TBS 1978年2月21日
あらすじ
美智(松原智恵子)は麻子を連れ、九州の海辺の村にかけつけた。南方へ送られる井波(中野誠也)は死を覚悟し、上官の命を破り妻へのメモを知人に託したのだ。親子三人わずか五時間の再会だった。 一年が過ぎたある日、美智は石山(速水亮)に会った。彼は松本(織本順吉)の軍需工場の担当将校だった。独身の石山に結婚を勧める美智。やがて井波の戦死公報がきた。
2024.10.4 BS松竹東急録画。
原作:田宮虎彦(角川文庫)
*
井波美智:松原智恵子…字幕黄色
*
松本:織本順吉
*
吉岡俊子:姫ゆり子
*
吉岡純子:神林由香
井波麻子:羽田直美
*
中村ふく:安東結子
職員:兼松隆
ナレーター:渡辺富美子
*
石山順吉:速水亮
*
音楽:土田啓四郎
主題歌:島倉千代子
*
脚本:中井多津夫
*
監督:八木美津雄
<初め優勢のうちに勝ち進んだ大東亜戦争も敗北の兆しを見せ始めた。日本軍は一旦、手中に収めた南方の基地をほとんどアメリカ軍によって奪い返され、そして、サイパン島、グアム島の空軍基地から飛び立ったアメリカ軍の大型爆撃機が、ついに日本本土を空から襲った>
優勢な頃ってあったのかねえ…ってちょっと思うけど。
防空壕に避難している美智親子と俊子親子。防空頭巾をかぶってる。
美智「今日は、どこを襲撃してるのかしら」
俊子「そうね…ここは外れだから大丈夫だと思うけど町の中の人は大変でしょうね。この間の空襲じゃ大勢の人が死んだんですってよ。焼け出された人たちは住むうちがなくて防空壕で寝起きしてるんですって。日本はこれからどうなるのかしらね」
サイレンが鳴り、外から男性の「空襲警報、解除!」という声が聞こえる。
男性「さあ、出ましょうか」
男性「今、開けますからね」
俊子「はい」
男性「ちょっと待ってくださいよ」
美智「よかったね」
男性「さあ、どうぞ」
どうでもいいシーンだけど、この防空壕にいた男性陣、すごく親切だね。
俊子「あの…ちょっと相談したいことがあるの。寄ってくださる?」
美智「はい」
吉岡家
ようやく窓にバッテンテープが貼られてる。
俊子「ちょっと待ってね。すぐ電気つけるから。どうぞ」
美智「はい。さあ、靴脱ぎましょうね」
俊子「あっ、純子ちゃん、あのね。麻子ちゃんとちょっと遊んでて。おばちゃんとお話があるの。ねっ、お願い」
美智「すいませんね、純子ちゃん。ほら、麻子、おねえちゃんに遊んでもらいなさい。ほら」
思えば、純子役の子は美智が2階に住んでる頃から変わらないんだね。
俊子「ねえ、奥さん。相談っていうのは私も働きに出たいと思ってるの」
美智「働きに?」
俊子「ええ。食料だって配給だけじゃとっても足りないし、かといって闇じゃ高くて手が出ないし、その点、奥さん、羨ましいわ」
美智「私が?」
俊子「だって働きに出てたら月々のお給料が頂けるんですもの。闇米だって買えるでしょう?」
美智「私のお給料だけじゃ、とても…」
俊子「でも、働かないでいるよりはマシでしょう?」
美智「そりゃそうだけど」
俊子「でしょう?」台所に立ってマッチに火をつける。「純子もだいぶ手がかからなくなったし、毎日ブラブラしてるだけじゃしょうがないと思うの。お国で頂く遺族手当だけじゃとってもやってけないし、内職ぐらいじゃ追っつかないし」
美智「また2階、お貸しになったら?」
俊子「ん…近頃、どんどん疎開してっちゃうでしょ。借り手なんかとても…それにうちにばかり籠もってると気持ちがクシャクシャしちゃって」
美智「じゃあ、松本社長に話してみましょうか」
俊子「あっ、もう社長には言わないでほしいわ。これまでさんざん迷惑かけてきたんだから」
美智「あら、私だって」
俊子「ううん、そうじゃないの。奥さんみたいに事務ができるんだったら無理にも頼むわ。でも私は何もできないし。だから、他になんかあったときでいいの。気に留めててくださいな」
美智「はい」
俊子「お願いします」
松本社長に言ったら早いのに!
有限會社松本製作所
電話が鳴る。
美智「もしもし、松本製作所でございます。あっ、社長」
松本「うん、お昼までに帰ると言ったんだがね、いつもお世話になってる海軍の将校さんが転任されたんでね、ちょっとご挨拶に行ってこようと思って。ええ、そうだね。2~3時間の回り道になるかな」
ほんとにいつも気軽に電話してるよな~。戦時中の描写であまり見たことない。
美智「はい、分かりました。いってらっしゃいませ」外を見る。「麻子、遠く行っちゃダメよ。そこで遊んでるのよ」
麻子「うん」
結局、松本社長が美智の目の届く場所に砂場を作ったんだな。
鶴見療養所
職員「石山中尉、松本製作所の松本さんとおっしゃる方がご面会です」
石山「うん、お通ししてくれ」
職員「はっ、どうぞ」
<この石山中尉こそかつて美智と結婚を誓い合いながら別れていった石山順吉であった>
石山はん、学生の頃より髪が短くなってる。
石山「いや、しばらくでした」
松本「どうも突然お伺いしまして。石山中尉がこちらに勤務されたと聞きましたんで、早速、ご挨拶に」
石山「はあ、それはわざわざ、どうも恐れ入ります。さあ、どうぞ」
松本「はあ」
石山「前線に出たいんですが、また内地勤務を命じられてしまいましてね。まあ、同期の連中に申し訳ないような気がしてしょうがないんですよ」
松本「しかし、石山中尉が予備学生ご出身だったとは全然気がつきませんでした。大学はどちらですか?」
石山「京都です」
「岸壁の母」の新二が本当になりたかったのって、これかな? 石山はんは裁判官になるんじゃなかったの?
松本「ああ、そうでしたか。いや、うちにも京都の女性がいましてね、事務をやってもらってますが、京都の女というのは、なかなかしとやかでいいもんですね」
石山「はあ、そうですかね。いや、僕にはそういうことはさっぱり…それはそうと、諏訪湖移転の話は結論が出ましたか?」
松本「はあ、ありがとうございます。実はそのことでお礼を申し上げなきゃならないと思いまして。来年には移転することに決まりました」
石山「ああ、そうでしたか」
松本「どうも石山中尉には何から何までご尽力いただきまして」
石山「いえ、僕の郷里があの近くなもんですから」
松本「はあ、石山さん、長野ですか?」
石山「はあ。あっ、そうだ。松本さん、どなたか、ここの仕事をやってくれるようなご婦人いませんかね」
松本「看護婦さんですか?」
石山「あっ、いいえ。まあ、掃除とか洗濯をしてもらうんですが、山梨から来てたのが空襲が恐ろしいと言って、急に帰ってしまいましてね。手が足りなくて困ってるんですよ」
松本「ああ、そりゃ、じゃ、早速心当たりを…」
石山「あっ、よろしくお願いします」
松本製作所
美智「吉岡さんの奥さんはどうでしょうか?」
松本「吉岡さんの奥さん?」
美智「ええ。そんな遠くありませんから通えると思うんです」
松本「ああ、そりゃいいかもしれんね。うん、あの人も少しは外へ出て働いたほうが気が紛れるだろうから」
美智「ええ」
松本「海軍さんのお世話をするんだからね。これもご奉公だと思ってもらって。それじゃ、よく頼んでみてくれないかね」
美智「はい、話してみます」
松本「うん」
吉岡家
俊子「やるわよ、やる。ぜひやらせてほしいって社長に言ってください。お願いします」
美智「よかったわ。断られるんじゃないかと思ってヒヤヒヤしてたんです」
俊子「断るわけないじゃありませんか。私は奥さんと違って女学校を出てるわけじゃなし、私にできることがあったらなんでもやるわ」
美智「社長もきっと喜ぶと思います」
俊子「ほんとにありがとう。純子。ねえ、お母さん、働きに行くけどいい? もう3年生だからおとなしくお留守番できるでしょ? そのかわりね、週に一度、お米だけのご飯、食べさせてあげる。それならいいでしょ?」
純子「うん」
俊子「ゲンキンなんだから。フフフフッ。あっ、いけない。お湯かけっぱなし」
純子だってお母さんの言うこと聞くしかないのにゲンキンって…松本社長も友達少なそうな美智によく聞いたよな。それにしたって美智の生育環境で喜代枝が美智を女学校に入れる気になったのは何でだろう。
松本社長が俊子と歩いている。
俊子「社長さん」
松本「うん?」
俊子「私、とっても緊張しちゃって」
松本「いや、軍隊といったって療養所だからね。気楽に働いてもらったらいいんだ。中尉さんも優しい人だしね」
俊子「はい」
石山中尉の部屋に入ってきたふく。「なんでしょうか?」
石山「うん。ちょっとこっちへ入ってくれる? こちら、吉岡さんとおっしゃって、あしたから手伝いに来てくれることになった」
俊子「吉岡俊子と申します。よろしくお願いします」
ふく「中村ふくです」
俊子「吉岡さんは、ご主人が名誉の戦死をなされて、お嬢さんと2人なんだそうだ。まあ、おうちのほうがあるんで住んでいただくのは無理としても、君もだいぶ助かるだろう。君のほうが先輩なんだからいろいろと教えてあげてほしい」
ふく「はい」
石山「じゃあ、早速、中を案内してあげてくれないか。どうぞ」
俊子「はい」
松本「それじゃ、よろしくお願いしますよ」
俊子は、ふくと部屋を出ていった。
中村ふく役の安東結子さんは「わが子は他人」の原京子君! 元の教え子の大人っぽい中学生だった。このドラマから3年半後くらいかな。さらに大人っぽくなってる。
石山「いや、しかし、松本さん、早かったですね。昨日の今日じゃありませんか。びっくりしました」
松本「早いほうがいいと思いましてね」
石山「ええ、助かりました。今まで1人だったものですから負担が重すぎたんでしょう。時々、苦情を言われて困ってたんですよ」
松本「ああ、そうですか。ハハッ」
夜、井波家に来た俊子。「奥さん! 奥さん、入るわよ」
美智「おかえりなさい。どうでした?」
俊子「おかげさまで。あっ、そうだわ。麻子ちゃん、はい、キャラメル」
美智「そんな貴重な物を…」
麻子「ありがとう」
俊子「今日、お会いした将校さんに頂いたの。5つもよ。あるとこにはあるもんねえ」
美智「じゃ、遠慮なく。それで?」
5箱のキャラメルのうち、2箱を麻子に渡す。
俊子「ええ。早速あしたから来てくださいということに」
美智「よかったですね」
俊子「今日、会った人、とってもいい将校さんだったわよ。なんとなく井波さんと似た感じがして。でね、松本さんから私が戦争未亡人だっていうこと聞いたら、急に態度が丁重になってね。お給料もなるべくたくさん出すように考えてくださるんですって。これもみんな奥さんのおかげよ。ありがとう」
美智「あっ、そんな…」
俊子「フフッ。あっ、いけない。私もお夕食の支度しなくっちゃ。麻子ちゃん、さよなら」
麻子「さようなら」
美智「ほんとにありがとうございました」
麻子は井波の写真の前にいた。
美智「お利口ね、お父ちゃんにあげたの?」
麻子「はい」美智にもキャラメルを渡す。
美智「あら、ありがとう」
写真の前に置かれた1粒のキャラメル。
松本製作所
松本「ほう。続くかどうか心配していたんだが、そんなに張り切ってるのかね」
美智「ええ」
松本「はい、これ」
美智「はい。今月は途中からでしたのに、昨日、初めてお給料頂いてみたら、まるまるひと月分、入ってたって、とても喜んでました」
松本「ハハハッ、そりゃよかった。ハハッ」
美智「ご主人に戦死されて、なんの希望もなし、うちの中へ閉じ籠もってるより、やっぱり外に出て働いてたほうが気持ちに張りが出るんじゃないでしょうか」
松本「戦争未亡人だなんて世間から奉られたって、そんなものは生きていく支えにはならないからね。吉岡さんの奥さんだって、これから先がまだ長いんだから、何が生きがいかということをよく考えてあげないと。いや、その点ね、私もちょっと考え違いをしていたかもしれん。女の人が働きに出るということがなんとなく惨めに思えたりして…」
美智「それじゃ私もこれまで惨めに見えてたんでしょうか?」
松本「うん? いや、あんたの場合は惨めというより大変だなという印象が強くて、麻子ちゃんがいるからね」
美智「あら、吉岡さんの奥さんにも純子ちゃんがいますわ」
松本社長…惨めって…
松本「ハハハッ、こりゃ参ったね。ところでその純子ちゃんは心配ないのかね?」
美智「ええ、純子ちゃん、おとなしくお留守してるんですって。この前なんて奥さんが帰ってみたら、ちゃんとお食事の支度をしてまってたんですって」
松本「ほう」
美智「時々、海軍の将校さんが下さるお菓子を楽しみに待ってるんだって、そう言ってましたわ」
松本「ハハハハ…ご苦労さん」
美智「社長。今日は5時に帰ってよろしいでしょうか? 吉岡さんの奥さんと待ち合わせをしてるんです。多摩川のお百姓さんのおうちへお芋の買い出しに」
松本「ああ、そりゃ大変だね。あんまり重い物担いで腰抜かさんようにな」
美智「はい」
駅の階段を下りていた石山は美智の姿を見つける。何で石山はんが美智の最寄り駅にいたんだろう?
美智「麻子、帰りはね、お芋しょって帰らなきゃいけないから1人で歩くのよ。いいわね?」
麻子「うん」
石山「塩崎さん! 塩崎さんじゃありませんか?」
麻子をおんぶして階段を上っていた美智は石山の声に振り向く。
石山「やっぱり塩崎さんでしたね」
頭を下げる美智。
石山「しばらくでした」
視線をそらした美智のほうへ立ち直す石山。「お子さんですか?」
美智「はい」
石山「東京にいらっしゃるなんて、ちっとも知りませんでした」
美智「失礼します」
階段を上っていく美智を見送る石山。
駅のホーム
俊子「あっ、奥さん」
美智「すいません。お待ちになった?」
俊子「いえ、今、来たとこ」
美智「前のほう行きましょうか。空いてるから」
俊子「ええ、そうね」
俊子と一緒にいる美智を見ている石山。
俊子「ねえ、奥さん。今日、これを換えようと思って。ちょっと見て」
美智「ええ。ほら、麻子」
俊子が風呂敷包みを広げる。
美智「あら、いい物ね。もったいないわ」
二人の様子を見ていた石山だったが階段を降りていった。
井波家
一升瓶の中に入った米をついてる美智。急に戦争中になったな!
<美智は石山との過去を昨日のことのようにはっきりと記憶していた>
回想
ノートには”美智”と6回ほど書いてあった。
石山<<あっ、それは…>>
サッとノートを取り上げる美智。
石山<<あっ、ダメだよ、それは。見ちゃダメだよ。美智さん>>後ろ手にノートを隠した美智を抱きしめる形になって、体を離した。
美智はノートを返し、帰ろうとしたが、石山が呼び止めた。<<美智さん、好きだった。ずっと前から。僕が大学を卒業したら結婚してほしい>>
驚いて振り向く美智。
石山<<それまで待っててほしい>>美智を抱きしめキス。
<それから半月ばかりたったある日、突然、石山は自分の前からいなくなり代わりに彼の父親が訪れた>
石山の父<<どうぞ>>
石山の手紙
<<「塩崎美智様
なんと言ってよいか分からないのですが、父といろいろ相談した結果、父の意見に従うことにしました。父の申し上げたことは、そのまま僕の考えだと思ってください。二度とお会いすることはないでしょうが、お幸せを祈ります。申し訳ありませんでした。おわびします。 石山」>>
涙をこらえる美智。
ぼんやり川のほとりを歩いていた美智は川面を見つめる。
<石山は、いわば自分の身も心も奪いながら裏切り、死の決意に追い込んだ人であった>
回想ここまで。長い! 小野木もキスシーンあったよな? 夫である井波さんだけキスシーンなしか。
美智は井波の写真の前に行く。「あなた。いつかあなたにも話したわね。今日ね、何年ぶりかであの石山さんに会ったのよ。でも平気。私たちは別れていてもお互いの心の中に生きてるんですもの。そうよね、あなた」写真を抱きしめる。(つづく)
思いっ切り動揺してるじゃないの! 今日もエンディングなし。
あらすじだと井波と会って1年後に石山と再会したとあるけど、もう昭和20年になってるのかな。時の流れがさっぱり分からない。
