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【ネタバレ】別れて生きる時も 第十七章「運命の糸」その四

TBS 1978年1月26日

 

あらすじ

再出発を胸に美智(松原智恵子)は東京へきたが、日中戦争の最中。足を棒にしても仕事はなく、疲れ果てて往来に倒れた。栄養失調だった。 美智を助けた松本(織本順吉)は印刷会社の社長。行き倒れが縁で美智は松本の秘書として雇われた。が、平安な日は短かった。血まなこで美智を捜していた小野木(伊藤孝雄)に見つかり、彼は逃げる美智に暴力をふるった。

愛の花

愛の花

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2024.9.10 BS松竹東急録画。

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原作:田宮虎彦(角川文庫)

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塩崎美智:松原智恵子…字幕黄色

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松本:織本順吉

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山村:名倉美里

光田(みつだ):桧よしえ

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戸田:磯部稲子

仲居:神戸泰子

ナレーター:渡辺富美子

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小野木宗一:伊藤孝雄

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音楽:土田啓四郎

主題歌:島倉千代子

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脚本:中井多津夫

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監督:今井雄五郎

 

美智が上京して初めて東京に来たときに映し出されたニコライ堂の近辺を歩く小野木! 地図と手帳を手に歩いている。

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<小野木が上京して既に1週間目になっていた。その間、小野木は東京に出張した小川課長が見たという神田周辺の道を毎日、朝から晩まで歩き続けていたのである。神田の隅から隅までしらみつぶしに調べ上げても美智を捜し出そう。それほどの執念であった>

 

疲れた様子で橋の欄干にもたれかかりタバコポイ捨て。若い女性が通りかかると正面に回り込んで顔を見る。ロケで商店街を歩いてるけど、エキストラの服装こそ昭和15年っぽさを出してるけど、街並みはそのまま昭和50年代って感じだね。でも、やっぱりロケ多めなのはいいね。小野木は頭をかきむしり、イライラ。

 

東亞印刷

光田「もしもし、東亞印刷ですが。塩崎さん、今、工場のほうですけど何か? 呼んでくるんですか? はい」

ちょうど部屋に入ってきた美智。

光田「塩崎さん、電話よ。男の人から」

美智「男の人? 私にですか?」

光田「そうよ」

美智「何かの間違いじゃないでしょうか。私にかかってくるはずありませんから」

光田「分からないわよ。誰か塩崎さんに恋をしてる男の人から誘いの電話がかかってくることだってあるでしょ」フフッと笑い、「早く出ないと社長に叱られるわよ」

美智「社長?」

戸田と山村が笑っている。

 

光田ジョーク? 意味分からん。光田さんって、キャラ的に佐藤仁美さんが演じるような役を思い出すような感じ。前髪ぱっつんポニーテールは大山のぶ代さんっぽい。

 

美智「もしもし、塩崎です。お待たせして申し訳ありませんでした」

松本「あっ、今ね、万世橋にいるんだがね、そろそろ時間だから、会社閉めたらね、橋の近くの…ほら、竹むらっていう店があったろ。うん、そこまで来てくれないかね。いや、君をね、ちょっと連れていきたい所があるんでね。うん、ええ」

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店員「お待ちどおさま」

 

テーブル席で向かい合って、おしるこ?を食べている松本と美智。

松本「この間ね、君の部屋に行って驚いたんだ。家財道具がなんにもないだろ。今日はね、何か買ってあげようと思って」

美智「社長、私…」

松本「どうして? 遠慮することないじゃないか。次の賞与からね、引いておくから。そう、まず…たんすかな?」

美智「フッ、社長ったら、おかしくて」

松本「なぜ?」

 

美智「中に入れる物が何もないのに、たんすを買っていただいたって使い道が…」

松本「いや、そういう物はね、だんだんに増えていくもんだ」

美智「じゃ、増えたときに買っていただきます」

松本「しょうがないな。しかし、茶だんすぐらいは必要だろう」

首を横に振る美智。

松本「人がせっかく買ってあげようっていうのに。とにかく行こう。ねっ」

 

竹むら」ののれんをくぐった山村が会計に向かう松本社長と席でお茶を飲んでいる美智を発見。

 

松本「これ…このくず餅、包んでくれないか?」

店員「はい」

 

ニヤッと笑って店を出た山村。

 

店員「55銭頂きます。ありがとう存じました」

 

美智が席を立つ。後ろのガラス窓に小野木! 店の前を歩いていただけで、美智の存在には気づいていない。店の出入り口前を通り、タバコに火をつけ、マッチはポイ捨てして歩き出したところに松本社長と美智が出てきた。松本社長にくず餅の入った箱をもらった美智は小野木と逆方向に歩きだす。

 

うわー、ニアミス!

 

松本「ああ、そうだ、鏡台にしよう、ねっ。女の部屋に鏡台がないのは、おかしいからね」

美智「まあ…」

松本「ハハハハッ」

 

山村もこっそりあとをつける。

 

部屋に戻った美智。

 

<松本の優しい支えは美智に日ごと明るさを取り戻させていくようであった。同僚のそねみが気になるにしても小野木のことも忘れて、今の美智は、やっと平穏な毎日を送れるようになっていたのである>

 

東亞印刷

光田「え~、それじゃ、家具一式みんなそろえてもらっちゃったの?」

山村「そうなのよ。もう2人で鏡台なんか見ちゃってさ、あの様子じゃ、塩崎さん、どこかにうちでも借りてもらって、社長が時々出入りしてんじゃないかしら」

戸田「それだったら、お妾さんとおんなじじゃない。なんだか私、塩崎さんって人、気味が悪くなってきたわ」

光田「でも、驚いたわねえ。よくも平気で、あんな涼しい顔してられるわね」

 

廊下を歩いてきた松本は女性社員たちの会話を立ち聞きした。

 

光田「もう、ずっと前から関係ができてたのよ、あの2人。どうりでおかしいと思ったわ。どこの誰とも分からないような行き倒れな女を人情だけで親切にできるわけないもんね」

山村「そうよ。ねえ、社長、塩崎さんを奥さんにする気でいるんじゃないかしら。だってさ、昨日だって社長、塩崎さんのそばに旦那様みたいな顔してさ、もうニコニコしてんの。ほっぺた、こんなたるんじゃってさ」

笑う光田たち。

戸田「でもさ、奥さんにするったって、社長とは親子ほども年が違うでしょ?」

光田「そんなこと世間にざらにあることじゃない、ねえ?」

戸田「ふ~ん、塩崎さんの気が知れないわね」

 

あとをつけるなんて暇だなとは思うけど、ここまで言われちゃうのは、やっぱり松本社長のせいだと思うけどな。言われても仕方のない行動をしてる。美智が、じゃなく、社長がよくない。

 

<松本が自分の胸にある陰りを覚えるようになったのは、そのときからかもしれなかった。ふと小耳に挟んだ女の子たちの心ないうわさ話が、やはり自分の胸の片隅に眠っている心の真実を言い当てていることを松本は否むことができなかった。それだけに一種の動揺すら覚え始めていた>

 

父親的な感情で近づいてる気になってたけど、ゆくゆくは奥さんにできたらな~と思ってたんだとしたら、ちょっとね…三浦先生みたいになんとかギリギリ抑えてください。

 

写植室?に美智が入ってきた。「社長、晶文(しょうぶん)社に請求書、届けてまいりました」

松本「あっ、どうもご苦労さん。さっき電話があった。今日中に銀行に振り込んでくれるって」

美智「それから、とうかい印刷に寄って小切手頂いてきました」

松本「ああ、そう」

美智「あの…ほかに何かご用は?」

 

松本「そうだね。少し休んだら、この校正見てもらおうか」

美智「はい。お茶入れてきましょうか?」

松本「ああ、頂こうか」

美智「はい」

 

松本「あっ、塩崎君」

美智「はい」

松本「今夜、一緒に映画、見に行こうか」

美智「映画ですか?」

松本「うん。君はまだ東京へ出てきて、一度も映画なんか見たことないんだろ?」

美智「はい」

 

松本「よし、じゃあ、今夜一緒に行こう。そうだな、浅草がいいかな、それとも銀座のほうに出てみるか」

美智「私はどちらでも。ほんと言ったら両方行きたい思います」

松本「よし、それじゃ、今日は浅草にして、この次に銀座に行こうか」

美智「ええ」

 

なんでああまで噂話されて映画に誘うのか。

 

料理屋

座敷席で食事をする松本と美智。

 

店員「いらっしゃい~!」

太鼓の音

店員「どうぞこちらへ」

 

来店客が来ると太鼓を鳴らす面白い店。

 

美智「社長、どうされたんですか? なんや元気がないような」

松本「うん? いや、久しぶりに映画を見たんでね、ちょっと疲れたのかもしれない」

美智「私のためにすいません」

松本「何を言ってるんだ。私には家族がいないからね。時にはこうして自分の娘を連れて歩くような気分に浸るのも、なかなかいいもんだ」

美智「社長は、ずっと一人で寂しいと思ったことあらしまへんか?」

松本「うん、今まではね。自分一人で印刷会社をここまで持ってくるのは、そりゃあ大変だったからね。まあ、仕事に打ち込むことで自分の寂しさを紛らわしていたのかもしれない」

 

店員「お待ちどおさま。お下げします」

松本「ああ」店員が去るのを待って「しかし、なんだね。人間の縁って不思議なもんだね。もし君がうちの会社の前で倒れてなかったら私と君とは全く赤の他人で、こうしておしゃべりすることもないだろうし」

美智「私も時々、あのときのことを思い出します。もし、社長に巡り合ってなかったら、今頃、どうなってたか。多分、今頃は死んでたかもしれません。そな思います」

松本「まさか…」

 

首を横に振る美智。「近頃、つくづく思うんですけど、世の中って悪いことばかりやないって、こうして社長に実の娘以上にかわいがってもろうて、あんまり幸せすぎてバチが当たるんやないか、そんなふうに思えて…」

松本「塩崎君。今からそんなこと言っちゃおかしいよ。これから先、もっともっと幸せにならなきゃならないっていうのに」

美智「私、これ以上、幸せになりたいなんて思いません」

松本「何を言ってるんだい。これから先、結婚して…」

美智「いいえ。私…結婚なんて二度としません。本当です」

松本「君、これから先、本当に結婚しないつもりかね?」

美智「はい」

 

松本「もしも…もしもだよ」

美智「?」な表情。

松本「いや、なんでもない。あっ、君に何かしてあげたいと思うんだが、私にしてほしいと思うことはないか?」

美智「今までに十分してもろうてます」

松本「あっ…さあ、これをおあがり」

美智「はい、いただきます」

 

松本社長、やべーこと言いだそうとしてた!? 

 

旅館幸運館

窓を開け、ネクタイを締めてる小野木。

 

仲居「ごめんください。お客さん、今日、お発ちですね」

小野木「…」

仲居「確かゆうべ、そうおっしゃってましたけど」

小野木「いや、あしたにするか」

仲居「じゃあ、あしたの朝、お発ちっていうことですね?」

小野木「そういうこっちゃ」←面倒そうに言うな

 

仲居「お客さん、お発ちになるのが延び延びになってますけど、毎日、何なさってるんですか?」

小野木「神田の町を歩き回っとるんや」

仲居「毎日毎日ですか?」

小野木「そうや」

 

仲居「神田の町、歩き回って何なさってるんです?」

小野木「人の顔を見てるんや」

仲居「人の顔?」

小野木「人捜しをしてるんや」

仲居「京都からわざわざ人捜しに」

小野木「そうや」

 

仲居「一体、誰、捜してるんです?」

小野木「妹や。悪い男にだまされて東京に連れていかれてしもうてな。(写真を取り出し見せる)この女やけど、どこぞで見た覚えないか?」

仲居「わあ、きれいな人。この方が神田にいらっしゃるんですか?」←字幕は”わあ”だけど、私には”あら”に聞こえた。

 

小野木「らしいんや」←なぜか仲居をガン見している。距離も近い。

仲居「もし見つからなかったらどうなさるおつもりですか?」

小野木「また出直してくるんや」

仲居「京都からわざわざ」

小野木「そうや。見つかるまでなんべんでも出直してくる」

 

交番

小野木「すんません。ちょっとお尋ねしたいんですが」

警官「うん? なんだ?」

小野木「あの…旅籠町ってのは、どの辺りでしょうか?」

警官「旅籠町?」

小野木「はい」

警官「それなら、その橋を渡ってだな、左へ曲がった所だ」

小野木「私、今、通ってきたばっかりなんですけど」

警官「本官の言うことに間違いはない。あの橋を渡って、左へ曲がった所だ」

小野木「はあ、どうもすみません」

警官「うん」

 

小野木は警官から教えられた道へ進まず、警官が首を傾げる。そして、地図を見て下を向いて歩き、そば屋の出前持ちとぶつかった。

 

小野木「あっ…」

そば屋「バカ野郎、気をつけろ! ったく、どこ見て歩いてんだよ」

小野木「どうもすみません。ちきしょう、美智のヤツ…」←完全なる逆ギレ

 

東亞印刷

電話している松本社長。「いや、間に合わなければ困るんだよ。うん。じゃあね、もう、この仕事はなかったことにしよう。こっちから原稿取りに行かせるから。えっ? いや、もういいよ。うん、こっちでなんとかする」受話器を置く。「ほんとにいつもあそこは当てにならんな。塩崎君」

美智「はい」

松本「お昼が済んだらね、神田印刷に原稿を取り返しに行ってくれ」

美智「はい」

松本「光田君。君も一緒に行ってやってくれ。1人じゃ持てんかもしれんからね」

光田「はい」

松本「じゃ、頼むよ。工場(こうば)のほう、すぐ手配しとくからね」

美智「はい」

 

松本社長が出ていき、光田が向かいに座る美智の席まで近づいてきた。「塩崎さん、お昼のお弁当済んだら、ちょっとつきあわない? コーヒーおごってあげるわよ。たまには、お茶でも飲みながらお話ししたいじゃない」

美智「でも、少しでも早く工場のほうに原稿回さないと」

光田「逃げなくたっていいじゃない。ねえ、昨日、社長とどこ行ったのよ? 私、見ちゃったのよ。社長と一緒に地下鉄乗っていくとこ」

困った表情の美智。

 

地図を手にして歩いている小野木。

 

東亞印刷

美智「社長、いってまいります」

松本「ああ、急いで頼むよ」

光田「いってきます」

松本「ああ、工場のほう手を空けて待ってるからね」

光田「はい」

 

少し歩きだしたところで振り返った光田。「あんたって油断も隙もできない人ね。社長に言いつけたんでしょ? 私にコーヒー飲もうって誘われてること」

美智「そんな…」

光田「じゃなかったら、社長があんな意地悪言うわけないじゃないのよ。『大急ぎで頼む』だなんて」←勝手にむくれてる

 

橋の上を歩いていた小野木は橋の下の通りを光田と歩いている美智発見!

 

階段の途中からじっと美智の後ろ姿を見つめ、少しニヤッと笑う小野木。「美智!」

 

振り向いた美智は声も出せない。ゆっくり近づいた小野木は逃げようとした道を走って捕まえ、グーで殴る!

光田「あんた! 何すんのよ!」間に入った光田さん、すごい!

 

美智は走って逃げるが、小野木に捕まり、また殴られた。やめてー!!

 

東亞印刷前まで走って戻った美智を殴りつけ、すがりつく小野木。「美智、頼む。帰ってくれ、お願いだ。今までのことは謝る。これから大事にするよって。なっ」

首を横に振り続ける美智。

小野木「頼む。俺はお前が好きなんや。帰ってくれ。なっ、頼む」

 

拒絶の態度を崩さない美智を再び殴り続ける小野木。”これから大事にする”とは??

 

東亞印刷

光田「社長、大変です。塩崎さんが…」

松本「塩崎君が?」

光田「塩崎さんが変な男に…」

 

松本社長はすぐ外へ。

 

小野木は気絶した美智を引きずって運ぼうとしていた。怖い!

 

松本「おい!」

無視して美智を運ぶ小野木。

松本「君、何をするんだ! 塩崎君、塩崎君」

小野木「おっさん、ほっといておくれやす。こいつは俺の女房ですよってな」

松本「君、手を離したまえ。塩崎君から手を離したまえ」

小野木「あんたはどこのどなたはんどす? 夫婦ゲンカは犬も食わんちゅう言葉がおますやろ」

松本「離せと言ったら離せ!」

 

一発殴って小野木がふらついて倒れ、松本社長が美智を光田や戸田に引き渡した。「さあ、早く連れてって医者を呼ぶんだ」

 

警察ー!と思ったけど、この時代、夫婦ゲンカで済まされちゃう!?

 

戸田「塩崎さん、しっかりしてね」

光田と戸田に抱えられた美智は額と口から流血していた。

 

小野木「こいつは何をしよるねん。人のかかあを!」

松本社長が2発殴って、小野木ふらつく。

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さすが、船村漁労長強い!

 

小野木「この…」

松本「あんた、小野木といったな。ゆっくり話し合おうじゃないか」

小野木「…」

 

宿直室で看病される美智。顔が腫れてる。(つづく)

 

うわ~! 昭和はここまでやるか! 街中で人のいる前でも殴るって相当でしょ。明日はリアルタイムだと金曜日回だからちょっとでも好転したらいいな。

 

昨日たまたま旧ツイッターで「終りに見た街」放送を知る。

山田太一原作、クドカン脚本なんて気になるので見る。