NHK 1987年6月3日(水)
あらすじ
コーラスガールとしてプロのオーケストラの練習に参加するようになった蝶子(古村比呂)。そこにあのバイオリニスト・岩崎要(世良公則)がいた。練習が終わるたびに、岩崎はコーラスガールたちを誘って銀座へと繰り出す。だが、なんど誘われても蝶子はひとり断って帰宅する。ある雨の日、蝶子の傘の下に岩崎が飛び込んでくる。濡らすまいと傘を掲げる蝶子に、岩崎はこれから一緒に銀ブラしようと誘うのだが…
2025.5.21 NHKBS録画
脚本:金子成人
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音楽:坂田晃一
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語り:西田敏行
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北山蝶子:古村比呂…字幕黄色
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岩崎要:世良公則
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彦坂頼介:杉本哲太
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北山道郎:石田登星
木村益江:山下智子
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佐山いと:横田早苗
浜田千代:岩下雪
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原田:杉崎昭彦
岩下信子:灘陽子
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楽団員:山中一徳
木下春美:森田典子
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男:船戸健行
指揮者:有福正志
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合唱団:二期会
オーケストラ:慶応ワグネル
ソサィエティー
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女:外薗真由美
沢井美穂
劇団いろは
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野々村富子:佐藤オリエ
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野々村泰輔:前田吟
野々村家の前の路地を蝶子と頼介が歩いてくると、道郎が向かいの生花教室を覗いていた。
蝶子「どしたの?」
頼介「ただいま」
道郎「やあ、お帰り」
蝶子「待ってるんかい?」
道郎「何を?」
蝶子「とぼけるんかい?」
ドアベルが鳴り、「どうもありがとうございました」と女性たちが出てくる。立ち去ろうとした道郎の腕を引っ張る蝶子。「兄ちゃん!」
道郎「いいよ!」蝶子の腕を振り払って背を向ける。
最後に出てきた女性に会釈する蝶子に会釈し返す信子。ホント、美人さん。”のぶこ”ってドラマにおける美人ネームなのかもしれない。あと”としこ”。
野々村家
蝶子「叔母さん。おせんべい」
富子「ああ、ありがとう」
蝶子「おいしそうだったから。ここ、置いとくね」
富子「それで? 道郎さん、どうしたのさ?」
蝶子「声もかけられない。アハハハハハハ」
道郎「変な笑い声、出すな!」
富子「思い焦がれて何年たつんだよ。歯がゆいったらありゃしないよ、全く」
茶の間で頼介と囲碁をする道郎。いや、2人でやるのは五目並べなんだっけ!?
蝶子「ね、兄ちゃん。私、今、フッと思ったんだけど、あの女の人も兄ちゃんを意識してるわ」
道郎「どうして分かる?」
蝶子「私にニコッて笑ったもん」
道郎「何でお前に笑うんだ?」
蝶子「妹だからでない?」
道郎「あ、なるほどね」ニヤッ「俺?」
頼介「そうです」
蝶子「とにかく声かけたらいいのよ」
道郎「けど、いつも大勢で帰るんだよな。1人の時がないんだ」
蝶子「時を選んでたら、どうにもならないんでないの? 先へは進まないんでないの?」
富子「好きなら好き。はっきり相手に言わなきゃ」
道郎「分かってるよ~」
富子「分かってたら早くしないと、あの子、嫁に行っちまうね」
蝶子「そうそう! そうなって初めて、あの時、思い切って打ち明けてればよかったって後悔するのよ」
道郎「そうだなあ」
富子「ねえねえねえ、向かいの吉野さんに話して、私が仲、取り持とうか?」
道郎「ホントですか!?」
蝶子「ダメ、ダメ、そんなんは!」
富子「どうして?」
蝶子「直接、声もかけられんで、男のくせにだらしないと思われてもいいの?」
道郎「ああ…」
富子「とっくの昔にだらしないけどね」←( ´艸`)
道郎「やっぱり、女は、そういうこと気にしたりするわけか?」
蝶子「しない人もいると思うけど、私は気にする」
蝶子を見る頼介。
泰輔「ただいま!」
蝶子「お帰り!」
頼介「お帰りなさい」
泰輔「おう、いらっしゃい」
富子「あ、早かったね」
泰輔「ああ」
富子「水でも浴びるかい?」
泰輔「いやいやいや、浴衣だ、浴衣」
蝶子「あ、そうだ。ねえ、叔父さん、叔母さん、今日、銀座のいつものカフェで岩崎要さんに、ばったり会ったのよ。ね、頼介君」
頼介「うん」
泰輔「ああ、あの、バイオリンの方の?」
蝶子「そう!」
泰輔「そういえば1年以上も顔、見てねえな」画面外で着替え中。
富子「私は、あの人、あんまりね…」
頼介「好きじゃないですか?」
富子「ていうか、あのころ、女のことでもめてて、このうちに逃げてきたりしててさ」
浴衣に着替えて茶の間に戻って来た泰輔。「う~ん、そういうこともあったな」
富子「女の男なんていうのが押しかけてきたりしててね。まあ、いろいろあったのよ」
頼介「へえ~」
蝶子「今日も女の人、3人連れてた」
泰輔「へえ、そりゃ、豪気だなあ」
富子「やだね。まだ、懲りないのかねえ」
道郎「俺は…あの男、いささか買ってるんだ」
泰輔「へえ」
頼介が強く碁石を打つ。
道郎「音楽家としての姿勢がいい。女の問題で、この家にいた時もきちんと練習してたっていうし、押しかけてきた男に殴られたあとは腕に支障がないかどうか試し弾きしたっていう。いいよなあ!」
蝶子「う~ん」
道郎と要って会ったことあったっけ? でも、連平から話聞いたとか?
頼介「道郎さんです。けど、妙になれなれしいとこありますよね」
富子「そう、ずうずうしいの」
頼介「はい」
富子「人を見下すようなとこ、あって」
道郎「ああ、あれは一種のてれ隠しみたいなもんですよ」
富子「肩持つの?」
道郎「持つとか持たんの問題でなくて」
蝶子「兄ちゃん、女の人にモテないけど、あの人はモテる人よ」
道郎「だから、何だ!」
頼介が碁石を打つ。「四三(しさん)です」
泰輔「なるほど、四三だ、ハハハハ」
すっかり暗くなり、玄関を出た道郎と頼介。道郎はいつも下駄。
蝶子「おやすみ。気ぃ付けて」
泰輔「はあ~。一雨欲しいなあ」
富子「ねえ」
泰輔「ああ?」
富子「頼介君さ、チョッちゃんのこと好いてるんじゃないのかね?」
泰輔「お前もそう思うか?」
富子「あんたも?」
泰輔「ああ」
富子「やっぱりね」
泰輔「で、どうなってんだい?」
富子「どうって?」
泰輔「チョッちゃん、頼介君のこと、どう思ってんだ?」
富子「幼なじみの域、出てないんじゃないのかねえ」
泰輔「うん…」
それにしても、前田吟さん、この間まで見ていた「赤い激流」って確か、1977年…
「チョッちゃん」の10年前だってのに見た目が全然変わらなくないか!? 10年前に大学生の息子のいるお父さん役だったし。
蝶子は自室で歌の練習。
歌いながら、あくびが出てしまう。
♬~(オーケストラと合唱)
指揮者が演奏を止め、コーラスガールたちの方を向く。「昨日、注意したところ、また元に戻りましたねえ。一度、注意されたことは、きちんとやっていただかないと。ね!」
一同「はい」
この指揮者の人が有福正志さんなんだよねえ? この前の合同練習の時も出てたし、セリフもあったのに、クレジットされてなかったな。
要が立ち上がる。「君! さっきちゃんと声を出してなかったね。口をパクパクやっていただけだ。分からないとでも思ってたか?」
男「すいません」
要が弓で次々指す。「それから君! 君と、それから君だ! 声がちゃんと出ていない! 音程がどうのこうのいうんじゃないんだ。ちゃんと出してほしい。学校の父兄に見せるんだったら、そりゃ遊んでもいいだろう。でもね、俺たちは、お客さんから、ちゃんと金を取って見せてるわけだ。生活がかかってるわけだ。いいオペラにしたいわけだ。学生気分でチャラチャラやられては困る」
<チョッちゃんは内心、いささか反省しておりました>
練習を終えた楽団員たち。
益江「別にもうわざわざ謝ることないんじゃない?」
蝶子「そう思う」
千代「けど」弓で指されたうちの一人。
いと「来た!」
原田「先、食事でいいな?」
要「ああ、いいよ」
千代「あの…先ほどは申し訳ありませんでした。今後ちゃんとやります」
要「そうか。よし、分かった。これからみんなで銀座行こうか?」
千代「はい」
要「君たちもどうだ?」
いと・益江「はい!」
蝶子「私は…」
要「どうして?」
益江「チョッちゃん」
蝶子「私は…さよなら!」走り去っていく。
雨の日
<練習は時として、終わるのが夜になることもありました>
傘をさして、練習場から出た蝶子。
要「北山君!」蝶子の傘に入って来た。「あ、悪いね」
蝶子「なんも…」最初、ちょっと避けるのが面白い。
要「銀座、行かないか?」
蝶子「え?」
要「夜の雨に煙る銀座だ」
蝶子「何しに?」
要「銀ブラ。柳がきれいだぞ」
蝶子「あの…」
要「ん?」
周りの目を気にする蝶子。「どうして私と?」
要「どうしてって…君は変だよ」
蝶子「は?」
要「人に誘われて『どうして』なんて普通、聞くか」
首をかしげる蝶子。
要「あのね…君と俺とは今回が初対面というわけじゃないよね?」
うなずく蝶子。
要「2年くらい前に千駄木の家で何度か会ってる。ん?」
うなずく蝶子。
要「とすれば、少しは気安く思うわけだよ。俺としては」
蝶子「ああ」
要「どうする? 銀座」
蝶子「行きません」
要「君ね…君はその、俺のこと嫌ってるのか?」
蝶子「嫌うなんて…」
要「君はいつも俺を避けるじゃないか。この前、誘った時も君一人、帰ったじゃないか。今までにそういうこと何度もあったじゃないか」
蝶子「気にしてたんですか?」
要「気になるよ」
蝶子「どうしてだろ…」
要「ほかの連中は気安く応じるのに『どうして君は』と思うだろ。『なぜなんだろう』と思う。なぜなの?」
蝶子「分かりません」
要「分かりませんじゃ困るの」
蝶子「困られたって困ります!」
要「とにかくあれだ。駅の方に向かおう。な!」歩き出し、蝶子も後ろからついてくる。「じゃあね、まっすぐ帰るの?」
蝶子「はい」
要「送ろうか?」
蝶子「いいです」
要「円タクで送ろうか?」
蝶子が立ち止まる。
要「え?」
蝶子「タクシーですか?」目がキラキラ。
要「うん。野々村さんにも会いたいしね」
蝶子「じゃ、やっぱりタクシーじゃないと」
<そのチョッちゃんの論理は私にも分かりません>
蝶子「私がタクシー、手、挙げて止めていいでしょうか?」
要「うん、いいよ」
蝶子「運転手さんの横に座ってもいいでしょうか?」
要「ウフフ、いいよ」
蝶子「はい!」傘を大きく下げてしまう。
要がせきばらい。
蝶子「あ、すみません」
要「僕が持とう」
蝶子「はい」
要「どうぞ」
蝶子「こっち」今度は要がついていく。
野々村家
泰輔と向き合って正座している要が髪や服を拭いている。「この前、久々に会った時に最初、彼女だと気が付かなかったんですよ」
泰輔「へえ」
富子「お茶どうぞ」
要「あ、すいません。いや、見違えました」
泰輔「なるほど」
要「はい」麦湯を飲む。「初めて会った頃は確かまだ着物、着てました」
泰輔「そうそう」
富子「髪も違ってましたかねえ」
要「ええ、何だか子供子供してましたし」
泰輔・富子「ええ」
要「それが今、ああですからね。いや、なかなか女らしくなりましたよね」
泰輔「そうなんですよ」
要「はい」
富子「手拭い頂きましょうか?」
要「ああ、すいません。どうも」
蝶子が着替えて茶の間に入って来た。
泰輔「おう、チョッちゃん、要さんがね『チョッちゃん女らしくなったんで見違えた』ってさ」
要「ホントに」
蝶子「へえ」照れてる?「何ですか?」
要「ああ、いや…」
蝶子「あ、台所の片づけは?」
富子「あ、済ました」
蝶子「そう」
泰輔「あ、ところで要さん」
要「はい」
泰輔「チョッちゃんの歌の方はどんな具合なんでしょうかね?」
要「あのころに比べれば随分とうまくなりましたよ」
蝶子「はい! ウフフ」
要「ま、格別、うまいというわけじゃありませんがね、聴くに耐えないっていうこともないです」
富子「え? 大してうまくないってこと?」
要「いや、そういう、あれじゃなくて」
泰輔「いや、要さんはさ、うまいというわけではないということをさ…」
要「格別」
泰輔「ああ、格別、うまいというわけではないということをさ」
要「うまくないということでは決してなくて」
富子「大してうまくないと、そういうことでしょう?」
要「いや、参ったな…」
下を向いてしまった蝶子。
要「あ、どうしたの? それ」
蝶子「え?」
要「さっきから気になってたんだけども、君の服」
蝶子「変ですか?」
要「いや、何だか楽しそうな服だなと思って」
泰輔「チョッちゃんのお手製だもんね」
蝶子「うん」
要「へえ」
泰輔「洋服は、ほとんどチョッちゃん作るもんな」
要「君、作るの? こういうの…ほう」
半袖のパフスリーブのブラウスにリボンをつけている。
襟はレースだけど。蝶子はモジモジ。
富子「雨、上がったみたいだねえ」
泰輔「ん? ああ」
要「じゃ、僕は、そろそろ…」
富子「あ、いえ、何もそういう、別にあれじゃなくて…」
要「いえ、失礼します」
泰輔「ああ、そうですか」
玄関
要「どうも、今日は突然お邪魔しまして」
泰輔「いえいえ、またいつでも」
要「はい」
蝶子「円タク、ありがとうございました」
要「じゃ、また練習で。では」
泰輔「チョッちゃん。チョッちゃんはさ、要さんのこと、あんまり快くは思ってないの?」
蝶子「う~ん、何て言うか…」
富子「そりゃそうだよ。女にだらしない男だってことは、よ~く分かってんだし」
うなずく蝶子。
富子「ま、近づかない方が無難だね」
蝶子「そう思う」
泰輔「なるほどねえ」
練習場
「こんにちは!」と声をかけながら歩く蝶子。
益江・いと・千代「チョッちゃん!」
蝶子「どうしたの?」
いと「噂!」
益江「チョッちゃんと岩崎要、噂になってんじゃない!」
千代「雨の日、相合い傘で帰ったんだって?」
うなずく蝶子。
益江「だからよ!」
蝶子「え~っ!?」
春美「北山さ~ん! 北山さん、ちょっと」
う~ん、みんなボブヘア。見分けが…
春美「岩崎さんには近づかないでくださいね」
蝶子「近づくつもりは、ありません」
春美「お願いよ」
蝶子「どういうことよ」ムッとした表情。(つづく)
要さんは将来の旦那さんであるし、「女っぽくなった」は誉め言葉なんだけど、今の時代、そういう褒め方ってアウトだろうな…ていうか、「どうぶつの森」のなかでカッペイが言うのすら「キモッ」って思ってしまうから、私が嫌いなんだな。
ん? ちょっと棒読み気味(失礼)な木下春美役の森田典子さんは青田典子さんの旧芸名らしい!? 昨日はどの人か見分けもついてなかったし、調べると青田典子さんの画像が出てくるのも似た名前だから出てくるくらいしか思ってなかった。


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