NHK 1987年9月28日(月)
あらすじ
蝶子(古村比呂)は明日から行商を始めることにした、と言う。泰輔(前田吟)と富子(佐藤オリエ)は心配するが、みさ(由紀さおり)は「私にも出来ないか」など、どんなものかわかっていない。蝶子は、山の物を海に持って行って売り、海の物を持ってきて売る、と言い、喜作(伊奈かっぺい)にリンゴを売ってもらう。そのリンゴをさっそく漁港へ持って行き、魚と交換してもらう。順調にいったと思った行商だが、売り場の問題が…。
2025.10.6 NHKBS録画
脚本:金子成人
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音楽:坂田晃一
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語り:西田敏行
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演奏:新室内楽協会
テーマ演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:円光寺雅彦
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考証:小野一成
バイオリン指導:磯恒夫
黒柳紀明
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タイトル画:安野光雅
方言指導:曽川留三子
十日市秀悦
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岩崎蝶子:古村比呂…字幕黄色
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北山みさ:由紀さおり
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中本喜作:伊奈かっぺい
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土田よね:根岸明美
中本よし:高柳葉子
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岩崎加津子:藤重麻奈美
岩崎俊継:服部賢悟
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主婦:大館登美子
田村久美子
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漁師:田中勉
鳳プロ
早川プロ
劇団いろは
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野々村富子:佐藤オリエ
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野々村泰輔:前田吟
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制作:小林猛
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演出:清水満
最終週の幕開け! 久々のバイオリン指導!
夜、居間
蝶子「私は明日から行商を始めることにしたわよ」
繕い物をしている富子、聖書を読んでるみさ、勉強している加津子と俊継が驚いて一斉に見る。泰輔も”何か”してるけど、よく分からない。
俊継「『行商』?」
蝶子「そう」
富子「行商って、あの行商?」
蝶子「そう」
泰輔「『そう』って、だってさ…」
蝶子「よねさんに相談したら、いろいろ親切に教えてくれたのよ。私の場合だったら、山の方に住んでるから、山のものを海辺に持って行って、魚と交換してもらったらいいって言うの。で、魚とか海のものを今度は、こっちに来て売る」
加津子「海のものと山のものなんて杉山学園に持ってった、お弁当のおかずみたい」
蝶子「ホントね」
富子「ちょっと大丈夫?」
蝶子「もう決めたの」
泰輔「行商か…」
蝶子「うん」
みさ「いや~、したけど、何だか面白そうだね」
泰輔「姉ちゃん、面白いわけないじゃないか。重い荷物を背負って歩くんだぞ」
みさ「私には、できないかい?」
あきれ顔で顔を見合わせる泰輔と富子。
蝶子「母さんには、やることあるっしょ? 叔父さんや叔母さんと飯炊き業」
みさ「うん」
外に大根が干してあり、薪もたくさん積まれている農家…喜作さんちか。
喜作「リンゴばがい? 行商ばするのがして」
蝶子「はい」
喜作「リンゴば売るのすか?」
蝶子「八戸の方に行って、海のものと交換してもらうんです」
喜作「んだが…」
蝶子「是非、リンゴを売ってください」
喜作「そりゃ、まあ…」
蝶子「リンゴ、ありますよね?」
喜作「うん、そりゃ、室(むろ)の方さ、しまってはある」
蝶子「お願いします!」
喜作「うん」
荷物を背負って山道を歩く蝶子。
<うまくいくと、いいな。チョッちゃん>
浜辺へ行き、木の舟を浜辺に引き揚げるのを見ていた蝶子が近づく。「手伝います!」
女「そうかい?」
蝶子「はい!」
収穫した魚を分けている漁師たち。
蝶子「魚、分けてもらえませんか?」
漁師「魚?」
蝶子「リンゴと交換ということでどうでしょうか?」かごいっぱいのリンゴを見せる。
女性と顔を見合わせた猟師の表情が明るくなる。「魚っこだきゃ、何ぼでもあるすけ、好きなだけ持ってったらいかべ!」
蝶子「はい!」
中本家
魚を持って行った蝶子。「リンゴを安くしていただいたお礼です」
よし「いんだべか?」
蝶子「いいんです」
喜作「へば、遠慮なく」
笑い声
魚の入った入れ物
女「これど、これど、これ。3匹頂きやす」
蝶子「はい、ありがとうございます」
農家
お金を渡す女性。
蝶子「ありがとうございます」
女「魚っこだば、時々、売りにおいで」
蝶子「はい!」
諏訪ノ平駅に着いた蝶子の脚はフラフラで倉庫へ。「ただいま!」
一同「お帰り!」
富子「どうだった?」
蝶子「売れた」
笑い声
泰輔「とりあえず食べよう。な!」
みさ「そうだね。蝶ちゃんも座って」
蝶子「私、ごはん、あとにする」
富子「どうした?」
蝶子「少し、横にならして」
富子「具合悪い?」
蝶子「ううん」
泰輔「疲れたか…」
富子「よいしょと、はい」毛布を取り出す。
泰輔「大丈夫か?」
富子「大丈夫?」蝶子に毛布を掛ける。
蝶子「うん、大丈夫」
富子「あいよ」
蝶子「ありがとう」
富子「じゃあさ、あの…私たち、先、食べていい?」
蝶子「どうぞ」
⚟︎汽笛
一同「(声を潜めて)いただきます」
富子「チョッちゃん?」
蝶子「ん?」
富子「私もその行商っていうの、やってみようかね?」
蝶子「叔母さんには、こっちの飯炊きの仕事あるしょ」
俊継が蝶子の顔を覗き込む。「寝た」
浜辺を歩く蝶子。すごい岩場だ。
<チョッちゃんは毎日、海のものを仕入れ、行商を続けています>
浜辺でイカを干す作業をする女性たちがいる。リンゴを渡す蝶子に、女性がスルメを渡した。
蝶子「スルメ、もう一束」
漁師「あんだも、ずんぶと商売っこ上手になったでばな」
蝶子「いやいや、そうかい? アハハハ」
女「ほら!」スルメ追加。
蝶子「ありがとう」
厨房
リンゴを分けている蝶子を俊継が見ている。
加津子「お母さん?」
蝶子「ん?」
加津子「今日、加津子もついていっていい?」
蝶子「たくさん歩かなきゃいけないのよ」
加津子「大丈夫」
蝶子「いいわよ」
俊継「僕は?」
蝶子「来る?」
俊継「今日は良平にいちゃんと魚釣りにいくことになってて」
蝶子「じゃ、俊ちゃんは魚釣りだ」
俊継「うん」
加津子「港の方に行くと、海、あるのよね?」
蝶子「うん」
加津子「船も見られるわよね?」
蝶子「そう」
俊継「『海』?」
加津子「俊ちゃんは川でしょ?」
俊継「海もいいなあ」
加津子「良平君と約束したんでしょ?」
うなずく俊継。
加津子「じゃあ、俊ちゃんは川だ」
蝶子の顔を見る俊継。
蝶子「じゃ、俊ちゃんはね、今度の日曜日」
俊継「うん」
加津子と海の見える道を歩く蝶子。「休もうか?」
加津子「うん!」
浜辺に座る蝶子と加津子。
蝶子「はあ…う~ん」
加津子「お母さん」
蝶子「なあに?」
加津子「お父さん、いつ帰ってくるの? 帰ってくるわよね?」
蝶子「帰ってこないわけないわよ。加津(かっ)ちゃんや俊ちゃんが待ってるんだから」
加津子「早く帰ってくるといいな」
蝶子「そうね」
うなずく加津子。
波の音
加津子「中国って、この海の向こう?」
蝶子「中国は違う」
加津子「ふ~ん」
蝶子「こっちは太平洋だから…」
加津子「ふ~ん」
蝶子「お父さんも早く帰りたいって思ってるわよ」
加津子「うん!」
蝶子と加津子は「ユーモレスク」をハミングする。
曇天が東北って感じだな。
裏口によねが来ていた。
蝶子「何か?」
よね「う~ん。気ぃ悪くしねえでなす」
蝶子「はい」
よね「その…森山のスエさんがいづも行く家さ、あんた売りに行ったって、しゃべってきたんだ。アハハハ。スエさんに泣きつかれでなす。西原さんどこば、いつも、スエさん行ってらったすけ」
蝶子「すいません。私、お得意先を取るつもりはなかったんです」
よね「分がってる」
蝶子「皆さんの行ってらっしゃる所とは重ならないようにしてたんですけど」
よね「そったらごどは、よ~ぐ分かってる。なんも、あんだのこど、責めてるわけではね。人より売れた方が勝ちは勝ちだべ。商いっちゅうのは、そったらもんだ」
蝶子「いえ」
⚟︎汽笛
蝶子「私が、うかつでした」
よね「いや、なんも…」
蝶子「最近、行商の仲間にしていただいたくせに不注意でした」
よね「もう、いいってば!」
蝶子「よねさん。私、皆さんとは絶対重ならないような所、探しますから」
<ちょっと、ちょっと、この辺りにそんなところあるの?>
夜、居間
泰輔「東京へ?」
蝶子「うん」
みさ「東京に行商に行くんかい?」
蝶子「そう!」
富子「『そう』って」
みさ「リンゴば売りに行くんかい?」
蝶子「いや、なんも。リンゴは重いし傷みやすいから、スルメを持っていこうと思うの。スルメや干し魚だったら、そう重くないし持ち運びにもいいのよ」
泰輔「東京か…」
富子「どうして東京へ?」
蝶子「話、聞いたのよ。東京じゃ、とにかく物が不足してるんだって。特に食べ物。だから、東京じゃ何だって売れるし、高く売れるんだって。それに、戦争終わって、そろそろ1年だし、東京の様子、見てみたいじゃない。進駐軍も安全だっていうし、様子、見てきたいのよ」
富子「けど…。行ったはいいけどさ、どこに寝るの? 旅館あるかどうか分かんないだろ?」
蝶子「あるんじゃない?」
富子「どうして?」
蝶子「こっちから行商に行ってる人は随分いるけど、『旅館ない』って話は聞いたことないわ」
富子「あるって話だって、はっきり聞いたわけじゃないじゃない」
みさ「今の季節だったら野宿もできるんでない?」
富子「義姉(ねえ)さん!」
みさ「え?」
富子「季節の心配してんじゃなくて、いろいろ危ないことがあるでしょ?」
みさ「あ、追い剥ぎかい?」
富子「追い剥ぎで済みゃいいけど…」
みささん、性善説過ぎるのか!?
富子「あんた!」
泰輔「分かった! 東京へは俺も行こう!」
富子「行くの?」
泰輔「それが一番だよ。スルメだって2倍担げるしさ。その方がチョッちゃんだって安心だよな?」
うなずく蝶子。
みさ「そうだね」
泰輔「アハハハ」
富子「私も行ってみたいよ」
泰輔「とりあえず俺とチョッちゃんとで偵察だよ。いいね? チョッちゃん」
蝶子「行こう!」
汽笛
混雑する汽車に乗る蝶子と泰輔。
<チョッちゃんは東京へと向かいました。昭和21年6月のことでした>(つづく)
今週末で終わってしまうのね…「チョッちゃん」終わったら、24時間テレビのドラマを見てみよう。「おしん」でも縄張り争いがあったけど、おしんは孤立するのもものともせず気ぃ強かったよな~。

