公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
町子(藤山直美)と健次郎(國村隼)は、おでん屋で矢木沢純子(いしだあゆみ)と出会う。純子が会社を辞めたことを知り、1週間限定で町子の秘書兼家事手伝いを純子に依頼する。その帰り道、町子と健次郎は札つきの兄、昭一(火野正平)に出くわす。ヒヤヒヤする町子だが、健次郎と昭一は争いもなくその場で別れる。数日後、昭一は徳永家に現れる。健次郎は、先日、昭一を待っていた女性のことを問いただすのだが…。
たこ芳
町子「札幌へ異動!?」
純子「で…」
健次郎「また殴った?」
純子「殴りません! 辞表出しました」
町子「おかしい。何で矢木沢さんが異動させられなあかんのんですか? 何にも悪いことないのに」
純子「これで辞めんのは悔しいから一度は転勤引き受けようかなと思ったんですけどね、父がね、福岡で一人で暮らしてるんです。北海道じゃ、何か遠くて…。地球の反対側にいるみたいで…」
町子「結構離れてますもんね」
純子「『こっちに来い』ってうるさくて…。兄がいたんですけどね、早くに亡くなって母もおととし…」
健次郎「前の会社っていうのは何で辞めはったんですか?」
純子「予算と規模が極端に縮小になって自分の思ういい仕事ができなくなったんですよ。あ~! 私ってわがままですよね。あっ、お酒下さい!」
りん「あっ、はいはい。え~、ぬるかんでしたね?」
純子「はい」
りん「はい。あっ、それはそうと先生とこのお手伝いさん決まりました?」
健次郎「いや、それがなかなかねえ…。おりんさんの知り合いで誰かいい人いませんかね?」
りん「うん、まあ、働き者の友達いてんねんけどね。ロンドンから呼んでみる?」
健次郎「ロンドン?」
りん「うん」
町子「私ね、やっぱり人使うの苦手やなあ…。特に年上の人ね」
健次郎「若い人にするか?」
町子「家政婦さんの紹介所にそんな人いてるかな?」
純子「無理ですよ」
町子「え?」
純子「先生のおうちのお世話って、そんなに簡単じゃありませんもの」
町子「どういうことですか?」
純子「上はご両親から下は小さいお子さんまでのお食事のお世話。その上、お医者様と作家が一つのおうちにいてお仕事をなさっている。お仕事柄、よそからいろんな人が出入りしますでしょ?」
町子「そうそう」
純子「それは家庭というよりむしろ会社ですよ。だから、先生のお宅に必要なのは、お手伝いさんではなくて、むしろ秘書です」
町子「秘書?」
健次郎「会社ねえ…。そんな人いてるかな?」
町子「私ね、何となくやけどね、1人、心当たりはあるんやけどな」
純子「いい人いるんですか?」
りん「カッとしたら、手、出る人やけどね」
町子、健次郎、りん笑う。
純子「え…? えっ?」
健次郎「あの…当分は、お暇ですか?」
町子「ちょっとの間、手伝うてもらえませんでしょうか?」
純子「私!?」
町子「矢木沢さんやったら申し分なし」
純子「けど、そんな…いや、そんな、私は…」
町子「いや、そやからね、あの、その…まず1週間でいいんです」
りん「これもご縁やんか」
町子「次の仕事が決まるまででいいんです」
純子「先生…。あ~、でももし、あの、今回のことで責任感じてらっしゃるんでしたら絶対嫌ですからね」
町子「いや、それは…」
健次郎「お願いできませんか?」
純子「え~…」笑顔でうなずく。
町子「よかった。よかった。はい、いただきます」
そして、1週間という約束で純子が徳永家に手伝いに来ることになりました。
たこ芳を出る3人。
純子「それでは明日からどうぞよろしくお願いいたします」
健次郎「こちらこそよろしくお願いします」
町子「おやすみなさい」
純子「失礼いたします!」颯爽と帰っていく。
町子「ねえ」
健次郎「ん?」
町子「大丈夫かな?」
健次郎「何が?」
町子「私に秘書って何か偉そすぎへん?」
健次郎「そんなことはない。1週間やがな。それに合うと思うで。あんたとあの人」
町子「え~、何でそんなこと思うの?」
健次郎「うん…。フフフ。あっ! あんた、話って何やったんや?」
町子「そやった! 忘れてた~。あの、お兄さんのことなんやけども…」
健次郎「うん」
町子「もし帰ってきはったら、いきなり、けんかなんかせんといてね」
健次郎「何を言うとんねん。勝手ばかりしとんのに、あいつ」
町子「お兄さんにも何か事情があると思うのよ」
健次郎「若い女の子に悪さして追っかけられてやで…」
町子「ねえ、私、さっきから気になってるんですけども…」
健次郎「何や?」
町子「あの光るチカチカと…。あれ、あれ、あれ、光ってんの、あれはUFOと違うかな? あれ…あれ、UFOかな?」
健次郎「違う違う。飛行機や。夜間飛行やがな。兄貴はな、女見たら、もう『運命や』とか何とか言うて、もう、あれ病気やな。アホや」
昭一「運命やな」
晴美「昭一さんてロマンチストなん?」
健次郎が振り向くと、昭一が背中を向けて立っていた。
昭一「ううん。運命を信じてるだけや」
近づいていく健次郎。
昭一「うん? おっ!?」
健次郎「何してんねん? 忘れてた。健次郎君、結婚おめでとう!」
徳永家茶の間
怒って腕組みしている健次郎。
町子「何で呼んであげへんかったん?」
健次郎「あんなええ加減な男、金輪際、このうちには入れません! あんたも何で会うたこと黙ってたんや?」
町子「そやから言おう思て、おでん屋さんへ。それであの矢木沢さんが『六甲おろし』」
健次郎「そら、江夏は、やってくれるよ」
町子「そんな話、どうでもいいの! お兄さん!」
健次郎「もうあんなやつほっとけ!」
町子「話ぐらい聞いてあげたらどやの? ケチ!」
健次郎「ほんまにもうええ年して親に心配ばっかりかけてからに! あのな、あいつはもうええ加減、大人にならなあかんねん」
町子「お母さんもほんまは会いたいのと違うやろか?」
健次郎「いつまでもフラフラ、フラフラ落ち着かん、あんな姿、見してみいな。余計、心配するだけや」
町子「ねえ…」健次郎が部屋から出てしまう。「はあ…」とため息をつく町子。
翌朝
徳永家茶の間
朝食の後片付けをしている町子。「おじいちゃん、お土産買うてきてくれるって。よかったね!」
亜紀「うん」
町子「あ~あ! 私も温泉行きたいな~」←昨日のミニ予告
純子「おはようございます!」
町子「来はった。は~い!」
玄関
純子「おはようございます!」
町子「おはようございます!」
純子「これ、ほんのご挨拶」バラの花束を手渡す。
町子「うわ~、きれいわ~。ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします」
純子「こちらこそよろしくお願いいたします」
町子「亜紀ちゃん、ご挨拶は?」
亜紀「おはようございます」
純子「おはようございます」
台所
町子「家のことなんかほんまに頼んでもよかったんやろか?」
純子「得意とは言い難いんですけど、数日でしたらなんとか」
町子「よろしくお願いいたします」
純子「こちらこそ」
町子「あっ、晴子さん、こちら、しばらくの間ね…」
晴子「あっ、話は聞いてます。よろしくお願いします。それと私、お昼はきつねうどん食べませんから」
純子「あ…分かりました。よろしくお願いいたします」
町子「健次郎さんの妹でね、外科医なんです。ちょっと変わってはるんですけれどもね」
純子「あの、きつねうどんって…?」
町子「健次郎さん、好きでね、きつねうどん2日に1回」
純子「ああ」
楽だからとかじゃなく、すきだからきつねうどんだったのかー。
仕事部屋
執筆している町子。
純子「あの~」
町子「はい」
純子「ミキサーはどこにありますか?」
町子「ミキサーですか? え~、確かね、食器棚の上の茶色の箱に入ってたんやないかなと思うんですけれども」
純子「分かりました」
再び仕事部屋
純子「あの~」
町子「はい」
純子「この辺で焼き立てのフランスパン置いてあるお店って…」
町子「フランスパンですか? 焼きたてやどうか分からへんのんですけどもね商店街の入り口にパン屋さんはあるんです」
純子「分かりました」一旦出かけるが「あの~」
町子「はい」
純子「テーブルクロスはどちらに?」
町子「テーブルクロス、うち、なかったんと違うかな…」
純子「あ~、じゃあかまいません。ちなみにコーヒーミルは?」
首を横に振る町子。
純子「分かりました」
町子「お昼ごはん、何、作ってはんのかなあ…」
診察室
鯛子「晴子先生、何座ですか?」
晴子「乙女座」
鯛子「ちょっと待ってください! 乙女座、乙女座、乙女座…」本を見ながら「え~、『水難の日』。今日の運勢です」
晴子「海水浴も川遊びもしません。第一、占いなんて、そんな非科学的なもん」
鯛子「『幸運の鍵は魚のムニエル』です!」
晴子「そんなん、このうちにいてたら一生食べられへんわ」
鯛子「そうですよね! アハハハハハハ! ほんまやわ! ハハハハハ!」
自分で作らない人が言うことじゃあないよなー、晴子。
食卓に並ぶ魚のムニエル、フランスパン、スープ、サラダ、グラスに入った水、ナイフとフォーク。
茶の間
健次郎、町子、晴子が神妙な顔で席に着いている。
晴子「魚のムニエル」
純子「お口に合いますかどうか」
健次郎「これはあんたのリクエストですか?」
町子「まさかこんなハイカラなものを。でもすごいおいしそうですよね。いただきます!」
健次郎・晴子「いただきます」
町子「うん! スープおいしい!」
健次郎「うん! うまい、これ!」
晴子「お魚、おいしい」
町子「うん」
嬉しそうな純子。
健次郎「いや何しろ、うちの昼の定番はフォックスヌードルなんでね」
純子「はっ?」
町子「健次郎さん、きつねうどんて素直に言いなさいよ」
晴子「あっ、夜、解剖実習やから早めに出るね」
純子「解剖? 病院の方でも働いてらっしゃるんですか?」
晴子「大学病院です。こっちはちょっとしたお手伝いで」
健次郎「まだ半人前ですけどね」
電話が鳴る。
純子「あっ、あ~、私!」
町子「私、出ます」
純子「いえいえ、とんでもない」
町子「すいません、どうも」
純子「いいえ」
電話に出る純子。「あ、もしもし? ちょっとお待ちくださいませ。花岡…」
町子「先、徳永…先、徳永言うてください」
純子「はい。あ、徳永でございます」
町子「やっぱり電話、もう1台要るね」
健次郎「うん」
鯛子「あの~…」
健次郎「何や?」
鯛子「お客さんなんですけど」
健次郎「お客?」
昭一が姿を現した。
晴子「お兄ちゃん!」
廊下
純子「お兄様?」
町子「そう」
純子「私、お洗濯しますので、どうぞ、お仕事」
町子「ほなお願いします」
純子「はい」
茶の間
コーヒーを飲む昭一。昭一と健次郎の間に座る晴子。
昭一「そやからな、津軽の子は誤解やて」
晴子「誤解やて」
健次郎「お金、とられたらしいで」
晴子「お金、とったん?」
昭一「ちゃう、ちゃうて。現金がなかったから持ってるもんと交換してもろたんや。それ相当の値打ちもんやで」
健次郎「あのしょうもない石やったら僕に押しつけていった」
晴子「石? 石て何?」
昭一「しょうもない…。そうか。置いてきよったんか。値打ちもんやったんやで」
健次郎「病院経営してるとか何とか吹いとったらしいわ」
晴子「え? ほんまなん?」
昭一「向こうの勘違い」
晴子「勘違いやて。もう! 2人で直接しゃべりいな! 面倒くさいな!」
健次郎「あの、梅田の堂山ホテルにいてはるからちゃんと連絡して、自分で話つけて」
昭一「分かった、分かった」
晴子「お兄ちゃん、元気にしてたん?」
昭一「うん」
晴子「津軽で何してたん?」
昭一「サービス業っていうとこかな」
健次郎「小さいスナックの雇われマスター言うとったで」
昭一「おやじやおふくろ元気にしてるか?」
晴子「うん。今、温泉、行ってる」
昭一「へえ~、のんきやな」
じろりと昭一を見る健次郎。
昭一「何ですか?」
健次郎「仕事してこ」部屋から出ていく。
晴子「で、こっちには出張?」
昭一「まっ、そんなとこや」
晴子「仙台で何のセールスやったっけ?」
昭一「あれな、先月で済んだ」
晴子「ふ~ん。しばらくいてるんでしょ? 2階にお布団出しといてもらうわ」
昭一「すまんな。晴子、ちょっと待って。ちょっと手、貸してみ」
晴子「うん」手のひらにネックレスを渡す。
昭一「ないしょやで、これ。ボリビア産のシルバーやど」
晴子「きれい! ありがとう!」
一人残った昭一。「お~、ええ豆、使とんな。ちゃんともうけてんねやな。ブラジルのマリア、元気にしてるかな?」
やっかいの種がなくならない徳永家です。そして更に…
町子の仕事部屋から見える庭に清志が立っていて涙をぬぐっていた。
ミニ予告
町子「痛~い!」
本筋と全く関係ないことだけど、昔、東野圭吾さんの小説が好きでいくつか読んだ中にデビュー作も読んだことをふいに思い出しました。
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主人公は関西生まれ、ある会社で働いていたものの東北(確か仙台)への転勤を命じられ、母親にもそんな田舎に転勤するくらいなら辞めろと言われ、結局、主人公は会社勤めを辞め、女子高の先生になり…という話だったように思うのですが、忘れてしまったけど、ひどく東北に偏見がある感じがして嫌だった。
物語のさわりの部分だし、本筋でもないんだけど、そこからあまり話が頭に入ってこず、それから東野作品を読むこともなくなったような気がします。
今回の冒頭では北海道へは遠いからと距離的な理由を上げていたけど、なんかねー。いや、東北と北海道は全然違う所だと思ってるし、関西の人は北海道は好きな人が多いイメージ。昔から感じてたことなんだけど、関西の人の過度な東京敵視とかそれより北は未開の地扱いとか少し苦手だなと思っていた。「あまちゃん」で流れはガラッと変わったとも思うけど。
純子が徳永家のお手伝いになったことはうれしいし、自然な流れと思ったけどね。