良男は幸子が秩父の町に行くにも道を知らないから案内するつもりでいる。
桂「さっちゃん、一人になりたいってよ」
良男「チェッ、こっちも焼いてやがる」
桂「あきれた。バカバカしい」
鶴吉に大根の切り干しづくりを命じられた良男は幸子の肩を抱き「♪聞け 万国の労働者 轟きわたる…」と歌いだす。←幸子を巻き込むな!
メーデー歌「聞け万国の労働者」は大正時代の歌、と。
彩子は休んでいいわよと折れ、鶴吉は、その代わり今後一切身内扱いしねえと言う。
良男「ああ、大助かりだよね。ビジネスライクといきましょう、ねっ?」
せせらぎの間
まだ寝ている北が内線電話の着信音に起こされた。「朝飯? あとでいいよ」とキレ気味の北に「よくないの。今すぐ運びますから食べてちょうだい。そうしないと片づかないから」と桂も引かない。多美は無理に押し付けちゃ悪いわと止めるが、いい若い者(もん)がこんな日曜日に遅くまで寝てることはないと自ら運んで行った。
北が布団を片づけていると、桂が部屋に入ってきた。
北「このうちじゃ、お客に布団を上げさすのか?」
桂「ああ、男くさい」と部屋の窓を開け、今日は姉ちゃんと2人だけだから協力してとテーブルを運ばせる。
こっちに来てから体がなまったと言う北だったが、日当出すか?と桂に聞く。「ケチ」で終わらせる桂。軽く部屋の掃除をすると、廊下に置いていた食事を運んだ。
北「温かいうちに食べないと食べらんないような代物(しろもん)だな?」
桂「そういうこと」
北「とにかくお茶くれよ」
再び着信音が鳴る。多美が「すいません、妹が無理やり運んじゃって。お休みになってたんじゃありません?」と言うと、「いや、いいんです」と笑顔になる北。「おいしそうですね。楽しみです」と続け、自ら手伝いも申し出て、受話器を置く。
桂はあきれる。「私にはお茶くれよで姉ちゃんには、お茶ごちそうになりに行ってもいいですかってなるのね。そもそも、姉ちゃんは多美さんで私は桂君なんて区別すんのが気に食わないわ」
北「それはしかたないさ。大人と子供の違いなんだから」
桂「あっ、そう。私、よっぽど子供に見られてんのね」
北「若いってことはいいことなんだぞ」
桂「黙ってお食べなさい。楽しみなお味なんでしょ?」
姿勢を正し、食べ始める北。ご飯を頬張り「うまい」。
桂「単純ね。ご飯なんてね、ガスに火つけりゃ出来ちゃうのよ」
みそ汁を口にした北。「ああ…うまい」
桂「このごろは便利なダシの素がいくらでもあるんです」
北「うまい焼き方だなあ、硬すぎず…」魚?
桂「軟らかすぎずですか」
帳場でぼんやりしている彩子。2人とも結構やるじゃねえかとくわえたばこで入ってきた鶴吉。彩子はやってくれるのはありがたいけど、寂しくなったと元気がない。
鶴吉「年寄りは年寄り同士、キノコ採りにでも行くか」
彩子「私を年寄りの仲間に入れないで。私は鶴さんとは違います」
鶴吉「あらま」
厨房
完食した朝食を運んできた桂。しょう油を持っていくのを忘れたが、パクパク食べていた。「あの人、味分かんないのね」と笑う。機嫌を損ねる多美に「おいしいって食べてたんだからいいじゃない」とフォロー。桂は自分の食事を始める。
帳場
彩子は2人でちゃんとできたら法事のことも自分たちに任せてくれと言われたと鶴吉に話していた。鶴吉はあの親戚の海千山千を相手に若い2人がやれるわけないと言い、彩子も同意し、のけ者にされてるみたいだとこぼす。鶴吉は否定。義理の仲はダメなのかなと言う彩子にひがみだとはっきり言う鶴吉。「あの子たちは彩さんに苦労かけまいとしてるんだ。そうに決まってるよ。♪義理がすたれば この世は闇よ…ってね」
楠木繁夫「人生劇場」1938年発売…だけど、
村田英雄「人生劇場」1959年4月発売。まあ、こっちだよね。歌詞は「この世は闇だ」みたいだけど。
彩子「十分なことしないで笑われるのは私よ」
鶴吉は実の子以上に面倒を見ている、俺が聞いてやろうかと言うものの、彩子は断る。
桂「フフン、仕事をしたあとの気分って爽快ね」
彩子「ご苦労さま」
鶴吉「ほとんど多美ちゃんがやったんじゃねえか?」
桂「偏見よ、そんなの。あくまでも共同責任なんだから。もっとも実情はそうかもね」と戸棚からせんべい?を取り出して食べている。
彩子「あんた、また…」
桂「フフッ。食欲は人生のバイタリティーの源なりって。あとで胃薬飲んどくから大丈夫よ」
彩子「あきれた子だ」
鶴吉「太るぞ」
桂「うん?」
良男は幸子と町に出かけ、北が薪割をしていた。桂は彩子たちに運動のためにやらせてると言うが、多美はケガでもしたら大変だと北を止める。
青いポロシャツを着た北さんの腕、きれいだな。髪の毛と眉毛の毛量はすごいけど、体毛はそれほどでもないみたい。
桂も来て「感心感心」と腕組みして見に来た。
多美「桂ちゃん、あんたが頼んだの?」
桂「そう。いい若い者(もん)がお部屋でゴロゴロしてちゃ体に悪いもん」
笑い合う北と桂。
多美は「あきれた」と言い、去っていった。
桂「姉ちゃん、何しに行ったと思う? 私の勘ではきっとおしぼりとアイスウォーターを取りに行ったのよ」
北「ふ~ん、お前さんもいっちょやるか?」斧を差し出す。
桂「ノーサンキュー」
どこかのお寺に行った良男と幸子。お寺じゃなく秩父神社か!?
この時流れてるのはこの曲かな?
良男「さっちゃん、なんてお祈りしたの?」
幸子「平凡なこと、いつまでも健康にいられますようにって。良男さんは?」
良男「俺? 俺は二上の皆さんの健康」
幸子「偉いのね。私なんか自分のことしかお願いしなかったわ」
良男がそれだけじゃないんだと話そうとしたところで、縦じまズボンの伸登場!「これはこれはご両人」
良男「そんなんじゃないんだよ」
伸「そんなんじゃないって、どんなんじゃないんだよ? あっついね。何か冷たい物(もん)でも飲みませんか?」
幸子「ええ」
良男「いや、そんな、ダメだよ。女将さんから用事頼まれてるし、ねっ?」
幸子「ええ」
伸「まあまあ、まあまあ。よっちゃんも一緒に飲みに行こうよ」
良男「まあまあ、まあまあって…困るよ、ダメだよ!」
伸の空気の読めなさぶり、すごい。
以前、伸と北が来ていた喫茶店「モンモランシー」に行った伸、幸子、良男。
伸はさあさあと幸子の肩に手を乗せて席に案内する。ちゃっかり幸子の隣に座る伸と向かい側の席に座るしかない良男。
伸「なんでも好きな物をどうぞ」
店内で流れるのは郷ひろみ「小さな体験」1972年11月1日発売の2枚目のシングル
「思い橋」の前の木下恵介アワーは郷ひろみさんも出演、主題歌も歌った「おやじ山脈」。
郷ひろみ「天使の詩」1972年12月21日発売の3枚目シングル
良男は水を運んできた店員にここで一番高い物って何?と聞き、フルーツアラカルトを注文し、幸子にも勧める。
伸「ああ、なんなりと。いつもお世話になってるからね。たまにはご招待しなきゃと思ってたんだ」
スマートにアイスコーヒーを注文した伸に「私も」と続ける幸子。伸は幸子におしぼりを手渡し、良男はおしぼりで顔をゴシゴシ。
いろいろ買い物に行くと言う良男に、伸は本屋に回ろうと思ってたと言うと、幸子も一番、本のそろってるのはなんて本屋さんですか?と話に乗った。伸が案内すると言うと、良男は桂ちゃんが伸ちゃんに用事があるって言っていたと割り込むが、彼女の用事なんてどうせろくな用じゃないだろうが、帰りに寄ると意に介さない。モテ男の余裕を感じる。
階段下
今日の突然変異を桂に問いただす鶴吉。彩子が去年から1年も楽しみにしてた夫の法事をむげに取り上げてしまうのは酷だと言う。桂は実情はもっと厳しい、多美が本家で小耳に挟んできた話として、親戚中でお父さんの十三回忌を手ぐすね引いて待ってる感じだと言う。今のうちの状態だととてもみんなが期待してるようなお祭り騒ぎはできないことを知っていて、みんなでお母さんのことをいじめるつもりでいる。
今まで何かと言えば、彩子につらく当たってきた連中が何を言い出すか知れたもんじゃない。だから、多美と相談して2人で引き受けることにした。彩子は前から夫と一緒に回った四国の札所回りをもう一度してみたいと言っていて、旅に行けば、親戚とどんちゃん騒ぎするよりどれほど供養になるか分からない。彩子にはホントの法事をしてもらって、つまんない親戚づきあいは姉妹で引き受けることにした。彩子には随分面倒をかけたし、お父さんだって喜んでくれる。鶴吉も賛成し、銭をかけないで豪華に見えるように頑張ると約束した。
姉ちゃんと2人でお風呂で考えたと笑う桂。感心したようにうなずく鶴吉。
「たんとんとん」ではとし子に文句言いまくりの頭(かしら)だったけど、こういう若い娘さんなら感心だね!
泣き声が聞こえ、彩子が泣いていた。
鶴吉「彩さん、いつからそこにいたんだい?」
彩子は仏壇の前まで歩いて、まだ泣いている。あとをついてきた桂の顔を見ると、桂も泣きだす。
鶴吉「彩さん、あんた、いい娘を持ったな」手ぬぐいで涙をぬぐう。
北のいる裏庭におしぼりとアイスウォーターを運んできた多美。疲れて座り込んでいた北。「ああ、ダメだな。全然スタミナなくなったよ、年だね」
多美「アハッ、そんなこと」よく笑うようになったな~。
アイスウォーターを一気飲みし、おしぼりで首筋や腕をゴシゴシ拭く北。
ションボリ帰ってきた良男。「行くときゃ2人、帰りは1人」
鶴吉「えっ?」
良男「さっちゃん、本屋が好きだってさ」
厨房
良男「もう~! ブロークン ハート」と叫び、イライラ。(つづく)
桂→北や伸→幸子ルートもありなのか!?
仲雅美さんのチャンネル見つけたので見てみよーっと!