徒然好きなもの

ドラマの感想など

【ネタバレ】早春スケッチブック 第9回

フジテレビ 1983年3月4日

 

あらすじ

烈しい頭痛に襲われた竜彦(山崎努)を、駈けつけた明美樋口可南子)が救急車で病院に運び、入院させた。 もう手術さえ手おくれの病状だった。 だが、寝ずに看病し、泣き腫らした顔のままやむを得ず CM 撮影の仕事に出かけた明美の留守に、竜彦は病院を脱け出し、西洋屋敷に戻ってしまった。 助からぬことを知っての上だった。

2025.3.14 日本映画専門チャンネル録画

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都<<私は、あの人を愛してるわ>>

竜彦<<フフフッ…>>

都<<あの人を誇りに思ってるわ!>>

竜彦<<誇りに?>>

和彦<<いいです、さよなら>>

 

竜彦<<ヤツを誇りに思ってる?>>悪魔みたいな高笑い。

 

洋館を出て歩き出す都と和彦。

 

竜彦<<あんなヤツをどうやったら誇りに思えるんだ!>>

 

ひとり残された竜彦は突然頭を抱えて苦しみだす。明美が車を走らせ、苦しむ竜彦。

 

脚本:山田太一

*

音楽:小室等

早春スケッチブック・メインテーマ

早春スケッチブック・メインテーマ

  • 小室 等
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

*

プロデューサー:中村敏夫

*

望月都:岩下志麻…字幕黄色

*

望月省一:河原崎長一郎

*

望月和彦:鶴見辰吾

望月良子(よしこ):二階堂千寿

*

大沢誠:すのうち滋之

三枝多恵子:荒井玉青

*

衣笠真弓:中村亜子

*

新城彰

宝亀克寿

沢田いづみ

*

纐纈徹

小松さゆり

久森絵津子

古賀プロ

*

新村明美樋口可南子

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沢田竜彦:山﨑努…字幕水色

*

協力:相模鉄道

   いすゞ自動車

   八千代信用金庫

*

写真提供:倉田精二

     「フラッシュアップ」

          (白夜書房 刊)

*

演出:富永卓二

*

製作・著作:フジテレビ

 

世田谷第一病院

車から真弓が降り、1人で行くと言って、病室へ。竜彦が眠るベッドの傍らに明美がいて、廊下に呼び出した。明美は2日間、ロクに寝ておらず、行けないと言う。すっぽかすのはまずい、仕事が来なくなると真弓は明美を仕事に行かせようと説得を続ける。顔を見せるだけでいい、撮れるか撮れないか向こうの判断に任せればいい。

 

明美は病気だと言えばいいと言うが、事情は知られている、行くだけは行って謝っちゃったほうが感じいい、ホントにモデル辞める気あんの? やっと売れてきたんじゃない? 看病ったって何することあんの? そんなことで仕事棒に振るほど純情? ばかばかしいじゃない?と真弓は必死に言う。

 

いい友達だなー。

 

泣き出す明美に「手遅れってこと?」と直球な事を聞く真弓。「今日明日とか、そういうこと?」という真弓の言葉に明美は仕事に行くことにする。「残ろうか?」と聞く真弓にやることなんか別にないと明美が答えた。

 

病室で目を開けた竜彦は真弓が顔を見せると、「よう」と声をかけた。真弓とは竜土町(りゅうどちょう)のバーで明美といて会ったことがある。明美は秋のCMの撮影で迎えが来たが、バッグを忘れたので取りに来たのだと真弓が話した。寝てると思ってた、バッグを渡したら代わりにいましょうか?と聞くと、いいんだと答える竜彦。

 

しかし、「あんなに泣いたあとで撮れるかなぁ?」と明美を気にした。

真弓「分からないけど、行くだけ行ってみます」

 

楽屋

ソバージュのウィッグをつけた明美に「あんなに泣いたあとで」と竜彦が言っていたと伝えた真弓。

明美「あの人、ずっと眠ってたのよ。私が泣いたの知ってるわけがないわ」

 

眠ったフリをしていたのだと思った明美は病院に電話かけてくるとメイクの途中で立ち上がったが真弓が止めた。明美は泣いたところを見られて、竜彦がどう思ったか気にしているが、真弓は電話で釈明したら余計変に思う、どこも行きやしないんだから、夜までにうまい言い訳考えたほうがいいとセットに戻らせた。

 

真弓「男のことで取り乱してんの、みんなに見せんのよくないよ」

 

谷というスタッフがノックして入ろうとするが、真弓が追い出した。明美は言い訳ってどういうこと?と問い詰めると、明美が泣くなんてよっぽどのことだから手遅れだと思ったと真弓が言う。明美は病院の看護婦さんに様子を見てと電話してと頼んだ。

 

望月家

省一が都に電話していた。今日、合格発表の大学に和彦の名前はなかった。

 

都「まだ2つあるし、東大入って、私立落ちた人もいるんだし」

省一「1つぐらい落ちたって、どうってことないさ。大げさに慰めたりすんな」ガチャ切り。

都「急に切るんだから」

 

和彦は洋館を訪れていたが、何度も声をかけたりノックをしても反応がなかった。

 

明美のCM撮影。80年代って感じだな! ギラッギラの派手派手。

 

撮影が終わった明美は真弓から竜彦が病院からいなくなったと聞かされた。いなくなったのは午後4時ごろ。撮影が終わったのは4時間後。

 

明美は急いでメイクを落として、車を飛ばして、洋館へ。明かりがついており、リビングのドアを開けると、竜彦がソファに座ってタバコを吸って、平然と明美に「よう」と手をあげた。

 

明美「なんてことするのよ!? 病院抜け出すなんて、いいかげんにしてよ!」

竜彦「これに懲りて俺の世話なんか焼くな」

明美「焼かないわ。焼くもんですか」

竜彦「それでいい」

明美「何がいいのよ? 子供みたいなことしないでよ。ハァ…」ソファに座る。

 

竜彦「病院が嫌いだ」

明美「誰だって嫌いよ。治さなきゃならないから我慢してるんじゃない?」

竜彦「手遅れは、いいじゃないか」

明美「何が手遅れよ?」

竜彦「手術はしないことになった」

明美「しなくても治るからよ」

 

竜彦「それであんたがどうして泣く?」

明美「ホッとしたからよ。勝手に見当つけないでよ。入院してれば、どんどんよくなるわ。先生だって、そう保証したのよ」

竜彦「ありきたりなこと言うなよ」

明美「ホントだもん」

竜彦「水くさいね」

明美「なに疑ってるのよ?」

 

竜彦「気休め言われて…」

明美「気休めじゃないわ」

竜彦「病院で死ぬ気になれよ」

明美「何のことよ? 死ぬとか何とか…」

 

竜彦「こっち向けよ」

明美「イヤなの。疲れてひどい顔だから。渋沢っていうヤツ、最低ね。当たったCMが2つ3つあったからって、あんなに舞い上がって巨匠面することないのよ。知ってるでしょう? 渋沢っていうヤツ」

じっと見ている竜彦。

明美「そんなに見ないでよ」

 

竜彦「助からないヤツを病院に閉じ込めて何になる?」

明美「勝手に決めないでよ。『助からない』なんて言って粋がらないでよ」

竜彦「ムリするなよ。そんなムリしなくていいんだ。俺のことをもうちょっと知ってると思ったぜ。ウソついていたわってくれなくてもいいんだ。本当のこと言ってくれていいんだよ」

 

明美「でも…病院にいなきゃダメなのよ」

竜彦「どうして?」

明美「痛みがまた来るし、点滴に鎮痛剤混ぜるのがいちばんよく効くっていうし、点滴なんて、ここじゃできないでしょう?」

 

震える手でタバコを消す竜彦。「どのぐらいで死ぬんだ?」

明美「そんなこと分からないわよ」

竜彦「隠すなって…」

明美「隠しちゃいないわ! 先生だって『分からない』って言ってたわ。もっとひどいことになってるって、先生、思ってたのよ。今まで痛みが来なかったほうが不思議だって。だから、思いがけないことは、もっと起こるかもしれないわ。あんた、悪運強いから。投げないで治そうと思えば治るかもしれないじゃない」

竜彦「運がなかったときは、どうなる?」

明美「そりゃ…どんどん痛みが来て、目だって、目だって…知らないわよ、私…」泣き出す。

竜彦「あした、医者に会ってこよう」

泣き続ける明美。タバコを吸い始める竜彦。

 

いつもの喫茶店「友里花(ゆうかり)」

 

キャストクレジットの沢田いづみさんは恐らくこの店のウエートレスだろうな。

 

和彦の席にコーヒーが運ばれてきたとき、店に入って来た多恵子がウエートレスに「この席に座るからホット」と注文した。あからさまに避けるウエートレスに「なんだよ、よけていくな、バカ」とつぶやき、和彦の斜め前の席に座る。

 

和彦「よう」

多恵子「『落ちた』って聞いてよ」

和彦「妹?」

多恵子「そうじゃねえよ」

和彦「誰よ?」

多恵子「いっぱいいるさ。落ちたなんていうのは喜んで教えるさ」

和彦「まだ2つあるし、どうってことないよ」

 

多恵子「あさってだろう?」

和彦「えっ?」

多恵子「次の発表だよ」

和彦「あさってと、しあさって続けてな」

うなずく多恵子。

 

和彦「よく知ってるな」

多恵子「うぬぼれんじゃねえよ」

和彦「フッ…どういうことよ?」

多恵子「分かってて聞くなよ」

 

コーヒーに砂糖を入れる和彦。「学校、もう終わったの? 早いじゃない」

多恵子「説教してるつもりかよ?」

和彦「説教?」

多恵子「サボったに決まってるじぇねえか。わざとらしく聞くなよ。俺がどうしようと関係ねえだろう?」←一人称、俺!

和彦「そうでもないさ」

 

多恵子「お前が俺とつきあうかよ?」

和彦「えっ?」

多恵子「お前、大学入って中学で就職する俺とつきあうかよ?」

和彦「そういうふうに考えたことないな」

多恵子「…だったら考えろよ。大学行ったヤツは中学だけの女とは、つきあわねえんだ」

和彦「そうかな?」

 

多恵子「『恋愛は自由だ』とか言ったって、ちゃんと差別してやがんだ」

和彦「それは、ひがみだと思うな」

多恵子「…だったら、俺とつきあうかよ?」

和彦「それとこの問題とは違うと思うけど」

多恵子「フン!」

和彦「俺は中学出だからどうなんて思ってもいないよ」

 

ポケットから出したタバコの箱をテーブルの上に置く多恵子。

和彦「なによ?」

多恵子「のみな」

和彦「俺は…」

多恵子「見ろ。お前なんか短大か何か出た、きれいきれいを相手にするに決まってんだ」←大学出じゃなく短大出ってとこが昭和。

 

ウエートレスがコーヒーを持ってきた。ウエートレスがテーブルの前から去ると、和彦はタバコを取り出し、多恵子がライターで火をつけた。むせる和彦に笑う多恵子。すっごいかわいい笑顔。

恋人も濡れる街角 (Ver. 2000)

恋人も濡れる街角 (Ver. 2000)

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店で流れてるのは中村雅俊さんの「恋人も濡れる街角」じゃないかなぁ!?

 

そこへ明美が店に入って来た。「こんちは」

和彦「あっ…」

明美は多恵子にも「こんちは」と声をかけ、和彦に「待った?」

和彦「いえ、こっちが勝手に早く来たんです」タバコを消し、立ち上がると、多恵子の笑顔が消える。

 

明美の車に乗っている和彦。「どんなことですか?」

明美「どうしよう?」

和彦「えっ?」

明美「どっかで話さなきゃならないんだけど」

和彦「ええ」

明美「今晩から私、沖縄へ行くの。行きたくなんか全然ないんだけど、前からの約束でしかたがないの」

和彦「ええ」

明美「それだって、モデル辞める気ならすっぽかせるんだけど、辞めて、私ひとりで何やって食べていけるか分からないし」

 

茶店

ここでも何か歌が流れてるんだけど、分からなかった。

 

多恵子はいきなりカウンターを拭いていたウエートレスにコップの水をかける。

ウエートレス「何すんのよ!?」

多恵子「人のこと笑いやがって」

ウエートレス「笑ってないわ!」

多恵子「笑ったよ。笑いやがって」ウエートレスを突き飛ばし、マスターからも止められる。

 

言いがかりもいいとこ!と思ったけど、良子との出会いもこんな感じだしね。

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何でもかんでもネガティブに取りすぎ。

 

和彦「えっ? じゃ、どうにもならないんですか?」

うなずく明美。今は、空き地に車を止めて話している。

和彦「手術しても、しょうがないってこと?」

うなずく明美

和彦「…で?」

明美「そのこと本人知ってるの。前から『そんなこと平気だ』って言ってたでしょう?」

和彦「ええ」

明美「『じきに死ぬんだ』なんて、すぐに言って」

和彦「ええ」

 

明美「気取り屋だから…死ぬことになって取り乱したりするの、シャクなのよね」

うなずく和彦。

明美「先手打って『死ぬ死ぬ』って言って、死ぬことに慣れようとしてたのよ。ホントは人一倍怖いのよ。臆病なのよ」

和彦「じゃ、今…まいってるんですか?」

明美「そう思うわ」

和彦「へえ…」

 

明美「隠してるけど…かろうじて隠してるけど」

うなずく和彦。

明美「病院に行って『絶対に入院しない』って、先生、脅かしたらしいの。『どうせ死ぬんだからいいだろう?』って。『鎮痛剤よこせ』って。あの人、そういうとき、怖いでしょう?」

うなずく和彦。

明美「先生、しょうがなくて飲み薬の鎮痛剤をあげたらしいの。それが効くうちは、いいんだって。すぐにそんな薬、効かなくなって、入院しなきゃどうにもならなくなって、そうなったら、もう、あっという間に終わりだろうって」

うなずく和彦。

明美「ひとりで、あの家(うち)にいるわ。今、行ける?」

和彦「ええ」

明美「前まで送る。7時に成田なの」エンジンをかける。

 

樋口可南子さんは当時、リアルの仕事も忙しくて、度々、明美がいないことになってるのか、役でそうなのか、どっちなんだろ?

 

洋館の床に身を縮めて転がっている竜彦。そばにはビリビリに破られた本。目を閉じ、震えていると、門の開閉音がし、慌てて立ち上がり、ウロウロ。汚れた床を拭いたり、股を拭いたり…まさか失禁?

 

玄関の戸を開けて入って来た和彦は「こんにちは」と声をかけた。

⚟竜彦「誰?」

和彦「和彦です」

⚟竜彦「ちょっと待ってくれ。あっ…いや、上がってくれ。応接間だ」

和彦「はい」

 

毛布をかぶって応接間から出てきた竜彦は「すぐ戻る。掃除してたんで、ひでえ格好なんだ。応接間へ行ってくれ」と言って、階段を上がった。 ♪眠れ よい子よ~なんて口ずさんでいる。

 

応接間に戻ってきた竜彦は「よう」といつもの感じ。

和彦「こんにちは」

竜彦「うん。大丈夫かい?」

和彦「はぁ?」

竜彦「こんなとこ来ると、おふくろさんに叱られるんじゃないか?」服着替えてる。

 

和彦「ナイショです」

竜彦「そうか」

和彦「あの…何がいいか分からないんで、コーヒーひいてもらって買ってきました」

竜彦「そうか」

和彦「パーコレーターあったと思って」

竜彦「ああ、古いのがな…台所、行くか」

和彦「はい」

”パーコレーター”で検索すると、こんな感じのしか出てこないけど、ドラマのは茶色い、ホントに古い感じので、アルコールランプみたいなものの上に置く。

 

竜彦「なんとか足りるだろう」

和彦「ええ」

竜彦「外国人は頑固だねえ。日本人ならとっくにこんな物捨ててる」

和彦「ええ」

 

竜彦「クッキーだ。これは、まだたっぷりある」クッキー缶を持ってきた。

和彦「ええ」軽く頭を下げる。

竜彦「こういう物、好きかい?」

和彦「ええ、わりと」

竜彦「そうか…いやぁ、どういう物が好きか見当がつかない」

和彦「フフ…」

竜彦「食べなよ」

和彦「ええ、いただきます」

じーっと和彦を見ている竜彦。

和彦「ハハ…なんか食べにくいな」クッキーを口にする。

 

竜彦「いやぁ、俺なんかもね」

和彦「ええ」

竜彦「たまに酒やめると甘い物が欲しくなる」

和彦「そうですか」

竜彦「もっとこってりした物のほうがいいのかな?」

和彦「いえ。このごろは、あんまり甘いのは、みんな好きじゃないみたいです」

竜彦「そうか」

和彦「ええ。元気そうですね」

竜彦「そうかい?」

和彦「ええ。そういうふうに見えますけど」

 

竜彦「しかし、彼女から聞いてるんだろう?」

視線を逸らす和彦。

竜彦「行ってやれって言われたんだろう? それくらいは分かる」

和彦「でも、そうじゃなくても、ここへ来ようと思ってました。いえ…この間、テスト落ちて、その日、ここへ来たんです。でも、お留守で…きっと、そのとき病院だったと思います」

竜彦「そうか」

 

和彦「僕は、あの…母と来たとき、あなたが僕に『何か影響を与えたい』と言ってたこと、とても、あの…頭に残って、もっと話聞きたいと思いました…というより、もう僕は、あなたの影響を受けてると思いました。そのこと、言いたいと思いました。あなたに会う前、僕は受験のことしか考えていませんでした。何だかんだ言って、いい大学へ入らなきゃ負けだと思ってました。そして、いい会社へ入らなきゃって、でも、人格的にちゃんとしようとか精神を高めようとか、そういうことは不思議なくらい考えませんでした。人のためになろうとか社会のために何かしようとか、そういうことは自分でも変な気がするけど、考えませんでした。自分のことばかり。それも大きなことを望んでいるんじゃなくて、体裁のいい会社へ入って、ほどほどの位置まで行ければいいって思いました。『自分に見切りをつけるな』って言われたとき、ショックでした。『偉大って呼ばれる人生だってあるんだ』って言われたとき、ホントにそうだなって思いました。そういう立派な生き方は自分には関係ないような気がしていたけど、僕だって、その気になれば、僕なりにどんな生き方だって選べるんだって思いました…と言ったって、さしあたって何をしていいか分からないけど、自分のことだけ考えて、趣味を大事にしたり、そういうことだけで一生を終わりたくないと思います。何かのために生きたいと思います。そういうこと当たり前なのかもしれないけど、僕は、あなたと会うまで気がつきませんでした。大学へ入ったら、とにかく自分のためじゃないこと、何かのためとか誰かのためになることしたいと思ってます」

 

「沿線地図」の志郎と違い、大学へ行く気はあるんだよな。

 

竜彦「水を差すわけじゃないが」

和彦「えっ?」

竜彦「そういうことを思ってる人間は、とかく嫌みなもんだぜ。『自分は、いい生き方をしている。それに引き換え、周りのヤツは何をしている?』そんなふうに考えて、みんなを教育しようとしたりする」

和彦「そんなことは、しません」

 

竜彦「いいかい?」

和彦「ええ」

竜彦「人間は結局、自分のことばかりよ」

和彦「そうでしょうか?」

竜彦「そう思って、ちょうどいいんだ。『俺は人のために生きてる』なんて、本気でそんなこと思ってるヤツは大ざっぱな野郎だ。人のために生きたいが、どうしても自分本位になっちまう。そう思ってるヤツのほうが、多分、目が覚めてる。しかし、あんた、病気の見舞いがうまいなぁ」

和彦「いえ」

竜彦「大層な影響を与えたようで、しばらくいい気持ちだったぜ」

和彦「お見舞いで言ったんじゃありません」

竜彦「まあ、いいさ」

和彦「いえ。僕、さっきから驚いてます」

竜彦「うん?」

 

和彦「どうしてそんなに平然としていられるのか。僕ならきっと気がくるいそうになってると思うし、とってもコーヒーなんか入れてられないと思うし、偉いと思います」

ハッとしたような表情の竜彦。

和彦「本当です」

竜彦「飲もう」

和彦「はい」

 

パーコレーターの炎の勢いがすごい。和彦は竜彦の日常は知らないからねえ。

 

望月家

お風呂をかき混ぜている都の背後に和彦が立つ。「言っとくけど、お母さんに行ってもらいたいとか、そんなこと言ってるんじゃないよ」

背を向けたままうなずく都。

和彦「ただ、手遅れがはっきりしたってこと。あんまり長くないっていうこと。そのことをあの人、自分で知ってるってこと。耳に入れといたほうがいいと思って。前からあの人、そんなこと言ってたし、今更、驚かないだろうけど、どうする? 行ってやる?」

都「もう十分会ったし、お母さんが行ったって、どうってことないし、いいんじゃない?」

 

和彦が脱衣所から出ると、良子が冷蔵庫の前にいた。「どうかした? あの人」

和彦「何でもないよ」ダイニングを出て階段を上る。

良子「なによ。隠すことないじゃない?」

和彦「隠しちゃいないよ」

良子「じゃ、言いなさいよ。2人でコソコソしゃべんないでよ」和彦の後を追う。

 

風呂場にいる都は静かに涙を流していた。

 

省一「おい、和彦、ちょっと来い」帰ってきて、階段下から呼びかける。

都「どうしたの?」

省一「いや…鶴見の支店の帰りにな、支店長とコンピューターやったんだ」

都「えっ? コンピューター?」

省一「占いだよ。コンピューター占い」

都「お父さんが?」

省一「ヘヘッ…」

 

和彦と良子がリビングに来た。

都「ううん、占いだって」

省一「バカ。当たってんだ、見てみろ。性格なんかぴったりだよ。うん、これは良子だ」A4用紙を良子に渡す。

都「えっ? 4人のやったの?」

省一「いいじゃないか。大した金じゃないんだから。これは和彦」紙を渡す。

都「そりゃいいけど」

 

省一「お母さんなんか見てみろ」紙を渡す。

都「えっ?」

省一「『我が強くて亭主を尻に敷くから気をつけろ』って」

都「本当?」

 

自身の占い結果を見た良子。「わぁ、当たってる」

省一「そうだろう?」

和彦「まいったなぁ」

省一「おお、和彦のなんかのぴったりだよ」

都「何だって?」

和彦「えっ?」

 

省一「いや、目玉はな…ちょっと貸せ、ここだ。え~、『83年のあなたは』ってとこだ」

都「えっ? 和彦の83年?」

省一「いいか? 驚くな。え~『前半に小さなつまずきがあります』」

良子「うわぁ、当たってる」

都「…で?」

省一「しかし、それを償う幸運がやって来ます」

良子「へえ、いいじゃん」

都「へえ~」

 

省一「いやぁ、これには、ちょっとドキッとしたな、ハハ…ほかのとこは、まあまあ当たってるだろう? それでちゃんとつまずきがあって、それで次にっていうんだから。いやぁ『あっ!』なんてね、お父さん、大きな声出しちまったよ」

都「ホントね」

良子「面白いね」

省一「いやぁ、大丈夫、大丈夫! 和彦は合格だ。ぐっすり眠れ」

和彦「ムチャクチャだなぁ」

 

翌日、大沢が自転車に乗って望月家を訪ねた。2階の窓から和彦が顔を出す。

大沢「よう! 俺と一緒だってな。びっくりしたよ」

一瞬表情の曇った和彦だが「ああ」と笑顔で応じた。

 

都が玄関を開けて出迎えた。

大沢「今、学校行ったら僕と同じ大学だっつうんで吹っ飛んできたんです」

都「あっ…そう、おめでとう」

大沢「はい! ありがとうございます」

 

家の中に上がってきた大沢。「いやぁ、僕なんか全然、彼と一緒だなんて思ってなかったんでうれしいです」

都「そうね」

大沢「同じ経済だし、近所のよしみでよろしくお願いします」

都「ホントに…どうぞ」

大沢「はい」

都「昨日、発表だったんでしょう?」

大沢「ええ」昨日も学校に行き、今日もなんとなく行ったら「遅くなって望月が合格したって言ってきた」と聞いた。

 

なかなか下へ降りてこない和彦を気にする都。

大沢「もう勉強しなくていいし、こっちは、のんびりしてますから」

都「あの子も同じゆうべは10何枚レコードを聴いたとか言ってたわ」

大沢「僕なんか親父と酒飲んじゃって」←もはや驚かない未成年飲酒。

 

都「和彦、何してるの? 大沢君、喜んで来てくれてるのよ」

ドアを開けた和彦の表情は暗い。「今、行く」といったんドアを閉め、再び開けたときには「悪いな。ちょっとエアチェックのテープ、ひっくり返してたんだ」とニコニコしながら階段を降り、リビングにいた大沢に会った。

大沢「よう!」

和彦「やったじゃないの!」

大沢「やったわよ、あんた!」

二人して抱き合い、「やった、やった!」と喜び合う。

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大沢誠役のすのうち滋之さんのwiki見たら「顔で笑って」に出てる!? 簾内滋之という名前で14話のゲスト。中村玉緒さんの息子役でこちらでも”誠”。

 

夜、良子が和彦の部屋のドアをノックし、お父さんが呼んでいると伝えに来た。良子は話の中身を知らず「私は『2階へ行ってろ』だって」と和彦の部屋のベッドに座る。

 

夫婦の寝室

都は「やぁね、ここがこるのよくないのよ」と省一の首のマッサージ。

省一「しょうがないだろう」

都「血圧高いんだから、脳卒中になっちゃうから」

省一「イヤなこと言うなよ」

 

和彦「なに?」

省一「ああ、来いよ」

都「何なの?」

省一「あっ…もういいよ」

都「じゃ、おまけ」肩をもむ。「はい、終わり」

 

和彦は都の布団をずらして畳の上に正座する。「なに?」

省一「うん」

都はパジャマ姿の省一の肩にカーディガンをかける。

省一「なにも、そう改まるなよ。あぐら、かけよ」

和彦「改まったわけじゃないけど」あぐらをかく。

 

省一「いやぁ…昨日からいろいろ考えたんだけどな。つまり、こういう言い方はなんだけど、結局、滑り止め1つ受かったわけだよな? まあ、あそこだって落ちるヤツは、いっぱいいるんだから、もちろん、お前は、よくやったよ」

和彦「そんなことないよ」

省一「ただ、親バカかもしれないが、お前は一橋や早稲田の政経が堅いって言われてたんだ。共通一次のころまで、あの大学は考えてもいなかったろう? 念のためにっていうんで、願書出したんだけど、正直言って、あそこしか受からないってことは、お父さん考えてもいなかった。ずばり言うと、あそこじゃ、お前、就職大変だぞ。いいとこは入社試験も受けられない。これは一生の問題だからな。どうだ? 浪人して来年、国立を狙ってみないか? 今年は、お前、実力を発揮できなかったと思うんだ。そのまま三流の大学へ入って、三流の会社へ入れば、一生そのままだからな。ここは多少つらくても1年浪人して、もうちょっといいとこを狙ったほうがいいんじゃないかな。どうだ? いや…せっかくホッとしてるときに…」

 

和彦「どうして、大学で一生が決まるのさ?」

省一「いや、そりゃ、お前…」

和彦「入った会社で、どうして一生が決まるのさ!?」

都「和彦…」

和彦「僕はそんなことで一生が決まっちゃうような…安っぽかないよ!」立ち上がる。

 

省一「いやいや、そりゃな…」

和彦「親なら言うべきだよ! 大学が悪くたって『へえ、あんな大学から、あんなにすごいヤツが出てきたのか』って。『そう言われるようになれ』って。そのぐらい言うべきだよ!」和彦は部屋を飛び出した。部屋の外で良子が立ち聞きしてた。

和彦「いい大学だの、いい会社だのムカムカするよ!」

都「和彦!」

和彦「問題は人間だろう?」

都「よしなさい!」

和彦「人間として、どんなヤツになるかってことが問題じゃないのかよ!?」

 

ここのシーン、竜彦が乗り移ったみたいだった!

 

階段を上り、部屋に入った和彦を都が追いかけた。ショックを受ける省一。

良子「お父さん」

 

和彦の部屋

都「何言ってんのよ! 偉そうに」

和彦「でも、僕はそう思うね!」

都「立派な口利く資格ないわ」

和彦「資格って何さ!?」

 

都「お母さん知ってるのよ」

和彦「何をさ?」

都「あなた、昨日からずっとお父さんと同じこと考えてたじゃない。そのくらい分かるわよ。大沢君と同じ大学しか入れなかったこと、すごい恥だと思って、ずっと浪人しようかどうか考えてたくせに、いい大学にこだわってないなんて、そんなことよく言えるわ。謝んなさい。お父さんに下りてって謝んなさい!」

 

大沢君…

 

和彦「確かに僕は、そういうことを考えたよ」

都「そうよ。ずっと考えてたわ」

和彦「でも、それじゃいけないとも考えてたよ。問題は、どう生きるかってことだって…そういうことも考えてたよ。お父さんとは違うよ!」

都「和彦!」

 

部屋を飛び出し、階段を降りた和彦は、寝室の省一に言う。「人間として立派なら、どこにいたって何やったっていいんだって、そのくらいのこと言ってみろよ!」

都「和彦!」

良子「お兄ちゃん、どこ行くの!?」

 

和彦は上着も着ないで外へ飛び出していた。靴履かないで持って走ってる?

 

夜が明けるころ、都は和彦の部屋にいた。

良子「帰った?」

都「ううん」

良子「あそこかね? あの人んとこ」

都「いいの」

良子「ほかに行く所ある?」

都「泊めてくれる友達ぐらいあるわよ」階段を降りる。

 

良子「そうかな?」

都「いいから寝なさい。まだ6時前よ」

 

夫婦の寝室

省一は布団に入っているが目は開いている。

都「ごめんなさい、起こしちゃった?」

省一「いや、そうだといいけど」

都「何が?」

省一「だから…父親んとこ行ったんだったらいいけど…」

都「よくないわ。そうだったら、あの子、いけないわ」

省一「いけないことないよ。とにかく父親なんだから」

都「父親じゃないわ。父親はお父さんしかいないわ」

 

昼、洋館に電話が鳴る。竜彦が出たが、都は受話器を置いていた。

 

都は電車に乗り、和彦は寒そうに街を歩いて、マクドナルド前を通りかかった。

 

洋館へ行った都。門扉を入り、玄関まで歩く中、泣き声が聞こえた。竜彦が竹ぼうきを放り出して、建物の隅に小さくなって泣いていた。(つづく)

 

次回予告

竜彦「怖がってる。死ぬのを怖がってる」

都「私にできること、ない?」

竜彦「あるとも。ひとつだけ頼まれてくれ」

 

ご期待下さい

 

でもさ、和彦が1964年生まれだとすると、1983年に入学しても卒業は1987年3月、一浪しても1988年3月とバブル真っ盛り! どこの大学とか関係ないよ!と氷河期世代は思う…あと3話。早く見たいような、見終わるのがもったいない気もする。

 

竜彦の弱さも描いているのがいいよね。そして、真弓もとてもよかった。

 

今更、鶴見辰吾さんの旧ツイッター見つけた。