NHK 1987年9月22日(火)
あらすじ
今日も行商のよね(根岸明美)たちを相手に、飯を炊く蝶子(古村比呂)たち。泰輔(前田吟)も仕事が出来て、張り切り始めた。蝶子は洋裁の仕事もやりながらで、加津子(藤重麻奈美)も俊継(服部賢悟)も焚き木拾いを手伝いながら、自分の家が何屋かわからない状態。蝶子がよねに煮物を出すと、いくらだ?と聞かれ、要らないと言うと、取らなきゃだめだ、と言われる。泰輔の提案で、いっそ食堂にするか、と言うとよねも賛成で…。
2025.9.30 NHKBS録画
脚本:金子成人
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音楽:坂田晃一
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語り:西田敏行
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岩崎蝶子:古村比呂…字幕黄色
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北山みさ:由紀さおり
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土田よね:根岸明美
母親:木村夏江
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岩崎加津子:藤重麻奈美
岩崎俊継:服部賢悟
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行商の女:小沢悦子
関悦子
阿部光子
本庄和子
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復員兵:平山茂夫
早川プロ
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野々村富子:佐藤オリエ
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野々村泰輔:前田吟
<チョッちゃんたちは行商に来た人のための飯炊き業を始めたんです。一時、しょげていた泰輔さんも仕事らしきものが見つかって張り切り始めました>
泰輔が一斗缶や釜を集めて、釜の底に穴が開いてないかチェック。
蝶子と富子は釜に米を入れる。
<しかし、チョッちゃんには洋裁の仕事もちゃんとありました>
洋裁の仕事をする蝶子の背後に映る家族写真。
飯炊きをする泰輔とみさ。
泰輔「姉ちゃん、ほら、急げ」
みさ「ん?」
泰輔「焦がすなよ」
みさ「大丈夫だ」
泰輔「しっかり…中へ突っ込まなきゃダメだ」
みさ「ああ、そうかい」
泰輔がカマドの火をうちわであおぐ。
俊継・加津子「ただいま!」
泰輔「おお、ご苦労さん!」
薪を背負って帰ってきた加津子たち。
みさ「ご苦労さん。いやいや、重かったしょ」
泰輔「そこ、置いて」
みさ「こっち、もらうよ。俊ちゃんの手伝ってあげて」
加津子「はい」
みさ「よいしょ、よいしょ。はい、ご苦労さん、偉かったねえ」
泰輔が1人で3つの釜の様子を見る。
俊継「本当は何屋さん?」
加津子「う~ん」
俊継「洋服屋さんかなあ? ごはん屋さんかなあ?」
泰輔「ハハッ、姉ちゃん、何屋だい?」
首をかしげるみさ。
泰輔「ヘヘヘッ」
みさ「エヘヘヘ」
よね「ただいま!」
⚟︎蝶子「お帰りなさい!」
富子「あら、ご苦労さん」
泰輔「ご苦労さん!」
富子がよねの荷物を降ろすのを手伝う。
泰輔「よねさんたちは中だな」
よね「はい!」
みさ「商いの方は、どうでした?」
よね「まあまあだなす」
富子「夏より歩くの楽でしょ?」
よね「んだなす」
みさが歩いて何かにぶつかった。
よね「あ!」
「危ない!」←行商の女性か富子か?
蝶子「母さんは食べて、ね!」
みさ「あ、うん」
蝶子「加津(かっ)ちゃん、俊ちゃん! 食べなさい」
加津子・俊継「はい!」
泰輔「よしよし、じゃ、加津ちゃん、はいはい」鍋を手渡す。「こうやってな、はい、気を付けて。重いぞ。熱いからな。よしよし、よしよし」
加津子が倉庫の中に鍋を運ぶ。
⚟︎蝶子「煮物、よかったら」
⚟︎よね「いくらだべ?」
⚟︎蝶子「お金は…」
⚟︎よね「取ねば、ダメだすけ」
⚟︎蝶子「でも…」
⚟︎よね「小皿に分げて、一皿いぐらって決めるのえ」
泰輔「なるほどねえ」
よね「いらねえ人は、いらねえでいいすけ」
富子「あの、相場は一皿いくらぐらい?」
よね「…70銭! 商売、商売」
泰輔「そうそう、何事も商売だよ、チョッちゃん」
蝶子「分かりました!」
よね「おらも1つもらうべ」
蝶子「はい!」
行商の女「おらさも…」←字幕は…になってたけど、「おらさもけんだ(ください)」
泰輔「ハハ!」
行商の女「ただいま!」
泰輔「おお!」
行商の女「どうも、どうも」
蝶子「お帰りなさい!」
行商の女「はいはい」
4~5人ほどが一気に来る。
泰輔「はいはい、そこへ置いといて。ご苦労さん、ご苦労さん。はいはい、ご苦労さん」
行商の女「いや~、おらも食いてえな!」
よね「一皿、70銭だ」
行商の女「ああ。もらうじゃ! な!」
蝶子「はい!」
泰輔「一皿70銭で煮物もやってます!」
行商の女「もらう、もらう!」
泰輔「あ、そう。4つ追加だ!」
富子「はいよ!」
にぎわう声
復員兵が倉庫の前を歩いてきた。
泰輔「あの~、あのね…」
復員兵「何かできるべが?」
蝶子「いや、あの…。ここ、食堂じゃないんですけど。お米預かって炊いてあげてるだけなんです」
泰輔「ええ」
復員兵「…違うのが?」
泰輔「ええ」
駅の方へ歩き出す復員兵。
蝶子「すいません」
泰輔「どうもすいませんね!」
釜を洗う蝶子。
泰輔は、お金を数えていた。「よし! 締めて5円だな」
蝶子「うん」
<チョッちゃんの飯炊き業は、もうけは大したことはなくても毎日の確実な収入源となりました>
富子「だけど、ごはん炊くだけで商売になるなんて思いもしなかったよ」
みさ「いやいや、本当だねえ」
泰輔「商売なんて、もともとそういうもんだよ」
富子「ほう」
泰輔「何かを欲しがる人がいるから、それをその要求に応えようとする人もいる。そのかわり、お金を頂く。昔からそうと決まってんだよ。今回の飯炊き業だってさ、炊いてほしいという人がいるからできるんだよ。そりゃまあ、材料は持ち込みだから安いよ。薪も拾いもんだし。そのかわりだ、鍋釜、これ洗ったり、米を研いだり、そういう手間がかかる。そのためにこれぐらいのお金はね、もらっていいんだよ」
みさ「あ、いやいや、なるほどねえ」
富子「いっつもそういう地道な考え方してたら、昔、あんなに倒産しなくたって済んだんだよ」
泰輔「ハハハッ、その教訓を、今、生かそうとしてるわけだよ。ハハハハ…」
蝶子「1人50銭というのは、そう高くないわよね?」
泰輔「ん? いやいやいや。家族総出の働きだから、安いもんだよ。なあ、富子。なあ、姉ちゃん」
富子・みさ「うん…」
蝶子「それならいいんだ。いや、なにももうけなくていいんだし、生活できればいいんだし」
富子「そうそう」
蝶子「うん!」
泰輔「ああ、いけねえ。ほら」売上金を懐から出す。
富子「ま~た」泰輔から受け取り、蝶子に渡す。
倉庫前
行商の女「ごちそうさん!」
蝶子「行ってらっしゃい! どうも行ってらっしゃい! 行ってらっしゃい!」
行商の女たちが去り、蝶子たちは食器を片付ける。
⚟︎汽車の走行音
女性と小さな女の子がリンゴ箱の椅子に座る。
⚟︎汽車の走行音
みさが母娘に会釈し、中に入る。「蝶ちゃん」
蝶子「え?」
みさが外を指さした。
蝶子「あの~」
母親「食べ物は何が?」
蝶子「あの、うちは食堂じゃないんですけど」
富子「ええ」
蝶子「…食堂というわけでなくて、あの、つまり…」
子供の顔を見たみさ。「おなか、すいてるんかい?」
子供がうなずく。
蝶子「ちょっと待って!」中に入って釜を確認。
富子「ああ、これ、いいんじゃない」
蝶子「あの、残り物ですけど」
母親「是非!」
蝶子「2人分、なんとかあります」
母親「食堂じゃないんですか?」
蝶子「はい」
みさ「ああ、何て説明したらいいべか?」
蝶子「う~ん」
母親「あ、お金は、ありますから」
蝶子「あ、お金は、いいんです。残り物ですから」
母親「すみません」
蝶子「あっ…」倉庫内に入り、煮物も持ってくる。「気にしないで食べてください」
母親「いただきます」富子が何か手渡す。「あ、すいません」
みさが子供の前にしゃがむ。「おいしいかい?」
うなずく子供。
みさ「あ~、そうかい。アハハ」
母親「東京出てから何にも食べてなかったもんですから」
”東京”という言葉にハッとする蝶子と富子。
富子「東京ですか?」
母親「…はい」
富子「私らも東京なんです」
母親「あ、言葉がそうじゃないかなと」
蝶子「東京、どちらです?」
母親「品川です」
蝶子「あ、近いです! 私、洗足」
母親「あの、洗足池の方の?」
蝶子「はい!」
母親「ああ~」
母親「あ、はい」
蝶子「東京、どんな様子です?」
母親「食べ物が手に入らなくて。ラジオなんかじゃアメリカの音楽が放送されて、自由だ、自由だって人は騒いでますけど、物取りなんかも増えてて、怖いこともあるんですよ」
蝶子「進駐軍は、どうです?」
母親「います」
富子「日本人は皆殺しになるとか?」
母親「いや~、そんなことはないです」
蝶子「あの、洗足あたりは、どうなってるか、ご存じじゃ?」
母親「あの辺は、焼けたか強制疎開で取り壊されたはずです」
蝶子「…」
母親「疎開先から9月に東京に戻ったんですけど、女子供だけじゃ暮らしていけずに、こっちの親戚、頼って来たんです」
うなずく富子。
蝶子「そう」倉庫内に戻る。
⚟︎みさ「大変だったんですねえ」
母親役の木村夏江さんは「続・若者たち」という映画で佐藤オリエさんと共演してる。
木村夏江さん演じるミツは青森から出てきて東京の靴工場で働いていて、オリエと知り合う(佐藤オリエさんは「若者たち」シリーズの役名も佐藤オリエ)。
夜、加津子と俊継は寝ていて、蝶子は洋裁をしている。「昼間の、あの女の人の話だと、うちは、もうないかもしれないね。ないと考えた方が…」
「あぐり」を見て、強制疎開=建物疎開だと思ってたから、建物が壊されるのは承知の上かと思っていたんだけど、そうではないのかな? だからこそ、あぐり美容室は事前に荷物を運びだしたり、いらない物は処分してたりしたんだけどね。
富子「進駐軍は思ってたより、おとなしいっていうのにね」
みさ「…話、聞いてたら、今、東京帰っても大変だって言うでない」
⚟︎汽笛
がっくり肩を落とす蝶子。
泰輔「な~に、そう焦ることはないって。しばらく、ここにいりゃいいじゃないか、うん?」
富子「ふん、東京に帰りたいって、さんざっぱら泣いてたくせに」
泰輔「商売始めたらさ、何かこう血が騒いできてさ。へへヘヘヘヘッ!」
富子「調子いいんだから」
泰輔「チョッちゃん。商売の手さ、広げてみるつもりはないか?」
蝶子「うん?」
富子「また悪い癖が!」
泰輔「話の途中で文句言うな!」
富子「ん? 聞こうじゃないか」
泰輔「今やってるさ、飯炊き業を、な! 発展させて、この食堂って手は、どうだ?」
蝶子「食堂?」
泰輔「うん、今までだってさ、日に何人かは食堂と間違えて来るぐらいだよ。場所だって駅のそばの一等地だ。きっと、はやると思うよ。人が駅を出る。今まで、さんざっぱら長い旅で、ろくに飯を食ってないから腹ペコだよ。見渡すと、そこに食堂の看板! よし、食おう! ヘヘッ、まあ、こんなふうになるわけだ。フフフフフ」
うなずく蝶子。
泰輔「いやいや、なにもさ、ただ『金もうけでやろう』って言ってんじゃないんだぞ。そりゃまあさ、ここにずっと暮らすっていうんだったら、行商相手の飯炊き業だって十分、暮らせるよ。しかし、いずれは東京に帰りたいだろう? 帰りたいだろ?」富子を指す。
富子「…うん」
泰輔「帰りたいだろ?」
みさ「うん」
泰輔「帰りたいだろ?」
うなずく蝶子。
泰輔「ところが東京には家がない。どうするんだよ?」
みさ「帰れないもね?」
泰輔「そこだよ! 東京にうちを借りるにしろ、建てるにしろ、金は、これ、いるんだよ!」
蝶子「けど…」
泰輔「よねさんがどう言うか?」
うなずく蝶子。
みさ「そうだね。行商の人たち、私たちのことば大した頼りにしてるしょ」
蝶子「食堂ってことになったら、お金高くもらわなきゃいけなくなるし」
みさ「何か悪い気するもね」
泰輔「とにかく、よねさんには意見を聞こうじゃないか。うん」
うなずく蝶子。
富子「で、いざ、その食堂やるって時は、どんなふうにやるの?」
泰輔「いや、だから、料理の数は、いらないんだよ。すいとんと雑炊。それに目刺しとアジの開きつけた一膳飯、出しゃいいんだよ」
蝶子「うん。いや、だったら、よねさんたちから魚の干物、仕入れることできるもね!」
泰輔「そうそう。よねさんたちも商売になる。『一石二鳥』ってもんだ」
蝶子「ああ!」
よね「食堂? へえ~、そりゃ、いいなっす」
笑顔で顔を見合わせる蝶子と泰輔。
蝶子「けど、今までより、少し割高になりますよ」
よね「なんも。こっちさ食堂あったら、初めっから昼飯の心配しなぐてもいがったのさ。食堂あったら、こっちも助かるもなす!」
蝶子「そう!」
泰輔「それ聞いて安心しましよ!」
よね「ほかの人も喜ぶべ! だば!」
蝶子「行ってらっしゃい!」
泰輔「行ってらっしゃい。頑張ってね!」
よねが歩いていく。
泰輔「どうだ、チョッちゃん。安心か」
蝶子「うん!」
泰輔「アハハハハ! よ~し、商売だぞ!」
笑い声
戸口にガラスの入った戸を入れた泰輔。「よしよし!」
蝶子「俊ちゃん、はい、ここ置いて」
テーブルに箸立てを置く俊継。
蝶子「どう、叔父さん」
泰輔「ああ、いいね。10人は大丈夫だな!」
厨房
みさが大きなカボチャを持っている。「あら、エヘヘっ」
蝶子「おいしそうだね」
泰輔「立派なカボチャだな」
裏庭
富子「よいしょ」
蝶子「あら~!」
富子「これね、よく考えてる」一斗缶カマドの場所を整える。
食堂と書かれた小さなノボリを立てた。
<お客さん、入るといいんですが。まあ、とにかく意欲だけはいっぱいのチョッちゃんたちでした>(つづく)
昨日のラストが商売始めようか!って感じだったのに、今日改めて、食堂を開くまでの話をやったんだね。昨日は、よねさんの方から「食堂やったらいい」って言ってたのに。
92年ぶり駅舎建て替え 黒柳さんも利用した諏訪ノ平駅(南部町)https://t.co/bCmCDcxZ7Q#東奥日報
— 東奥日報(青森) (@toonippo) September 29, 2025
ちょうど諏訪ノ平駅の話題が!
朝の連続テレビ小説/1980年代の歴代視聴率
(マー姉ちゃん(原作:長谷川町子/脚本:小山内美江子)1979年前期 42.8%)
(鮎のうた(脚本:花登筐)1979年後期 42.7%)
はね駒(脚本:寺内小春)1986年前期 41.7%
心はいつもラムネ色(脚本:冨川元文)1984年後期 40.2%
なっちゃんの写真館(脚本:寺内小春)1980年前期 39.6%
都の風(脚本:重森孝子)1986年後期 39.3%
ノンちゃんの夢(脚本:佐藤繁子)1988年前期 39.1%
よーいドン(脚本:杉山義法)1982年後期 38.8%
純ちゃんの応援歌(脚本:布勢博一)1988年後期 38.6%
虹を織る(脚本:秋田佐知子)1980年後期 38.5%
チョッちゃん(原作:黒柳 朝/脚本:金子成人)1987年前期 38.0%
本日も晴天なり(脚本:小山内美江子)1981年後期 36.6%
ハイカラさん(脚本:大藪郁子)1982年前期 36.2%
いちばん太鼓(脚本:井沢 満)1985年後期 33.4%
朝ドラは高視聴率=面白い、と思っていたけど、「チョッちゃん」の場合、今では考えられない高視聴率の並ぶ80年代の中では、そうでもないのが意外。なんなら前後の作品より低い。
