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【ネタバレ】チョッちゃん(141)―連続テレビ小説―

NHK 1987年9月16日(水)

 

あらすじ

富子(佐藤オリエ)の親戚のいる茨城へ疎開していた泰輔(前田吟)と富子だが、そこも空襲で焼け出され、蝶子(古村比呂)たちのいる青森へ逃げて来た。泰輔は何もやる気が無く、富子に喝を入れられている。泰輔夫婦用に別の作業小屋を借り、住めるように改修する蝶子。組合に行くと、正午にラジオで天皇陛下の話を聞くように、と三上(金井大)に言われる。その放送はポツダム宣言を受け入れる、という玉音放送で…。

2025.9.24 NHKBS録画

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脚本:金子成人

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黒柳朝チョッちゃんが行くわよ」より

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音楽:坂田晃一

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語り:西田敏行

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岩崎蝶子:古村比呂…字幕黄色

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北山みさ:由紀さおり

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中本喜作:伊奈かっぺい

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三上:金井大

斉藤:左奈田恒夫

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岩崎加津子:藤重麻奈美

岩崎俊継:服部賢悟

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中本よし:高柳葉子

中本良平:中野慎

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野々村富子:佐藤オリエ

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野々村泰輔:前田吟

 

<東京から富子さんの親類のいる茨城に疎開していた泰輔さん夫婦がチョッちゃんたちの住む、この家に来たのは昨日のことでした>

 

蝶子「では、いただきま~す」

一同「いただきま~す」

 

蝶子たちは、ちゃぶ台、泰輔と富子はリンゴ箱が食卓。

 

<泰輔さん夫婦は疎開先も空襲で焼け出され、着のみ着のままでチョッちゃんを頼ったのです>

 

加津子「人が増えると、やっぱりあれね」

みさ「うん」

蝶子「にぎやかでいいね」

みさ「ホント」

富子「1人、静かなのもいるけど」

泰輔は、ガックリ落ち込んだまま。

 

加津子「けど、楽しいよね?」

蝶子「そうね。うんうん」

みさ「楽しいね」

 

あくびする俊継。

富子「あら! 俊ちゃん、眠いんだろ?」

俊継「ちょっと」

富子「ごめんね、ゆうべ、夜中に起こしちゃったもんね。(泰輔に)ほら!」

泰輔「悪かったよ」

 

蝶子「もう、いいから」

富子「ホント、調子いい時は、やたら威勢いいのに、いざって時、からっきしだらしないんだからね。しっかりおしよ!」

うなずく泰輔。

富子「朝っぱらから、ごめん」

 

みさ「あれ? 加津ちゃんたち、学校行かなくていいんかい?」

加津子「夏休み」

みさ「あ、いやいや、そうかい」

 

先に食べ終えた蝶子。「私はそろそろ。ごちそうさま!」

富子「どこ、行くの?」

蝶子「仕事。臨時雇いだけど産業組合のね、事務」

富子「あら、そう」

洗い桶に食器をひたす蝶子。「あと、よろしくね」

富子「うん、私、やっとくから」

 

蝶子「昼休みには戻るつもりだから。では、行ってまいります」

富子「行ってらっしゃい」

一同「行ってらっしゃ~い」

 

庭で遊ぶ子供たち

俊継「うわっ、やられた!」

良平「エヘヘ、やっつけた~」

加津子が干した布団の陰から木の実鉄砲を撃つ。「バ~ン!」

良平「やったな!」

 

富子「ちょいとあんた。…あんた!」

リンゴ小屋の奥で寝転がっている泰輔。「ん?」

富子「いつまでイジイジしてんのさ」ため息をつく。

 

富子とみさは外のリンゴ箱に座っている。みさは前回の米のとぎ方のメモを挟んでいた本を今回も持ってるけど、あれは聖書らしい。

みさ「泰ちゃん、あれで案外、気ぃ小さいんだ」

富子「そうなんですよ」

みさ「泰ちゃん、富子さんいなかったら、どうしようもないもね」

富子「いいえ…」

みさ「ホントだ」

 

庭の奥で遊んでいた子供たちが木の実鉄砲を手に庭を駆け抜ける。

 

富子「大変ていや、義姉(ねえ)さんたちだって」

みさ「あ、なんも。蝶ちゃんが、ほれ、ああいう性格でしょ。私は楽なもんだ」

富子「なるほど。ウフフ」

みさ「この小屋だって使えるようにしたんは、ほとんど蝶ちゃんなんだ。床に板敷いたり、天井の破れ直したり、いやいや、大したもんなんさ」

富子「はあ~」

みさ「仕事も自分でやるって言うし」

富子「うん」

 

みさ「エヘヘヘ」

富子「え?」

みさ「蝶ちゃんね、やっと歌手になったんだ」

富子「ん?」

みさ「歌ば歌うだけのために、結婚式なんかに呼ばれて、お土産もらったりするの」

富子「へえ!」

 

みさ「昨日ね、お金なんか」

富子「商売になる?」

みさ「いや、なんも商売ってんでなく、ま、ただのご祝儀だ」

富子「なるほど。念願の歌手になって、お金にもなったってわけだ」

みさ「そうそう。アハハハ」

富子「あら~」

 

自転車の音

富子「あららら!」

蝶子「昼ごはんは?」

みさ「うどんだから、すぐ」

富子「おつゆも、もう、とってあるから」

 

蝶子「叔父さんは?」

富子「中」

蝶子「様子は?」

富子「ダメ」

蝶子が中の様子をうかがう。

 

富子「チョッちゃん

蝶子「ん?」

富子「見てごらんよ。ここに6人は無理だよ」

蝶子「いや~、ゆうべだって寝れたじゃない」

富子「私ら、どっか、よそで暮らすよ」

蝶子「いや、ここでいいのに」

富子「あ、無理無理」

 

みさ「したけど、よそへ行くって、どこへ?」

富子「この近くがいいんだけど」

蝶子「叔母さん、私たちへの遠慮なら」

富子「ううん、そうじゃないの。狭いってこともあるけどね…。義姉さんやチョッちゃんのそばにいると、あの人、ずっとあのまんまだ。別々に暮らして奮起させないことには、どうしようもないから」

 

壁の方に向かい、ふて寝している泰輔を蝶子、富子、みさで見ている。

 

中本家

喜作「作業小屋だば、ここらさ、なんぼでもあるすけ」

蝶子「貸してくださるようなとこ、ありますか?」

喜作「うん、まあ、隣の佐川んとこでもいいし、おらのいとこや友達は、いっぱいいるすけな」

蝶子「できれば、近い方が…」

喜作「うん…」

よし「んだば、佐川さんのとこだなす」

喜作「うん」

 

富子「頼んでいただけますか?」

喜作「うん、分かった分かった。何とでもなる」

蝶子「お願いします」

 

泰輔はリンゴ箱が詰まれた小屋の中で体育座りでため息をつく。外ではヒグラシが鳴き、日も陰ってきた。

蝶子「よいしょ、これで、よしと」

富子「まだ、ぼんやりしてんの?」

泰輔「うん」

 

蝶子「あとは、リンゴ箱で棚を作ってあげるから」

富子「ああ、すまないねえ」

蝶子「叔父さん」

泰輔「ああ」

蝶子「ごはんよ。向こうで一緒に食べよう」

泰輔「食欲がねえんだよ」

富子「冗談じゃないよ。こんな物のない時に、ぜいたくだよ! 義姉さんやね、加津ちゃんが作ってくれたんだよ。バチが当たるよ!」

 

泰輔「俺はもう立ち直れないよ。空襲で千駄木のうちを焼かれ、空襲から逃げて疎開したら、そこも焼かれ、俺って男は、よくよく運のない男なんだよな」

富子「いつだったか、あんた、タンカ切ったことあったよね。『俺は身内がいざって時の支えになる』って。『それが俺の役目だ』って。…随分、前だけど、あんた、そう言ったんだよ。今がそのいざって時じゃないのかい?」

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泰輔「…」

富子「分かったよ。好きにおし! チョッちゃん。…この人がこんなふうだから私も何か仕事を見つけなくちゃいけないね」

蝶子「生活のことは私が何とでも」

富子「ダメダメ! 私もね、仕事探すわよ」

 

<しかし、富子さんができるような仕事は、なかなか見つかりませんでした>

 

産業組合のラジオに斉藤が電源を入れるが、ラジオのノイズしか聞こえない。

蝶子「何か聴きたいものでもあるんですか?」

斉藤「いや~。…このラジオ、ダメだなす。岩崎さん、ラジオは?」自分の席に戻る。

蝶子「ないんです」

 

斉藤「んだば、知らねべ?」

蝶子「え? 何か?」

斉藤「4~5日前、長崎にも新型爆弾落ちたらしいっきゃ」

蝶子「ていうと?」

斉藤「1週間くらい前にも広島さ落ちたって話っこだべ?」

首をかしげる蝶子。

斉藤「いや、落ちたんだ」

蝶子「はい」

斉藤「それが長崎にもだんだ」

 

蝶子「新型爆弾ていうと?」

斉藤「いや~、詳しいことは分からねけども、大した威力らしいっきゃ」

蝶子「町なかに落ちたんですか?」

斉藤「んだ」

蝶子「じゃ、人も?」

斉藤「だいぶ死んだみてえだんだ」

蝶子「大変ですね」

 

三上組合長が出勤してきた。

蝶子「おはようございます」

三上「今朝のラジオ、聴いたかい?」

斉藤「組合長、このラジオ、もうダメだ」

三上「そったらごとねえ」ラジオの前へ。

 

蝶子「今朝のラジオっていうと、新型爆弾のことですか?」

 

ラジオのノイズ

 

三上「なんも。気をつけ!」

立ち上がり、直立不動になる蝶子と斉藤。

三上「今日の正午、天皇陛下のお声がラジオから放送されるんだ」

 

ラジオのノイズ

 

斉藤「ちゃあ…」

三上「国民は、こぞって拝聴するようにということだんだ」ラジオをたたくとノイズが止まった。

 

斉藤「しかし、何事だべがなす」

三上「いよいよ、本土決戦だべ!」

組合長がラジオの前から離れたので、蝶子と斉藤は座る。

 

ラジオから玉音放送が流れる。ノイズが酷くてとぎれとぎれ。

 

中本家

喜作、よし、富子、みさ、泰輔も正座して聴いている。

 

みさ「なんさ?」

泰輔「ん? さあ…」

 

立ってラジオを聴いている蝶子、斉藤、組合長。しかし、玉音放送を聞いている組合長はすすり泣きをし、椅子に崩れ落ちるように座った。

 

<昭和20年8月15日、日本はポツダム宣言を受け入れ、終戦を迎えたのです>

 

ヒグラシの声がする夕暮れ。みさは、外にいたがリンゴ小屋に入る。蝶子はまな板で何か切っている。

 

みさは、ちゃぶ台に食器を並べる加津子に話しかけた。「今日のラジオね、あれは一体、何だったんさ?」

加津子「戦争に負けたってことなの」

みさ「そうかい」

加津子「学校の校庭で、みんなとラジオ聴いてたら、校長先生、泣いてたのよ」

みさ「いやいや~」

 

リンゴ小屋に入ってきた泰輔、俊継、富子。

泰輔「負けたな」

蝶子「負けは負けだけど、終わったのよ。戦争が終わったっていうことなのよ!」

みさ「いや~、終わったんかい?」

蝶子「そう、終わったのよ!」

 

富子「とうことは空襲もない?」

蝶子「…と思う!」

みさ「あ~」

富子「逃げることもないってことだ」

蝶子「そう!」

富子「東京に帰れる!」

蝶子「うん!」

泰輔「ああ!」

 

加津子「じゃ、お父さんも帰ってくるのね!」

蝶子「!」

加津子「違うの?」

蝶子「そうよ、そうよ。お父さんも帰ってくるのよ!」

泰輔「東京にも帰れる!」久々の笑い声!

蝶子「うん!」

俊継「帰ってくる、帰ってくる!」

 

<しかし…>

 

産業組合

斉藤「んだども、うち、あるのすか?」

蝶子「あ!」

斉藤「強制疎開だば、うち、取り壊されてるんでねえべがなす? 様子見に行くにしても、ちゃんと汽車動ぐかどうかも分かんねえもなす。…それに、東京は大変だっていうべ」

蝶子「何か?」

斉藤「進駐軍、上陸したとかで大騒ぎしてるっきゃ。残ったうちも焼き払ってるっていうべ。日本人と見たら皆殺しされるって聞いた。そったらとこ帰ってもどうしようもねえべ。しばらくこっちさいて、様子見なせ」丸テーブルで蝶子と向き合って座っていたが、自分の席に戻る。

 

三上組合長は首に手拭いをかけ、煙管を手に持ち、シャツ全開の格好で出社。「ここもおしめえだ。この先、日本は、どういうことになるか分かったもんでねえ。あ~あ! だすけ、産業組合は閉鎖だ」

蝶子「そんな!」

三上「仕事なくして気の毒だども、しかたねべ」

 

<終戦と同時にチョッちゃんは仕事を失いました>(つづく)

 

終戦になり、男が戻ってきて職場を追われるパターンもあるけど、こういうパターンもあるのか。

 

朝ドラ名物玉音放送

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小山内美江子脚本の「マー姉ちゃん」「本日も晴天なり」では玉音放送を長めに流すけど定番の「堪えがたきを堪え」を流さない。

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橋田脚本の「おしん」だと”終戦”というものが具体的に分からないという描写。

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澪つくし」は「チョッちゃん」よりも終盤に終戦を迎えた。かをるはラジオを聴いていなかった。

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割とサラッと流した。

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芋たこなんきん」は他のドラマとはちょっと違って回想シーンとして出てくる。

 

「はね駒」は明治時代の話、「純ちゃんの応援歌」「ゲゲゲの女房」は戦後から話が始まっているので出てきません。

 

朝ドラではありませんが

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岸壁の母」も割と長めに玉音放送を流してたけど、「別れて生きる時も」はサラッと戦後に移行してた。

 

斉藤さんがとことん冷静。

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「ありがとう」の最初のシリーズでも比奈子の叔父夫婦が青森に疎開して、そのまま戦後も暮らしてたんだけど、比奈子が嫁に行くって言うので、比奈子たちが暮らしている家を乗っ取ろうと来たんだよね~。そのまま残る人ってのもいたんだろうね。