NHK 1987年9月23日(水)
あらすじ
食堂を開店し、客が来ず時間を持て余す、蝶子(古村比呂)たち。泰輔(前田吟)は昼になってみなきゃわからない、と言うが、富子(佐藤オリエ)は泰輔に文句を言う。すると、喜作(伊奈かっぺい)が様子見に顔を出し、強引に注文を取って座らせたところから、次から次へと客が来る。みさ(由紀さおり)も頑張って接客するが、役に立たない。蝶子が気を落としていたところに現れたのは、神谷(役所広司)と安乃(貝ますみ)で…。
2025.10.1 NHKBS録画
脚本:金子成人
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音楽:坂田晃一
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語り:西田敏行
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岩崎蝶子:古村比呂…字幕黄色
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北山みさ:由紀さおり
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中本喜作:伊奈かっぺい
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土田よね:根岸明美
神谷安乃:貝ますみ
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岩崎加津子:藤重麻奈美
岩崎俊継:服部賢悟
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駅員:市川勉
復員兵:佐々木良行
客:坂本由英
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行商の女:小沢悦子
関悦子
阿部光子
本庄和子
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男:加藤正之
高橋豊
早川プロ
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神谷容(いるる):役所広司
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野々村富子:佐藤オリエ
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野々村泰輔:前田吟
食堂の前に置かれたリンゴ箱に座り、通行人を見ている加津子と俊継。「お客さん、来ないね」
加津子「うん」
俊継「今日、日曜日だからかな?」
加津子「そうかもしれないね」
⚟︎汽笛
イライラしてテーブルをコツコツ叩く泰輔。
富子「ダメだねえ。1日目からこれじゃ」
蝶子「まだ昼前よ」
泰輔「そうそう。昼どきになってみなきゃ分かりゃしねえよ」
富子「あ~あ」両手でテーブルをたたく。
泰輔「うるさいね!」
富子「お客、来ないとなると、ごはんもみそ汁も魚の干物も、み~んな無駄になっちゃうねえ」
蝶子「おばさん!」←叔母さん!じゃないの!?
泰輔「お前って女は何だって、そう、悪い方悪い方ばっかり物事、考えるんだよ!」
富子「昔、あんたにそういう目に遭わされてるからだよ! 手ぇ広げた途端、いっつも倒産してさ!」
泰輔「何度同じこと言ってんだよ! え!」
話しながら、店の奥から裏庭に移動。
蝶子「ダメならダメでいいじゃない! ダメだったら、また飯炊き業でも、洋服の仕立て直しでもやればいいんだから。でしょ?」
泰輔「うん、まあ、そうだな」
富子「そうだね。これ」
⚟︎加津子「お母さん!」
⚟︎俊継「お母さん!」
蝶子「いらっしゃいませ!」
泰輔「いらっしゃいませ!」
蝶子「中本さん…」
喜作「どったら様子だか見に来たども」
蝶子「わざわざすいません」
喜作「いやいや、いやいや」
加津子「お客さん、まだ一人も来ないの」
喜作「いや~、いやいや…」
蝶子「ま、どうぞ掛けてください」
泰輔「どうぞ、どうぞ」
メニュー表を見る喜作。「あ~、ごはん、雑炊、すいとん、みそ汁、煮物、イワシに漬物ね」
泰輔「どうです、食べていきませんか?」
喜作「あ…あ…いや、おらは」
泰輔「遠慮いりませんよ」
喜作「いや、ホントに」
蝶子「叔父さん、そんな、無理に」
泰輔「飯は?」
喜作「いや、まだだども」
泰輔「お金、取りませんから。景気づけだ、ごちそうしちゃおう!」
蝶子「ああ! よかったら」
喜作「ああ…へば、雑炊」
富子「はい、すぐに」
泰輔「雑炊1丁だ!」
富子「はい!」
泰輔の笑い声
喜作が席に着くと、男たちが店に入って来た。「あの…いいべが?」
泰輔「は?」
蝶子・泰輔「いらっしゃいませ!」
男2「んだば、すいとん2つ」
蝶子「はい! おばさん、すいとん2つ!」
富子「はいよ!」
泰輔「急げ!」
富子「どうぞ、どうぞ」
泰輔「はい、どうぞ、どうぞ」
喜作の耳元でささやく泰輔。「中本さん、呼び水だ」
蝶子「福の神」
泰輔「フフフフ」
戸の隙間から加津子、俊継も顔をのぞかせてニッコリ。
店を出る男たち。
男2「いやいやいや、うまかった」
男1「ごちそうさん」
蝶子「どうもありがとうございます! またお願いします!」
この客が加藤正之さん、高橋豊さんかな?
よね「いやいやいや、食堂。いかったな!」
蝶子「あ、いらっしゃい! 来てくれてありがとう」
行商の女「食堂になって、おらんども楽だんだ」
行商の女「全くだ」
蝶子「さあ、入ってください」荷物を降ろすのを手伝う。
よねさんと来店したのは多分、関悦子さんと阿部光子さん。
みさ「すいとんは、こちらでしたか?」
男「雑炊」
みさ「え~と、すいとん…」
蝶子「こっち」
みさ「あ~! じゃ、こちら、お熱いですよ。こっちの雑炊は?」
男「雑炊って、しゃべったべ」
みさ「あ、そうでした。お待たせしました。お熱いです」
このお客さんが坂本由英さんか?
蝶子「注文は?」
よね「おら、飯とみそ汁と目刺し」
蝶子「はい!」
行商の女「雑炊と目刺し」
うなずく蝶子。
行商の女「雑炊だけ」
蝶子「はい!」
みさ「いらっしゃい!」
よね「やあ!」
客「あっちゃっちゃっちゃ!」みさがお茶をこぼした?
蝶子「すいません!」みさの近くに行く。「ちゃんと注意しないといけないのよ!」
みさ「分かった。あと、何したらいい?」
蝶子「叔父さんの洗い物、手伝って」
みさ「じゃ、これ」手に持っていた急須を渡す。
蝶子「しっかり持つのよ」
富子「すいませんねえ、今、お茶いれますからね。ホント、ごめんなさ…」
⚟︎食器が割れる音
みさ「あ~! 割っちゃった!」
蝶子「母さん…」
富子「ねえ、ちょっと…」
蝶子「あ、いらっしゃい! いや、いつも水ありがとうございます!」
工藤「ああ、なんも。雑炊ば」
蝶子「はい! おばさん、工藤さん、雑炊!」
富子「はい! すぐ!」
蝶子「あ、どうぞ」
工藤「すいません」
キャストクレジットでは”駅員”だけど、工藤さんなのね。
厨房
みさ「ごめんね」
泰輔「いいって」
富子「あと、これね」
割れた食器を持っているみさ。
富子「あ~、危ないから、今度、義姉(ねえ)さんケガする。捨てな、捨てな。いいから」
裏庭
すごい勢いで七輪の上の魚が燃えている。
富子「あらららら」
⚟︎食器が割れる音
⚟︎泰輔「何だい!」
⚟︎みさ「また、やっちゃった!」
⚟︎泰輔のどなり声
富子は忙しく1人で鍋から雑炊をすくい、ため息をつく。
夕方、食堂の前
加津子「ありがとうございました」
客「ごちそうさん」
蝶子「ありがとうございました!」
また行商の女性たちが来た。
蝶子「あ、いらっしゃい!」
夜、厨房に割れた食器が片づけてある。
富子「はあ~。ま、第1日目としちゃ、よかったんじゃない?」
蝶子「うん、よかった」
泰輔「ああ、まあ、よかった」
みさ「うん、いや、よかった、よかった」
ちょっとずっこける泰輔。
蝶子「今日、やってみてどう? 反省すべき点なんて、ない?」
富子「うん…」上を向き、考え込む仕草をする。
泰輔が指に手を当てる。「別にないんじゃないか?」
みさ「うん、ないんでない?」
蝶子「母さんに給仕は無理じゃない?」
みさの後方でうなずく富子。
蝶子「どう? やってみて…」
みさ「う~ん、楽しかったもね」
蝶子「そうじゃなく、うまくいったかどうか」
みさ「いったんでない?」
泰輔「いやいやいや、まあさ、姉ちゃんにとっては初めての経験だからさ、しかたがないよ」
富子「それもそうだ」
蝶子「早く慣れて」
みさ「はい」
蝶子「母さん、いい?」
みさ「ん?」
蝶子「母さんは張り切り過ぎると訳が分からなくなって、今、自分が何をしているか見えなくなることあるのよ」
みさ「いや、そうかい?」
蝶子「現状把握っていうか、そういうことがね。とにかく慣れて」
泰輔「そうそうそう。あとはさ、慣れだから」
みさ「うん、ウフフ。いや、頑張る」
泰輔「ハハハ…」
富子さん、疲れもあって苦笑って感じ? でも、できなかった~って、メソメソするとか落ち込むとかじゃなく前向きでいいと思うな~。
泰輔「次はあれだ。この食いもんの数、増やすか? おかずの種類とかさ」
富子「すぐ手ぇ広げようとする」
泰輔「そういうことじゃなくてさ」
富子「もっと着実に」
泰輔「分かったよ」
みさ「けど、まあ、よかったんでない?」
蝶子「うん、よかった」
泰輔「うん、よかった」
みさ「うん、ウフフ」
泰輔「ハハハ」
食堂
学生服姿の男たちが店から出てくる。
蝶子「どうもありがとうございます! またお願いします!」
店内には、よねも来ている。
蝶子「あ、はい、ただいま。すぐお持ちします」
<チョッちゃんの食堂は日増しに活況を呈しています>
蝶子「いらっしゃいませ!」
女「混んでるなす」
蝶子「あの~、今、混んでますんで注文だけ受けますけど」
女「雑炊3つ」
蝶子「雑炊3つ。母さん、雑炊3つ」
みさ「何? 雑炊が3つ。追加だね」厨房を通りかかる。
泰輔「ああ、大丈夫か?」
みさ「え? あ、大丈夫だ」
泰輔「間違えんなよ。な!」
みさ「アハハ、え~と、え~と、富子さんね」
裏庭
富子「はいよ!」
みさ「雑炊がね、3つだ」
富子「はい、3つね。じゃあ、義姉さん、これ、最初のお客さんに持ってってちょうだい。3つね」
戸にぶつかるみさ。「あ~っ!」
泰輔「こぼす、こぼす、こぼす! 足元、気を付けろ!」ジャガイモをたわしでこすってる?
みさ「大丈夫だ」フロアに出てくる。「雑炊の方、こちらでしょうか? どうも」
客の悲鳴
泰輔「どうしたんだよ!」
みさ「こぼしちゃった!」
泰輔「ダメだよ、もう。これで拭いて!」
富子「どうした、どうした?」
泰輔「はい、雑炊の方、雑炊!」
⚟︎汽笛
学校帰りの加津子と俊継は諏訪ノ平駅から出てくる親子連れを目撃する。
汽車の走行音
女「あ~、よかった。うれしいよね、帰ってきてね。よかったね」
父親らしき男性が男の子を抱き上げて歩いていく。
寂しそうな俊継の肩を抱く加津子。
泰輔「おう、お帰り!」
みさ「お帰り!」
加津子「ただいま!」
俊継「(小声で)ただいま」
蝶子「どうしたの? 俊ちゃん」
加津子「何でもないのよ。ね?」
うなずく俊継。
蝶子「隠してても、お母さんには分かるのよ」
泰輔「学校で先生に怒られたか?」
俊継「怒られないもん!」
加津子「俊ちゃん、行こう」
蝶子「ちょっと待った! 何か変だなあ。何か言いたいことあったら隠さないで言ってほしいな」
俊継「お父さん、いつ帰ってくるの?」
蝶子「…」
泰輔、みさも見ている。
蝶子「そうね。…もうすぐよ、きっと」
泰輔「そうそう、すぐだからな」
みさ「そうだ」
蝶子「ね?」
うなずく加津子。
富子「どうしたの?」
蝶子「ううん」
富子「お客さん、お茶だって」
蝶子「私が…」
富子「はいよ。よいしょ」バケツに水を汲んでくる。
1人、夢中で食べている復員兵の客がいた。「ああ…」
蝶子がお茶を注ぐ。
復員兵「あ、いやいや。ああ」
蝶子「どうぞ」
食べ終わり、シーハーしてる復員兵。
蝶子「復員、おめでとうございます」
復員兵「はい」
蝶子「どちらから?」
復員兵「大陸です」
蝶子「主人もそうなんです」
復員兵「青森から?」
蝶子「いえ、東京です」
復員兵「へえ、どこの連帯?」
蝶子「麻布です」
復員兵「…麻布かぁ。何か知らせてきたかい?」
蝶子「?」
復員兵「いや、はっきり聞いたわけでねんども、麻布の部隊は全滅したって噂だんだ」
蝶子「…ホントですか?」
復員兵「噂、耳にしたなす」
<チョッちゃん、噂なんだから、はっきりしたわけじゃないんだから>
夜、洋裁している蝶子。
泰輔「チョッちゃん、噂だよ、噂」
富子「あの復員兵、よく分かりもしないこと、しゃべって、唐変木だよ!」
泰輔「万一、万一、戦死したとしたら知らせてくるんじゃないのかね?」
富子「来てないんだから」
蝶子「届かないだけかもしれない」
みさ「蝶ちゃん」
蝶子「戦争終わって、もう2か月なのよ。要さんと同じ大陸に行った人たち、現に何人も復員してきてるのよ! 要さん、どうして帰ってこないの? 連絡ぐらいあっても…!」
泰輔「連絡ができないってこともあるだろ」
蝶子「東京行ってみちゃダメ?」
泰輔「今はダメだな。…東京、めちゃめちゃだっていうじゃないか」
泣き出しそうになりながら作業に戻る蝶子。
みさ「蝶ちゃん。…待ったらいい。今、待つしかないしょ」
⚟︎戸が開く音。
⚟︎「すいません!」
富子「あ、はい!」
男性が女性の背中をさすっている。
富子「具合悪いの?」
顔を見てびっくり!
富子「あ!」
神谷「あ! 野々村さん!」
安乃「おばさん!」
富子「…ちょっと、みんな!」
泰輔「あ? あ!」
加津子「神谷先生だ!」
神谷「お~! あれ~」
<思わぬ再会でありました>(つづく)
蝶子を訪ねてきたわけではなさそう!?
みさのドジっぷり、旧ツイッターは、こういう仕事の失敗許さんよねえ(-_-;) すぐ病名を持ち出して、ああじゃないか、こうじゃないか…あ~あ。
