NHK 1987年4月28日(火)
あらすじ
校長室に呼び出された蝶子(古村比呂)は、ユーリー・ゴドノフの家を訪ねたことを問い詰められる。特に女生徒が男ひとりの家に上がり込んだことを問題視された。校内でもあっという間に噂となり、教職員の会議の議題となる。担任の神谷先生(役所広司)と寄宿舎で舎監を担当する川村先生(中原理恵)は必死に弁護するが、一部の教師は厳罰に処すべきと主張する。結果、蝶子の保護者を学校に呼び出すことが決まる。
2025.4.15 NHKBS録画
脚本:金子成人
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音楽:坂田晃一
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語り:西田敏行
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北山蝶子:古村比呂…字幕黄色
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神谷容(いるる):役所広司
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北山みさ:由紀さおり
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川村市子:中原理恵
田所邦子:宮崎萬純
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彦坂頼介:杉本哲太
熊田剛造:津嘉山正種
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小田:水島涼太
古川教頭:林昭夫
吉池:木下浩
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山本たみ:立原ちえみ
高畑品子:大滝久美
女教師:宮内順子
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飯島加代:蛯名由紀子
遠山伊佐子:紘川淳
斉藤峰子:江馬小百合
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石井スエノ:仁科扶紀
山口フサ:土屋里織
森川とみ子:久野翔子
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石野スズ:加藤麻里
生徒:松永由美子
外川由起
榎美咲
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鳳プロ
劇団いろは
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北山俊道:佐藤慶
校長室
校長に向かい合って立つ蝶子。校長の傍らに立つ神谷。
熊田「君は昨日、あのロシア人のパン屋の家に行ったんだね?」
蝶子「はい、行きました。それが何か?」
熊田「な、何かって…」
蝶子「はい?」
熊田「その、パン屋の家には君は何しに行ったのかね?」
蝶子「私は謝りに行きました」
熊田「何を?」
蝶子「はい。学校に来たら、よく売れるんでないかと呼んだのは私でした。したけど、そのあと弁当のことや何かで校長先生、ユーリーさんの出入りを禁止されました。いっぺん喜ばしておいて、あんな目に遭わして後で嫌な思いしたんでないかと…それで、おわびしようと」
神谷「で?」
蝶子「はい?」
神谷「相手は何て?」
蝶子「かえって、私が困ったことになってるんでないか、心配してくれました」
神谷「そうかい」
蝶子「はい」
熊田「したけど、それはうまくないわ。女生徒が一人でだ、よく知らない人間の家に行くなど」
蝶子「したけど…」
熊田「しかも、男一人の家っていうでないの」
神谷「校長…」
熊田「初老とはいえ相手は男だべ」
蝶子「はい。男の人です」
神谷「少し考え過ぎでないですか? 校長」
熊田「考えるべ、それは。娘を預かる立場としては考える。あれこれ考えねばいけないっしょ」
蝶子「考えるというと、何を?」
熊田「君は、なして一人で行った? 一人で」
蝶子「はい。私一人のせいで、あのおじさんに迷惑かけたから」
熊田「なして、一人で!」
神谷「そうだね。一人でっていうのは少し軽率だったかもしれないな」
蝶子「軽率?」
神谷「誰か友達と行くとか…」
蝶子「したけど、私一人のせいで」
神谷「うん、分かるけど」
蝶子「友達連れてって、あのおじさんにひょっとしてでも怒られたら」
神谷「うん、分かるけど、な! あらぬ誤解を受けないためにも、その…」
蝶子「誤解というと?」
熊田「誤解は誤解だ」
蝶子「ですから!」
熊田「高女の4年といえば大人の女だべさ」
神谷「うん、まあ、そういった…」
神谷や校長の表情を見て、ハッとする蝶子。
<やっと分かったみたいだね、チョッちゃん>
いや、まあ、校長の言い分も分かるよ。でも蝶子の言い分も分かる。
蝶子「やだ…」下を向いてしまう。
熊田「したけども、君は、なしてうちの中に入った? 玄関でなく、うちの中に」
蝶子「それは…」
熊田「非常識だ。空知高女の生徒としては甚だ不見識な行動だ」
蝶子「おじさんも『上がれ』って言うし」
熊田「誘われたら、君は、どこでものこのこ上がるのかい?」
蝶子「あ、なんもなんも」首を横に振る。
熊田「そういう行動を世間では一体、どう思うべな。空知高女では、そういう教育をしてるんだべか、と思う。したら、高女の教師全員の校長である私の、ひいては高女の名をおとしめることになる」
蝶子「すみません」
熊田「本当にそう思ってるんだべな!」
蝶子「はい…あの~」
熊田「分かってないよ、この子は~」
神谷「はあ…」
熊田「大体だな、君は、あの家に1時間近くも居たというでないか! 謝りに行っただけで、なしてそんなに時間かかるんだ?」
神谷「校長、それはもう本当、考え過ぎじゃないですか?」
蝶子「私は…! 私はユーリーさんの身の上話、聞いてました。ロシアの人だということ。船のコックだったということ。日本に来ている時、国の方で大変なことが起きて帰るのやめたということ。日本に住み着いて11~12年だそうです。日本の女の人と結婚したそうです。10年前からパン屋、始めてるそうです。奥さん亡くなって5年だそうです…今は1人暮らしです。レコード、いろいろ聴かせてくれました。バラライカで…ロシアの曲、聴かせてくれました。聴いてたら…何だか、やたら無性にうれしくて」下を向いて涙を拭く。
神谷「校長。パン屋さんの家に1人で行ったという、まあ、慎重さに欠けた点は、ともかく北山君の真意は、くんでやってください。行ったには行ったなりの理由はあったわけですし。つまり『謝りたい』という、そういう善意は…責められないんでないですか?」
熊田「そうだべか?」
蝶子「私には恥ずべきことは何もありません!」
校長の後ろの額の中の”實 眞”(真実)という文字をじっと見つめる蝶子。
<チョッちゃんがユーリーさんの家に1人で行ったという話は既に学校内で広まっていました>
学校の廊下
生徒1「誰に聞いたのさ?」
生徒2「私の父さんの知り合いがあのパン屋の前に住んでて見たんだわ」
生徒1「それで!」
生徒3「したけど、北山さんて人は大して大胆なんだなぁ」
通りかかった邦子と峰子。
生徒1「あ、ちょっ、ちょっ、峰ちゃん!」
峰子「何?」
生徒1「あんた、北山さんと仲いいんでない?」
邦子「それがどうしたのさ!」
生徒1「なんも、なんも…」首を横に振る。
生徒2「なんもだ」
邦子「やたらめったら、うわさ広めないでほしいんだわ!」立ち去る。
峰子「だわ!」あとに続く。
教室
神谷「北山君について周りがどう言おうと君たちは動じないでほしい。つまり『女1人で男の人の家に行った』という、そういう表面のことだけに目を奪われないように」
<神谷先生は、それからチョッちゃんがどうして1人でユーリーさんの家に行ったのかを説明したのです。しかし…熊田校長はチョッちゃんの一件を会議にかけてしまいました>
会議室
熊田「今回の北山蝶子の行動は我が高女にとって、ゆゆしき問題であると考えます」
吉池「今回はなあ…」
小田「そうだね」
神谷「いや、したけど…」
古川「いや、そりゃあ、うまくないっしょ?」
熊田「『軽率だった』では片づけられないのではないですか」
女教師「風紀上、うまくありません」
熊田「まさにそうです。先生方の中にはパン屋の家に行った理由がもっともだから問題はないと申される方もおられる。しかし、それは違うと思う。例えば、男女の交際について考えていただきたい。理由さえもっともなら我が校の生徒が他校の男子生徒の家に出入りしてもいいということになる」
川村「それは、したけど極論では…?」
熊田「いや、先生、こういうのは前例となって後々のためによくありません」
神谷「したけど、うちの生徒は、そんなに理性のない者ばかりでしょうか?」
熊田「川村先生」
川村「はい」
熊田「北山蝶子は昨日、何時ごろ、寄宿舎に戻りました?」
川村「4時半近かったかと」
熊田「したら、規則違反でないですか」
川村「舎監として注意はしときました」
熊田「注意ぐらいで済む問題ではないっしょ! なして私に報告しなかったんですか」
うつむいてしまう川村。
熊田「寄宿舎の舎監としては、もっと厳しく対処していただきたい! 一度、緩んだタガは締め直すのは容易なこっちゃない!」
神谷「校長の言い方は、あまりにも生徒を信用しておられないように思います!」
熊田「したけど、現に北山蝶子は、こうした行動をしたではないですか!」
女教師「あの生徒は、これまでに何度も問題を起こしております。この際、厳罰をもって対処すべきでないですか!」
蝶子たちの部屋
蝶子「なしてこんなことになるんだべなぁ」
邦子「したから嫌な予感したんだ。したっけ『帰ろう』って言ったんだ」
加代「今頃、そんなこと言ったって…」
邦子「したけど、神谷先生ついてるもね。大丈夫さ。先生はチョッちゃんの味方だ。いっつも」
蝶子「私だけでないっしょ。生徒たちみんなの味方だ!」
加代「そうだよ」
邦子「そうだべか?」
蝶子「何だか嫌な言い方だ」
邦子「そうかい?」
蝶子「何だか先生が私一人ば、めんこにしてるみたいでしょ!」
めんこ=めんこい=かわいい=ひいきにしてる…? 私の地元にも”めんこがってる”という言い方はある。かわいがってるの意。
邦子「あれ? そうでないの?」
蝶子「違うっしょ!」
伊佐子「邦ちゃん、変だわ」
邦子「あんたは分かってないの!」
蝶子「何をさ!」
邦子「男女のこと」
蝶子「ダンジョって?」
邦子「そういうとこ、チョッちゃん疎いもんね。したから平気でパン屋さんち1人で行けるんさ」
加代「したって、行った訳は、先生、ちゃんとしゃべってくれたでない」
邦子「行くのは、いいとして、そのことを大人がどう思うか、チョッちゃん、分かってない」
伊佐子「どう思うのさ?」
蝶子「嫌らしいことなのさ」
邦子「嫌らしいかどうかは知らないけど」
蝶子「邦ちゃんまでそういうことを!」
邦子「大人は、そこまで考えるってことだわ」
蝶子「邦ちゃん、なしてそんなに私、いじめるのさ!」
邦子「なんも」
蝶子「いじめた!」
邦子「違う!」
伊佐子「意地悪言った!」
邦子「うるさい!」
伊佐子「そんなことよりチョッちゃんのことで同室の私たちまで罰が来るんでないの?」
加代「なして?」
伊佐子「罰は来なくても周りに不良だと思われたぁ!」
邦子「思われたら?」
伊佐子「したっけ!」
邦子「何さ」
蝶子「邦ちゃん!」
加代「やめて、やめて!」
川村先生が入って来た。「騒がしいっしょ!…北山さん」
蝶子「はいっ」
川村「会議の結果、あなたの父兄に学校に来ていただくことになったから」
北山医院
診察室
品子「あ、お帰りなさい」入って来た俊道のカバンを受け取る。
俊道「うん」手をこすりながら入ってきて、引き出しのキャラメルを口に入れる。
みさが顔をのぞかせる。
俊道「何だ?」
みさ「あの~、あの~…これ、あの…」
俊道「うん?」
みさ「いつ行きます?」
俊道「うん?」
みさ「岩見沢」
俊道「何?」
みさ「これ、あの…」
俊道「ちゃんと分かるようにしゃべれ」
手紙を差し出すみさ。
俊道「高女の校長からだ」
みさ「はい」
俊道「なして先に開けた?」
みさ「…すいません」
手紙を読み始めた俊道。「父兄に岩見沢に来いと書いてあるでないか」
みさ「はい」
俊道「また何かしでかしたな?」
みさ「何をさ?」
俊道「分からん。何も書いてねえ。何やったんだ、全く…」
みさ「行ってくださいますね?」
俊道「いや、わしは行かん」
みさ「したら…」
俊道「お前、行け。わしは往診もあるし、お前、行く方がなんぼかいい。品子さん!」
品子「はい」
俊道「台所に頼介君が…いやいい」診察室を出て、みさも続く。
台所
たみ「ご苦労さん」お茶を出す。
頼介「いただきます」お茶を飲むが、俊道が来て立ち上がる。
俊道「いや~、いいんだ、いいんだ。頼介君、頼みあるんだ」
頼介「はい」
俊道「明日、家内ば駅まで送ってもらいたいんだわ」
たみ「あれぇ、奥さん、旅行ですか?」
みさ「なんも」
俊道「岩見沢だ。蝶子の学校から呼び出し来たんだ」
頼介「あの…」
俊道「うん?」
頼介「いや、何なら岩見沢まで馬ソリで行ってもいいんですけど」
俊道「いや、したけど、冬の天気は怖い。途中でふぶいたら、うまくないべ」
みさ「汽車の方が」
俊道「うん」
みさ「たみちゃん、汽車の時間、分かるかい?」
たみ「はい。午後の1時何分かのと…」
俊道「いや、それでは遅いべ」
たみ「したら、朝の7時26分しか」
俊道「それだな」
みさ「はい」
頼介「分かりました」
俊道「悪いな」
頼介「なんもです」
俊道は奥へ。
頼介「奥さん」
みさ「うん?」
頼介「蝶ちゃんの呼び出しって、一体どういう?」
みさ「私にも分からないの」
♪~(「早春賦」)
<翌日、みささんが学校にやって来ました>
廊下を蝶子が歩き、合唱する声が聞こえる。
<校長室へ向かいながら、チョッちゃんは母親のみささんのことを考えていました。悲しい顔を見るのは、やはり嫌だったのです>
校長室の戸をノックして入った蝶子。「失礼します」
丸テーブルにみさ、神谷、熊田が座っている。
熊田「掛けなさい」
<チョッちゃんは、お母さんを見てホッとしました。しかし、このあとは、どうなることやら…>
みさと神谷の間に掛けたみさ。(つづく)
うわー! 気になる所で終わった~!

