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【ネタバレ】土曜ドラマ 山田太一シリーズ 男たちの旅路 第3部 第3話 別離

NHK 1977.12.3

 

あらすじ

陽平(水谷豊)はホテルの警備中に、男たちから暴行を受けて負傷します。吉岡(鶴田浩二)と悦子(桃井かおり)、荘十郎(柴俊夫)が急いで駆けつけますが幸い軽傷でした。陽平はけがを口実にして、悦子に自分の思いを打ち明けようとしますが、うまくはぐらかされます。吉岡は陽平から悦子の気持ちを確かめて欲しいと頼まれ、悦子に陽平との結婚を勧めますが、悦子はつれなく断ります。吉岡は、悦子の態度に何かを思いつめていると感じます。悦子は重い病に侵されていました。

2023.5.26 BSプレミアム録画。

男たちの旅路

男たちの旅路

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昨日の回もそうだけど、冬に放送されたみたいけど撮影は夏。

 

陽平はプールつきホテルの警備で、昼は警備服にアイロンをかけ、夜、巡回している。深夜1時過ぎ、プールでくつろいでいたカップルに声をかけ、男にキレられ、次に行った調理場で忍び込んでいた男たちにボコボコにされた。

 

警備室で休んでいた陽平の元に悦子が駆けつけ、全身が痛いと言うが、吉岡司令補と壮十郎が来ると、悦子を前に大げさに騒いでいたことがバレる。男3人は捕まえられず、ハム3本盗まれた。陽平は悦子に結婚を申し込むが、陽平ってB型じゃないの?と話をはぐらかす。

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陽平ってさ、先輩の聖子(五十嵐淳子)と付き合ってませんでした?

 

吉岡のアパートを訪れた陽平は、昨夜は申し訳ありませんでしたときちんと挨拶し、吉岡は陽平の成長に笑みがこぼれる。陽平はそうめんやそば、うどんの詰め合わせの箱を持参し、頼み事をした。

 

レストランに向き合う吉岡と悦子。悦子は吉岡に誘われて有頂天。下心があると言われてさらに喜ぶ。しかし、陽平の話だと分かると断ってくださいとテンションが下がる。帰りのタクシーで悦子はアパートに帰りたくないと言い、吉岡のアパートへ。吉岡は網戸がないんでなあ、と言いつつ思い切り窓を開けた。

 

悦子はお茶を入れると言い、かいがいしく動く。最初の頃もあったけど、そういうのは部屋の主人がやってよ。悦子は泊めてくれ、好きにしていいと誘う。最近、くたびれると思って病院に行くと、赤血球が作られず、ケガをしたら血が止まらなくなるという。悦子は「私を雇ってくれませんか?」と頼む。吉岡の部屋で掃除や洗濯をするのだと言う。

 

吉岡は悦子の誘いを断る。独りの部屋に帰りたくないと泣く悦子だったが、部屋を飛び出した。しかし、階段でフラフラしているところを吉岡が部屋に入れた。悦子は布団で吉岡は机でうつ伏せになって夜を明かした。

 

翌朝、近所の主婦たちが女の声がしたなど噂話していると、陽平が来て、吉岡の部屋のドアをドンドン叩き、部屋に入ってスリップ1枚で寝ていた悦子を見て、ショックを受けた。

 

プールサイドにいた壮十郎に愚痴をこぼす陽平だったが、偶然、プールにいたハム泥棒を見つけて捕まえる。吉岡にコソ泥を捕まえたと報告に来たのは壮十郎。悦子はひどい貧血でこれから吉岡が看病をすると言うと壮十郎は司令補が看病するというのは不自然では?と突っ込むが、余計なことに口を挟むなと逆ギレみたいな態度を取る。

 

吉岡のアパートに待ち伏せていた陽平に悦子が再生不良性貧血であることを話す。悦子を愛しているから、一人で看病すると言う吉岡に陽平は怒りをぶつける。

 

翌日、スーツ姿で出かける吉岡を尾行する陽平。こういう街並みを見られるのは楽しいな。しかし、吉岡にまかれた。悦子の暮らすアパートにバラの花束を持参した吉岡は悦子と食事をし、病院に付き添い、輸血をする。

 

悦子のアパートを突き止めた陽平。ラフな服装のせいかストーカー的怖さがある。陽平は吉岡が悦子を隠してる、あいつ50だぞ? 本心を隠してると悦子を責める。悦子は吉岡が好きだと言うが、陽平は悔し紛れに吉岡に女として見られてないとなじり、部屋から追い出される。

 

夜、医師に往診に来てもらい入院と言われた悦子は入院したくないと返し、抱いてよと迫る。おっさんドリーム的なものを感じるな…。まあ、吉岡司令補かっこいいけどさあ!

 

入院しても繰り返される輸血。陽平は吉岡が若い女を引っ掛けてると同僚に悪口を言いふらし、壮十郎に殴られた。

 

吉岡が向かうはずの病院で事件が起こった。吉岡は悦子を見舞いに行っており、現場に着くのが遅れて不在だった。小田社長が処分を決めると言い、料亭で差し向かいになる。小田は軍隊の一期上。小田は悦子と結婚するなら仲人もすると言うが、吉岡は本気だが結婚はしないと言う。なぜ抱いてやらない?とかいうの気持ち悪いな〜。

 

悦子は内臓出血を起こして倒れてしまい、吉岡はA型の生(なま)血液を集めようと警備室に電話をした。病院のロビーでは母親の宮子(今井和子)が吉岡に今まで知らせないで!と責めた。医師から呼ばれ、病室…処置室?に行き、悦子と対面。吉岡は元気になったら一緒に住もうと手を握るが、悦子は…。

 

宮子の男が葬儀社の主人と部屋の隅で打ち合わせを始める。若い女だから人はそれほど来ない、親戚の男も金かけても…とボソボソ話し合い。

 

後日、陽平と壮十郎が吉岡のアパートを訪ねると、すでに引っ越した後だった。電車に乗った吉岡がどこかへ向かう。(終)

 

どうも歳の差に抵抗あるんだよなあ。吉岡50、悦子23。いや、鶴田浩二さんと桃井かおりさんはビジュアル的にはいいんだけど、真面目一筋と思っていた吉岡さんが…というショックなのかも。今まで独身貫いて結局若い女かよ、みたいな。だったら、1部に出てきた竜夫の母と静かに暮らすとかの方がよほどいい。最後の最後でこれか〜。全体的にはすごく面白かったんだけどな。

別離

別離

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本当ならこのあと第4部とスペシャルがあるそうですが、今回はこれで終わり。まあでも、陽平も悦子もいないんじゃな…とも思う。

【ネタバレ】土曜ドラマ 山田太一シリーズ 男たちの旅路 第3部 第2話 墓場の島

NHK 1977.11.26

 

あらすじ

戸部竜作(根津甚八)は「墓場の島」というデビュー曲が大ヒットして、スターになります。戸部を見出したマネージャーの和泉敬吾(高松英郎)は厳しい管理で分刻みのスケジュールです。陽平(水谷豊)は戸部の警備を続けるうちに、戸部と気持ちが通じてきます。ある日テレビ局で、戸部は暴漢に腕を刺されて傷を負ったため、マネージャーの和泉は陽平を殴った上に解雇を言い渡します。吉岡(鶴田浩二)が抗議に行くと、和泉は32年ぶりに再会した特攻隊の生き残りでした。

2023.5.26 BSプレミアム録画。

男たちの旅路

男たちの旅路

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ステージに立つ戸部(とのべ)竜作はイントロが流れる中、歌い出す…のかと思ったら語り出した。記者の前で衝立で体を隠して生着替えしながらインタビューを受ける。

 

竜作のマネージャーの和泉は車での移動中、デビュー曲の「墓場の島」という歌のイメージから竜作が愛想良くインタビューに答えたことや和泉をマネージャーとして紹介したことを人前で笑うなと厳しく注意した。さらに警備士が体の小さい陽平であることにも怒っていた。

 

和泉は車の中で竜作にダメ出ししまくるが、竜作は大人しく言うことを聞くだけ。和泉にクビだと言われた陽平は吉岡に愚痴るが、壮十郎をつかせようと言い、陽平はちょっと複雑。

 

電車(新幹線?)の移動中、酔っ払いに絡まれた竜作を止める壮十郎。しかし、壮十郎もクビになった。壮十郎はクビになった理由をなかなか言いたがらなかったが、和泉に言われたこととして背が高くいい男でスターが見劣りすると言われたという。

 

再び竜作の警備についた陽平。竜作の話し相手として雇われた陽平は自宅に招かれ、竜作の話を聞く。鳥取のガソリンスタンドで働いていた竜作が客として店で歌っていたが、それを和泉が耳にした。

 

テレビ収録。竜作がつぶやくように語り始めると、この前、絡んできた酔っ払い?が竜作に斬りかかった。竜作は腕に怪我を負い、陽平は再びクビになった。

 

吉岡が竜作の事務所に行き、陽平に落ち度がないのに辞めさせたことを抗議しに行き、和泉と対面すると昔の特攻隊仲間であることが分かり、飲みに行く。27年、芸能マネージャーをして戸部を見出した。

 

竜作の部屋

陽平が悦子も呼んで3人で飲む。竜作が何かしたいと言っていたのが気になっていた陽平が聞くと、引退するつもりだと言う。笑わないイメージだけど、本当は鳥取の陽気な男だと言う。

 

スタジオ

竜作を売り出すために和泉はスタッフに頭を下げる。

 

ロッカールーム

陽平は吉岡に竜作が引退するつもりであることを話す。

 

竜作のマンションの前に吉岡が立っていた。引退するより本当の歌を歌わせろとなぜ言えない?と問う。和泉は聞く耳を持たないとし、デビュー曲も本当に「墓場の島」は存在して、ばあさんのことを歌った歌だったが、恋人という設定に変えられたのだと話す。

 

まるっきり抜き打ちじゃかわいそうだと和泉に話そうとする吉岡に、だったら明日言ってやると言う竜作。

 

翌日、別のマネージャーが運転し、陽平も乗る車で今日引退すると言う竜作にマネージャーは驚く。陽平には和泉からガードするように頼む。

 

吉岡は和泉と女を車に乗せた。話を聞いた和泉は竜作の言うことを本気にしていない。金儲け主義の和泉に吉岡は楽屋で竜作に引退したいのならしたらいいと言う。

 

キャンディーズがステージで♪シンデレラを歌う。

 

和泉は引退したってやりたい事ばかりはできないぞ。と忠告するが、竜作は舞台に立った。しばらく無言の竜作にファンから「竜作さん!」と声が飛ぶ。竜作はいつものように語り出し、歌う。拍手と歓声を浴びる。

 

バー?にいる吉岡、陽平、悦子、壮十郎。何となく沈んだ雰囲気。辞めようと思ったことがすごい、俺はあいつが好きだなと陽平は褒める。歌っていたらいつか自分の歌が歌えるかもと言う悦子。吉岡はあそこまで言うのなら筋を通すべきだったと言う。

 

再び竜作の「墓場の島」が流れる。(終)

 

寝る間もないほど忙しく自分のやりたいことができない。でもいざとなると辞めるとも言えない。根津甚八さんが雰囲気のある歌手役にピッタリだった。ドラマの中では友達のように接していた陽平だけど、水谷豊さんと根津甚八さんは根津甚八さんの方が少し年上だった。

 

そういや柴俊夫さんって夜のヒットスタジオの司会してたなあとふと思い出し調べると、古舘伊知郎さんと2人で1988年から1年半ほどしかやってなかったのね。

 

字幕

2部 吉岡…黄色

    陽平…水色

    壮十郎…緑

 

3部 吉岡…黄色

    陽平…水色

    悦子…緑 に変わってる。

 

確かに陽平と悦子はセットでよく出てくるけど、特に3部になると壮十郎はあんまり出てこないもんね。キリッとした美青年で割と好きなんだけどな。

墓場の島

墓場の島

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【ネタバレ】土曜ドラマ 山田太一シリーズ 男たちの旅路 第3部 第1話 シルバー・シート

NHK 1977.11.12

 

あらすじ

空港警備を担当する陽平(水谷豊)と悦子(桃井かおり)は本木(志村喬)という老人と知り合います。話好きの本木はガードマンたちから避けられていましたが、2人は本木を気に掛けていました。ある日、本木は空港ビルのロビーで倒れて息を引き取ります。陽平と悦子は供養のため本木のいた老人ホームを訪れますが、本木の友人たちから思わぬもてなしを受けます。数日後、老人たちは都電の車両を占拠して立てこもります。昭和52年度、芸術祭大賞受賞。

2023.5.26 BSプレミアム録画。

男たちの旅路

男たちの旅路

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空港

警備服姿の陽平と悦子が休憩中に雑談していると近くの席の本木という老人が若いのは今のうちだと笑い、ロンドンのハイドパークを知っとるかね?と聞く。本木が志村喬さん。

 

警備室

仕事終わりに私服に着替えた陽平と悦子は他の警備士からあの老人はいつも空港をうろついていて話しかけてきてしつこいと聞かされた。陽平たちは帰りのモノレールで偶然、本木に出くわし、何となく避けてしまう。

 

また空港警備の休憩中、隣のテーブルに本木がいた。本木本人も話しかけるとしつこいと避けられていると分かっているのに、それでも席を立とうとした陽平たちに話しかけてきた。ロンドンで12年間、通信社の記者をしていた。マクドナルドを知ってるかね?という本木にすごい混んでて〜などと悦子が答えると、イギリス労働党の党首だと言う。へえ〜。

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本木は1923年 ロンドンに渡る。第一次大戦が終わり、ロイド・ジョージが失墜し街には失業者にあふれていた。100年前! 話が途切れたので、陽平と悦子は席を立ったが、本木は椅子に座り込んでじっとしていた。

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警備室

仕事終わりの悦子が陽平に呼ばれて行くと、本木がロビーで倒れていた。

 

吉岡のアパート

陽平と悦子は本木が脳溢血でそのまま亡くなってしまい、冷たくしてしまったことを後悔していると吉岡に話すと、若い時は思わず残酷なことはしてしまうものだと励ました。

 

陽平と悦子は本木が住んでいた老人ホームに線香をあげに行った。

 

本木(志村喬さん)、門前(笠智衆さん)、辻本(加藤嘉さん)、須田(藤原釜足さん)、曽根(殿山泰司さん)…なんという豪華キャスト!

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1986年のドキュメンタリー番組では同じ事務所の加藤嘉さん、浜村純さん、花沢徳衛さん、藤原釜足さんが同じ事務所で毎年花見をするのが恒例だったが、1985年末に藤原釜足さんが亡くなったというところから番組が始まっていた。花沢徳衛さんの麻雀仲間として殿山泰司さんも出演してたし、藤原釜足さんの1つ年上の笠智衆さんもインタビューを受けていた。

 

本木(志村喬さん/1905~1982/当時72歳)

門前(笠智衆さん/1904~1993/当時73歳)

辻本(加藤嘉さん/1913~1988/当時64歳)

須田(藤原釜足さん/1905~1985/当時72歳)

曽根(殿山泰司さん/1915~1989/当時62歳)

 

加藤嘉さんや殿山泰司さんは当時60代。2023年の水谷豊さんや桃井かおりさんが当時の志村喬さんと同年代と言われても信じられない。

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このドラマではおばあさん役してたけど、それでもねえ。

 

酒を飲んで騒ぎ出した老人たち。

北の宿から

北の宿から

  • 都 はるみ
  • 演歌
  • ¥255
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陽平たちも一緒に「北の宿から」を歌う。

 

しかし、院長(佐々木孝丸)から酒を飲んだことを叱られる。佐々木孝丸さんは1898年生まれでさらに年上だったのか。だが、陽平や悦子には酒を出したが、門前たちは昼間の飲酒は禁じられていたため、水を飲んで騒いでいたと分かる。飲んだふりして俺たちをもてなしてくれたなんて、かわいそうだと陽平は5,000円、悦子は10,000円を寄付する。

 

空港警備している陽平は巡察に来た吉岡に老人ホームの老人たちのことを語る。他人に目がいくのはいいことだと陽平を褒めた。陽平は吉岡なら3万円くらい寄付したらどうかと言う。

 

吉岡は、その足で体調不良で休んでいた悦子のアパートを訪ねた。直らないタメ口を注意し、お見舞いの缶詰を渡して帰ろうとしたが、もう少しいてと言われてとどまる。年はとりたくない、早く死んじゃった方がいいと悦子が言い、そんなこと言うもんじゃないと吉岡がたしなめた。

 

警備中の吉岡を私服の陽平が訪ねた。門前、辻本、須田、曽根が都電をジャックした。都電の車庫で都電を占拠している門前は院長に要求があるわけではありません!と電車に閉じこもってしまった。須田は元都電の運転手。他も技術者など立派な仕事をしてきた人たちばかり。

 

陽平はシュークリームを持って老人ホームを訪れ、偶然、この事件を知り、院長も車庫長も警察沙汰にしたくなく、陽平が吉岡を連れてきた。ガードマン沙汰くらいならと言う陽平が面白い。吉岡が待遇に不満があるのかと尋ねても、門前はそうではないと答える。

 

吉岡は今晩一晩はこのままにしときましょうと夜が明けた。誠意を持って説得するという吉岡に車庫長はそんなことで納得するかといら立つ。吉岡の後ろに壮十郎(柴俊夫)。開始40分過ぎてようやく出てきた。

 

壮十郎はマスコミに訴えたいのではないか、壮十郎が新聞記者のふりをして話を聞きに行くと言うが、吉岡は門前たちを騙すのは良くないという。

 

院長「老人ホームにしてもかつての養老院のイメージに比べたならば格段に進歩してきておるし、改善されてきておる! それは結局、何だかんだと言っても世間の関心がそうさせてくれたんだ! そういうやさきに老人たちが電車を占拠したというような事が世間に出たならば、せっかく同情が集まりかけておる世間が…」

荘十郎「それは違うな! それは親の世話になってる学生は何も言うなという理屈と同じじゃありませんか。子どもや老人は何も言うな。不満を口にするな。世話になってるんだからおとなしくしてろって理屈と…」

院長「いや! それがいかんかね? 世話になっとる者はおとなしくしてろというのがどこがいかんのかね?」

荘十郎「じゃあ、金を稼がない人間は人間じゃないんですか? 金を稼ぐ人間だけがものを言えるなんておかしいじゃありませんか!」←字幕は”おかしいですよ”になってた

 

古い朝ドラを見ていても、ツイッターなどで院長的な批判をする人が多い気がしてモヤモヤしていた。

 

宿直室に悦子が来て、人質がいると言いに来た。人質は陽平。説得して夜中のうちに老人ホームに帰そうとしていたが、門前たちは陽平をからかうようなことばかり言って要求は言わない。逆に陽平に答えさせようとする。結局、雑談で盛り上がり、そのまま寝てしまって、朝になって陽平だけが外に出てきた。

 

警官が噂を耳にして車庫にやってきた。警官は家族を呼ぼうと言うが、院長は家族はいないと答えた。大事にする前に話をさせくださいと吉岡が頼んだ。

 

しかし、他の都電職員が勝手にパトカーを呼んでしまい、大事になりかけている。

 

電車に乗り込んだ吉岡は門前たちと話をする。

 

辻本「この、年を取るっていう事が年を取るまではどういう事か分からない。ひと事みたいに思ってる。…が、あっという間に自分の事なんだね」

門前「自分を必要としてくれる人がいません」

辻本「ただ世間の重荷になっちまう」

門前「私は人に愛情を感じる。しかし、私が愛される事はない」

辻本「仕事をしたくても場もないし、力もない。大体、仕事に喜びを感じなくなってくる。名誉なんてものの空しさが分かってくる」

門前「もうろくが始まったかなと思う」

辻本「しかし、自分のもうろくは自分じゃ分からない」

門前「捨てられた人間です」

 

ここのセリフのかけあい、すごい。じっと聞いている吉岡。

 

門前「いずれ、あんたも使い捨てられるでしょう。しかし、年を取った人間はね、あんた方が小さい頃、電車を動かしていた人間です」

辻本「踏切を作ったり、学校を作ったり、米を作っていた人間だ。あんたが転んだ時に起こしてくれた人間かもしれない。しかし、もう力がなくなってしまった。じいさんになってしまった。すると、もう誰も敬意を表する者はない」

門前「気の毒だとは言ってくれる。同情はしてくれる」

辻本「しかし、敬意を表する者はない。右手の不自由な役立たずのじいさんに誰が敬意を表するかと言われるかもしれない。しかし、人間はしてきた事で敬意を表されちゃいけないのかね? 今はもうろくばあさんでも立派に何人もの子どもを育ててきたという事で敬意を表されちゃいけないのかね?」

 

吉岡は黙ったまま。

 

辻本「空港で亡くなった本木さんにしても死ぬ前は昔の話だけをするただのじいさんだったかもしれない。しかし、昔ね、ロンドンで有能な記者だった事があるんだ。そういう過去を大切にしなきゃ人間の一生って一体何だい? 年を取れば誰だって衰えるよ。目覚ましい事はできないよ。しかしね、この人は何かをしてきた人だ。こうこうこういう事をしてきたっていうので敬意を表されちゃいけないのかね。それでなきゃ門前さんが言うように次々に使い捨てられていくだけじゃないの!」

 

車庫には警官たちも集まり始め、陽平も悦子も心配そうに見守る。

 

吉岡「お気持ちは分かりましたが違うんじゃありませんか? 私も似たような気持ちを持った事があります。いや、現在も持っていると言っていい。杉本陽平からお聞きかもしれんませんが、私はいまだに戦争というものを引きずってる人間です。戦争の体験から抜け出せずにいるんです。バカだと言われます。いい加減にしろと言われます。しかし、周りがあまりにも早く忘れ過ぎる。いや、忘れるだけならいい。誤解をしてたかをくくってる。それがやりきれなくて戦争から抜け出せずにいるんです。

たくさんの友人を失いました。その友人たちが内心は軍国主義反対だったと言われると違うと思い、軍の教育にだまされていたと言われると違うと思い、なぜ、反抗しなかったのだなどと言われるとカ~ッとして…。つまりは何も分からないんだと思います。せめて自分一人ぐらいは死んだ友人たちの本当の姿を忘れずにいようと思うんです。

しかし、それを世に訴えようとは思わない。言葉で伝えられるような事はたかが知れています。つまりは一緒に生きた人間が忘れずにいてやるしかないと思うんです。だれも皆さんに敬意を払わないのはご無念でしょう。しかし、それをこういう事で抗議しては立派な過去を汚すだけじゃありませんか? こんな事した皆さんを世間が敬意を表すると思いますか? 私は間違っているんじゃないかと思いますねえ」

 

門前「吉岡さん」

吉岡「は」

門前「あなたの言われる事は、それは理屈だ」

吉岡「理屈でしょうか?」

辻本「あんたはまだ若いんだ。若いから理屈で納得ができる。年寄りの無念な寂しさはあんたにはまだ分からない」

吉岡「そうでしょうか」

 

門前「吉岡さん、あなたの20年後ですよ」

吉岡「は?」

門前「20年後には今のこの私たちと同じです」

辻本「まあ20年後には分かる。あんたの言ってる事が理屈だという事が分かるでしょう」

 

吉岡「私は20年後の覚悟はできています。少なくともこんな事はしない。年を取れば分かるなどと言うぐらいなら、なぜこんな所へ閉じ籠ったんです! はっきり言いましょう。皆さんは甘えている。何を訴えたかったか考えてみろと謎をかけ、年を取ったら分かるなどと突き放すなら、なぜこんな事をしたんです! こんな事をした以上、通じても通じなくても、皆さんの思いを表へ出て言いなさい! そうでなければ若い連中には皆さんのした事が何の事か分からないでしょう。言いなさい。戸を開けて言うだけは言いなさい! でなきゃ、すねた子どもが押し入れに閉じ籠ったのと全く変わらんじゃないですか! さあ、開けましょう。戸を開けて外の連中にしゃべりましょう」

 

門前「吉岡さん」

吉岡「はい」

門前「押し入れに閉じ籠ったんですよ。私たちはすねて押し入れに閉じ籠った子どもです」

吉岡「皆さんは子どもじゃない。開き直るのはおやめなさい」

辻本「開き直ってるんじゃない。通じない事は百も承知だ。初めからこんな事をしてどうなるとは思っていなかった。ただ、空港で死んだ本木さんのお骨が帰って来た時に寂しくてね、無念でね、悔しくてね…。ただ、おとなしくばっかりして死んでたまるかと思った」

 

吉岡「それでもやるべきではなかったと思いますね。男はこういうふうに甘えるべきじゃなかった。そう言っておきます」

曽根「私はただ門前さんが『どうだい、電車をハイジャックせんか』と言いだした時はうれしかったね。ハハハハ…。ホームに入ってると万事、遠慮がちになるもんでね。そんな事は考えつきもしないや。パ~ッとね、パ~ッと目の前が広くなったような気がしたよ。久しぶりで目的があった。計画を立てながら生き生きしてたね」

須田「お前な! お前には分からねえんだ! そりゃ世話になってるよ。世話になってる人間がこんな事しちゃいけねえ。税金使って世話になってる人間はおとなしくしてりゃいいんだ。そんな事は分かってんだい! それでもな、それでも、ウワ~ウワ~ってムチャをやりたくなる年寄りの気持ちは、あんたになんか分からねえんだ!」

曽根「分かった。もういいやね、おっさん」

須田「分からねえんだ、あいつには!」

 

門前「吉岡さん」

吉岡「はい」

門前「これは老人の要領を得ん悪あがきです。黙って警察に引き渡してくれますね?」

吉岡「はい。黙って…」

 

門前たちは警察に引き渡された。吉岡は陽平たちにこのままでいいんですか?と詰め寄られるが何も言わずに警察の聴取に応じた。荘十郎は間に合わなくてもテレビ呼んだ方がよかったなと言う。吉岡が寂しそうなことが気になる悦子。

 

都電に乗る吉岡たち。早稲田行。吉岡はお前も年を取る、みんな使い捨てにされると言われたと言うが、それでも陽平は詰め寄り、荘十郎たちに止められた。(終)

シルバー・シート

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切ないねえ~。何より切ないのが20年後になったら分かると言われていた鶴田浩二さんがこのドラマの10年後の1987年に63歳で亡くなっていること。笠智衆さんより早くに亡くなっちゃった。

 

某動画サイトで2003年のNHKのテレビ50周年の特別番組で桃井かおりさんと水谷豊さんがゲストに出て「男たちの旅路」のことでインタビューされていた。二人は当時50過ぎでドラマ当時の鶴田浩二さんと同世代になったと話してたけど、若かったね~。

 

古いドラマを見ていると、見た目が変わらないことも一つの才能だと思うけど、長生きも一つの才能だと思う。今、再放送を見ている「3人家族」の三島雅夫さん、竹脇無我さんどちらも60代でお亡くなりになってて、もっとお芝居が見たくても見られない。近しい関係じゃないから気軽に言えるのかもしれないけど、長生きしてるだけで敬意を表したい。←なんだか上から目線だね。