NHK 1987年7月13日(月)
あらすじ
蝶子(古村比呂)の長女、加津子が1歳6か月となった。ある日、蝶子が目を離した隙に、加津子が食卓にあった唐辛子を口にしてしまう。大泣きする愛娘を目の当たりにした要(世良公則)は、母親の責任だと蝶子を激しく責めたてる。あまりの騒ぎにお隣の大工・中山音吉(片岡鶴太郎)・はる(曽川留三子)夫妻も駆けつけるが、要の怒りは一向に収まらない。そこで、癇癪持ちに効くと、ある食べ物をはるが蝶子に手渡すのだが…
2025.6.30 NHKBS録画
脚本:金子成人
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音楽:坂田晃一
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語り:西田敏行
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演奏:新室内楽協会
テーマ演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:円光寺雅彦
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考証:小野一成
タイトル画:安野光雅
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バイオリン指導:磯恒男
黒柳紀明
方言指導:曽川留三子
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岩崎蝶子:古村比呂…字幕黄色
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岩崎要:世良公則
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北山みさ:由紀さおり
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中山音吉:片岡鶴太郎
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石沢嘉一:レオナルド熊
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北山道郎:石田登星
中山はる:曽川留三子
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山本たみ:立原ちえみ
品子:大滝久美
劇団いろは
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北山俊道:佐藤慶
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制作:小林猛
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演出:富沢正幸
岩崎家
蝶子「あ! またやったな?」
<この子は、チョッちゃんと要さんの長女・加津子ちゃんです。1歳と6か月になりました。今はもう昭和9年11月なんです>
蝶子「いらっしゃい!」
道郎「おっ!」
蝶子「伯父ちゃんが来たよ」
道郎「伯父ちゃんだぞ! ほら、加津子~! 高い、高い、高~い! よし。じゃ、伯父さんとオモチャで遊ぼうな! よ~し、こっち来い」
要「やあ、いらっしゃい!」
道郎「ああ、休みでしたか」
要「ええ。まあ自宅練習ってとこですかね」
道郎「僕には、お構いなく」
要「ちょうど一息入れようと思ってましたから」
道郎「いや~、見る度に大きくなるなあ」
要「そうですか?」
蝶子「毎日見てると分からないけどね」
道郎「そういうもんさ」
蝶子「ふ~ん。あ、お茶いれるから」
要「かりんとうか?」
蝶子「はい、どうぞ」
道郎「甘いもの見ると、おやじを思い出すな」
蝶子「フフフ」
急に姿勢を正す道郎。
蝶子「ん?」
道郎「俺、小説家志望、やめることにしたんだ」
驚く蝶子と要。
道郎「うん、決めた」
蝶子「どうしたの? 急に」
道郎「いや、急じゃないさ。前から考えてはいたんだ。書いても書いても一向に認められる気配はないし、考えてはいたんだ」
要「そう…」
道郎「去年、出た小説に『若い人』っていうのがあるんだ。それ、読んだら…俺なんかダメだ。潮時だと思ったよ。スッパリ諦めることにした」
ああ~、石原裕次郎さんが先生で吉永小百合さんが生徒っていうの、一場面くらいはテレビで見たことあるな。この話だったのね。
映画化3回、ドラマ化4回。中でも1972年のNHK銀河テレビ小説版の「若い人」は間崎先生が石坂浩二さん、橋本先生が香山美子さん、江波恵子が松坂慶子さん、恵子の母が草笛光子さん、母の恋人が高橋悦史さんで面白そう。「ありがとう」の頃の石坂浩二さんと「思い橋」の頃の松坂慶子さんか~。
石坂浩二さんは石坂洋次郎さんが好きな作家で芸名の由来でもあるんだね。江波杏子さんの母の江波和子さんの芸名の由来もこの作品のヒロイン・江波恵子から。
蝶子「諦められる?」
道郎「ああ」
道郎は30前後くらいってとこ?
要「あ、ねえ、お湯」
蝶子「ああ」台所へ
要「それで?」←蝶子に話しに来たのに、勝手に話を進めるんじゃねー!
道郎「仕事、探しますよ。校正の仕事もやめてね」
お茶を運んできた蝶子。「そう」
道郎「うん」あぐらをかく。「おやじ知ったら怒るだろうな。俺を医者にして、うちの後を継がせようとしたおやじとしちゃ、医学を捨てて小説を目指した俺が小説でも挫折。ざまぁ見ろって言うだろうな」
蝶子「滝川には2~3日前に手紙出したばかりなのよ」
道郎「へえ…」
蝶子「加津子の写真も同封してね」
要「ああ、今日あたり着いてんじゃないかな」
蝶子「うん」
雪が積もっている北山医院
<チョッちゃんの手紙は滝川に着いていました。ほら!>
みさが手紙を読み上げる。「1歳半を過ぎた加津子は少しもじっとしていず、うっかり目も離せません。同封したのが加津子の写真です」
要、加津子、蝶子の3ショット写真
石沢「これ、どっち似だべ?」
みさ「お父さんではないでしょ?」
石沢「なんも。チョッちゃんとこの旦那とどっち似だべって聞いたんだべさ」
みさ「ああ」
俊道「バ~カ」
たみがお茶を運んできた。
みさ「たみちゃん、蝶ちゃんの娘の写真だ」
たみ「ああ、いやいや、大しためんこいっしょ!」
石沢「チョッちゃんとこの旦那に似てんでないかい?」
うんうん、とうなずくたみ。
みさ「そういえばそうですね」
俊道「お前は…」
みさ「はい?」
俊道「蝶子の実の母のくせして、なして亭主の肩ば持つんだ?」
みさ「肩をですか?」
俊道「亭主に似てるって、しゃべったべさ、今」
みさ「したって、肩ば持つとか持たんの問題ではないっしょ」
石沢「そりゃそうだ」
たみ「そうだ! 品子さんにも教えてこよう」診察室へ「(小声で)品子さん!」
⚟石沢「しかし、あのチョッちゃんがおっかさんだもんなあ」
たみは診察室から出てきた品子に耳打ちして何かお願いしている。
⚟みさ「いやいやいや、ねえ」
⚟石沢「あのチョッちゃんがな~」
茶の間
品子「先生! 蝶子さんの子供の写真、見せてください」
俊道「うん」
品子「いやいやいや、蝶子さんにそっくりだわ」
俊道「そうだべ?」 ←声がうれしそう。
品子「はい!」
俊道「そうなんだ。見る者が見たらそうなんだわ」
石沢「品子さん、子供まだかい?」
品子「うん、まだなんだわ」
みさ「結婚したの4月だもね」
うなずく品子。
石沢「したら、もうそろそろできていい頃だべ」
品子「できないもんはできないっしょ!」ムッとして部屋を出ていき、たみが追いかける。
たみ役の立原ちえみさんは、ちょうど同じ時間帯に再放送している「不良少女によばれて」にも出演。ドラマ内では少年院に入って妊娠が発覚、先日、結婚式を挙げてました。たみちゃんが幼いイメージがあったけど、北海道出身ということもありヒロインオーディションに残っていたのかな? 古村比呂さんと同い年なんだよね。
石沢「先生、初孫ば抱いてみたいっしょ?」
ツーンとした表情をする俊道。
石沢「そうでないかい?」
みさ「はい。エヘヘ」
写真をテーブルの上に置く俊道。
石沢「かわいいもんな~、こら、ホントに」
みさ「いやいや~、ハハハ」
岩崎家
⚟♬~(バイオリン)
要は練習、蝶子はバイオリンの音色を聴きながら皿洗い。加津子はテーブルの上のものをいじっている。
加津子の泣き声が聞こえて、蝶子が慌てて茶の間へ。「ほら、加津(かっ)ちゃん、こっち向いて! ほれ! あ~んしなさい、あ~ん!」
要「どうしたんだ!?」
蝶子「トウガラシを!」
要「あらららら! 水! 水!」
加津子の泣き声
要「大丈夫?」
蝶子「口の中に入ってるもの出してください!」
要「あ~ん! アイタタタ…よ~し、よし、よし」
蝶子「はい、加津ちゃん、飲んで!」
蝶子に包帯を巻いてもらっている要。「お前ね、どうしてトウガラシなんか渡したんだ!」加津子に指をかじられた?
蝶子「渡したわけじゃ…」
要「じゃあ、どうしてここにあるんだよ!」
蝶子「昼ごはんの時、使ったでしょ!」
要「置き忘れたのか!」
蝶子「片づけ忘れて…」
要「…ったくもう、お前の不注意なんだよ」
蝶子「はい」
要「大体ね、トウガラシなんか何で子供の前に置いとくんだ! 子供はね、訳が分からんのだから、君がちゃんとしなきゃダメだろ!」
蝶子「すいません!」
要「謝って済む問題じゃない! 大体ね、子供がトウガラシ目ぇ入れたらどうするんだ! 醤油を飲んだらどうする!? 箸で目突いたらどうする! おい! どうして放っといたんだ!」
蝶子「放っておいたわけじゃありません!」
要「加津子を一人にしといたじゃないか!」
蝶子「反省してるんだから、なんもそんなに言わなくてもいいでしょ!」
要「開き直ったな!」
音吉「どうしやした?」
はる「どうしたの?」
蝶子「何でもないんです」
要「…ったく!」練習室にこもる。
蝶子「ホントにカンシャク玉なんだから!」
夜、路地を拍子木をたたきながら歩いている人がいる。「火の用心!」
蝶子は日記を書いていた。
十一月…
唐辛子のこ…
それにしても…の言ひ方はひどい
まるで私を罪人扱ひ
中火事
<「中火事」というのは何なのでしょうか? チョッちゃんのこの日記には夫婦ゲンカの記録が書かれているんです>
ページをめくる。
十一月九日
今日は何もなく平穏無事
加津子はどっち似だろう
要さんのかんしゃくは受けつい…
十一月八日
演奏会前で要さんも…
加津子の泣き声で今日…
赤ん坊だから仕方ない…
ボヤ!
<ご丁寧にケンカの規模を火事に例えてあるんです。激しいケンカは「大火事」、小さいのは「ボヤ」というように>
大あくびした蝶子は台所へ行き、ガスの元栓を閉めたか確認する。
買い物帰りの蝶子が路地を歩いていた。
はる「奥さん!」
蝶子「あ、どうも」
はる「ちょっと、ちょっと」
蝶子「ん?」
はる「加津子ちゃんは?」
蝶子「要さんが見てるの」
はる「いいものが手に入ったの」どんぶりに入ったものを見せる。「…これ」
蝶子「何? これ」
はる「カンシャク持ちの人には妙薬なの」
蝶子「何なの?」
はる「蜂の子。ブンブン飛ぶ蜂」
蝶子「え?」
はる「旦那さんのカンシャク治したかったら食べさせなさい。油で炒めて醤油で味つけりゃいいの」←おお! どんぶりの中身が見えた!
蝶子「効くの?」
はる「うちのには効いた」
蝶子「ホント?」
はる「うん。ふだんなら嫌がる仕事、さっきは機嫌よく引き受けちゃってさ」
夜、ベビーベッドにいる加津子を見ている要。
蝶子「寝てる?」
要「ん? うん」
蝶子「じゃ、いただきましょう」
要「ああ」
茶の間
要「ああ、ありがとう。じゃ」
2人「いただきます」
蝶子「これ、お向かいからの頂き物」
要「ふ~ん」小鉢に入った蜂の子を口に入れる。「何だ? これ」
蝶子「え~と」
要「いや、うまいな、こりゃ」
蝶子「へえ…」
要「あ、お前も食べろ」
蝶子「え?」
要「いや~、うまいよ、なかなか」
蝶子は1つだけ口に入れ飲み込む。「あとは食べて」
要「え、いいのか?」
蝶子「いいのよ」
要「そうか。よし」ご飯にかけて食べる。「うん、うん…あ、お蝶」
蝶子「はい!」
要「俺はな、庭に池を造ることにした。池だよ。小さい池。フナを飼って泳がせるんだ」
蝶子「へえ、楽しそうね」
要「うん、俺、子供の頃はな、フナ釣りの名人っていわれたんだ。ま、池造りは、そのころからの夢なんだけどね。これはうまいな」
岩崎家の庭
音吉「何事?」
要「ああ、スコップ、すいません」
音吉「ああ、いえいえ。埋蔵金でも探してるの?」
蝶子「池を造ってるの」
音吉「ほう」
蝶子「水いれて、フナ、泳がせるの」
音吉「ほう~、フナ遊びとは豪勢だ!」
要「おっ、言いますね、面白い!」
音吉「エヘヘヘ」
蝶子「どうしてフナ遊びが豪勢なの?」
音吉「シャレですよ、奥さん、シャレ。いや、ほらね、金持ちのお大尽が屋形船仕立てて、きれいどころなんかはべらかして酒盛りするでしょ。それを船遊びって言うんだよ。ね! で、それと魚のフナと掛けてフナ遊びって…」
蝶子「?」
音吉「あ、ダメだ、こりゃ。手伝いましょう。ね!」垣根を越えて入ってくる。
蝶子「ああ、すいません」
音吉「いえいえ」
要「フナ遊びね。よいしょ!」穴を掘る。
音吉「旦那、例のやつ、効き目ありましたね」
要「何?」
音吉「あれ、精がつくってえから」
要「は?」
音吉「蜂の子ですよ」
縁側に座っていた蝶子が立ち上がって慌てる。
音吉「あれ? まだ食べてません?」
蝶子「いや、あの…」
音吉「昨日、うちのやつが奥さんに分けたって。ね?」
蝶子「おいしかったでしょ?」
要「昨日のあれか?」
うなずく蝶子。
音吉「何だ、やっぱり食べてんじゃ…旦那! エヘヘヘ!」
要「どうしてそんなもん俺に食わしたんだ?」
音吉「そんなもんって…」
蝶子「はるさんが親切にくれたのよ」
要「なにが親切だよ! 俺はね、ああいうゲテモノはダメなの!」
音吉「ゲテモノったって、あの蜂の子ってのは、なかなか手に入らないんですよ!」
蝶子「ゆうべは『おいしい、おいしい』って食べたくせに」
要「知ってりゃ食べませんよ!」
はる「あんた! 正岡さんとこ行く時間だよ」
要「奥さん! あんたね!」
蝶子「奥さんには関係ないでしょ!」
音吉「蜂の子だって知らずに食ったんだとよ」
要「どうして私に蜂の子なんか」
蝶子「要さんのカンシャクが治るようにって」
うなずくはる。
要「何!? 俺はカンシャク持ちですか」
はる「そう思って」
要「おせっかいだよ!」
はる「奥さんのためにと思って」
音吉「あら? あれ、カンシャクの薬か」
はる「そうだよ」
音吉「じゃ、なにか、お前、俺にそういうつもりで蜂の子、食わしたってのか? お前」
はる「そうだよ!」
音吉「俺はカンシャク持ちじゃねえよ、バカヤロー、テメエ! この旦那と一緒にすんなよ、お前!」
要「それはどういうことかね!?」
音吉「あんたはカンシャク持ちですよ! 俺は違うんだよ!」
要「何!?」
はる「あの蜂の子全然効き目ないじゃないか!」
要「うるさい!」
音吉「うるさいとは何だ、人の女房に向かってよ!」
蝶子「やめてって!」
要「今後一切ね、お宅とはもう…交際をやめる!」
音吉「上等だよ! こんなうち二度と来るか、バカモノ! こんなうち二度と来るか、こんなうち! バカヤロー、お前!」家へ帰って行った。
要「お前もいいね!」
蝶子「嫌です!」←即答するのがよい!
要「大体ね、私のことをカンシャク持ちと言って蜂の子なんか食わせるような連中とはつきあえんでしょうが!」
蝶子「はるさんは、よかれと思って、蜂の子くれたのよ!」
要「何がよかれだ!」
蝶子「そんなことも分かんないならね、私はね!」
要「何だ、何だ!?」
蝶子「ふん!」
要「何が『ふん』なんだ!」
<チョッちゃんは家出してきました>
加津子を抱え、風呂敷包みを背負って野々村家前に入っていく蝶子。(つづく)
午前7時26分ごろ地震がありました
深さ20キロ マグニチュード3.4
最近、地震が多いね。
道郎が「若い人」の話題を出すから調べて、見たくなってしまったよ。NHKの銀河テレビ小説ってどの程度残ってるか知らないけどね。
蝶子が反論するんで、見ていて面白いけど、要もさぁ…。



