TBS 1968年6月8日
あらすじ
土地開発会社のヘリコプター墜落! 死亡2名、その仮面の下に重要犯罪者をかくまっている莫大なマージンを持つ人を国外に脱出させる国際組織がある。キイハンター、直ちに出動。各自の持ち味を発揮して接触。だが、そう甘くはいかない。敵のガードは堅い。なぎさに絶体絶命の追跡をかわして空と海に繰り広げる死闘。
2025.10.14 J:COM BS録画
ナレーター<この部屋のグループは5人>
元 諜報部員・黒木鉄也:丹波哲郎
元 諜報部員・津川啓子:野際陽子
カー狂・島竜彦:谷隼人
記憶の天才・谷口ユミ:大川栄子
元 新聞記者・風間洋介:千葉真一
<彼らの愛するものは自由。求めるものは平和>
国際警察特別室
UNIPOL JAPAN
国際警察・村岡特別室長:仲谷昇
<彼らの活躍がここに始まる。彼らの行くところ不可能の文字なく、彼らを遮る国境もない。彼らは、こう呼ばれる…>
KEY HUNTER
制作:東映株式会社
TBS
浜辺を全力疾走する風間。ユミがタイムを計る。「うん、だいぶ、いい線いってるわ」
車から見ていた啓子は音楽に体を動かし、黒木はサングラスをかけて寝そべっている。ユミは風間を踊りに誘い、踊り出した。
しかし、啓子はヘリコプターの飛行音が聞こえたため、プレーヤーを止めた。
海には貨物船。ヘリコプターを双眼鏡で見る黒木。風間が持っているのは望遠カメラ。
突然、ヘリコプターが爆発して一同びっくり!
新聞記事
ヘリコプター墜落
操縦士一名、乗客一名死亡
原因はエンジン引火
新聞記事を読み上げる風間。「死亡した乗客は日東(にっとう)土地開発会社の副社長・三田泰一(たいいち)、天地航空所有のヘリコプターをチャーターして開発計画を進めている地域を空から視察中、この事故に遭ったものである」
ユミ「国外脱出が目的じゃなかったのね」
ドアを開けて、啓子が入ってきた。「死人に口なし。どっちがほんとの目的やら」
黒木「国際警察の情報によれば、ヘリコプターが向かっていた貨物船、ビーシー号の船長は世界的な犯罪者隠匿シンジケートの手先に違いないんだ」
啓子「うん…あの地点で密出国者を空から収容する」
黒木「あのヘリコプターは確かに貨物船に向かってたよ」
啓子「世界中の警察が躍起になって捜している犯罪者隠匿シンジケート。世界各国の重要犯罪人を高いマージンを取って国外に脱出させ、警察の目の届かないところにかくまう。こりゃ、相当な組織でなければできない仕事だわ」
風間「その組織の犯罪者収容の瞬間をカメラに収めれば、俺は一躍、世界の事件記者になれたんだ。こんちきしょう! あのヘリコプターさえ墜落しなければね」
黒木「いや、諦めるのは、まだ早いな。死んだ三田副社長がヘリに乗った目的は本当に土地の視察だったかどうか」
まずは日東土地開発に当たってみるため、啓子は色っぽいルポライターに化けて、社長にインタビューしてこようと思い立つ。
天地航空に行った黒木。いつもの帽子、サングラス、スーツ。「きのう墜落したヘリは天地航空の所有機だったんだな」とすれ違った整備員に話しかけ、エンジン引火の原因は何かと聞いた。
整備員「分かりませんね。整備は完全だったんだ」
黒木「パイロットの技量は確かか?」
整備員「最高でしたよ。アメリカ空軍帰りの2世でね」
黒木「天地航空のパイロットは、あの男1人か?」
整備員「いや、もう1人います」と空を見上げた。
飛んでいたヘリコプターが着陸し、女性が降りてきた。「パイロットの阿井(あい)雅子です。心配してらっしゃるんですって? また落ちやしないかって」
黒木「さっきまではね。だが、今は落ちてもいい心境なんだ」
雅子「じゃあ、乗ってくださる?」
黒木「乗ろう。料金は奮発するよ」
雅子「目的は観光? 視察? 宣伝広告?」
サングラスを取った黒木。「目的はエスケープ。あのバラ色の雲の中へね」
雅子「ロマンチストなのね」
黒木「雲の向こうに平和な世界を求めてね。切実な現実問題さ」
笑顔を見せる雅子。
次の場面では車を運転している黒木。「行く先は君に任せる。雲の向こう、外国ならどこでもいいんだ」と助手席の雅子に言う。外国に行く気なら国際線ジェットの切符を買うことね、と答えた雅子だが、黒木は国際線に乗るにはパスポートがいる、しかし、政府と仲が悪い、特に法務省とはね、と左手を正子の手の上に置く。
雅子「あなた、何か誤解してるんじゃない? わが社だって政府の認可を取って営業してるのよ。ヘリコプター2機だけのちっぽけな航空会社だけど」
貨物船ビーシー号へ向かう途中、うち1機は、きのう墜落した。ビーシー号は旅券もビザもなしに世界を旅したい連中の助け船だと黒木は言う。「なんのこと?」と雅子は、とぼけ、車を止めるように言い、車を降りた。「残念だわ。やっぱりあなたは誤解してらっしゃるようね。あたしのヘリは、あなたのようなステキな男性を乗せたくてワクワクしてたのに」
黒木は、このホテルの315号室に連絡してくれと「NEW GROUND HOTEL」と書かれたマッチ箱を渡して、その場は去った。
日東土地開発KK
風間「大した景気ね。最近、グングンのしてる会社らしいよ」
啓子「うん」
ロビーで待っていた2人が社長室に通された。川原社長は高橋昌也さん。
約10年後の赤いシリーズの時とあまり変わらないな~。当時40手前。ていうか、この時期、高橋昌也さんの妻が加藤治子さんだと先日知ってびっくりしたよ。加藤治子さんが8歳年上。
川原「ほ~う、香水は夜間飛行ですね。それにそのファッションも本場仕込みだ。何か三田くんの事故のことでお聞きになりたいとか?」
啓子より先に風間が口を出す。「三田副社長がヘリコプターに乗った理由です。本当に土地の視察だったんですか?」
視察だと認める川原社長。「三田くんは墜落の瞬間まで空中撮影を続けていました」デスクの引き出しを開け、カメラを見せた。カメラが見つかったのは、現場付近の林の中。泥に埋まっていたため、発見が1日遅れた。業務上の資料として、フィルムの中身をプリントした。最後の風景が大きくブレている。
墜落の瞬間だと思われるフィルムを見た風間は「こりゃすごい」と感心した。「こりゃ、いけますね、このネタは」。仕事に殉じた三田副社長の美談として、このフィルムを提供するよう頼んだ。
川原「これを提供すれば、あなたにもボーナスが入りますか?」
啓子「ええ、夜間飛行がもう1瓶買えますわ」
川原「では、あなたの美しさのために」と啓子にフィルムを渡した。
啓子「どうもありがとう」
カメラとは言ってたけど、動画だね。黒木たちでフィルム鑑賞。海岸線を撮影していたが、最後は大きくブレて終わった。今回も島、不在!?
ユミ「ふ~ん、確かに土地視察のフィルムみたいね」
風間「そのとおり。国外脱出が目的なら、こんな撮影は、やらんだろう」
啓子「つまり三田副社長は国外脱出のためにヘリに乗ったんじゃないってことね」
黒木「いや、このフィルムは三田が撮ったもんじゃないな」
驚く一同。黒木がもういっぺんやってみろというので、もう一度再生。
黒木「見ろ。俺たちが車を止めていた辺りだよ」と指摘。ユミは車も自分たちも映っていないことに気付き、啓子もここからヘリの墜落を目撃したのにと不思議に思う。
黒木がストップをかけた。
風間「この数コマのちに墜落のショックが現れてるんだ。どういうこと? これ」
黒木「三田のヘリコプター搭乗の目的を土地の視察と見せかけるために誰かがこのフィルムを工作したということだな」
第1に浮かぶのは天地航空の一味。空を飛ばなくちゃ、撮影は不可能。日東土地開発の川原社長も怪しい。風間は啓子にイカれてフィルムを提供したのに?と不思議がるが、啓子は「残念ながらね、あたしにイカれちゃいないわ。熱っぽい目の奥に冷たい計算が潜んでた」と見抜いていた。
黒木「イカれたふりをしてフィルムを提供した。それもごく自然にね。となると、相当なタヌキだな。川原ってやつも」
啓子「うん…フフッ、相手にとって不足はないわ。こっちだって化かし方をみっちり修行したメギツネだもん」
黒木「キツネとタヌキの化かし合いでいくか」
啓子「やるわ。ロマンスグレーにイカれたふりして、敵の内情を探ってみる」
40前でロマンスグレー!? 確かに白髪混じりではあるけど…
風間「よ~し、俺がついてってあげましょう」
しかし、啓子は「ついてって何するの?」というリアクション。
黒木は風間とホテル住まいだと待ったをかけた。
風間「ホテルで何するの? ボスと」
黒木「天地航空にもメギツネが1匹いるんだよ。そいつを罠にかけるんだ」とニヤリ。
前回と同じパーマヅラをかぶった啓子が川原社長のもとを訪れ、社長室のドアを開けようとすると、中から川原社長の声が聞こえた。「また来たのか。脅迫だ。根も葉もないでっちあげだ!」
三宅「ほんとですかね、社長さん。でっちあげかどうかは、このメモを見てもらえば分かりますよ。30万は高くないってこともね」
啓子がそっとドアを開けて覗く。おお、三宅は江幡高志さんではないか。
小悪党といえば、江幡さん! 「おやじ太鼓」にも出てた。亀次郎に言い負かされていたけどね。
川原「会社ゴロのゆすりにいちいち応じていては土地開発などできん。帰りたまえ」
会社ゴロのゴロは、ごろつきのことなのね。
三宅「世間に知れれば、刑事問題になること請け合いなんですがね。まっ、とにかく見といてくださいよ」社長室を出て、啓子と出くわし、そのまま歩いていった。
ノックして社長室に入った啓子。川原はデスクの上の紙を懐にしまいながら、「いやあ、これは、すごいニューモードだ」と啓子を褒めた。すごいミニだもんね。
啓子「おかげさまでボーナスにありつきましたわ。あのフィルムは副社長の殉職美談としてテレビ局やニュース映画に売り込んでます」
川原「三田くんも地下で喜んでくれることでしょう。わが社の宣伝にもなることだし」
啓子「まあ、企業の鬼ですのね、社長さんって」ソファにかけ、チラシを読む。「『ご投資のチャンス、光と影のドリームランド』。ステキねえ。『開発資金20億』。うわ~っ、すごいわねえ」
啓子をいやらし~い目つきで見ている川原。「半分は私と三田くんの金(かね)。あとの半分は出資者から集めた資金です」
啓子「出資者も安心して投資することでしょうね。社長さんの事業なら」
川原「どうして分かります? きょう会ったばかりなのに」
啓子「フフッ、あたしってね、男を見る目がとっても高いんです」
川原「では、あなたも投資してくれますか?」太ももに手を置く。
啓子「フフッ。したいのは、やまやまなんですけど、お金がなくって」太ももに置かれた手の上に自分の手を置いて、さりげなく払いのける。「それより社長さん、あたしに投資なさったら?」
川原「あなたに?」
啓子「『今がご投資のチャンス、光と影のドリームランド』。フフッ」
川原「よろしい。私も土地と女性を見る目は高いつもりです。早速、事業計画を練りましょう」とささやく。
バー
バニーガールみたいな格好のウエートレス…でもウサギの耳はない。
川原「さあ、契約成立。われわれの新しい事業計画のために」と啓子と乾杯。
啓子「蜜と土の処女地かな。待ってるわ、あなたの開発を」←なんちゅーセリフ!
川原「私の開発は少々手荒いですよ」啓子の首筋に顔を寄せるが、啓子が立ち上がり、踊りに誘った。
啓子「開発って、最初は何をするの?」
川原「視察。豊かな起伏、滑らかな地肌。緑の草原、神秘の泉」
啓子「空から?」
川原「いや、もっと近く。この手でじかに」啓子の腰を抱く。
いつまで続くんだ、この会話は。
啓子「ここ、出ません?」体を密着させ、ポケットからメモを抜き取った。「あたし、お化粧直してくる。じゃあ、待っててね」川原に頬にキスされながら、化粧室へ行きメモを見た…メモと思ったら、広げたら結構大きな紙だったな。
川原は車を呼んでくれ、とウエートレスに頼み、葉巻を口に加え、ライターを取ろうとポケットを触り、メモがないことに気付いた。化粧室から戻った啓子を見て「メギツネめ」とつぶやく。
HOTEL NEW GROUND
風間はホテルのテレビに細工中。電話が鳴り、「アハハハッ…さすがの古ダヌキもメギツネの手管に遭ってグニャグニャか?」と黒木が笑う。
啓子「川原社長は政経興信所の三宅って調査員にゆすられてるわ。日東土地開発が出資者から集めた10億円の資金に何か疑惑があるらしいの、ええ」
黒木「浮かび上がってきたな、副社長の国外逃亡の背景が。よし、じゃあ、その調査員に当たってみてくれ」
風間に声をかけられ、受話器を置く黒木。窓から外を見ると、外国人男性が2人、黒木たちを見張っていた。
黒木は散歩に行くと外へ出て、風間は隣の部屋で待機することになった。
ホテルを出た黒木を男2人があとをつけた。今回も吹替っぽいな。地下道で黒木を見失った男たち。「俺になんか用か?」と姿を現した黒木が男たちと殴り合い。
丹波さんのアクションシーンは殴り合いのシーンが多くて、単純に痛そう。
雅子「フィリップ! もういいわ」
黒木「なんだい、この2人は、あんたの手先だったのか」
雅子「そう。2人ともCIAから引き抜いた腕っこきよ」
黒木「俺はまた、この手で撃ち殺した麻薬ボスの身内かと思ったぜ」
雅子「麻薬のボスを?」
黒木「鄭日成(てい・にっせい)。名前ぐらい知ってるだろ」
雅子「外国に行きたい理由は、それだったのね」
黒木「もう乗せてくれてもいいころだな。これだけ調査したんだ」
雅子「断っとくけど、あたしの正体を知った以上、裏切ったら地獄行きよ」
黒木「俺は天国行きの切符を申し込んだはずだぜ。出発はいつだ?」
雅子「調査は、まだ済んでないわ。ホテルへ案内して」
あ! いつも自社CMばかりと思ったら、今回は間に普通のCMも挟まってた。
ホテル
雅子「鄭日成を撃ち殺したそうね」
黒木「10日前に心臓をぶち抜いたんだ」
雅子「鄭は病死したそうよ」
風呂上がり、上半身裸の黒木さん。「表向きは、そうなってんだよ」
雅子「使ったものは?」
黒木「ワルサーP38」
雅子「ナンバーは?」
黒木「13598」
雅子「見せて」
黒木「そんなものは、いつまでも持っちゃいないよ。こうやって心臓をぶち抜いたんだ」と雅子の胸を指で触る。おいっ! セクハラ野郎っ!
雅子「フフッ」と軽くかわし、立ち上がる。「信用する材料は何もないわね」
黒木「あるさ」と雅子を振り向かせ、ワンピースのファスナーを一気に下ろす。「最高の調査方法を教えてやろう。男を知るには、これに限るんだ」
雅子「あなたが乗りたいのはヘリコプターでしょ?」スリップ姿になってる。ベッドに押し倒され、目をつぶる。
風間は隣の部屋から盗聴している。「ちょ…ちょっといきすぎじゃない? ねえ。ああ、ニュースの時間ですよ!」
雅子と抱き合っていた黒木は「テレビの時間だな」と体を起こした。「警察の手がどの程度回っているか分からんからな」
風間がスイッチを入れ、黒木がテレビをつけた。
アナウンサー「次のニュース。10日前、心臓まひで急死した麻薬ボス・鄭日成の死因に疑いをいだいていた警察当局では死亡診断書を作成した医師・山崎とおる45歳を追及の結果、心臓を銃弾で撃ち抜かれたものと断定。一味の幹部、黒木鉄也35歳を重要容疑者として全国に指名手配しました。黒木は麻薬関係の犯罪で前科4犯。当局では国外逃亡の疑いも濃いと見て緊急に行方を追っています」
黒木の写真もバッチリテレビに映っている。ていうか、35歳設定!?※丹波哲郎さんは当時46歳。
雅子を見てニヤッと笑い、テレビを消す黒木。「ヤバくなってきやがったな。早いとこヘリに乗り換えなくちゃいけねえ」
雅子「調査の必要は、なくなったようね。でも、旅費の用意は?」
黒木「現金で20万ドル。足らんか?」
雅子「オッケーよ。明日の朝、飛べるように手配する」ワンピースを着る。
黒木「時刻と場所は?」
雅子「あとで連絡するわ」
黒木「俺もこのホテルを出るぜ。サツの手が回るとヤベえ」背中を向けた雅子のワンピースのファスナーを閉めた。
雅子「じゃあ、そっちから連絡して。今夜の12時、あたしの事務所に」とキス!
偽ニュースを細工して再生したということ? この時代にビデオ機能が!
政経興信所へ向かった啓子。三宅が「ちょっと顔貸して」と歩道橋の上に連れて行った。三宅は川原に渡したメモを啓子が持っていることに気付いていて、日東土地開発のことを聞きに来たことも知っていた。啓子は川原社長が先手を打ったと気付いた。メモを返してもらおうかと迫る三宅。要求額の30万で話がついたのか聞いても、あんたには関係ねえとメモを返すよう再度要求した。
啓子は日東土地開発の10億円の行方をどうしても知りたいと言うと、三宅は強面の男を3人連れてきていた。「返さなきゃ、あいつらが喜ぶぞ。役得で張り切ってんだ」
啓子はメモを取り出し、三宅に渡すふりをして、あえて胸元に入れた。「ウフフフッ、しまっちゃった、いいとこに」
三宅「ますますイカすじゃねえか。(男たちに)おい、あそこから取り上げてみなって」
啓子は3人を次々倒した。「ねえ、10億円の行方は?」と三宅に近づく。
車に乗った啓子は、あるマンションへ。川原勇二宅のインターホンを押した。川原がドアを開けると、すかさず入り込んだ啓子。「メモを返しに来たの。どうもありがとう。興信所の三宅さんがよろしくって」とメモを返した。「おたくの会社が出資者から集めた10億円の資金、いつの間にか会社の口座から消えてるんですってね。事実とすれば、明らかに詐欺、横領。ゆすり屋が言ってたとおり、刑事問題ね」
川原「ああ、確かに刑事問題だ。だが…」
啓子「ヘリコプターの墜落で三田副社長は死亡。社長のあなたは責任がないとおっしゃるの?」
川原「あるとすれば、三田くんの横領に気付かなかったという落ち度だ」グラスに注いだ酒を渡す。ブランデー?
啓子「10億円の行方は? あなたにはそれを回収して出資者との契約を守る義務があるはずよ」
川原「おそらく外国の銀行に分散されてるんだろう」グラスの酒を飲む。
啓子「回収できない場合は?」
川原「事業は中止。会社は潰れる」
啓子「そして出資者は泣き寝入り」
川原「そういうことだ」
啓子は笑いながら、1杯飲みほした。
もう1杯いかがですか?と勧める川原に啓子はうなずく。「でも、あなたには別の投資をなさる資金は、おありなのね」
川原「んんっ? ああ、あなたのことですか? そのくらいの余裕はありますよ」
啓子「とっても高いのよ。あたしのドリームランド」
川原「ほ~う、どのくらい?」
啓子「10億」
ドキッとする川原。啓子は笑いながら、ソファにペンダントが置いてあることに気付いた。「でも、もう、投資の対象は決まってるようね。どう見ても50~60万はするわね」
川原「ああ、昼間の来客が忘れていったんだ」
啓子「ねえ、紹介してよ。あたしのライバル。隣の部屋からのぞいてんの誰?」勝手にドアを開けると、ベッドに髪の長い女性が横たわっていて、顔は見えない。ベッドの上にはスリップが脱ぎ捨てられていた。肩をすくめてドアを閉め、「ずいぶん脱ぎっぷりがいいのね、あたしのライバル。ウフッ、あたしね、情事には寛大なの。だから財産調べは、あしたにするわ」と帰っていった。
冷や汗もんだったと部屋に入った川原。「しかし、関心したよ、君の機転には」
ベッドにいたのは雅子。「向こうを向いてて。仕事と色事は別っていう約束でしょ」
背中を向ける川原。
雅子「今の女ね、副社長がヘリに乗った理由を調べてるのは」
川原「たかがルポライターだ。恐れるには足らんよ」
雅子「そうかしら? あたしには怖いライバルのような気がするわ」窓の外を見て啓子の乗ってきた車が黒木のもので、黒木と啓子が仲間と気付いた。
黒木の部屋
黒木「10億円の横領か。三田には、やっぱり国外逃亡の事情があったんだな」
風間「しかしね、シンジケートはボスのお芝居で天地航空と確認されたわけだ。…となればだ、いまさら、乗客のラインを追っかけたって…でしょ?」
啓子「でも、やっぱり1つだけ疑問が残るわ。三田副社長が乗ったヘリは、なんで脱出寸前に墜落したかよ」
ユミ「必ず何かある」
啓子「うん。あの事故、あまりにもタイミングがよすぎたと思わない? それに川原ののとこにいた、あの女」
風間「川原…天地航空…におう」
黒木「啓子ちゃん、そこのところをもういっぺん確かめてみてくれ」
啓子「オッケー」
約束の12時になった。ハネムーンの打ち合わせだと言い、電話をかけた黒木。
雅子「天地航空です」
黒木「君の花婿だ。出発の場所と時間は決まったかい?」
雅子「ええ、あすの5時。松原海岸の砂浜で待ってて。花嫁が空から舞い降りるわ」
黒木「いよいよ乗せてもらえるんだね。幸せだな、僕は」
雅子「あたしもよ。ただし、持参金を忘れないでね」
黒木「オーケー」受話器を置く。
風間「空から舞い降りたところを…逮捕」
うなずく黒木。
松原海岸
サングラスに帽子の黒木がヘリコプターに手を振る。しかし、ヘリコプターから銃撃された。黒木は走って逃げるが、ヘリはかなり低く飛びながら銃を撃つ。物陰に隠れた黒木は風間と交代。風間は黒木の帽子をかぶり、車に乗って砂浜を走った。
運転席に同じような格好の人形を乗せ、黒木の帽子をかぶせ、風間は車を降りた。気付かない狙撃手が人形の背中を撃ちまくった。
黒木「危なかったな」
風間「うん。僕の身代わりかわいそうに…バカ野郎!」
ヘリから降りた雅子は仕事は終わったから姿を消すよう、男たちに命じた。
川原「黒木は?」
雅子「蜂の巣。あんたのほうは?」
川原「メギツネめ、巣が分からん」
雅子「急がなくちゃいけないわ」
格納庫へ歩く川原と雅子。
川原「ほれてたのか? あの男に」
雅子「ゆうべ、あの女が来るまでは」
啓子が2人の前に姿を現した。「ずいぶん高かったでしょ? そのペンダント」
雅子「それほどでも。お気の毒なことをしてしまったわ。あなたのお仲間の黒木さん、浜辺で静かに眠ってらっしゃる」
笑い出す啓子。「いつ目を覚ますか楽しみなのよ」
川原と雅子は副社長の国外脱出寸前にヘリコプターを墜落させた。横領の罪は全部、副社長にかぶせて10億円は2人で山分け。そして、今度は2人で国外逃亡するつもりだと啓子が話すと、川原は彼女の頭がよすぎんか?と雅子に言う。
川原「残念ながら、そのいい頭も美しい顔もすべては消える」
格納庫の天井にあと10分で爆発する時限爆弾が仕掛けられていた。雅子は啓子に銃を突きつけたが、あっさり蹴りで啓子が銃を取った。「いいの、頭ばっかりじゃないのよ」
雅子の仲間?の外国人男性2人が戻ってきた。突然、サングラスの男が「私が来させたのさ。裏切り者を裁くために」と現れた。「私をただの整備員だと思ったら大間違いだ」とサングラスを外す。最初のほうに出てきた整備員!? 「これでも本部の密命を受けている目付け役でね。あんたのおかげでうちの女パイロットを買収したのは川原社長だと判明した。だが、副社長を乗せたヘリの墜落となると、この2人の制裁は、どんな方法がいいと思う? 自分でちゃんと決めてある」時限爆弾をチラ見し、「あんたも一緒にな」と啓子に銃を突きつけた。「体に穴が開くよりは、よっぽど優雅な死に方だぜ」
一瞬のすきを見て逃げ出そうとした川原社長は銃でめちゃくちゃ撃たれた。ひえ~…
雅子と啓子は2人一緒に縛られ、男は外国人男性2人を撃ち殺した。「女性は美しいまま消えるのがいちばんいい。あと5分。10億頂ければ、すべてを裏切っても損はない」と銃を捨て、格納庫の扉を閉めた。
格納庫から出た男と黒木は殴り合い、風間が格納庫に入り、時限爆弾の設置された天井まで上った。ホント、毎度、すごいわ。黒木さんの打撃戦もすごいし。
足を踏み外しそうになりながらも、時限爆弾に近づく風間。あと3秒というところで止めた。
黒木が格納庫に来て、啓子たちを解放していると、生きていた外国人のひとりが黒木に銃を撃った。そのすきに雅子が逃げ、ヘリに乗り込む。黒木が飛びかけたヘリに飛び乗った。「ああ、これでやっとハネムーンの始まりだ」
雅子「あたしが行き先を決めるわ。ご注文どおり、バラ色の雲のかなたに」
黒木は操縦中の雅子の肩を抱き、キス。操縦かんを離したため、ヘリは逆さまになった。我に返り、操縦かんを握る雅子。「オッケー、行き先は、あなたが決めて」
黒木「国際警察が待ってるよ。時々差し入れには行ってやるよ」
雅子「サンキュー」と笑顔を見せ、黒木も笑った。
プロデューサー:近藤照男
坪井久智
*
脚本:柴英三郎
*
擬斗:日尾孝司
*
音楽 :菊池俊輔
主題歌:キイハンター
作詩 :佐藤純弥
作曲 :菊池俊輔
唄 :野際陽子
テイチクレコード
*
黒木鉄也:丹波哲郎…字幕黄色
*
津川啓子:野際陽子…字幕緑
*
谷口ユミ:大川栄子
*
風間洋介:千葉真一…字幕水色
*
川原勇二:高橋昌也
阿井雅子:嘉手納清美
*
整備員:高宮敬二
三宅:江幡高志
*
水原仗二
亀山達也
高月忠
*
監督:鷹森立一
<プロフェッショナル・キイハンター。次の赤いシグナルは…宝石、美術品盗難事件。1億円の翡翠像。鮮やかなプロの手口。次に満州の星と呼ばれるダイヤの首飾りが狙われている>
ゲスト
柳沢真一
茅島成美
<だが、その持ち主の夫人が殺された。怪しい影は正体不明の中国人兄弟。パリから来た国際的泥棒職人の日系フランス人。だが、名人芸を誇るプロは殺人を犯さないはずだ。では、いったい誰が? 『キイハンター』次は…>
パリから来た
大 泥 棒
に御期待下さい
会話が面白いなと思ったらだらだら長くなってしまった。今回の脚本、柴英三郎さんは「顔で笑って」の脚本家でもあった。高橋昌也さんも17話ゲストだったな。
あれはほのぼのしたホームドラマだったけど、「家政婦は見た!」シリーズの脚本も書かれていたと知り、今回の艶っぽい会話に妙に納得した。
最後に出てきた整備員にあっさり殺されちゃった川原社長。スケベジジイみたいな役が昔から多い人なのかね? 「赤い死線」でも百恵ちゃんの太ももをいやらしく触ってたな。ダンディな見た目なのに。江幡高志さんのあの小物っぷりがいい! 役名の分からない3人の人は、いずれも再登場。でも、なかなか顔は覚えられないな~。三宅の連れてきた3人の男なんだろうけどね。
次はもうちょっとコンパクトに納めよう。


