TBS 1968年4月9日
あらすじ
受験に失敗した敬四郎をかわいそうに思い、愛子も気がふさいでいた。敬四郎はかおるを引き連れボウリングに行く。しかし、久しぶりにガールフレンドに会い、気まずくてさっさと帰ってきてしまう。家族皆で敬四郎を慰めるが、それが亀次郎には気に入らない。
2023.7.28 BS松竹東急録画。12話からカラー。
鶴家
亀次郎:進藤英太郎…大亀建設株式会社を一代で立ち上げた。2月5日で61歳。
妻・愛子:風見章子…5月で56歳。
長男・武男:園井啓介…亀次郎の会社で働いている。3月3日で30歳。独身。
次男・洋二:西川宏…ピアノや歌が得意。空襲で足を悪くした。28歳。
長女・秋子:香山美子…出版社勤務。26歳。
次女・幸子:高梨木聖…女子大生。1月の成人式に出席。
四男・敬四郎:あおい輝彦…浪人中。
三女・かおる:沢田雅美…4月から高校生。
*
お手伝いさん
初子:新田勝江…亀次郎と同じ誕生日2/5で30歳。
お敏:菅井きん…愛子の4つ下。6月で52歳。
*
正子:小夜福子…亀次郎の兄嫁。高円寺の伯母さん。58歳。
今日の脚本は山田太一さん。冒頭はモノクロの桜だったので”?”となった。
テレビ:ナレーター「こうして史上最高の激戦といわれた今年の受験戦争も喜びを新たに確かめ合う風景を最後に…」
テレビに映る大学合格者のニュース映像でした。鶴家はまだカラーテレビを導入してないのか、まだニュース映像は白黒なのか分からない。
テレビを消す愛子「なにもニュースまで嬉しそうにすることないじゃない。落ちた子の身になってごらんなさい。運ですよ、1回きりの試験で実力が分かってたまるもんですか」
いつもよりプリプリ度が高いのは脚本家が違うせい? 今までの話でこういう怒り方あまりしないような気がする。ふすまを開けてお敏と鉢合わせすると「たまには私だって大きな声ぐらい出したいわよ」といら立ちを隠さない。
愛子はそのまま台所へ行き、お茶を飲んでくつろいでいた初子に敬四郎が出かけたか聞く。「出かけるわけないわね、世間の目が冷たいもの」。そして、テーブルの上のたい焼きに手を伸ばす。薄皮でおいしそう。
お敏がたい焼きを勧めるが、「いいのよ、私は」と愛子。
愛子「でも、おいしそうね」
お敏「お砂糖使ってるんです、ここのは」←砂糖じゃなければ、サッカリン??
今度は初子に勧められるが、2つ3つ敬四郎にあげてちょうだいと愛子が言う。敬四郎は予備校の入学試験もいけなかった(=落ちた)。愛子は申し込みが遅れただけといい、お敏が魚一に言ったと知ると、東京中に言いふらしたも同じじゃないのと怒る。
愛子「たい焼きだって鯛は鯛ね」
初子「お頭つきですね」
お敏「頭をちょん切っちゃいましょうか」
愛子「なお気にしますよ。とにかく気をつけてくださいよ」バシッと戸を閉めて出ていく。
初子「怒るわね、奥さんも」
やっぱり今日の愛子さんはちょっと怒りっぽすぎ。
初子「下へ行くほど子供はかわいいっていうからね。出来の悪い子ほどね」
お敏「そんなこと!」と言いながら、初子の口にたい焼きを突っ込む。
インターホンが鳴り、敬四郎がお敏を呼び出した。「おトシさんの名前さ、どんなトシ? にんべん? さんずい?」
お敏「あの…敏(びん)ですけど、敏感の敏」
敬四郎「敏感の敏か。なるほどお敏さんにぴったりだね。ダンケシェーン!」
隣の別宅
三郎と敬四郎は名前占いをしていた。敏…11画。あなたは男殺しの爆薬です。と本に書かれており、三郎と敬四郎は笑う。「あなたは暗いムードの無口な男性を見ると何かしてやりたい衝動に駆られ、それが恋に発展します」。暗い男を装う敬四郎。
台所
お敏はくしゃみをした。たい焼きを皿にのせながらもう一つくしゃみ。
敬四郎の部屋
三郎はこれから芝居の稽古に行くと言い、敬四郎にも映画でも行ってこいよと出かけていった。
たい焼きを持ってきた愛子と三郎が玄関で鉢合わせ。三郎は「あいつの受けた大学、今日、入学式でしょう」とたい焼きを一つ口にほおばると出かけていった。
敬四郎の部屋
♪おら もうダメだ~
↓この歌の替え歌
ドアをノックされると
♪カミン カミン 入っておいで と歌いながら応じる。
おら たい焼き 待っていただ
入ってきたのが愛子で照れる敬四郎。ちゃんとお敏さんと初子さんからとたい焼きを渡す愛子。
敬四郎「参るな、変にみんな親切で」
愛子の肩を揉みながら、バックハグする敬四郎。甘えん坊だね。
それをかおるに見られた。テーブルの上のたい焼きに手を伸ばしたかおるに愛子は手洗ったの?と注意し、かおるがたい焼きをくれなかったと言うと、「あの人たちのだもの、そうねだっちゃかわいそうよ」と言う。
真新しい高校の制服を着ているかおる。上着もサイドベンツでカッコいい英語の先生がいたとうっとりしてしゃべる。
敬四郎は唐突にかおるをボウリングに誘う。「つきましてはお母さん」とやっぱりお金をねだった。
ボウリング場
隣のレーンが騒がしく、クラスは違うが敬四郎の高校の同級生たちだった。敬四郎はなぜか今回、ハワイ大学のスタジャンを着ている。
久代「あら、鶴さん。こんにちは。しばらくね、卒業式以来ね」
きれいな女性3人組に話しかけられた敬四郎。久代役は聖みち子さん。久代に話しかけられて「てんで元気さ」と答えたものの、一緒にやりましょうよと言われると、終わりだからと帰った。
歩道橋を歩く敬四郎とかおる。
かおる「一度ぐらい落っこったからって自意識過剰よ」←? 敬四郎は初回の1月も浪人中でまた落ちて二浪じゃないの? 三郎も俺と同じ二浪だなとは言わないし、この間まで高校生だったんだろうか?
歩道橋の後ろのビルに”山一”という垂れ幕が見える。ロケ地は渋谷らしい。
「岸辺のアルバム」でも渋谷の空撮で大きく「山一証券」の看板が映し出されたことがあるんだけど、同じ場所なのかも。
かおるに八つ当たりする敬四郎に「あの人好きなんでしょう?」と指摘する。変な空想すんなと言いつつ、スケート行こうか?なんていわれて泣き出しそうになる敬四郎。
茶の間
亀次郎、愛子、洋二、三郎、幸子がいるが、敬四郎たちはまだ帰っていない。ボウリングに行ったという愛子に「浪人といえば修行の身もいいとこだ。夜まで出歩いてどうするんだ」と文句を言いだす亀次郎。今からガリ勉してたら来年まで持たないと言うものの、三郎みたいにいたわるようなことばっかり言ってると怠けると言い、三郎にお鉢が回る。
亀次郎「すぐ上の兄貴はお前じゃないか。お前がしっかりしとらんから敬四郎がグラグラするんだ」
三郎「帰ったらよく言い聞かせます」
亀次郎「バカ者! そんなこと言ってんじゃない」
お代わりをした三郎のご飯がお敏にてんこ盛りされて少し引いてると
亀次郎「わしがお前ぐらいのころは朝から一升飯食った」
三郎「そんなにお米安かったんですか」
亀次郎「安いもんか。食うだけは頑張って働いたってことだ」
三郎「ヘヘッ、その点、僕らは幸せだな」
亀次郎「調子のいいこと言うな! 全くこのごろのやつは口ばっかり達者で」
洋二と幸子はお代わりをせず、お敏にお茶を頼むと今度はもう食べないのか?と言いだし、愛子はガミガミ言われ続けたら胃も疲れると言う。
亀次郎「おい、洋二。お前の作った歌にあったろ?」
洋二「ええ」
亀次郎「『怖くない』とかなんとかさ」
洋二「歌と現実とは別です」
亀次郎「いや、なかなかうまいところをついてるよ。こんな優しいおやじがあるか。なあ? 洋二。
♪ドンドン ドドンド ドン ドドン
ドンドン ドドンド ドン ドドン」
ついにおやじ太鼓を歌いだすと「ごちそうさま」とサッと幸子が席を立つ。
いや~、洋二のことを人一倍気遣っていながら、今までの話だとなかなかほかの子と同じように話しかけたりしないから、ちょっと違和感。
亀次郎は自分の事を「こんな思いやりがあって優しいおやじがどこにいる。まるで思いやりの塊だ」と評す。
♪朝から夜まで 鳴りどおし
みんなも今では こわくない
三郎が歌いだすと、「こら! 調子に乗るな!」と怒り出す。理不尽。
亀次郎「お前たちは、ごはんがいただけるありがたみを知らん!」
ご飯食べてる途中に歌いだしたのも亀次郎なのにな~。
敬四郎とかおるは正子の家で焼き肉を食べていた。ホットプレート? 1960年には販売されていたそうですが、普及したのは70年代だそうです。正子の後ろは赤い公衆電話。正子は敬四郎とかおるの来訪を喜び、一人だと張り合いがなくごちそうを作ったこともないと言う。
正子はだからおばちゃんの子にならない?と誘うが、自信をなくしている敬四郎は俺なんかダメですよと弱腰。正子は男は試験に落ちるぐらいじゃなきゃいけないのと励ます。おばちゃんの子供になれば毎日だってこれぐらいのごちそうよと言う。
情が深いと昔から言われていたという正子。おじちゃんが言ったんでしょ?と指摘するかおるだったが、そろばん占いらしい。
あるんだ、本当に。元気のない敬四郎のことを「兄貴は切ない目に遭っちゃったの」とかおるが言い、敬四郎に「言ったら殺すぞ」とすごい目つきでにらまれる。
正子は2人が誰にも言わずに高円寺に来たことを知らされ、お父さんが怒ってるかしら?と恐れる。すぐに電話連絡しようとする正子に隣の三郎兄さんの所へかけるといいとアドバイスするかおる。
隣の別宅
敬四郎の部屋は散らかっており、部屋に来ていた亀次郎は散らかっていると規律正しい生活ができず、夕飯に帰らなくても平気になってしまうと激怒。一緒に部屋に来ていた三郎に部屋を片付けろと怒鳴りつけ、部屋を出るとちょうど電話が鳴り、亀次郎が出た。驚いた正子は「あら、失礼」と電話を切ってしまい、今度は本宅へ。
しかし、本宅でも誰も電話に出る者がおらず、亀次郎が出た。
正子「すいません、私です」
亀次郎「『私』じゃ分からんよ」
正子「私です。アパートです。あの…高円寺です」
正子が要件を言いだせないまま、亀次郎は電話を切ってしまった。
敬四郎「あの人がなんだっていうんだ!」
かおる「稼ぎ手ね。私たちの生活を支えてるお金を全部稼いでくる人」
敬四郎「そうなんだよな。だから頭が上がんないんだよな」
しょんぼりしてしまった正子は「おなかいっぱい食べてってちょうだい」と敬四郎たちに言う。
別宅
三郎は掃除をするのが面倒で、幸子を呼び出した。「おかしくて掃除なんかできるか」と待っている間、一人踊ってる三郎。アドリブ?
敬四郎の部屋を見てみろと言う三郎に、「猿買ってきちゃって大変だったじゃない、前に」とさらっとすごいことを言う幸子。部屋に入ると、女のきょうだいとしていいと思うの? 女だろう、お前は、などとたたみかける。誰に部屋掃除を命じられたか分かった幸子は、頑張ってね、と部屋を出ていった。全くこのごろの女ときたら…あきれる三郎。
でもさ、ここで仕方ないわね~って幸子がやる展開じゃなくて本当によかった。これが秋子がいたらやってたかもしれないけど、このドラマのいい点だよね。女、女うるせーよ、三郎!
敬四郎とかおるは廊下に正座し、亀次郎の説教を聞いていた。「あんな年寄りとしゃべって楽しいなんて言ってるから、そんなぼやけた顔になるんだ」
かおる「お父さん似だって言われますけど」
亀次郎「わしのどこがぼやけてるか!」
愛子「さあ、もうお休みなさい。とにかく今日のことであんたたちが悪かったのは電話もかけないで遠くへ行ったこと。それだけは気をつけてね」
亀次郎は用事がないと思って電話を切ったが、一言言っておかなきゃならんと正子へ電話をかけに行った。愛子もついて行って止める。
亀次郎「ああ、おばちゃんか。しょうがないね、あんたは!」と正子にも説教。
部屋に戻った敬四郎。ベッドに寝ていたのは三郎。部屋を片付けて愛情だと言う。三郎が出ていき、ベッドに飛び込んだ敬四郎は「やりきれねえ」とベッドに顔を伏せた。(つづく)
秋野太作さんとあおい輝彦さんはのちに同じ枠で「兄弟」という山田太一脚本のドラマでも兄弟役ですが、秋野さんは”静男”という役名通りおとなしい兄で、明るい弟とは対照的に描かれていました。このドラマを見てるとあのドラマがまた見たくなります。沢田雅美さん、菅井きんさんも出てるし。