NHK 1987年5月16日(土)
あらすじ
蝶子(古村比呂)はついに家を出る決意を固めた。叔父・泰輔(川谷拓三)の家に下宿することを決め、荷物を送り、汽車の切符も買った。そのことを父・俊道(佐藤慶)に報告し、音楽学校への入学願書に署名と捺印をしてくれるよう、最後のお願いをする蝶子だったが、俊道はやはり許そうとしない。東京行きが近づいたある日、蝶子は頼介(杉本哲太)に会いに行く。そこで蝶子は頼介の自分への想いに初めて気付く。
2025.5.3 NHKBS録画
脚本:金子成人
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音楽:坂田晃一
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語り:西田敏行
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北山蝶子:古村比呂…字幕黄色
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北山みさ:由紀さおり
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彦坂頼介:杉本哲太
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石沢嘉一:レオナルド熊
北山俊介:伊藤環
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山本たみ:立原ちえみ
高畑品子:大滝久美
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彦坂安乃:近藤絵麻
彦坂公次:中垣克麻
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マスター:ジョー・グレイス
オルガン奏者:斉藤恵
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鳳プロ
早川プロ
劇団いろは
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北山俊道:佐藤慶
茶の間
蝶子「父さん、私…あさって、東京にたつことにしたから」
驚いてみさの顔を見る俊道。
蝶子「決めたんさ。下宿は泰輔叔父さんのうちだ。そっからだと道郎兄さんの下宿には歩いて20~30分だそうだ。叔父さんのことは奥さんも私のことは承知したんだって」
俊道「ちょっと待て」
蝶子「東和音楽学校という学校に行こうと思います。今回、入学できない時は東京で時期ば待つつもりだ。今日、荷物も送り、東京までの汽車の切符も買ったんだよ、父さん」懐から紙を出す。「署名して、はんこば押してください」
書類は字が不鮮明で見えなかった。本籍地や名前、生年月日が書かれてる。
みさ「お父さん」
俊道「ワシは許してない!」
蝶子「したら、しかたない。父さんの署名は泰輔叔父さんに頼み、はんこは道郎兄さんに借ります」
俊道「蝶子!」
じっと父を見る蝶子。
俊道「そうか」部屋から出ていった。
教会で祈る蝶子とみさ。
♬~(オルガン)
蝶子「何、祈ったのさ?」
みさ「蝶ちゃんの無事をだ」
うなずく蝶子。
みさ「蝶ちゃんは?」
蝶子「父さんに謝ったわ」
みさ「そうかい」
♬~(オルガン)
蝶子「母さん、1人で帰って」
みさ「どこ行くんさ?」
蝶子「頼介君とこ。今夜の送別会、来るようにって」
みさ「うん、そうかい」
♬~(オルガン)
彦坂家
いせの位牌に手を合わせる蝶子。
公次「呼んできたわ!」
蝶子「いや、悪いねえ、仕事中」
頼介「なんも」
蝶子「明日、滝川出るんだ。今夜、石沢のおじさんも来てくれることになってんだ。頼介君も来ないかい? 安乃ちゃんも公次ちゃんも」
頼介「公次、馬小屋の掃除、まだだべ?」
公次「したって…」
安乃「行こう! 姉ちゃん、手伝うから」外へ出ていく。
蝶子「ゆるくないね」
頼介「なんも」お茶を出す。
蝶子「ありがとう」
頼介「そうかい、行くのかい」
蝶子「うん。したけど、やっぱりだんだん不安でね。第一、あれだ、音楽学校入学できるかどうかも分かってないんだ。なんかドキドキするんだわ」
頼介「したら、行かなきゃいいべや」
蝶子「なしてそういうしゃべり方するんさ」
頼介「気にすんでない。東京か…」
蝶子「え?」
頼介「遠いとこに行ったら滝川のことは忘れるべ?」
蝶子「なんも!」
頼介「いやあ、忘れるわ」
蝶子「生まれたとこ、そう簡単に忘れるもんでない」
頼介「東京行ったら珍しいもんばっかりだべ。したら、滝川のことなんか忘れるに決まってるさ。したら、生まれた土地のことも忘れる。そこにいた人間のことも俺のことも」
蝶子「そんなことない!」
頼介「そういうもんだわ」
頼介を見る蝶子。
頼介「音楽学校行ったら友達もできるっしょ。周りには男もいるっしょ。したら、蝶ちゃんば好きになる男も出てくる。学校出たあとは、どうするんだ? 東京で仕事するんだべ? したら東京で結婚するんだべさ。東京で結婚して、そんで、子供産んで…蝶ちゃんが結婚する相手は、どういう男だべな? なっ」
蝶子「頼介君…」
立ち上がった頼介は何か思いついたように奥へ。蝶子は帰ろうとする。
頼介「蝶ちゃんのもんだべ?」ハンカチを差し出す。「正月、蝶ちゃんば馬ソリに乗せたあと拾ったんだ。返そうと返そうと思ってたんだけど、つい…」
蝶子「頼介君にやるわ。記念だ、記念! 北山蝶子上京記念に持っててや!」
頼介「いやあ、そうかい? いや、俺は、あんまりこんなもん使わんから、安乃にでも…」
蝶子「うん、いいよ」
頼介「したら、仕事あるから」
蝶子「うん」
頼介「明日、気ぃ付けて」
蝶子「今夜は?」
頼介、あいまいな笑み。
蝶子「したら」玄関を出る。
<チョッちゃんの胸は早鐘を打っているようでした。頼介君の自分への思いが今、やっと分かったのでした>
頼介がハンカチをそっとしまった11話のナレーションは<頼介の恋心などチョッちゃんは気付いていませんでした>だったんだよね~。
北山家
みんなそれぞれお膳で食べている。
石沢 俊介
蝶子 品子
みさ たみ
石沢「本当に先生、どうしたんだ?」
みさ「あ、こういう改まった席、嫌いな人で…」
品子「蝶子さん、元気ないんでない?」
俊介「東京、行きたくなくなったんだべ」
蝶子「あ、なんも!」
石沢「頼介は呼ばんかったんか?」
みさ「誘ったっしょ?」
蝶子「うん。したけど何か忙しそうだったわ」
みさ「私、ちょっと」部屋を出る。
俊道は自室で尺八を磨いていた。みさが入ってくると背を向けるように向きを変える。
みさ「蝶ちゃんば、このまま行かしていいんかい?」
茶の間
石沢にお酌する蝶子。「おじさん」
石沢「うん?」
蝶子「頼介君の…頼介君のうちのこと、よろしくね」
石沢「分かった」
うなずく蝶子。
蝶子の部屋
みさが封筒を差し出す。「当座の生活費だ」
蝶子が感謝しつつ受けとる。
みさ「そのうち、お父さんには月々の仕送り送ってもらうようにするから。お父さんのことは心配しないでいい。納得させるから」
蝶子「母さん、できるかい?」
みさ「なんとか…」
不安そうな蝶子。
みさ「体だけは気ぃ付けて。道の上ば走ってる電車、当たったりせんように。連絡船、初めてだったしょ?」
蝶子「うん、そうだ」
みさ「ねえ、途中、気分悪くなるかもしれないもねえ。そん時は、アハハ、この梅干しば使えばいい」小さな入れ物に入った梅干を差し出す。
蝶子「食べるんかい?」
みさ「なんもだ。梅干しの皮ば、少しむいて、おへそに当てればいいんだ。船酔いには、もうこれが一番効くもね」
うなずく蝶子。
みさ「ええと、それから、ええと…泰輔がいるから。困ったことあったら、泰輔に相談すればいい。泰輔、頼ったらいいんだ」
蝶子「そうする」
みさ「うん」
蝶子「母さん」
みさ「うん?」
蝶子「私、わがままかい?」
みさ「いや、なんもだ」
蝶子「本当かい?」
みさ「うん!」
駅
汽車に乗ってる蝶子。
たみ「元気にすんだよ!」
品子「体に気ぃ付けてね!」
蝶子「ありがとう!」
石沢「夏休みには帰ってくるんだぞ!」
蝶子「うん!」
俊介「お土産、頼むから!」
蝶子「うん、いいよ!」
汽笛が鳴り、汽車が走り出す。
石沢「チョッちゃん、万歳!」
蝶子「母さん!」
石沢「万歳!」
「さよなら!」←と言ってるのは、たみか品子かな?
蝶子「父さんに手紙出すって言っといてやぁ!」
「元気でね! さようなら!」
石沢「万歳!」
たみ「元気でね!」
石沢「万歳!」
品子「さようなら!」
馬ソリに乗っていた頼介は馬ソリを止めて、走っている汽車を見守る。頬には涙。
目を潤ませながら汽車に乗っている蝶子。
頼介もまた雪原から汽車を見ていた。やっぱりロケ最高。
喫茶ヴォルガ
一人、ロシアンティーを楽しむみさ。
マスター「いらっしゃい、いらっしゃい。いらっしゃい、席に着きましょう」
みさは店に入って来た俊道と目が合った。俊道は、みさと同じテーブルについた。
みさ「ロシアンティー、1つ」
マスター「はい」
レコードが流れてるけど、オペラかな? 曲名は出なかった。
喫茶店を出て雪道を歩く俊道とみさ。
俊道「蝶子…本気だったんだな」
みさ「あの子はいつも本気ですよ」
俊道「あんまりビタッとくっつくんでない!」
しかたないなあ…的に歩くみさ。表情がいいのよ。
<チョッちゃんは、その夜、津軽海峡を渡りました。翌朝、青森に着き、チョッちゃんを乗せた汽車は東京へ向かっています>
本州に来たら雪がなくなっている。向かいの席の女性に「窓、開けていいですか?」と話しかけた蝶子が窓を開け、外を見る。
<東京まで、あと1日。とうとうやったね! チョッちゃん>(つづく)
北海道篇はこれで終わりか。寂しいな~! 頼介みたいなキャラ、すごく好き。
