徒然好きなもの

ドラマの感想など

【ネタバレ】悪い奴ほどよく眠る

1960年 日本

 

あらすじ

巨匠・黒澤明監督、三船敏郎主演。汚職を題材にした社会派サスペンスの傑作。土地開発公団の副総裁・岩淵の娘・佳子と秘書の西幸一との盛大な結婚式が始まる。公団と建設会社との汚職をめぐって新聞記者たちも式場に集まる中、司会を務めていた公団の課長補佐・和田が警察に連行される。尋問に黙秘し、釈放された和田は自殺しようとするが、ある男に阻止される。その男は父の復しゅうに燃え、巨悪の汚職を暴こうとしていた…。

2025.3.24 NHKBS録画

 

昭和三十五年度

芸術祭参加作品

 

      東宝株式会社

黒沢プロダクション

            作品

 

製作:田中友幸

           黒澤明

*

脚本:小國英雄

   久板榮二郎

   黒澤明

   菊島隆三

   橋本忍

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音樂:佐藤勝

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西幸一:三船敏郎…字幕黄色

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岩淵(日本未利用土地開発公団副総裁):森雅之

岩淵佳子:香川京子…字幕水色

岩淵辰夫:三橋達也…字幕緑

*

守山(公団管理部長):志村喬

白井(公団契約課長):西村晃

板倉 : 加藤武

和田(公団契約課課長補佐):藤原釜足

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野中(検事):笠智衆

岡倉(検事):宮口精二

新聞記者:三井弘次

有村(公団総裁):三津田健

大竜建設顧問弁護士:中村伸郎

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刑事:藤田進

堀内(地検検事):南原宏治

三浦(大竜建設経理担当重役):清水元

新聞記者:田島義文

波多野(大竜建設社長):松本染升

事務官:土屋嘉男

金子:山茶花究

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和田の妻:菅井きん

古谷の妻:賀原夏子

守山の妻:田代信子

有村の妻:一の宮あつ子

和田の娘:樋口年子

新聞記者:近藤準

挙式接待係:佐田豊

タクシー運転手:沢村いき雄

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新聞記者:横森久

殺し屋:田中邦衛

検事:櫻井巨郎

公団管理部:清水良二

建設会社員:生方壮児

      土屋詩朗

岩淵家女中:小澤経子

貸金庫受付:上野明美

岩淵家女中:峯丘ひろみ

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 監督:黒澤明

 

西家

岩渕家 御結婚式場→

 

西

岩渕 御両家結婚披露宴御席←

 

結婚式場にマスコミが大挙訪れ、大竜建設の社長と専務が来てないかと問う。そのうち、式を終えた新郎新婦が廊下をゆっくり歩く。新婦はなぜか左足だけが厚底のぞうりを履いていて、途中、よろけて倒れ込んだ。マスコミもざわざわ。

 

結婚式を追えて、披露宴の会場に移ったのね。

 

刑事も来たので、マスコミが次に引っ張られるのは大竜建設の社長か専務かと騒ぎ立てる。披露宴の司会をするはずの日本未利用土地開発公団の契約課の課長補佐・和田が披露宴前に捕まり、契約課の課長・白井が急きょ司会をすることになった。

 

新郎の西幸一は日本未利用土地開発公団の岩淵副総裁の秘書で、新婦の佳子は岩淵副総裁の娘。西は元々、副総裁の息子・辰夫の友達。披露宴会場に入ったマスコミは、どうせ娘は出世の踏み台だと西を批判する。

 

5年前、庁舎新築に絡まる不正事件があり、古谷課長補佐が7階から飛び降り自殺して、うやむやになった。あの時の局長が岩淵、部長が守山、課長が白井。汚職クリーンアップトリオがそっくりそのまま公団に横滑りした。

 

守山は西の親代わりとして出席しているから乾杯の音頭は別の方に…と遠慮するが、形式ばらなくてもいいだろうとヤジが入り、乾杯の音頭を取った。志村喬さん、この作品では黒髪だな。西村晃さんも若い。

 

大竜建設の波多野社長が祝辞。公団の方々とは個人的な付き合いはございませんと言い訳のようなお祝いの言葉。

 

西の親友であり、佳子の兄でもある辰夫が祝辞。体の不自由な娘との結婚は立身出世の足がかりにしているという噂もあるが、そんなヤツでは絶対ないと力説する。足が不自由なのかな?

 

新庁舎型のウェディングケーキの7階にはバラの花がさしてある。ええ~!? 気まずい雰囲気が漂う会場。守山も白井もワナワナしている。マスコミは会場に入ってるわけじゃなくて、会場の扉が開け放たれていて、ロビーで見てる。

 

大竜建設が手入れされたと新聞記事が出た。よく宴会していたという「初舟」の女将も警察に呼ばれた。

 

和田は20日間、黙秘を続けていて、岡倉検事に責められている。岡倉がタバコを勧めても受け取らない。「初舟」から昭和ハイヤーの乗車伝票を次々読み上げる。雑司が谷、上町二丁目、西荻窪四丁目、渋谷・松濤…それぞれ和田、白井、守山、岩淵の自宅がある場所で請求先は大竜建設になっている。

 

野中検事のもとに差し出し人のない密告手紙が届いた。「初舟」の配車伝票を調べろ。

 

しかし、岡倉検事が和田に話をさせることが出来ず、このまま釈放とすることにした。笠智衆さんがこんなにテキパキしゃべる役を初めて見たかも!

 

大竜建設経理担当の三浦が背任で逮捕されることになった。会社の顧問弁護士からこういうことになったら伝えてくれという社長からの伝言を伝えた。「あくまであなたを信頼しているからよろしく」。その言葉を聞いた三浦は道路に飛び出し、トラックに轢かれて亡くなった。

 

日本未利用土地開発公団

第三次開発予定地

 

何もない山をスーツ姿のまま登っていく和田。頂上まで来て恐ろしくなるが、目の前に立ちふさがる男にビンタされた。今すぐ!と死のうとした和田を止めたのは西だった。しかし、和田はそのまま山から飛び降りてしまった。映画が始まって30分過ぎてからようやく主人公のセリフがあった。

 

日本未利用土地開発公団副総裁・岩淵の会見。マスコミは、なんであんなに偉そう?

 

和田は西の知り合いらしい板倉という男にかくまわれていた。加藤武さん! 

peachredrum.hateblo.jp

「日本のいちばん長い日」キャストが多いね。

 

和田は、なぜ西が自身を助けたのか疑問に思う。和田の盛大な葬式が行われていた。西と和田は車の中から見ていた。西は「バア・ノアル」へ行き、守山と白井の会話をカセットテープに録音していた。守山と白井が葬式に参列している頃、西は録音したテープを聴かせた。和田が死ぬことに平然と会話していて、こんな夜は若い女を抱くに限ると笑っている守山。西は和田に復讐しようと持ちかけた。

 

佳子のもとを辰夫が訪れた。かわいがってもらっているか?と妹の心配をする。

 

白井は社用車から降りてタクシーに乗って移動。

 

三井倉庫ランクルームへ。白井は預けていたトランクの中の背広から封筒を取り出し、大金庫へ。貸金庫の中は新庁舎の絵葉書だけが入っていた。中には500万の現金が入っているはずだったで、岩淵、守山に相談。トランクルームには印鑑と鍵を預けてたのね。これを知ってるのは白井と和田だけ。

 

秘書室に白井がカバンを取りに来た。西は急いで現金をカバンにしまう。白井はカバンの中身を見て、焦る。守山も秘書室に入ってきて、かばんを見せろと迫ると、カバンから現金が出てきた。知らないと言う白井だったが、守山が秘書室から連れ出した。

 

ボ~ッとタクシーに乗っていた白井が上町二丁目で降りてフラフラ歩いていると、目の前に和田が立っていたのを見て悲鳴を上げて、守山の家まで走った。しかし、当然信じてもらえず、歩き出すと、再び和田が目の前に現れた。西が運転して、白井の前を歩かせていた。白井が苦しんでいるのが楽しくないんですか?と口笛を吹く西。

 

西が家に帰ると、岩淵と白井が向き合っていた。西は岩淵家にいるのか。辰夫は新婚なのに別の部屋に寝ている西を責めた。親父の秘書なら危ない橋を渡ることもあるだろう、しかし、自分の身を削るのはやめてくれと頼んだ。幼い頃、佳子を自転車に乗せていて、ケガさせたのは辰夫。

 

立ち聞きしていた佳子はお盆を落としてしまい、西たちに気付かれたが、辰夫より早く気付いた西が佳子をお姫様抱っこした。距離の近い佳子はキス待ちをするが、西は「おやすみ」と布団まで運んだ。すすり泣く佳子。

 

守山のもとに和田の妻子が訪ねた。白井が和田が生きていると話に行ったせいだった。和田の妻は菅井きんさん! 守山は和田が生きていることはないだろうと話し、妻子は泣き崩れた。白井は出社しているものの席でボーっとしている。

 

大竜建設の波多野たちのもとへも白井が行っていて、仲間割れは困ると岩淵や守山が責められていた。

 

岩淵は白井を何とかしなさいと守山に命じた。

 

岩淵家のガーデンパーティー

へ~、岩淵は前掛けをあてて釜で何か焼いてる。アルミホイルに包んだリンゴかジャガイモ?を佳子に食べさせた。意外とマイホームパパ!?

 

守山からの電話に西が出た。辰夫は西の勤務評定を聞く。岩淵は心を開かないと答えた。辰夫は政界進出などせず、隠居したらどうかと勧めた。

 

西から岩淵に電話を代わり、守山と話をすると、岩淵は激高し、タクシーで守山と白井のいる料亭に向かった。白井は、あのときと一緒だと部屋の隅にいて、古谷みたいに窓から飛び降りたりするもんか、何もかもぶちまけてやると岩淵、守山に言う。

 

岩淵は守山に白井の自宅の略図を書いてくれと頼み、2時間半あれば手配できるだろうと何か考えがある様子。

 

白井がタクシーで自宅前に降ろされた。再び目の前に現れた人影に和田かと恐れるが、白井の前に現れたのは拳銃を持った田中邦衛さんだった!? ボーっと塀にもたれかかった白井を車に乗せた西。後部座席には和田がいた。

 

西は新庁舎に白井を連れて行き、殺し屋の一発で殺されるより、苦しんで死んでもらうと言い、俺は古谷の息子だと告白した。西幸一と戸籍を交換した私生児。古谷の亡くなった現場写真を持っていて、白井に見せた。

 

ウェディングケーキを仕組んだのも西。和田にも責められ、許してくれと身を縮こまら得る白井。西は窓を開け、白井を突き落とそうとしたが、いったん、部屋に戻し、劇薬の酒を飲むか、どちらか選べと迫る。和田は許してやってくれと頼むが、西は無理やり酒を飲ませた。白井は倒れたが、ただのウイスキーだと言って、西も自ら飲んだ。

 

翌朝、白井のニュースは新聞に出ていなかった。役所と公団はグルだと気付く西。白井は岩淵に命じられた西が精神病院へ連れて行った。

 

岩淵と守山の話し合い。守山は古谷の身内の仕業ではないかと気付く。

 

板倉と和田の前で、西は、やっぱり白井を突き落とせばよかった、それなら嫌でも新聞に載ったのに、復讐心が足りないと後悔する。西は佳子を好きになってしまっていた。新婚の夜、震えて待っていた佳子を見て、気持ちが変わった。いけないと思ったら、出直せばいいと言う板倉。

 

守山、岩淵を吹き飛ばすダイナマイトになると言う西。

 

古谷の妻を訪ねた守山。妻は賀原夏子さん。

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「國語元年」のたねさんは声がガラガラだったな~。

 

古谷の妻は、古谷にはよそに生ませた子供がいると話した。母親はもう亡くなっていて、男の子が1人いる。守山にその男の子を探してほしいと頼んだ。名前は板倉。板倉!? 戸籍を交換したという…?

 

古谷の葬式の写真を見せた妻。少し離れた場所にいる男が古谷の息子ではないか。守山は写真を見てびっくり。電柱の陰に隠れていたのは西だった。

 

岩淵家

辰夫は西に危ない仕事をやらせるのはやめてほしいと父に頼んだ。岩淵は遅くまで仕事をさせていないため、疑問に思う。守山が訪ねてきたので、辰夫は自室へ。しかし、守山が部屋に入ると、外から様子をうかがい、辰夫も西が古谷の息子であることを知ってしまった。

 

今夜が新婚のやり直しと花束を買って帰った西。辰夫に「板倉」と呼びかけられて思わず振り返ってしまった。妹を復讐の道具にされたと猟銃を突きつけたが、西は逃げた。

 

岩淵は波多野、金子と会っていた。まぬけな縁組みをしたと責められた。西から電話で守山は預かる、和田は生きていると知らされた。

 

廃墟に潜む西、板倉、守山、和田。西はマスコミに告白して自首するという。守山を廃墟に閉じ込め、外に出た西たち。まだ戦後の焼け野原が残ってるのか。15年前、西と板倉が高等学校の勤労動員で絨毯爆撃を受けた場所。板倉は家族を室蘭の艦砲射撃で亡くし、西は私生児。和田は佳子に西の本当の気持ちが分かってもらえたら…と思う。

 

丸2日、何も食べさせてもらっていない守山にハムエッグをやるから大竜建設から受け取ったリベート代1500万をよこせという西。結局、空腹に耐えられず隠し場所を明かした。ヒイラギの木の下。通帳十数冊のありかを言えと再び閉じ込めた。和田は守山の気持ちを代弁し、自身も妻子に会いたい、西にも佳子の話を持ちだす。

 

和田が逃げ出したと思ったら、佳子を連れてきた! 電話で外へ呼び出して流しのタクシーに乗せてきたという。

 

守山は扉を叩き、和田を白井の後釜にすると呼びかけたが、和田は大きな石を叩きつけて反抗した。

 

佳子は西の気持ちを知って、幸せすぎますと喜んだが、お父さんはそんなに悪い人なの?と問い詰めた。私にとっては、とってもいいお父さんなのにと泣く。キスで黙らせる西。キャー。西が岩淵を憎むのは当然だが、私は父を憎めない、どうしたらいいの?と聞く佳子。

 

西は父の話を始めた。古谷は妻子がいながら、出世に必要な女と結婚した。私生児と分かったのは高等学校の入学手続きの時。今まで叔父だと思っていたのが父で、自殺前日、西に会い、くどくどと詫びを言い、翌日、自殺のニュースを知った。父は西名義の150万の預金通帳を残していた。

 

佳子は父に罪の償いをして下さいと言うというが、西は罪の償いをするには摘発する以外にないという。

 

岩淵は誰かに電話をかけ、迷惑はかけませんと薬の量を聞いていた。電話を切り、薬をグラスに入れ、外を見ると、佳子が松葉杖をついて帰ってきた。外出用の松葉杖の先を拭いていた女中にどこへ行っていたのか聞く。名乗らない男から電話がかかってきて出かけ、辰夫は鉄砲でも撃ってくるかと出かけたと聞いた岩淵は佳子に辰夫が西を殺しに行ったんじゃないかと問い詰めた。

 

岩淵は自首しようと言い、一緒に行くと言った佳子にぶどう酒を飲ませてとどまらせた。タクシー待ちをしていた岩淵に佳子が武蔵原の軍需工場の跡地だと西の居場所を教えた。

 

守山は通帳は旅館の貴重品袋に預けたと話して、食料にありついていた。板倉が確かめに出かけ、西と和田が残った。

 

辰夫が猟銃を抱えて帰宅した。辰夫が売ったのは鳥! 狩猟してた。佳子は父にウソをつかれていたと知り、辰夫の運転する車に乗った。途中、事故車両があり、軍需工場跡に着くと、板倉が泣いていた。

 

「おめでとう! 西は殺されましたよ」と泣いている板倉。貨物列車にぶつけられスクラップになった自動車の中に西がいるのだと話した。

 

薬用アルコールを静脈に打たれ、失神状態の車に乗せられた西が貨物列車にぶつけられた。西名義の車で死んだので、板倉は何もできない。和田も結局は殺されたらしい。板倉は辰夫と佳子に「これでいいのか」と怒りをぶつけた。

 

マスコミの前で酔っ払い運転で娘婿を亡くしたと涙ながらに語る岩淵。会見を終え、副総裁室に戻った岩淵の前に辰夫とぼんやりした佳子が現れた。辰夫は、もうあなたの息子じゃないと佳子を連れて出ていった。

 

岩淵は何者かに頭をペコペコ下げながら電話し、丁寧に頭を下げて電話を切った。(終)

 

おー! やっぱり悪が勝ってしまったか…。西と佳子みたいな関係性好きなのにー! 割と長いけど、長さを感じない面白さだったな。インテリもワイルド系もハマる三船敏郎さんがよい。