公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
町子(藤山直美)は、「カモカのおっちゃん」を主人公に、健次郎(國村隼)との出会いから、怒とうの結婚、夫婦模様、そして家族とそこに集まる人々の波乱万丈、抱腹絶倒のエピソードを、全国の読者に披露しようと原稿を書き続ける。『芋たこなんきん』のこれまでの放送の総集編、ダイジェストの第二弾。
記者「受賞作の『花草子』は何をきっかけに書こうと思われたんですか?」
篤田川賞を受賞したことで急に慌ただしくなった町子は健次郎から言われたプロポーズの返事をゆっくり考える時間もありませんでした。
第三十回
篤田川賞受賞記念パーティー
と大きく掲げられた看板と金屏風の前に立つ町子。マイクの前で頭を下げるが、マイクに頭をぶつけて笑われた。
うどん屋さん
町子「月末までに『小説太陽』に中編と『月刊あけぼの』の短編、書かなあかんねんで。あっ、そや、週刊誌に連載コラムを書かなあかんかったんや…。あっ、どうしよう、忘れてた。あれ…夕刊紙にも私、約束してたんや。ねえ、私、大丈夫かな。こんないっぺんに全部引き受けてしもうて。ね、ね?」
健次郎「なあ…」
町子「『なあ』って…」
健次郎「一杯飲みな」
町子「もういい」
健次郎「何で?」
町子「ラジオ…ラジオ行かなあかんね、私。だから、もうそろそろ行きます。うん」
健次郎「ほな、僕はもうちょっと飲んでくわ」
町子「ほんと?」
健次郎「うん」
町子の部屋
スケジュールびっしりの手作りスケジュール帳にさらに予定を書き込む町子。
2人は次第に会うことすら少なくなってしまったのです。
しかし、ある時…
立ち上がり歩きだしてふらついた町子。
和代「町子?」
信夫「お姉ちゃん、どないしたん!?」
和代「町子!」
町子「何かお母ちゃん寒気がすんねん」
和代「え?」
町子、そのままへたり込む。
和代「あっ! あっ…。いや…えらい熱やないの、あんた!」
信夫「お姉ちゃん!」
和代「町子!」
信夫「お姉ちゃん、大丈夫なん!?」
健次郎「あ~、過労ですかね?」
町子の部屋
町子は厚着をして原稿を書いている。「あ、ま…。頭、痛い…。あ~、頭、痛い。あ~、しんどい。あ~あ~何で目ぇ回ってんねやろう?」畳に仰向けになる。
町子が目を開けると、町子の顔を覗き込む健次郎がいた。
町子「うわっ、びっくりした! 何してんのよ?」
健次郎「そら、こっちの言うことやがな」
町子「あ~、びっくりした」
健次郎「医者にも行ってないんやて?」
町子「いや~、あの、ちゃんと風邪薬のんでるから大丈夫やて。大丈夫。あのね、丸一日ね、休んでしもたから取り戻さなあかんの。これあさって締め切りになってるから。私、今からやらなあかん」額に置いた健次郎の手を振り払う。
健次郎「分かった、分かった…」
町子「ちょっと待って。あかんて」
健次郎「こっち向きや。はい、ちょっとじっとして! はい。上、向いて。べ~って舌出して。そんなあかん。べ~」
健次郎は町子の診察を始めた。
町子「べ~!」
健次郎「はいはい、もうちょい上向いて。上、上…。赤いな」
町子「大丈夫やって」
健次郎「これ打っといたら熱下がるから」
健次郎の言葉に町子は机に向かいだす。
健次郎「痛ないから。痛ないから心配せんで。まあ、そない言うても聞かへんねやろうけどな。過労から来とるんやからちゃんと寝とかんと治らんで」
町子「寝てるて、世界が止まるんやったら寝るけどね。『…しんでいた…いたのだ』。なかなか上手に書けた。もうちょっと頑張ろう。『私の…』。何か熱下がってる気がすんな」
健次郎「はい! ええで。できたで」
町子「熱、下がってるかも分からんわ。熱、下がってるかも分からんて。嫌! もう嫌や! 注射嫌いやからやめて! 嫌~! 注射、嫌いって!」
徳永醫院
健次郎「お疲れさん。ほな適当に昼休みとってや」
鯛子「往診ですか?」
健次郎「うん」
晴子「お兄ちゃんは?」
鯛子「往診デート」
町子の部屋
健次郎「例えばミカン食べる時も『さあ体にいい。ビタミンCをとりましょう』。3つも4つも食べとるがな」
町子「そう。言う言う。よう考えて。理由づけした方が心が納得して何かほら気楽になれるでしょ?」
健次郎「はあ…。僕はそんなの好かんな。あのな…」
町子「うん」
健次郎「酒を飲みたいから飲む。ミカンを食べたいから食べる。そう思てみ。人生、スパ~ッと物事の本質ちゅうもんが見えてくる」
こうして再び楽しい時間を取り戻していった町子と健次郎。
いよいよ結婚を現実のものとして意識するようになっていきました。
街が一望できる高台で景色を見ている町子と健次郎。
健次郎「どやろ?」
町子「はあ…」
健次郎「ここら辺で手、打ちまへんか?」
町子「え?」
健次郎「僕と結婚したら面白い小説ようさん書けるよ。小説っちゅうのは笑いをもって書くもんやろ? 1人やったら笑われへん。そやろ?」
町子「そやけど今、結婚したら…」
健次郎「何?」
町子「今、結婚したら物書きとしても主婦としても両方中途半端になってしまいそう。私、それが嫌やねん」
健次郎「そんなこと…」
町子「そんなことって…」
健次郎「アホやなあ。中途半端と中途半端が2つ寄ってトータルしたら人生満タンやないか! さきざきのことはまた考えたらええがな。家のことなんかなにも完璧にやることなんかあらへん。そこそこでええねんて」
町子「ちょっと待ってよ。さっきから『そこそこ』とか『手を打ちませんか』とか。もうちょっとロマンチックな言葉はないのんですか?」
健次郎「まあ、こんなとこやな」
町子「『こんなとこ』て…。『こんなとこ』て…」
2人の笑い声
町子「『こんなとこ』て…」
健次郎「こんなとこや」
2人の結婚に対して周囲の反応はさまざまでした。
花岡家
和代「え!?」驚いて振り向くが、渋い顔をする。
町子「お母ちゃん…」
和代「徳永先生とか」
町子「私なりにいろいろと考えて出した答えやねん。お母ちゃんの反対する気持ちは分かりますよ。相手再婚やし、子供もぎょうさんいてはるし。あの…そら5人もいてるんやもんね。心配やろなんてのは、よう分かるねんけども、私、誰が心配しても、お母ちゃん…」
和代「誰か反対してんのか?」
町子「え? そやけど…」
和代「はあ…。朝から奥歯が痛うて…。好きにしなさい」
徳永家茶の間
健次郎「あのな、あの~ちょっと、みんな聞いてくれるか? あの…。僕、もういっぺん結婚することにした」
喜八郎「え!?」
イシ「あの人か?」
健次郎「みんなもいっぺん会うたことのある花岡町子さんっていう人や」
清志「あっ、赤ちゃん産まれた時の?」
健次郎「うん」
隆「結婚て結婚式やろ? やった~!」
登「お前、意味、分かってんのか?」
隆「パパパパ~ンや」
登「アホ!」
長女の由利子だけは複雑な顔。
健次郎「僕はな、町子さんという人と一緒に生きたいんや。一緒に機嫌よう暮らして年とっていきたいねん。もちろん今も僕は楽しい暮らしやで。お前らのことや晴子叔母ちゃんやおじいちゃんやおばあちゃん、大好きやからな。ほんでここにもう一人、僕の好きな人が来てくれんねん。なっ、好きな人がみんなここに集まるんや。家の中、もっともっと楽しなるやろ。みんなも楽しなるやろ。こんなええことないなあ。よかったなあ」
登「よかったなあ!」
隆「よかった、よかった!」
亜紀も拍手をする。
晴子「おはよう!」
一同「おはよう!」
隆「叔母ちゃん。お父ちゃん、結婚すんねんで!」 慌ただしく起きてきた晴子は自分でごはんをよそう。 「あ、そう、結婚。え? (茶わんを落として割る)結婚!?」
廊下
由利子「結婚したらあの人がお母ちゃんになんの?」
健次郎「いいや、違うで」
由利子「え?」
中には結婚に戸惑いを持つ人たちもいました。
健次郎「おいで。お座り。あのな、由利子、お前らのお母ちゃんはもういてるやろ。今、もうここにいてへんようになってしもうたけど天国にいてるやろ? お母ちゃんはずっとお母ちゃんや」
由利子「ほな、あの人は何?」
健次郎「僕の奥さんや」
由利子「お父ちゃんと夫婦でしょ?」
健次郎「そうや」
由利子「お母ちゃんやんか」
健次郎「違う。お母ちゃんとして来てもらうんやないねん。新しい家族になるんや。僕らの家族になりたいと思てくれたんや」
由利子「『家族』?」
健次郎「そうや」
納得してうなずく由利子。
喫茶店
加代子・みすず「やめとき!」
町子「え!?」
みすず「何で今更結婚やの? これからどんどん仕事も増えていくし一人でもやっていけるやん」
加代子「後妻に入って、すんなり子供らの母親としてうまくいくと思てんの?」
町子「母親って…その母親になんのではないのよね。私は好きな人と一緒になるの。母親になんのと違うの。私は好きな人と一緒になって、そして結婚するの。私は母親になんのではない」
みすず「仕事はどうすんの? 仕事は」
町子「仕事、続けるよ」
加代子「甘い! そんな環境で原稿書けると思てんの?」
町子「私、一生懸命努力して書くもん」
みすず「それに何で第一カモカなん?」
町子「かわいらしいねん。かわいげがあるの。一緒にいてて楽しい。何かあの人と一緒にいてたらこれからの私の人生ものすご~く楽しくなりそうやなとそう思えるの」
教会、鐘の音
町子「あの…目の下のクマ、隠せますか?」
吉岡「この道30年、大抵のもんは隠してきました」
なんとか結婚式を迎えられたものの当日はさまざまな騒動が巻き起こりました。
町子「え?」
和代「今晩までに直してほしいんやて」
診察室
服部「悪いな…結婚式やのに」点滴をしている。
健次郎「いや…」
服部「友達か?」
健次郎「うん。ええ嫁さん捕まえた男でな」
服部「ああ」
健次郎「幸せもんや」
結婚式場
晴子「兄がまだ」
町子「そしたらちょっとずらしてもらうように言うてきましょか? ねっ」
鯛子「先生、こっち!」
町子「あら~、グッドタイミングや~!」
鶏の鳴き声
町子「鶏?」
健次郎「鶏やな」
籠に入った鶏が2羽。
係員「先ほど男性の方が…」
チラシの裏に書かれたメモ
「祝結婚
あっぱれ我が弟よ
さすらいの男より」
健次郎「兄貴や」
町子「何で鶏なんです?」
健次郎「あ…僕の田舎な、祝いの時に『鶏飯』いうて鶏料理食べるの」
係員「あの…」
健次郎「はい?」
係員「どういたしましょう? 当方ではペットのご同伴などはご遠慮いただいてますので」
町子「これ、ペットではないと思うんですけど…」
籠の底が抜けて鶏が飛び出した。ロビーはまたしてもドタバタ。
町子「捕まえて、捕まえて! ちょっと…」 髪を振り乱した町子が控室に戻る。「始まる前からクタクタですわ…」
和代と孝子の前にウェディングドレス姿の町子が来た。
孝子「お姉ちゃん、きれい!」
町子「ほんまに?」
泣きだしそうな和代。
町子「歯、まだ痛いの?」
和代「きれいやで、町子…。お父ちゃんにも見せてあげたかったな…」
泣きだす和代に町子の目も潤む。「お母ちゃん…」
こうして町子と健次郎は無事、結婚式を挙げたのでした。次回は波乱の夫婦生活のスタートから徳永家の子供たちとの心温まるエピソードをご紹介しましょう。
徳永家で着物のまま踊る町子。
ミニ予告
笛の音
一同「せ~の!」
組体操を町子に見せる子供たち。
総集編はネットを見るとチラホラこの時期の定番だったという言葉を見る。完走した朝ドラのデータが少なすぎるけど、1988年の「純ちゃんの応援歌」には、なかった。2011年の「カーネーション」もなかったと思うけどなあ。「カーネーション」は年末で終戦だったんじゃなかったかな~?
名場面が見られるのはうれしい。けどそれは総集編の役割であって(総集編は別に存在したはず)、ただでさえ春スタートの朝ドラより回数が少ないのに、さらにダイジェストが挟まるのはちょっと寂しい。みすず、加代子の喫茶店のシーンは好きだったな~。