1962年 日本
あらすじ
高峰秀子が貧困にあえぎながらも恋と文学に生きる主人公を熱演。巨匠・成瀬巳喜男監督が林芙美子の自伝的ベストセラー小説を映画化し、作家として生きる女性の波乱万丈の半生をつづった文芸ドラマ。昭和初期の東京。ふみ子は母親と行商をしながら暮らしていたが、生活苦からカフェーの女給になる。ある日、ふみ子の書いた詩が、詩人で劇作家の伊達の目にとまり同人雑誌の仲間に誘われる。やがて2人は一緒に暮らし始めるが…。
2024.10.3 NHK BS録画。
昭和三十七年度
芸術祭参加作品
創立30周年
記念映画
東宝株式会社 配給
宝塚映画作品
ふみ子という女の子が路地を走り、母親のきしに「お父ちゃんが警察に行った」と知らせた。売っていた化粧水が腐っていたと言う。
♪一瓶つければ さくら色
二瓶つければ 雪の肌
父はアコーディオンで歌いながら売る行商人で、警官の前で歌わされ、うどん粉でどうにかなるかい!と殴られた。
製作:藤本真澄
寺本忠弘
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林芙美子作品
菊田一夫舞台製本より
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脚本:井出俊郎
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音楽:古関裕而
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林ふみ子:高峰秀子…字幕黄色
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福池貢:宝田明…字幕緑
安岡信雄:加東大介…字幕水色
藤山武士:小林桂樹
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きし:田中絹代
日夏京子:草笛光子
伊達春彦:仲谷昇
白坂五郎:伊藤雄之助
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田村:多々良純
謙作:織田政雄
上野山:加藤武
村野やす子:文野朋子
勝代:賀原夏子
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君子:北川町子
時子:紅園ゆりか
家政婦:中北千枝子
初子:矢吹寿子
玩具工場の女主任:菅井きん
眼鏡の男:伊藤久哉
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おかみ:万代峯子
商人:石田茂樹
西原:中山豊
のぶ:小西ルミ
お千代:河美智子
まさ枝:吉川雅恵
編集長:遠藤辰雄
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お秋:青木千里
みどり:稲野和子
八重子:八木昌子
女給:林美智子
森明子
森川ひろ子
宇野美子
女給:霧島八千代
加賀元女
時子の母:梅香ふみ子
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木賃宿の主人:内田朝雄
楠義孝
出版記念会招待客:福山博寿
妻紀一平
梶川武利
山本稔
編集長:西沢利明
杉裕之
笈田勝弘
知氣成一
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細谷清
学生:岸田森
学生:草野大悟
学生:橋爪功
森金太
砂川明美
千草千代
小坂沙代
千原万紀子
土佐林道子
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監督:成瀬巳喜男
キャストクレジットが出てる間は、父・謙作、母・きし、ふみ子で大きな荷物を背負って歩いている様子など。オープニングが終わるとふみ子は子役から高峰秀子さんにチェンジ。きしと行商を続けているふみ子。
下宿先に戻ったふみ子ときし。不景気で商売もうまくいかず家賃もたまっている。下宿先の大家は、ふみ子が青バスの車掌になれば45円はもらえるときしに勧める。ふみ子たちは東京、謙作は九州で商売をやっているがうまくいっていないと手紙が来ていた。
同じ下宿の隣人・安岡が声をかけたが、ふみ子は安岡も父親も嫌っている。隣人といっても普通の家のふすま一枚隔てた隣。謙作には8つから育てられ、女学校にも行ったときしは言うが、ふみ子は女学校は工場で働きながら行っていて、夏休みには女中奉公と行商て稼いでいたと反論する。
「別れて生きる時も」の美智と似た環境? ふみ子は、きしに親子の縁を切るから、お父さんのところへ行っちまいなさいと言う。自分は淫売でもなんでもすると言って、きしを驚かせる。
安岡は、つくだ煮が安かったからと分けてくれた。印刷工場の職工で4〜5年前に妻を亡くしている。なんでそんなに嫌うかねえと言うきし。ふみ子は香取という男が好きで忘れられない。きしにお父さんのところに行ってあげて、私は一人でやってくと言った。
女子事務員募集
資格 高女卒業
面接 八月五日午前九時
自筆履歴書持参の事
廊下には女性たちの長蛇の列。2人の事務員に50人の募集。結局、器量の良し悪しで決まるらしい。
双葉劇団という田舎を回る劇団の支配人とミルクホールに入り、その後は事務所があるホテルの一室へ。しかし、騙されていることを察したふみ子は部屋を出た。
店の看板は井ワイ…字幕はイワヰ…どっち? 株屋で月給は弁当付きで35円。9時から4時まで。玉(ぎょく)づけ=簿記ができるか聞かれ、帳面を見せられ、やったことのない複式簿記で汗を拭き拭き、そろばんを弾いた。イワヰから「シュッシャニオヨバズ」と電報が届いた。
下宿先の大家が勧める青バスの車掌は近眼で不合格だとふみ子が言う。
安岡がふみ子の部屋にお金の入った封筒を置いていたが、ふみ子は返し、仕事が決まったと言う。
玩具のセルロイドの色塗りに通っている。日給は75銭。女工になって2か月。厳しい主任は菅井きんさん。仲の良い君子から女給にならないかと誘われた。帰り道、本屋に寄らずにおれないふみ子。
家に帰るときしから手紙が来ていた。きしはリウマチで行商に行けず、3円でも5円でも送って欲しいと書いてあった。安岡が今日は月給日だからとトンカツを分けてくれ、ふみ子はお金を貸して欲しいと頼んだ。本なんて買わなきゃよかったと言うふみ子に安岡は、ふみ子に影響されて石川啄木の詩集を買ったと話す。
安岡は60円もあれば2人で暮らせると思うと言うが、ふみ子は自身が一度結婚している、お金を借りていて申し訳ないが、あなたと世帯を持つことが身につかないと断った。
カフェ
伊達というインテリ風な男が女給相手にしゃべっている。仲谷昇さんかあ。詩人で劇作家の伊達を女給たちがふみ子に紹介した。ふみ子の書いた詩を読んで、感心し、もっと作品を見たいと言う。
部屋で夢中になって詩を書くふみ子。安岡は天気のいい日曜日に散歩に誘う。ふみ子はまだお金を返してないことを気にするが、安岡は縁がつながっていると感じていると話した。
ふみ子の部屋に伊達が遊びに来て、安岡は部屋に戻り、ふみ子は天気がいいから外に出ない?と散歩に誘った。伊達は仲間と同人(どうにん)雑誌を出すから仲間に入ってくれないかと誘い、ふみ子は無邪気に喜ぶ。ここで妻の悪口を言う伊達。新しい女を口説くときは前の女の悪口を言うのがお決まりのコースだと笑うふみ子。
昔の女流作家は不倫ばっかり。
伊達と暮らし始めたふみ子。伊達は、ふみ子を養うことはできず、ふみ子はカフェの女給や牛飯屋の女中で働こうとする。
カフェ
ふみ子は飲みながら美声で歌う。学生のお客さんの一人が橋爪功さんかあ。しかし、すぐに辞めさせられた。
下宿先の大家に針と糸を借りて伊達の上着を繕い直そうとしたが、ポケットに女性からの手紙が入っていた。差出人は日夏京子。おお〜、草笛光子さん!
伊達は京子も口説いてたのね。下宿先に帰ったふみ子と京子と鉢合わせし、お互い妻だと言い張る。伊達は京子の前で“林さん”と呼び、京子は妻を苗字で呼ぶかしら?と勝ち誇った表情を浮かべる。
またカフェ勤めに戻ったふみ子。陽気に歌い踊る。裏口で時子という女給に母親が金をせびりに来ていた。ふみ子は時子にあんまり無理をさせないでとお金を貸す。
「太平洋詩人」の白坂に詩を書かないか?と誘われた。原稿料なし。詩を書いてる時のねえさんがとてもきれいだと時子が言う。この店の女将?が賀原夏子さんか。若いね。
道端で安岡に再会したふみ子。本郷の下宿先から探し当てたのかい!
編集部に紙を持ち込んだふみ子。10枚で1円50銭。アンデルセンでも読みなさいと言われて、ムッ。
カフェ
時子は親分と呼ばれる田村に誘われて困っていた。田村と部下の西原は下品な会話をし、酔っ払ったふみ子は田村たちに絡む。
白坂は福地と京子を店に連れてきて、ふみ子を紹介した。白坂はどちらも伊達の細君だったねと気づくが、二人で同人誌を出したらどうかと提案した。京子も伊達とは別れていて、白坂は京子が好き。
雨の日、ふみ子の下宿先に福地が来た。足が膨らんできて、足に穴が空くと足をさするふみ子に福地は麦飯を食べたらいいとアドバイス。原稿料が入ったから飯に行こうと誘う。
初子という女給が時子がふみ子に借りていた6円50銭を返しにきた。時子は土建屋の親分のお妾になり、お手当は月80円。仕立てのいい着物を着ていたと初子が言う。
福地と結婚したふみ子。それぞれ机に向かって原稿を書く。ふみ子のもとに半年前の童話の原稿料3円の為替が届いた。福地は、ふみ子が原稿料をもらったことにイライラしたのか自分の原稿を届けてくるように命じた。編集者に別のところに持ち込むように言われ、帰ったふみ子は料理を出したが、イライラした福地にお膳をひっくり返した。
その後も雑誌社に福地の原稿を売り込むが売れない。自分でやれ!
白坂にお金を借りに行ったふみ子。白坂の家には京子と詩人の村野やす子がいた。白坂と京子は、まだ結婚してないのね。
帰ってきたふみ子にまたイライラしている福地は、お前なんかと暮らすのはこりごりだと言う。ふみ子の元にきしが訪ねてきた。福地は机に向かい、ちょっと振り向いて頭を下げただけで言葉をかけることもなく、家を出て行った。ふみ子はすすり泣く。今度結婚するときは、ものを書く男はやめると言う。
今度は謙作も東京に来て安物の輪島塗りを売るつもりでいるというきしに早く帰るように言うふみ子。きしは一緒に田舎に帰って行商をしようと言う。
白坂と香子、やす子と福地の家に行ったが、誰もいない。しかし、上がり込んで話し始める。白坂は坊ちゃん育ちでふみ子の貧乏くさい詩が嫌いだと悪口を言う。京子もふみ子は面食いだと言う。確かに。伊達も福地もめちゃくちゃかっこいい。
やす子が「女性芸術」に散文を書かないかと京子とふみ子を誘う。福地は外で話を聞いていて、ふみ子にお前に書けるかと罵る。白坂たちが帰ると、新しい女ができたから出ていけと言う。
また住み込みの女給を始めたふみ子だが、仕事を休んで原稿を書いていたことが女将にバレ、店に出ると福地が来た。「いつ帰ってくるんだ」って。ええ?
結局、福地のもとに帰ったふみ子のもとに京子が来て、原稿を届けてくれないかと頼んだ。京子は北海道の白坂の家に挨拶に行く。
安岡がふみ子を訪ねた。ふみ子は福地に安岡を紹介した。福地は肺病で顔色が悪い。ふみ子は安岡に手紙を出して20円を借りた。安岡の前でふみ子を殴る福地。安岡は、林さんは私のことなんか何とも思っちゃいませんとフォロー!?
出ていけと暴力を振るう福地に今度こそ出ていく!と言うふみ子。
ふみ子は「放浪記」が雑誌に載った。京子とやす子が訪ね、京子がふみ子をビンタした。ふみ子は10日も遅れて原稿を届けて、間に合わなくなり、今日限り書くのをやめると言う京子。
絵描きの藤山の部屋で夜中でも原稿を書いているふみ子。何だ、もっと人がいたのか。ここが木賃宿か。男女問わず雑魚寝!? のぶという女性が駆け込んできて、刑事が乗り込み、ふみ子がかばったために刑事に連れて行かれた。名古屋章さん若い!
「放浪記」出版パーティー
貧乏話を売りにしていると悪口を言われているが、福地が駆けつけ、「放浪記」の感想を述べ、褒め、祝辞を終えると、すぐに帰った。「放浪記」だけが私じゃないと燃える。
時が経ち、雑誌の連載4本、新聞連載2本を抱えるふみ子。原稿を待つ編集者たち。安岡ときしが話をしている。家政婦のいる立派な家に住んでるんだね。安岡は今は印刷会社の社長をしていて、今も独身。
慈善事業、親戚と名乗る者、同人誌を作ってる若者が訪ねてきたが、貧乏人は働くしかないと冷たい。安岡は食うや食わずの時代を知ってるから自分のことは自分ですべきとふみ子をフォローし、ふみ子の体調を気遣った。
今の夫は藤山? やっぱりふみ子は面食いなんだね。疲れたと机に突っ伏したふみ子は、幼い頃に両親と行商していた頃を思い出していた。
花のいのちは
みじかくて
苦しきことのみ
多かりき(終)
同じ原作、監督、主演で最後の詩?も一緒。林芙美子の座右の銘?
林芙美子さんは「放浪記」で人気作家になれたが、1951年に47歳で急逝。森光子さんが舞台で演じていて、毎年ワイドショーでやっていたけど、林芙美子さんがそんなに早く亡くなった人とは知らなかった。