1964年 日本
あらすじ
名作曲家・團伊玖磨の小説「日向村物語」が原作で、山田監督による「馬鹿三部作」の三作目。村で蔑まれている男が、長者ら村の有力者たちを相手に戦車で大暴れする痛快さとともに、人間性を鋭くえぐって見せる。
ある日、海釣りに来たふたりの男が、船頭から「タンク根」の話を聞く。海水が澄んだ時に、底に沈んだ戦車が見えるらしい。なぜそんなものが沈んでいるのか、船頭は変わり者ばかりが住む日永村の話を始める――。
2025.3.31 BS松竹東急録画
松竹映画
ハナ肇の
馬鹿が
戦車(タンク)で
やって来る
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紀子:岩下志麻…字幕緑
兵六:犬塚弘
郵便配達夫:小沢昭一
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仁右衛門:花沢徳衛
とみ:飯田蝶子
赤八:田武謙三
市之進:菅井一郎
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百田巡査:穂積隆信…字幕水色
床屋の親爺:渡辺篤
かね:武智豊子
たね:小桜京子
茂十:天草四郎
九作:常田富士男
医師・新吾:高橋幸治
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山本幸栄
堀真奈美
大杉莞児
土紀洋児
秩父晴子
後藤泰子
城戸卓
高木信夫
今井健太郎
土田桂司
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阪修
村瀬正彦
外池宏治
市川小伝治
高峰竜三
園田健二
鬼笑介
国分秋恵
遠山文雄
城谷皓治
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船頭:東野英治郎
若い男:谷啓
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企画:市川喜一
原案:団伊玖磨
製作:脇田茂
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脚本・監督:山田洋次
最初に”ハナ肇の~”と出てくるので、改めてクレジットとしては出てきてない。
サブ:ハナ肇…字幕黄色
松竹映画だからおなじみの名前をチラホラ見かける。手書き文字がかわいい。
若い男が船の上であくび。谷啓さん若い。課長に「釣れませんね」と話している。課長の松村達雄さんも若いが、黒縁眼鏡で印象は変わらないな。
船頭の漁師から日永(ひなが)という村について聞く。
5年前…百田巡査が赴任して最初のパトロールで村一番の貧乏な家に行くと、兵六という男が出て来て、百田が話しかけても無視して、鳥の鳴き声をマネしている。百田は「何だ、キチガイか」。世帯主のサブは常にケンカ腰。母・とみは耳が遠い。
村の各家をパトロールする百田。前任の巡査から訪ねろと言われた橘仁右衛門の家に行くと、娘の紀子が寝ていた。”紀子”も松竹作品じゃよく出てくる名前。仁右衛門役の花沢徳衛さんは、この時代に年寄り役か~。
日永村では何か悪い事があると常にサブの家のせいにしてきた。
仁右衛門が村の商店で団子4本を買い、サブの家へ。商店主の赤八と農夫の九作が何があったと外で覗いている。常田富士男さんは声で分かるな。日本昔ばなし。
仁右衛門はそろそろ功徳を施さねばならんとサブに2万やると言う。雨が降り出し、赤八たちはサブたちの会話が聞こえなくなる。
サブと仁右衛門は10年前から畑の境界線で争っていたが、その畑を売れと言う。
赤八、久作と雨宿りに来た配達夫も話を聞く。そのうち、外に出ていた兵六が家の中に入り、団子を食べ、苦しみだすが、配達夫がのどに詰まった団子を出して事なきを得た。
いつも寝ている紀子のもとを医師の新吾が訪ねた。新吾は、お祭りを見に行けるよと言われて紀子は喜ぶ。2年も病気だったが、祭りの前の日、紀子は家の外に出てみた。村中を挨拶しながら歩き、サブの家へ。
兵六は家の中の高いところで鳥のマネ。サブは紀子が自分の家に来ることが信じられない。紀子は父の仁右衛門のふるまいを哀れな年寄りだと思って勘弁してやってねと謝る。兵六の様子を見ても、いつも楽しそうでいいねと言い、六ちゃんの気持ちが分かるような気がする、病気が重かった時、白鳥になった夢を見たと話し、明日は床上げ祝いだから来てねと帰っていった。
村の床屋では村の者たちが紀子は小さい頃から兵六と仲が良かったから、紀子もちょっと変わり者だと話していると、サブが頭を刈りに来た。
久作がサブに「ちんぶりこくな」と言ってる。おお、「おやじ太鼓」では、お敏が「ちんぷりかえる」って言ってたなー。
サブが紀子の床上げ祝いに来てと言われたと話すと、男たちはおしゃれしないとなと言い、頭にはポマード、顔にはクリームをたっぷりつけさせた。サブが200円払って帰ると、男たちはサブの容姿を笑った。嫌な感じ。ポマードつける髪もねえくせに! 特に茂十!
翌日、村の祭りと紀子の床上げ祝いが重なった。サブは兵六についてこないように言いつけ、一人で正装して紀子の家に出かけた。
紀子の家の奥はたくさんの手伝いが来ていて、せわしなく働いている。ポマード、スーツ姿のサブを村人たちが笑う。
お膳が並び、仁右衛門が謡をするなか、サブが席に着くと、仁右衛門が謡をやめ、ここに並んでいる者たちはお前の一家とは違うのだ、出ていけと言い、笑い者にした。う~ん、見ていて悲しくなってきた。
兵六も来て、惨めな気持ちで紀子の家を出たサブは兵六に怒りをぶつけ、村人に止められ、商店へ行き、酒を飲み、リンゴをかじりながら泣いた。
紀子の家に赤八の妻が夫と駐在を呼びに来た。酒を飲んだサブが暴れている。村人が総出でサブを止めるが、サブは止まらない。稲刈りの終わった田んぼで暴れる。結局、サブが傷害・器物破損で捕まった。
村会議員の市之進は、とみに先立つものは金だと言いくるめて土地を取り上げた。紀子は親戚の家に行っており、1週間後、サブが戻ってきた。
赤八、九作、茂十が様子を見に行くと、サブに怒鳴られ、追い返された。仁右衛門の家でもお礼参りに来るんじゃないかと恐れたが、サブは納屋にこもって出てこなくなった。1か月、2か月…春が近くなり、兵六のように頭が狂ったと噂されたころ、サブの家の納屋が5間動いたと村人が騒いだ。
駐在も駆けつけ、納屋に向かって呼びかけたが返事はない。しかし、異音がして、納屋から出てきたのは戦車(タンク)だった。
戦車が村中を走る。駐在が本署に電話しても、信じてもらえない。村では半鐘を鳴らし、火の見番が仁右衛門の家へ向かったぞーと叫ぶが、仁右衛門の家を通り過ぎた、こっちに来るぞと実況する。
サブは戦時中、少年戦車兵にいて、隠し持っていたのだと噂し合う。そんなこと、ある!? 車体には愛国87。あ、ハナ肇?
市之進と仁右衛門が戦車に乗って呼びかけたが、2人を乗せたまま走り出した。サブは戦車を止め、戦車から出て来て、笑う。エンジンを止めたサブは文句のあるやつは出てこい!と叫ぶが、九作たちは友達だったじゃないかとなだめた。
サブが市之進が母親に盲判を押させて、土地を取られた話をすると、九作たちは、その話を知らなかった。
仁右衛門の家へ突撃したサブだったが、悪いのは市之進だと分かった。
紀子が帰ってきて、火の見やぐらに登っている兵六に「危ないよ」と声をかけていると、村人から家が大変なことになっていると知らされ、自宅へ。自宅は半壊していた。かねは旦那様が手をついて謝っていたら~と仁右衛門を責めていた。かねは母じゃなくお手伝いさん?
戦車が走り、今度は床屋のおやじや九作、茂十、赤八を責め始め、各家を突撃し始めた。小回りの利く戦車だわ~。
村人たちで戦車壕を掘り、戦車をおびき出し、挑発して穴に入れてしまおうと話し合うが、自分たちが穴に入ってしまい、失敗。サブは家に帰って、とみに兵六の行方を聞くが川に行ったんじゃないかと言う。
兵六は火の見やぐらの上で羽ばたく真似をしている。
とみは仁右衛門の家に行き、市之進にお金を借りたが、土地を売ると言われてしまい、死ぬまであの家にいたいと頼みに来ていると、兵六が死んだと知らせに村人が来た。火の見やぐらからの転落死。
赤八、九作、茂十は酒を持って、サブに話に行くが、兵六のことを言い出せず、一升瓶を渡した。
火の見やぐらの下でむしろをかけられた兵六を見て泣いている紀子ととみ。
紀子がサブの家に来て、兵六が死んだと泣いた。村人のせいにするサブだったが、紀子は六ちゃんは鳥になっちゃったのよと泣きくずれた。
夕方、サブは台車で兵六を連れ帰り、夜中、戦車でどこかへ行った。
朝、駐在、赤八、九作、茂十でサブの家を訪ねると、とみは土間で正座して念仏を唱え続けていた。
赤八たちは戦車のタイヤ痕をたどって進み、紀子が以前入院していた北浜医院の前へ。兵六を乗せて来て、死体は引き取れないと新吾が話すと、また兵六を乗せて、そのまま海へ。
今も戦車は兵六ごと沈んだままだと漁師が若い男と課長に話していた。
2、3日後にひょっこり日永に戻ったサブは母親を連れて出ていった。その後、紀子は新吾とタンク道を通って北浜まで歩いている。今ではサブが戦車で走った道が”タンク道”と呼ばれ、隣の村への近道になっている。今でもサブを覚えているのは紀子さんだけだと漁師が言う。(おわり)
う~ん、もの悲しい話だな。
