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ドラマの感想など

【ネタバレ】足摺岬

1954年 日本

 

あらすじ

田宮虎彦の「絵本」「菊坂」「足摺岬」の3つの短編から新藤兼人が脚本を書き、吉村公三郎が監督した作品。戦時中の暗い谷間の青春像を描く。昭和9年、浅井(木村功)は学友の緒方、松井、八重姉弟らと一緒に本郷菊坂近くの富士見軒で下宿生活を送っていた。ある日、八重(津島恵子)は濡れ衣を着せられた弟の自殺に傷心し、足摺岬にある実家に戻ることに。その後、自らの運命の苦しさに八重のもとを訪れた浅井だが、彼女からすでにとある有力者との婚姻が決定したことを告げられる。辛い現実を乗り越えて生きて行こうと決意して足摺岬を発つ浅井の目は強い決意の光であふれていた。

2025.11.12 日本映画専門チャンネル録画

 

蔵出し名画座

評論家川本三郎こう観た

 

軍国主義が強まり思想弾圧が激しくなった昭和9年ごろのいわゆる「暗い昭和」の寂しい青春を描く。田宮虎彦の三つの短篇「足摺岬」「菊坂」「絵本」を新藤兼人が脚色。「偽れる盛装」で知られる盟友・吉村公三郎が監督。

苦学生木村功高知県足摺岬出身で本郷界隈の食堂で働く娘に津島恵子。二人のはかない恋が胸を打つ。音楽は「ゴジラ」で知られる伊福部昭。暗い旋律が画面を引締める。

演出助手の窪川健造は「暗い昭和」に左翼作家として弾圧を受けた経験がある佐多稲子の子息。傍役陣も充実している。四国の商人宿で木村功を励ます遍路の老人に御橋公。薬の行商人に殿山泰司。憎々しい特高の刑事に神田隆。特高に逮捕される大学教授に信欣三。

原作者の田宮虎彦は実は足摺岬に行ったことがなく映画を見て「いいところだな」と驚いたという。現在、足摺岬には田宮虎彦の文学碑があり、作中の「砕け散る荒波の飛沫が崖肌の巨巌いちめんに雨のように降りそそいでいた」が刻まれている。

 

近代映画協会作品

 

原作:田宮虎彦

脚本:新藤兼人

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製作:新藤兼人

協力製作:山田典吾

     絲屋壽雄

     能登節雄

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音楽:伊福部昭

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後援:高知縣

   渭南国立公園期成同盟

   高知縣交通株式会社

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淺井政夫:木村功(青年俳優クラブ)

福井八重:津島惠子

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さよ子:日高澄子

賣薬賣り:殿山泰司

遍路の爺さん:御橋公(現代ぷろ)

広瀨隆剛:森川信(現代ぷろ)

ユキ:赤木蘭子

松木:信欣三

特高刑事:神田隆(東俳協

問屋の主人:菅井一郎(第一協團)

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西野:金子信雄

坪内:内藤武敏(民芸)

謄寫印刷工:下元勉(民芸)

病院の助手:芦田伸介(民芸)

緒方:齋藤雄一(民芸)

香椎:水上貴夫(新東宝)

学生:太田恭二

食堂の主人:石島房太郎(東俳協)

謄寫印刷所支配人:嵯峨善兵(現俳協)

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食堂の学生:近藤宏(五人の会)

福井義治:砂川啓介(少年俳優クラブ)

文春:河原崎建三前進座

おちせの息子:寺田誠前進座

のぶ:田中筆子

トヨ:原緋紗子(東俳協

おちせ:野辺かほる

遍路婆さん:小峰千代子(東俳協

女中風の少女:島田文子

印刷女工:松山紀子前進座

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監督:吉村公三郎

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田宮虎彦さんというとやっぱり「別れて生きる時も」だな。

 

なんと! これも字幕なし! 11月に放送の日本映画専門チャンネルの映画3本、みんな字幕がついてなかった。そういう方針になっちゃった!? 12月に見る予定の蔵出し名画座も字幕マークがついてない…

 

昭和九年 冬

日本が暗い谷間へ

足をふみ入れた頃―

 

留置場に入れられていた学生服姿の浅井が釈放された。母が原ひさ子さんか。さすがに髪は黒々している。俳優の滑舌云々じゃなく音が聞き取りづらいんだよ。

 

一緒に浅井の下宿先に帰り、お茶を飲む。大学だけは出てほしいという母。浅井は無理してお金を送らなくてもいいと話した。八重が浅井の洗濯物を届けに来た。津島恵子さんも若いね~。八重は学生食堂で働いている。浅井の周囲は貧乏人ばかり。

 

学生の軍事教練が始まっていた。浅井は、体調が悪いわけではないが、ずっと休んでいる。下宿人仲間が「討匪行(とうひこう)」を口ずさみながら、外へ出ようとすると浅井が帰ってきた。浅井に「いかがでしたか、別荘は?」と話しかける男。

討匪行

討匪行

  • 春日八郎 & サニー・トーンズ
  • 謡曲
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

下宿人仲間なんだろうけど、名前がね…字幕がついてれば分かるんだけど。

 

浅井は、外に出していた金魚鉢を病床の少年に持ってきた。少年は脊椎カリエスで寝たきり。浅井は大家に家賃を催促される。少年は大家の息子かな? 文春(ふみはる)くんは河原崎建三さん。

 

同じ学生の緒方からいつ帰ってきたんですか?と話しかけられる浅井。

 

新聞配達をしている少年は八重の弟で浅井の部屋の隣に住んでいる。留置場から出られてよかったですねと薄い壁越しに浅井に話しかけ、八重が持ってきたおにぎりを食べて、これから夜学。

 

浅井は咳込みながら、手に息を吹きかけ勉強している。ん? 勉強っていうか、ガリ版に原稿を書いてるのかな。

 

明文社に原稿を持っていった浅井。刷り上がった原稿がすぐ切れちゃったじゃないかと印刷所の支配人に文句を言われた。在宅バイト?

 

浅井は病院に原稿を届けに行ったが、山田教授は不在。その場にいた白衣の男に部数が半分になってしまって、2、3日遅れるというと、1週間ばかり旅行に行くからいいだろうと言われた。

 

食堂で働く八重。浅井が食べに来ていたが、店主から飯代を請求される。みんな、ツケ払いなのね。浅井の隣の席に座っていた学生は卒業したら出世払いするという。

 

辛い映画だ…戦前の映画だっけと思ったけど昭和29年に昭和9年を描いた映画。また音楽が暗い…

 

店主からツケを払うように念押しをされ、店を出た浅井を追いかけてきた八重。八重の兄は捕虜になって銃殺されたのだが、ひどいうわさが飛んでいて、弟はいじめられている。弟だけは何とかしてやりたいという。八重の田舎は高知だが、母は足摺岬に住んでいる。浅井の田舎は福井。

 

八重は自分と弟の働きだけで大学へ行けるか浅井に聞く。浅井は自分も行けているのだから大丈夫だろうと励ます。

 

八重の弟・義治の家賃は八重が払いに来ていた。

 

浅井の下宿先には特効の刑事が来ていた。浅井に別荘はどうでした?って聞いてた男の部屋? 男の部屋を出た刑事は浅井の部屋にも来て、要監視人だから、ちょくちょく来るよと笑って去って行った。傘で障子に穴を開けるとはひどい。

 

違うな、特高の刑事が来てたのは松木先生か。誰が誰やら。

 

友人に新しいバイトを紹介され、さっそく今晩行くという浅井。バイトを紹介してくれた友人がおごるというので馬肉鍋を食べに行った。最近、授業に出ていない浅井。

 

教授が授業中、200円送ってもらい、ヨーロッパに留学していたが、母に500円送らせて、オペラなどを見に行き、結局、そっちの方が勉強になったという自慢話をしていて、教授に激しい憎しみを感じ、それから授業に出ていない。

紅萌ゆる丘の花

紅萌ゆる丘の花

  • provided courtesy of iTunes

友人は酔っ払って、「紅萌ゆる丘の花」を歌う。

 

また大家に家賃を請求されるが、新しいバイト先では勝手に広告を刷るな?と怒られた?? この辺、よく分からない。

 

金持ちそうな学生の家に行った浅井。パイプをふかし、コロンビアコーヒーを勧める学生。同郷のよしみで立て替えてきたが、もうダメだな、金は、もっと有効に使いたいと断った。部屋には本がたくさん並ぶ。

 

浅井は雨の中、傘もささずに帰った。下宿先に帰ると、義治が強盗事件を起こしたと聞き、驚く。八重も食堂で泣いていた。しかし、犯人は札付きの不良で義治は冤罪だった。下宿先のおかみさんが迎えに行ったが、警察から帰ってきた義治は机に突っ伏して泣き続けた。竹刀でぶたれて、顔にアザを作った。捕虜の弟だからアカだろ?と疑われ、何べんもたたかれた。

 

特高刑事が来てニヤニヤ。松木が帰るように言う。

 

風の強い日、義治に声をかけた浅井。義治がいなくなっていたことに気付き、大家にも声をかけ、手分けして捜すことにした。浅井は八重に義治が裏の墓地で自殺したことを伝えると、八重は倒れた。倒れ方がリアル。

 

八重は母がひとりでいる高知に帰ることにした。咳が治らない浅井に死んでしまっちゃ何にもならないという八重。センチになっちゃうんで涙が出ちゃうと東京駅まで送らずに八重と握手で別れた浅井。駅のホームが見える橋から手を振って見送った。

 

金魚のいなくなった金魚鉢。

 

義治は、こつこつ貯金をしていた。

 

父から、ハハシス、という電報を受け取った浅井。下宿のおばさんから母からの小包が届けられた。中身は衣類や栗など。浅井は父の本当の子でないため、もう帰って来ないでいいと言われ、母は父にいじめられ通しだったと泣いた。また、特高刑事が来ていて、若い刑事は松木の部屋を漁り、手錠を掛けて連れていった。

 

しばらく帰って来ないようなら部屋の始末を頼みます、と浅井に言い、大家には下宿代は本を売ってくださいと頼んだ。

 

2階の学生夫婦は歌を歌って踊っていて、浅井は笑うな!と乗り込み、殴り合いに。このキチガイ!と言われた浅井が血を吐いて倒れた。医者を呼ぶという友人だが、金がかかると浅井が止めたが、友人は医師を呼びに走った。

 

まだ咳の止まらない浅井だが、回復して古本を買いに行った。街中では戦車が走る。戦車そのものを映すんじゃなく、古本屋のウィンドウ越しに映っている。

 

浅井の部屋を下宿のおばさんが次の学生に勧めていた。浅井は下宿を去ることにし、寝たきりの文春にアンデルセンの絵本をプレゼントした。本も机も売ってしまった浅井は、まだどこへいくのか決めていない。文春は浅井の体調を気遣い、自分の病気はもう治らないという。

 

浅井は汽車に乗り、船に乗り、行ったのは八重の家。「泊めてください、やっと来たんです」と言って倒れた。

 

目を覚ました浅井に薬を勧める男。殿山泰司さんか? ぽっちゃりだね。焼酎と一緒に飲むって、そんなのアリ? 浅井に薬を飲ませると、隣の部屋で将棋を指していた。対戦相手は、お遍路さん。体を粗末にしちゃいかんよと浅井に言う。

 

八重の家は、宿屋? 食事を持ってきた八重だが、浅井は食欲がない。八重は、この辺には雪がない、冬がないのだという。足摺岬に落ちた人は、それっきり上がってこないのかと浅井が聞く。

 

雨で商売にならず、将棋を打つ薬売りとお遍路さん。浅井は部屋に戻ってこない。お遍路さんは「危うし!」と宿のおばさんに浅井のことを知らせた。買い物から帰った八重は、浅井が岬に行ったと聞き、慌てて外へ飛び出して行った。

 

薬売りが濡れネズミになった浅井を抱えて帰ってきた。また焼酎で薬を飲ませる薬売り。八重に口で飲ませるように指示。え! 八重は焼酎を口に含んで薬を飲ませた。

 

目を覚ました浅井は八重の顔を一度見て死のうと思っていたと告白した。あなたに会ったから死ねなくなったと話し、母が死に、無性にあなたに会いたくなったと語る。あなたと一緒に生きたいという浅井だが、八重は1週間来るのが遅かったと泣く。

 

お遍路さんから、八重は、あと10日もすれば嫁入りすると聞かされた浅井。八重の父は息子が銃殺され、天皇陛下に申し訳ないと自殺し、土地にいられなくなって引っ越し、今、住んでいる有力者の次男に見初められ、結婚することになった。強く生きるんじゃと励まされた。

 

晴れた日、浅井と八重は並んで足摺岬へ。

 

薬売りとお遍路さんが宿を出ていった。八重が朝のバスに乗るんだったら時間が、と呼びに来た。八重さん、僕…と言いかけて、やめる浅井。

 

八重に別れを告げ、東京に向かう浅井。宿を出た薬売りとお遍路さんもそれぞれ道を分かれた。薬売りが歌いながら商売するのは、違う映画でも見たかも!? 歌いながら歩く薬売りのあとを子供たちがついて歩く。

 

浅井が泊まっていた2階の部屋の掃除に行った八重はシャツがそのまま干されているのに気付き、バス停へ。バスは行ってしまった後だった。

 

バスに乗る浅井のアップ。(終)

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木村功さんは以前、日本映画専門チャンネル北海道放送制作の日曜劇場でいくつか見たので売れてた人なんだなと思ったけど、1981年に58歳で亡くなっていたから、それまであまり見たことなかった。

 

それにしても悲しい話だった…浅井が生きる希望を持ったとて、これからを思うと、召集されそうだしなあ。あ、結核っぽかったから…どっちにしても希望がないよ。