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【ネタバレ】チョッちゃん(53)―連続テレビ小説―

NHK 1987年6月5日(金)

 

あらすじ

岩崎(世良公則)がオーケストラの練習を休んだ。頼介(杉本哲太)に殴られて腕を痛めたと聞いた蝶子(古村比呂)は、頼介の職場を訪れ、バイオリニストの腕を傷つけるのは、やりすぎだと頼介を責める。余計なことをしたと察した頼介は、蝶子への恋心を胸の奥にしまう。岩崎はもう二度とバイオリンが弾けないかもしれない、そんな蝶子の心配をよそに、やがて岩崎が練習に復帰する。歌劇「椿姫」は無事、幕を開けた。

2025.5.23 NHKBS録画

peachredrum.hateblo.jp

脚本:金子成人

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黒柳朝チョッちゃんが行くわよ」より

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音楽:坂田晃一

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語り:西田敏行

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北山蝶子:古村比呂…字幕黄色

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岩崎要:世良公則

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彦坂頼介:杉本哲太

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田所邦子:宮崎萬純

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北山道郎:石田登星

木村益江:山下智子

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梅花亭夢助:金原亭小駒

彦坂安乃:近藤絵麻

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佐山いと:横田早苗

浜田千代:岩下雪

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原田:杉崎昭彦

鳳プロ

早川プロ

劇団ひまわり

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神谷容(いるる):役所広司

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野々村富子:佐藤オリエ

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野々村泰輔:前田吟

 

<チョッちゃんは頼介君が働く工場に来ています。頼介君が岩崎要に会い、殴ってしまったこと、そのために要が腕を痛めたらしいこと。それを知って、チョッちゃんは頼介君に会いに来たのです>

 

蝶子「仕事中、悪いね」

頼介「なんも」

蝶子「頼介君」

頼介「岩崎さんのことでだべ」

うなずく蝶子。

頼介「本人に聞いたんかい?」

蝶子「連平さんから」

 

手拭いで顔を拭く頼介だけど、顔も手拭いも服も真っ黒。

 

蝶子「頼介君の気持ちは、うれしいよ。つきまとわれて、私、いささか困り果ててもいたし、そういうふうに『つきまとうな』って言ってくれたことは、うれしい。けど…ケンカは、よくない。殴って、ケガさしたりは…」

頼介「いや、したっけ、あの人、約束しないんだわ。『つきまとわない』って言ってくれないんだわ。頼みに行ったのに返事してくれないんだわ」

蝶子「したけど…」

頼介「蝶ちゃん、あいつには困ってたんだべ? したから、困らないようにしてやろうとしたさ。俺は蝶ちゃんのためにならんやつは近づけたくないもね。蝶ちゃんのために俺は…」

蝶子「気持ちは、うれしいんだよ、頼介君。ホントに。したけど、ケンカは、よくない」

うなずく頼介。

蝶子「岩崎さん、腕、痛めたらしいのよ。頼介君、知ってる? あの人がバイオリンを弾く人だってこと」

うなずく頼介。

蝶子「バイオリニストにとって腕のケガ、指のケガは、よくないのよ。腕や指が思いどおりに動かないとバイオリニストは困るの。岩崎さん、もう2日も練習、休んでるの。私、心配なの。今度のケガが原因で、岩崎さん、このあと、バイオリン弾けなくなったら、どうしようって。私のせいでそんなことになったら…」

頼介「蝶ちゃんには関係ない。ケガさしたのは俺だ」

蝶子「したけど、私のためにでしょ? そしたら私にも責任ある」

頼介「じゃあ、どうしたらよかったんだよ」

 

蝶子「相手はバイオリンを弾く人だってことは考えてほしかった」

笑みがこぼれる頼介。「俺…余計なことしたみたいだな」

蝶子「なんも!」

頼介「したら…」

蝶子「わざわざごめんね」

頼介「なんも」寮?に戻っていった。

 

<チョッちゃんは何のためにここに来たのか、結局、自分自身でも分かっていませんでした>

 

練習場

蝶子が益江、千代、いとと話していると、要が入って来た。

 

原田「おい、どうしてたんだよ!」

要「ああ、ちょっとな」笑顔を見せ、立ち上がった蝶子と目が合う。

 

蝶子が頭を軽く下げると、要は左手をひらひら動かした。

 

<というようなことがありまして、歌劇「椿姫」の公演もついに始まりました>

歌劇「椿姫」: 乾杯の歌

歌劇「椿姫」: 乾杯の歌

  • モニカ・クラウゼ, Rannveig Braga, Ivica Neshybova, ヨルディ・ラミロ, ゲオルク・ティヒ, Peter Oswald, Pavol Maurery, Ladislav Neshyba, Jozef Spacek, Peter Subert, Symfonický orchestr Slovenského rozhlasu & アレクサンダー・ラハバリ
  • クラシック
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

椿姫東都歌劇團公演

 

ポスターは左右逆に書いてるけど、読みやすいように書きます。

 

 東都歌劇團公演             

六月二十六日カラ七月五日マデ

ヴェルディ作曲

LA TRAVIATA

椿姫

 出演者

藤森 義美

山田 茂子

三川 友子

内海 洋一

小林 榮

中央交響楽團

 指 揮

篠田 正男

 演 出

内田 敬三

  舞台装置

三田亮太郎

 

御観𭄏料

  五圓

  三圓

  一圓

 

 日比谷公會堂  

 

難しい字は御観劇料の”劇”の俗字ってやつかな。

 

公演終わり

道郎「遅いなあ、あいつ」

邦子「衣装とか着替えてるんじゃないの?」

神谷「あっ、来た、来た!」

拍手で迎える。

 

いつものピンクのワンピースに着替えた蝶子が階段を降りてきた。「ね、どうだった? どうだった?」

道郎「お前、どこにいたのか分かんなかったわ」

蝶子「主役でも何でもないんだから、しかたないわよ」

邦子「私、歌劇、初めてだけど楽しかった」

蝶子「うんうん、先生は?」

神谷「うん、北山君の歌声をじっくりと聴くことは、できんかったけど、こういう舞台に参加するようになったんだなと何つうか、つくづく年月を感じたわ」

蝶子「はい」

夢助「なるほど」

道郎「さあ、帰ろう帰ろう!」

蝶子「うん!」

夢助「お疲れさまでした」

蝶子「緊張したわ!」

 

野々村家

笑い声

泰輔「そりゃあ、よかった。でも、まあ、あれだよ。その他大勢だと言ったって初舞台は初舞台だよ」

富子「そう、おめでたいことなんだよ」

蝶子「ありがとう」

 

泰輔「だけどさ、ホントにチョッちゃんの姿、分かんなかったの?」

顔を見合わせる観劇組。

 

  富子 泰輔

蝶子     道郎

神谷     邦子

   夢助

 

こんな感じの並び。

 

蝶子「いいって、いいって、いいって!」

邦子「セリフでもしゃべったんなら分かったと思うんだけどね」

 

富子「夢ちゃん、あんた、おとなしいね」

夢助「エヘヘ、いや、どうも」

富子「何だい?」

夢助「いや、何と申しますか、見終わりましてね、チョッちゃんを楽屋の外で待っている時の心持ちといったら、なかなかオツなもんでしたねえ。あれは仕事を終わった女を待つヒモの心持ちのようで…」

一同、笑う。隣にいる元ヒモの神谷先生も笑ってるよ~。

 

富子「バカ、何、変なこと言ってんだい」

泰輔「だけどさ、オペラ見たの初めてなんだろ?」

夢助「いや、そりゃ大変なもんでしたよ。歌もありの芝居もありの」

道郎「寝てたくせに」

邦子「寝てた?」

夢助「いえ…」頭ポリポリ。

富子「しょうがないねえ」

泰輔と富子が笑う。

夢助「何せ初物でしょ? めんくらっているうちにね、ス~ッと睡魔に襲われて」

富子「いいよ、言い訳は」

泰輔「まあまあ、先生、お酒」

神谷「どうも」

 

泰輔「チョッちゃんは、ついに初舞台。邦子ちゃんは既にマネキンとして世に出てる。それに引き比べてさ、我々、男どもは何ということもない。道郎君は小説、なかなか完成していないし、夢助君は二ツ目で苦労しとるし、神谷先生は…」

蝶子「先生は作品が雑誌に載った」

神谷「いや~後が続かなくて」

泰輔「だから、我々、あれだよ、飛躍しないと、飛躍ね!」

道郎「僕は、やりますよ! この夏は大作を書きます。書き上げたら、秋の小説コンクールに応募するつもりです」

泰輔「その意気だ! ハハハ」

首を傾げながら、じとっと道郎を見ている蝶子。

 

戸が開いた。

富子「誰?」

安乃「安乃です」

富子「あ、お上がり!」

夢助「じゃ、あっしが、ちょっと抜けますんで」

泰輔「いい、いい、夢ちゃん」

夢助「飛躍ですよ、飛躍。あっしには稽古ってもんがありまして」

富子「しっかりおやり!」

夢助「へい!」

神谷「行ってらっしゃい!」

 

夢助が2階へ行き、安乃が入って来た。

富子「どした? お座り」

安乃「兄ちゃん、いなくなってるんです」

蝶子「頼介君が? どういうこと?」

泰輔「いなくなったって…」

富子「工場には?」

神谷「まあまあ、そう一時(いちどき)に聞いても…」

泰輔「まあまあ、そらそうだ」

 

蝶子「安乃ちゃん、工場に行ったの?」

安乃「兄ちゃん、辞めさせられたっていうんです」

蝶子「どうして?」

安乃「工場で一緒に働いている、ほかの工員さんともめて、その上、偉い人にも反抗したっていうんです。したから、辞めさしたって」

道郎「不況だからな。これ幸いとクビにしたんだ」

 

蝶子「辞めさせられたのは、いつ?」

安乃「もう5日になるって」

泰輔「5日!」

富子「どういうことだい?」

安乃「私…兄ちゃんが人ともめたっていうことが信じられないんです」

うなずく富子と泰輔。

安乃「少々のことなら、いつも我慢する人なのに」

道郎「そうだよね。我慢つうか辛抱することにかけちゃ頼介君の右に出る者は、いないからね」

富子「何かあったんじゃないのか…」泰輔の顔を見る。

泰輔は、せきばらいして止めた。

 

安乃「工場の人に聞いたら、もめる3~4日前、女の人が兄ちゃん訪ねてきたって…」

泰輔「そんな人、いたのか?」

蝶子「あ! それ、私よ」

泰輔「ん?」

蝶子「訪ねていったのは、私。ほら、あのころ、頼介君、岩崎さんにケガさしたことあったよね?」

 

道郎「ホント?」

泰輔「大したケガじゃないんだけどね」

富子「岩崎要がよくないの」

道郎「よくないって?」

富子「だから、チョッちゃんのこと、何だかんだつきまとってたんだよ」

神谷「好かれてたってこと?」

蝶子「そういう、あれじゃ…」

邦子「でも、あれは、ただごとじゃないわよ」

富子「そう、このうちに来て、チョッちゃんの帰り、待ってたり。それで、随分、迷惑したんだよね。それを頼介君が見るに見かねて、それで岩崎要にクギさしに行って、まあ、ケガまでさせちまったけど」

 

安乃「兄ちゃんに会ったのはチョッちゃんねえちゃんが最後だね?」

うなずく蝶子。

邦子「どんな話、したの?」

蝶子「うん…いや、私のことを思って、岩崎さんに、そういうふうに言いに行ってくれたことは、うれしいって…けど、うれしいけど、だけど、私としては岩崎さんが腕を痛めたっていうこともあって、頼介君にバイオリニストにとって腕のケガがどれだけ大敵かを話したのさ。岩崎さんはバイオリニストとしては、すごい人なので、そういう人が万一、バイオリン弾けなくなったら、どうしようっていう心配もあったし…」

 

道郎「頼介君を叱ったのか?」

蝶子「叱りは、しない」

邦子「だけど、頼介君は、そう受けとったかもしれない。自分はチョッちゃんのためにやったのに、チョッちゃんはケガをした人間の肩を持ったかって」

蝶子「私、なんも肩なんか持ってないよ」

邦子「チョッちゃんにそのつもりはなくても、人によっては、そう受けとることもあるのよ」

 

蝶子「そしたら、私が悪いの?」

泰輔「いや、誰もそんなふうにはさ」

蝶子「頼介君の失踪は私のせい!?」

富子「岩崎要だよ! 岩崎要が全て悪いんだよ!」

蝶子は立ち上がり、2階へ。

富子「チョッちゃん!」

泰輔「おい!」

道郎「いいよ、叔母さん」

 

ん~、蝶子が悪いかぁ!?

 

泰輔「先生…こういう時は、どういうふうにしたらいいもんなんでしょうかね?」

神谷「ええ…頼介君の行為も北山君の行為も悪意でないだけに何ともですね」

泰輔「なるほどなあ」

 

柱時計の時報が鳴る。

 

安乃「兄ちゃん、どこに行ったんだべ?」

道郎「頼介君は純粋すぎるんだ。かたくなすぎるんだ。だから、自分を追い込むはめになるんだ」

泰輔「うん。もう少し、いい加減だと楽なんだけどね。遊びがねえんだよな」

 

安乃「あ、じゃあ、もう私、帰ります」

富子「泊まっておいきよ」

安乃「でも、もしかしたら根岸に現れるかもしれんし…」

富子「けど、夜道を1人じゃ」

道郎「じゃ、僕が…」

神谷「道郎さん、急ぎの仕事があるって言ったっしょ?」

道郎「でも…」

神谷「今日も明日も暇な私が送ります」

安乃「いいえ、そんな…」

神谷「気にすんでない」

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運命の出会い…神谷にその気がなくても、安乃が邦子化したりして!?

 

道郎「じゃ、神谷さん、今日は市ヶ谷に帰らないで、僕のとこへ泊まってってください」

神谷「はい!」

 

泰輔「しかし、邦子ちゃん1人になっちゃうな」

邦子「あ、私、チョッちゃんと少し話したいし」

富子「邦子ちゃん、泊まってけばいい」

 

神谷「したら、安乃ちゃん、行くかい?」

うなずく安乃。

泰輔「じゃ、そこまで送ろう」

 

蝶子の部屋

窓を開けて窓際に座る蝶子。

 

⚟邦子「チョッちゃん、いい? 入るわよ」

 

窓の外を見たまま返事をしない蝶子だったが、邦子はそのまま部屋に入って来た。「怒った? だけど、私は間違ったことは言ってないつもりだよ。チョッちゃんは高女の時と変わらない。いつだったか、私、チョッちゃんに『頼介君は、チョッちゃんのこと好きなんじゃないか?』って聞いたことあったよね」

うなずく蝶子。

邦子「あん時、チョッちゃん笑ったんだよ。頼介君とは幼なじみだから、よ~く分かってるとか何とか。『頼介君は、ああいう人なの』なんて昔から男心に疎いのよ。岩崎要に『近づくな』って言いに行ったのも、チョッちゃんのためだけでなく、自分のためにそうしたのよ。そんな頼介君の心情を気付いてなかったっていうのは、一種の罪よ」

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しかし、邦子も級友たちに「許婚」だと言ったりしたよな!?

 

蝶子「気付いてないことはないのよ」窓際から邦子に向き合うように座り直す。「東京に出発する直前、何となく『ああ、そうかな』って気付いたことは気付いてた」

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邦子「そう。だったら、頼介君に会いに行って、どういう言い方したかどうか知らないけど傷つけないように注意すべきだったのよ」

 

再び、邦子に背を向けるように窓の外を見る蝶子。「邦ちゃん…難しいもんだねえ」

邦子「済んだことは、しかたがない。元気出しなさい!」

振り向いてうなずく蝶子。

 

<「男と女のことは本当に難しいな」と、チョッちゃんはつくづく感じていました>(つづく)

 

蝶子だって、酷い言い方したわけじゃないと思うけどなあ…ホント、難しいね。