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ドラマの感想など

【ネタバレ】お嬢さん乾杯!

1949年 日本

 

あらすじ

自動車修理工場を経営して成功した地方出身者の圭三(佐野周二)に、元華族の令嬢・泰子(原節子)との縁談が持ち上がる。最初は乗り気でなかった圭三だったが、泰子に会った途端、そのあまりの美しさに一目惚れ。かくして、ふたりのぎこちなくも微笑ましい交際が始まるのだが…。原節子が第4回毎日映画コンクール女優演技賞を受賞。

お嬢さん乾杯

お嬢さん乾杯

  • 佐野 周二
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2025.9.11 日本映画専門チャンネル録画。10数年前に見て、また見たいと思ってました! 当時は木下恵介監督とは知らないで見てました。

 

松竹映画

*

1949

*

お嬢さん

    乾杯

昭和二十四年三月完成

*

製作:小出孝

脚本:新藤兼人

撮影:楠田浩之

*

音楽:木下忠司

*

賛助:八洲自動車株式会社

特別出演:大日本拳闘協会

特別出演:市村襄次夫妻―ガルデニアサークル―

*

石津圭三:佐野周二…字幕黄色

池田泰子:原節子…字幕水色

*

祖父:青山杉作俳優座

祖母:藤間房子東宝

父(浩平):永田靖俳優座

母(鶴代):東山千栄子俳優座

姉(千賀子):森川まさみ(特別出演)

義兄(大橋):増田順二

*

五郎:佐田啓二

その恋人(みどり):佐藤成子(新人)

佐藤:坂本武

バーのマダム:村瀬幸子俳優座

泰子の友達:楠田薫俳優座

      町田旬子(東京バレー団)

      石田淑子(特別出演)

*

アパートの主婦:高松栄子

バーの女給:泉啓子

      山本多美

      勅使河原幸子

      向山和子

      宮崎義子

運転手:長尾寛

交通巡査:加藤精一

*

バレー振付:貝谷八百子

特別出演:貝谷八百子バレー団

主題歌:佐伯孝夫 詞

     灰田晴彦 曲「お嬢さん乾杯」灰田勝彦

    木下忠司 詞 曲「バラを貴女に」灰田勝彦

                       若原弓子

*

監督:木下惠介

 

オープニングは市村夫妻が華麗なダンスをし、主題歌が流れる。

 

♬『バラを貴女に』

昨日 街であった

可愛い娘さんの

胸に咲いた花

赤い恋のバラ

 

だけど 頬の色は

バラよりも赤く

軽い足取りで

歌を唄っていた

 

あゝ 若い日の思い出

あゝ 若い日の あこがれ

 

赤い恋のバラが

やさしく開いて

春のそよ風が

ベーゼしたよ

 

撮影の楠田浩之さんは木下恵介監督の妹・芳子さんと結婚。楠田芳子さんは脚本家でしっかりとした職を持つ女性と結婚してるというのが当時としては珍しく感じる。新藤兼人さんは監督デビュー前だそうで。社会派の作風なのにラブコメなのも珍しい。

 

踊るように交通整理する警官。突然、近くを走っていた車のタイヤがパンクし、びっくり。

 

運転手が車を拾いますからと佐藤専務に謝った。佐藤専務はパンク→自動車ときて、石津を思い出し、石津の経営する自動車修理工場へ。お見合い写真を持ってきたというと、石津は当分結婚しないつもりだという。経営者といえど、作業着姿で車の修理をしている。

 

石津は34歳。お見合い写真を見せられて、女学生じゃないですかと驚く。しかし、年は26歳。写真は学習院時代のもの。佐藤専務の恩人のお嬢さんで家柄は立派、教養も満点。しかし、石津は「提灯に釣鐘」だと写真を突き返す。

 

工場に1台のオープンカーが入ってきた。五郎は手放すのが惜しくなったので、これ売るのよそうと石津に言う。石津のことは”兄貴”と呼んでいる。

 

佐藤専務は会うだけでも会ってくれと頼むが、石津は断った。

 

石津の住むアパートについてくる佐藤専務。「大体、その年頃で1人でいるのは不自然だよ」

 

西銀アパート

1階 事務室

    管理人室

         1~30号 

2階 31~60号

3階 61号〜90号

 

アパートと言っても、かなり大きく部屋数も多い。

 

アパートの中は1DKって感じかな? 窓を挟んでベッドが2つ。五郎と同居。石津は女房もらうなら、おふくろにもらってもらうと言う。選んでもらうってこと? 学習院出の女学生なら、まるっきり生まれが違うと言うものの、佐藤専務は身分違いなど、このご時世に、はやらないと強引に勧める。

 

場所はどこにするかと佐藤専務が聞くと石津は「スパロ」というバーがいいと言う。毎日昼飯を食いに行っている。佐藤専務が折れて、あしたの12時スパロと決まった。

 

石津「あー、腐らせやがるな」←木下恵介アワーでおなじみワード。

 

石津が佐藤専務と話している間に作業着からよそ行きの服に着替えた五郎。石津は「女房をもらうならカタギの娘さんだ。女房にしないつもりなら女とはつきあうなよ!」と五郎が今つきあっている女性が不満の様子。

 

スパロ

作業着の上にジャケットを羽織ったくらいにして来店した石津。マダムにお見合いのことを話した。マダムは石津を体はいい、お金儲けはうまい、私だって10年若かったら口説いてみようって気にもなると笑った。

 

バーのマダムの村瀬幸子さんは「おやじ太鼓」の堀部長のお母さん。

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マダム「だけど、そんな格好で会うの?」とあきれ顔。ゴム長でネクタイもしてない。いくらごまかしても自動車屋自動車屋だと石津は言う。マダムはこれから組合の総会で出かけなくちゃならないと言い、咲ちゃんという女性に頼んで出ていった。

 

咲ちゃんってホステス? 格好はウエイトレスさんっぽいけど。

 

12時

石津は落ち着かずウロウロ。店の女性に水飲んどいたら?と言われ、ビールを注文した。佐藤専務が池田泰子を連れてきた。美しい泰子に今更ゴム長をはいたことを後悔する。しゃべり出さない2人に佐藤専務が話を振る。

 

石津は怖気づいて、佐藤専務を引っ張って店の隅で「僕は断りますよ」と言ったものの、佐藤専務に勧められて、ビールをラッパ飲み。

 

アパートに戻った石津はぼんやりとギターをつま弾いていた。五郎が作業着姿で戻ってくると、石津は、力という力が抜けてしまった。肝を潰して気絶するほどの美人だと言う。天上の美女。雷に打たれたようだった。息が止まりそうだった。生きているのが嫌になった、俺が逆立ちしたって、かなう相手じゃねえやい。世界が違うよ、住んでる世界が。女房なんてバチが当たらあ、と語りまくる。

 

石津からギターを取った五郎が『バラを貴女に』を歌い出す。ベッドに寝転んで考え込むような石津。アパートを佐藤専務が訪ね、泰子を送ってきたと言う。

 

佐藤専務がゴム長を履いてきたことを指摘すると、石津はカーテンで顔を隠して恥ずかしがり、先方から断られるに決まってると弱気。五郎に聞くと、「さあ、僕ならもらっちゃうな」。佐藤専務はニヤニヤしながら帰っていった。

 

矢島自動車に電話した佐藤専務。

 

しかし、石津は休み。アパートの事務室に電話すると年輩の女性がおっとりと電話の受け答えをした。メイドさんみたいな格好してる。事務室から部屋に電話をつなぐ。

 

しばらく間があり、石津が喜んで部屋の外に飛び出した。ノーヘルバイクで出かけた石津は自動車修理工場に行き、五郎をバイクの後ろに乗せ、また街を走り出す。まだ交通量も少ないな。

 

スパロへ行った石津はビールを注文。五郎はマダムにお嬢さんが承諾したんだよと説明し、マダムや従業員たちが祝福する。石津は何かの間違いじゃないかと心配になるが、五郎は「兄貴はいい男だよ」とフォロー。兄貴が結婚したら、俺も許してくれる?と聞くが、あの女はダメだと反対する。

 

石津は車を運転して池田家へ。佐藤専務が来ていて、泰子も出迎えた。国江、行夫という幼い子供たちが「おじちゃま、いらっしゃいませ」とお辞儀をする。行夫は「おじちゃま、だっこ」と初対面から膝に乗る。

 

佐藤専務「大陸育ちの子供だからね、人懐っこいんだよ」

 

母の鶴代が出てきて自己紹介。

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泰子の母・鶴代役の東山千栄子さんも若いね~。神尾光のおばあちゃん!

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東山千栄子さんと原節子さんは小津映画「麥秋」でも親子だった。で、この作品では佐野周二さんは原節子さんの上司なんだよね。

 

石津が座ると、次に泰子の姉・千賀子が挨拶に来て、また立つ。今度は千賀子の夫・大橋登場。大橋役の増田順二のちに改名し増田順司さんに…金八の荒谷二中の校長! こんな若い頃を初めて見た。

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姉一家は中国からの引き揚げ者。大橋は中国では大学で教鞭を執っていたが、今は中学の国語の先生で安月給取りだと自虐する。のちに校長先生に!?なんて。

 

大橋は、しばらく田舎に引っ込んでいたが、四国の片田舎じゃ安月給も取れないとぼやく。石津も同じ四国の高知出身、大橋は宇和島

 

そこへ泰子の祖父母が来た。

 

鶴代「何のお構いもできませんけど、今日はどうぞごゆっくりあそばしてくださいまし」

 

こういう言葉遣い憧れちゃう。

 

祖母「このたびは、ご縁でお近づきをいただきました。よろしくお願いいたします」

祖父「おばあさんが早くあなたに会いたいと申しましてね」

恐縮する石津。

 

大橋は自動車は随分儲かるでしょうなと話を振る。千賀子は「あなた、そんな失礼なことを」とたしなめるが、石津は「いえ、とても儲かるんですよ。何しろとっても忙しくてね」と答えた。直球の答えに戸惑う池田家の面々。

 

池田家にも以前、車があった。キャデラックだと佐藤専務が答えると、お前がいた頃だったねと祖父が言う。以前、池田家で働いてたんだね!?

 

軽い雑談で祖父母は部屋を退出した。石津がくしゃみするし、冬なのに暖房もしてないってことかな。部屋を出た祖母は「お客様にピアノを聴いていただいたら?」と泰子に話しかけた。

 

コーヒーだか紅茶を運んできた泰子。千賀子が部屋に残った佐藤専務と大橋に碁でも打ったら?と誘い、2人きりにした。

 

暖炉のある洋風の広い部屋に2人きり。

石津「ピアノ聴かしてくれません?」

泰子「佐藤さんから、うちの事情、お聞きになりませんでした?」

石津「さあ、どんなことです?」

 

泰子は、売れるものは、もう、すっかり売ってしまってピアノはないと言う。おばあ様は、まだピアノがあるような錯覚を起こしている。石津は部屋を見回すと調度品もボロボロ、天井のシャンデリアにはクモの巣が張っていた。父は刑務所にいると聞き、驚く。「詳しいことは、どうぞ佐藤さんからお聞きになってくださいませ」と泰子はうつむきながら話した。

 

スパロ

マダムは映画を見に行っていて不在。佐藤専務と石津は奥の席へ。終戦直後に悪いヤツが泰子の父を担ぎ上げて幽霊会社を作り、大きな詐欺事件になり、責任者として刑務所に行っている。お気の毒だったよと事情を説明した佐藤専務は同情的。あのお屋敷も100万円の抵当に入っており、期限があと、みつきで切れる。

 

石津「じゃ、僕との結婚はカネのためだったんですか?」

佐藤「まあ、ハッキリ言えば、そうなんだ」

 

おかしいと思ったとビールを一気飲みする石津。佐藤専務は泰子には婚約者もいたが、去年の春に亡くなったことも白状した。「あの人は、どうも僕なんかの妻になるような人じゃないですよ。話がうますぎると思った」とあきれる石津。

 

「佐藤さん、お嬢さんがお金のためでなく、ホントに僕と結婚してくださるんなら100万や200万のお金、お助けしてもいいと思います。今日のお嬢さんを見て、僕は、ますます、あの人が好きになった」と話すと、佐藤専務は、これから、みつき間、お嬢さんと婚約前の交際をするよう勧めた。

 

泰子とバレエを見に行った石津。ぽかんと口を開けていたが、涙を拭くところを泰子が見て、微笑む。演目が終わり拍手を送る。

 

石津「どうして涙が出たんだ。何だか知らないけど、ほろほろ涙が出て困っちゃった」

 

外へ出た石津はボクシングのポスターを見ていた。

 

第四回新人王決定戦

       決勝

 

泰子「拳闘がお好きなんですか?」

 

第4回って昭和20年の終戦直後からやってたのかな? 

 

拳闘を見たことがないと言う泰子を誘って会場へ向かう時、通りかかった車がぬかるみの泥をはね、石津が大声で「バカ野郎!」と怒鳴ったことに驚く泰子。

 

ボクシング会場

金近さん、しっかりぃ~なんて黄色い声援を送る女性たち。意外と女性客もいたんだね。石津も夢中で応援する。泰子も興奮し始めたが、途中で帰りたがり、顔色が悪いことに気付いた石津がすぐ会場を出た。

 

自分の好きなものを見てたのに、サッと途中退席できるとは大人だね。

 

石津はタクシーを止め、西片町まで行ってくれと泰子を乗せると、あさっての誕生日にお伺いたしますと運転手にお金を渡した。西片町は文京区。

 

タクシーが行ったあと、シャドーボクシングではしゃぐ石津は大型犬に追いかけられた。その大型犬は小型犬に追いかけられる…というギャグ。あんな野犬、いないだろ。

 

スパロ

石津は、おごるから店閉めろと店に入った。「今日は、うれしくてしょうがねえんだ。ビール、ビール、ビール!」とご機嫌。しかし、窓際の席にいた五郎は落ち込んでいた。五郎の恋人は大阪に稼ぎに行くからと別れ話を切り出した。石津は忘れろ!と一喝する。

 

きちんと自分で働いて自立した女性っぽいのに何が気に入らない?

 

今度は石津が女給たちと『バラを貴女に』を歌い出す。「おい!」と五郎を立たせ、引っ張ってきて「踊るんだ」と体をくっつけて踊る。女給たちもペアで踊り出す。そんな、顔をくっつけんばかりの密着度で! 五郎は石津から女給に相手を替えて踊り出す。

 

「お嬢さんに乾杯」とマダムと乾杯する石津。花瓶の花もきれいに見え、お嬢さん今頃どうしてるかな?と言う。マダムは「恋人は、ちゃんとおうちまで送り届けるものだよ」と指導。

石津「そうかい、こりゃいけねえ」

 

あさってお嬢さんの誕生日で何がいいかと考えた石津がふと思いつく。

 

池田家

泰子の友人たちの前で詩を暗唱する大橋。「『はたらけど はたらけど 猶(なお)わが生活(くらし)楽にならざり』。ハァー腹減った」

千賀子「あなた」

大橋「『ぢっと手を見る』ハハハッ」

 

石津が訪れ、花束を渡した。その上、贈り物を持ってきたと言って、玄関へ。すぐ追いかける子供たち。

行夫「おばちゃま、こんな大っきいピアノでしゅよ」

泰子「え?」

 

石津の贈り物はアップライトピアノ。作業員が3人がかりで運んできた。

 

石津「僕の贈り物です。受け取ってください」

泰子「はあ…ありがとうございます」

 

祖母は気分が悪くなったと言って、祖父と鶴代に連れられて退室した。何となく気まずい雰囲気になったところで泰子がピアノを弾いてみると言う。「町田さん、この間のバレエ、踊ってみません?」

石津「ああ、あなたでしたか。この間、お踊りになったのは。あんなにクルクル回って目が回らないんですか?」

思わず吹き出す友人たち。

「わたくし、弾いてみますからね」

Fantasie-Impromtu in C Sharp Minor, Op. 66

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町田さんがクルクル踊るスペースもある広間。

 

石津が座って見ていた別の友人に「ベートーヴェンですか?」と聞く。

友人「いいえ、ショパンの『Fantaisie-Impromptu』」

石津「ほう。ショパンのファンタージ・アン…アンプル…ア…」舌を噛みそうになる。

幻想即興曲 (ショパン)

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ショパンの「幻想即興曲」と言ってくれりゃいいのに。

 

自室に戻ってピアノを聴いている祖父母。

鶴代「お父様もお母様もどうかお気を悪くなさらないで。悪気のある方じゃないんでございますから」

祖父「ああ、そうだとも。せっかくのご好意だもの。悪くとっちゃいけないんだが、何だか惨めなんだ。恵まれてるみたいで」

祖母「そうなんです。何だかひがんでるみたいで悪いけれども、泰子は、ああいう人とうまくやっていかれるだろうか」

 

祖父母からしたら、石津はデリカシーのない人間ってことなのかね?

 

泰子のピアノで町田さんが踊る。演奏を終えた泰子に「はあ、いいな。何とも言えない」と興奮した様子の石津。

 

今度は別の友人がピアノを弾き、もう一人の友人が詩の暗唱をする。「赤毛のアン」を思い出す。

 

心おののきつつ

 かの人を抱きしめ

我 もの悲しく

 その まなこに見入りぬ

哀れ 恋人よ

 苦しみに御身は衰へ

わがいぶきに

 そなたはうちふるへる

そなたは 我が魂をすいつくし

 そなたの情熱は我がもの

おゝ 宝石よ 輝け

 輝け輝け 青春の血よ

 

突然席を立ち、窓の外を見る泰子。友人の詩は続く。

 

恋人よ

御身のまなざしは青く

 そなたの言の葉は ふかしぬ

みたまわずや 賑やけく

 人々の大空を駆けゆくを

いざゆかん 恋人よ いざ

 

石津「どうかなさったんですか?」

泰子「いいえ。父は今時分、どうしてるかと思いまして」

石津「泰子さん。僕はきっとあなたを幸せにします」

 

詩の暗唱が終わり、拍手を送る泰子。「とてもよかったですわ。あのころが思い出されて」

 

大橋や友人たちがあなたも何かやってください、大橋は、おくにの歌があるでしょとふる。照れて背中を向けた石津だが、「こっちを向きなさい」と大橋が言い、正面を向いて歌い出す。

 

♪土佐の 高知の はりまや橋

坊(ぼん)さん かんざし買うをみた

よさこい よさこい

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友人たちが笑いながら拍手を送り、大橋は手拍子する。

 

♪ここのお家(うち)は めでたいお家

鶴と亀とが舞いあそぶ

ヨサコイ ヨサコイ

 

困ったような笑顔?の泰子も友人たちと合わせて拍手を送った。

 

小菅の東京拘置所に泰子を車で送った石津。同行したわけでなく、泰子だけが中に入った。

 

泰子の父・浩平「泰子。お金のために結婚することはないだろうね。お前が喜んで結婚してくれないんじゃ不満だよ。貧乏はしても幸せというものはあるからね」

泰子「はあ」

浩平「お前は本当にその人に愛情が持てるのかい?」

うつむく泰子。

 

帰りの車で途中下車し、原っぱに立つ泰子と石津。

泰子「わたくし1人のことでしたら、どんな苦労も何でもございません。働こうと思えば働けますし、お金のない暮らしだってできますのよ。別に今のうちに未練があるわけじゃございませんし。昔が恋しいというわけでもございませんの。ただ、老い先の短い年寄りや母にまで、わたくしと同じような思いを強いるというわけには、まいりませんの。いわば、わたくし、あなたに助けていただくんですわね」

石津「いいえ、そんなこと。わたくしはカネ儲けは、うまいんですからね。わたくしは子供のときから貧乏が身にしみて嫌だった。『カネさえあれば』といつも思った。そして、その夢が今、実現したんです。俺が頭をちょっと働かせば、何十万、何百万のカネが流れ込んでくるんだ。俺はカネをうんと儲けるんだ。僕の夢はね、自動車の製造です。うんと儲けて立派な自動車の工場を建てるんです。世の中はカネだ。カネがなけりゃ何もできやしない。いいですか、元気を出しなさいよ。僕は、あなたのためにうんと儲けますからね。そうだ、工場を建てる前にうちを建てなきゃ。僕たちの住むうちを。ハハ…いいな。ああ、何ていいんだろう」

 

かみ合わない?2人だね。

 

車を運転しながら「これからどこかへ行きましょう」と誘う石津。しかし、泰子は断るので、泰子が降りたいと言った場所で降ろした。

 

泰子は町田さんのバレエ教室へ。今が昭和24年…戦後からわずか4年ということを忘れてしまう。今度は字幕が”雪枝”と出てる。雪枝は泰子を迎え入れ、練習を続ける。生ピアノで練習する女性たち。

 

泰子は大きなため息と共に「おなかが減った」とつぶやく。こんなセリフさえ上品。

 

アパートに帰った石津。ちょうど五郎が恋人とキスしていた。石津は五郎を浮浪者の中から拾ってきて、お前がかわいいからこそ、ちゃんとした男にしてやろうと思ったのだと怒り、部屋を出ていった。

 

五郎の恋人・みどりは「私、よっぽど嫌われているのね」と落ち込む。「私がダンサーだからいけないのね。私、やっぱり大阪へ行ったほうがいいんじゃないかしら」

五郎「そんな悲しいこと言うなよ」

みどり「私だって悲しいわ」

泣き出したみどりの顔を拭く五郎。何、その器具は!?

 

スパロ

客でにぎわう店内。石津は強い酒を頼んだ。

 

池田家

再び遊びに行った石津。泰子は湯飲みを出し、どうぞと何度も勧める。石津が飲もうとして異変に気付く。

泰子「お酒」と言って笑い出す。

すごい焼酎だとびっくりする石津。

 

泰子はピアノで「よさこい節」を一節、弾いてみせた。

 

石津は本当に結婚する気があるのか泰子に気持ちを確認した。

泰子「わたくし、そのつもりでおりますのに、どうしてそんなことをお聞きになるんですの?」

石津「さあ、どうしてかな。どう言ったらいいのかな。僕は何となくあなたに寄りつきにくいんです。僕は、あなたが好きです。でも、あなたはホントに僕を好いてくれるとは思えない」

泰子「好きです。いい方だと思っております」

石津「それだ。それが僕にはやりきれないんだ。ハァー、あなたは僕を人のいい人間だと思うでしょう。でも、思うのは頭です。僕は、あなたの胸の中にはないんだ!」

 

泰子「でも、それは無理じゃございません? まだおつきあいしてから日が浅いんですから。わたくしに対して何かそういった不満をお感じになるんでしたら、それはただ日が浅いということだけですわ」

石津「でも、僕は、ひと目であなたが好きになりました。まるで雷に打たれたように」

泰子「石津さん、申し訳ございません。わたくしの努力が足りないんですの」

石津「努力? あなたは努力しなきゃ、僕を愛してくれないんですか? ああ、焼酎…」

 

広間から庭に出る石津を追いかけてドアを開ける泰子。「結婚しましょう。そしたら何もかもうまくいきますわ」

石津「嫌だ。愛されてもないのに結婚するなんて。それじゃ第一、あなたがかわいそうじゃありませんか」

泰子「どうしてかわいそうなんでしょう。あなたのようにお金があって、あなたのように親切な方と結婚する女が、どうしてかわいそうなんでしょう」

石津「やめてください! あなたは僕をバカにするんですか?」

泰子「お願い。そんな大きな声をお出しにならないで。あなただって、先日おっしゃったじゃございませんか。『世の中、お金だ』って」

石津「ハァー、ダメだ」とだけ言って、部屋を出ていってしまったので、泰子は目をパチクリ。

 

無人のスパロに入った石津は買ってきた「幻想即興曲」のレコードをかけた。マダムが顔を出し、石津の帽子を取った。石津は「こういうのが分からなきゃダメだよ」とレコードに聴き入る。

 

五郎が店に入って来た。「兄貴。結婚したいんだ。許してくれ。賛成してくれよ。俺たちはどうしても結婚したいんだ。俺はどうしてもしなきゃならないんだ」

 

しかし、反対した石津が五郎を何度も殴りつけた。何で、ダンサーがそんなにいけない? 五郎は鼻血を流しながらも石津を追いかけた。

 

石津がアパートに戻ると、泰子が部屋にいた。何もかも正直に申し上げますと婚約者の話を切り出した。「わたくし、春樹さん好きでした」。緒方春樹という泰子の婚約者は満州から帰って、間もなく亡くなった。帝大の秀才。

 

全ての愛情をささげ尽くしたため、胸の中に燃えていた火が吹き消されて、むなしい煙がくすぶっている。しかし、石津と結婚しようと思った気持ちも決してウソでも偽りでもない。心から本当に思ったこと。結婚の条件にいろいろとお金のことがまつわりついて、気持ちが醜いように思ったかもしれないが、池田家が落ちぶれて、やむをえない事情で、泰子の心が割り出したことではない。石津の方が不満に思うのなら断ってほしいという泰子の想いを聞いた石津は、あなたに愛されたいだけ。つっぱなされたような気持ちになるのがたまらないと話しだした。

 

石津「僕があなたを抱きしめたいと思っても、あなたには何の感激もないし、興奮もないんだ。ただ、世間一般の人のように微笑してるだけだ。僕は苦しくて苦しくて…胸の中が張り裂けるような思いであなたが欲しい」

 

春樹とは唇を触れ合ったことさえないと告白する泰子。

 

みんなに婚約者として会ってくれますか?と石津が聞くと、うなずく泰子。いつもうつむきがちなのよね。石津は自動車工場に電話して、空いてる車を回してくれるよう頼んだ。

 

大きなバスで泰子を送り届けた石津。裏口に入る前に振り返り、にっこり微笑む泰子。なかなか家に入らないと思ったら、石津に近づき、右手の甲にキスをして走り去って、ドアの前でこけた。千賀子が覗き見?してたらしく、急に泰子が開けたドアに思いきり頭をぶつけて痛がっていた。

 

石津は皮手袋をはめてたので「手袋…」とつぶやき残念そう。

 

浩平に結婚の報告に行った泰子。抵当のことも片づく。石津のこともだんだん好きになったと言う。

 

スパロ

3時に婚約パーティーが始まる。石津は泰子を迎えに行っている間に佐藤専務が来店した。パーティーといっても、マダム、佐藤専務、五郎、泰子、石津の5人だけ。

 

池田家

泰子が不在で祖父母と鶴代と同じ和室で泰子を待つ石津。祖父は泰子がわがままな子だが英語とフランス語が上手だと話した。祖母は「あの子はかわいそうな子ですよ」と愚痴る。祖父が何かスポーツをおやりになりますか?と話題を変え、石津は拳闘を少々。見に行くだけで、相撲なら兵隊にいるとき、よく勝ったと話すと、泰子の得意なスポーツはスキーとテニスだと言う。

 

しかし、その後もこの頃は元気がない、痩せた、いつも寂しそうな曲を弾いてるという祖父母。『嘆きのセレナーデ』という春樹さんの好きだった曲だったと鶴代が言うと、祖母は昔はよかったとぼやき、しまいには泣き出す。

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「嘆きのセレナーデ」というと「おやじ太鼓」を思い出すなあ。

 

石津は、正座し続け、しびれた足で立ち上がり、もうダメだ、とそのまま帰った。

 

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自動車整備工場の看板はプリモス、クライスラー、ファルコと車の名前が書いてたわけね。ロケ地の八洲(やしま)自動車の看板をそのまま使ったのね。でも、映画的には矢島自動車。じゃあ、石津さんも矢島さんでいいのに!?

 

帰ってきた石津は、五郎が修理していたオープンカーをお前にくれてやるから、この自動車でお前の花嫁さん、迎えに行って来いと結婚を許した。五郎は石津に抱きついて喜び、オープンカーで走り出した。

 

笑顔で送り出した石津だが、五郎が行ってしまうと泣き顔になり、整備士たちに10日ばかり留守にすると告げた。

 

僕たちは、やはり別の世界に住んでるのでしょう。どうか幸せになってください。おうちの抵当の件は債権者の方に手続きを済ましておきましたから、どうかご心配なく。短いおつきあいでしたが、楽しかったです。お嬢さん、さよなら。

 

手紙だと”幸せ”は”仕合せ”。

 

家に帰った泰子は石津からの手紙を受けとり、石津のことを思い出して涙を流した。

 

婚約パーティー用に飾り付けられたスパロに行った石津はマダムに結婚をやめたと報告した。10日ばかり田舎へ帰る。店で「幻想即興曲」のレコードをかけ、ビールを注文した。用意していた婚約指輪を見ていたが、マダムが席に来たので慌ててしまった。マダムと「お嬢さんのために乾杯」する。五郎の結婚祝いをしてほしいと頼んで3時の急行に乗るために出ていった。

 

泰子が走ってスパロに向かうが、石津とすれ違う。マダムと女給は泰子が店に入ってきても、無視してビールを飲んでいた。石津さんはどこに行ったかと泰子に聞かれ、「あんたに振られて田舎へ行っちゃいましたよ! このコップでお嬢さん乾杯して!」とレコードも買ったことも話した。

 

マダム「男の値打ちは心意気ですからね。その意気にホレなくて、何が女でございますかってんだい」吐くほど飲むとヤケになっている。

 

泰子「わたくし、あの方、好きです」

なぜ抱きしめてやらないのか、すましてたんじゃ「ホレた」にならないとマダムが絡む。

 

五郎がみどりと店に来た。「わたくし、あの方にお目にかからなくちゃ」と立ち上がった泰子を五郎が車で送ると言う。いったん店を出た泰子がマダムに「ホレております」と伝えて店を出ていった。

 

ここで流れるのが「♪花も嵐も踏み越えて~」の「旅の夜風」のインスト。

旅の夜風

旅の夜風

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最後に『バラを貴女に』が流れ、五郎、みどり、泰子が乗ったオープンカーが走る。(終)

 

好きな映画なだけに細かく見てたら長くなってしまった!

 

久々に見たけど、やっぱり面白い。ラブコメって普遍的だよね。格差みたいなのも。しかし、落ちぶれたとはいえ立派なお屋敷に住む池田家。自動車修理工場で成功し、お金持ちになった石津は景気がいいね~。これが昭和24年!?って驚く。

 

石津はロマンチスト、一番、ひでぇのは祖母だっ!