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【ネタバレ】岸壁の母 第十一章「貧乏に負けない」その一

TBS 1977年11月21日

 

あらすじ

新二(大和田獏)は明るく成長し、いせ(市原悦子)の胸は希望に満ちていた。しかしある日登山に行った新二は遭難してしまい、友人が命を落としてしまう。いせは新二を立ち直らせようと必死だった。

岸壁の母

岸壁の母

2024.7.8 BS松竹東急録画。

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冒頭はお決まりのシーン。青白画像。船が港に帰ってくる。

いせ「石頭(せきとう)教育、13981(いちさんきゅうはちいち)部隊、荒木連隊、第1大隊、第6中隊の端野新二(はしのしんじ)を知りませんか? 端野新二知りませんか? 端野新二を知りませんか? 端野…新二~!」

 

端野いせ:市原悦子…字幕黄色。

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端野新二:大和田獏…字幕緑。

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石田:長澄修

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小宮:日吉としやす

亜紀子:沙川露里

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柏原:福崎和宏

窪田:山崎義治

高久洋

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音楽:木下忠司

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脚本:高岡尚平

   秋田佐知子

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監督:菱田義雄

 

昭和十六年

 

端野家

掃除をしているいせ。

 

<光陰矢の如しと申しますが、ホントに月日のたつのは早いもんですねえ。新二と2人で東京へ出てきて10年の歳月が流れました>

 

2階へ上がり、新二の部屋にはたきをかける。

 

<おかげさまで新二も貧しい暮らしに不平も言わず、親の私がこう言うのもおかしいんですが、素直に明るく成長してくれました>

 

机の上の「新映画」という雑誌をめくる。

テルミークレンジングという化粧品の広告ページ

パラパラッと映画の写真も見えるんだけど、作品名は分からないな。

 

<年頃でしょうか。ちょっぴりおしゃれになりましてね>

 

雑誌の間にプロマイドが挟まれていた。

いせ「何? 片岡千恵蔵さん。『愛染かつら』。ほう~。ふ~ん」

なぜか腕組みして首を傾げている新二の写真まであり、いせは写真の新二と同じ表情をし、ほほ笑む。

 

帰り道

新二「やっぱりチェーホフなら『桜の園』だな」

小宮「そうかな? 僕は『三人姉妹』がいいと思うけど、読んだ?」

新二「いや、まだ」

小宮「じゃ、貸してあげるよ。家に来ないか? 全集があるんだ。あっ、それで新しいレコード買ったばかしなんだ。これがいいんだよ」

新二「ふ~ん」

小宮「なっ?」

 

突然頭上から芋が降ってきた。

 

新二たちは階段を登っていて、脇の道で、いせが子供にぶつかって芋を落としていた。いせからは新二たちの姿は見えない。子供たちは「ごめんね」と謝り走り去って、いせは芋を拾って紙袋に入れている。新二は思わず身を隠す。

 

小宮「おばさん」いせにむかって芋を放り投げる。

いせ「どうもありがとう」簡単に受け取るけどさ~、すごい!

 

小宮「どうしたんだよ?」

新二「うん? いや…」もと来た道を引き返す。

小宮「あっ、君!」追いかけて走っていく。

 

いせは走り去っていく後ろ姿をじっと見て、歩いて行く。

 

小宮「おい、どうしたんだよ? 知ってる人?」

新二「いや」

小宮「ねえ、いいだろう? 一緒に家に行こうよ」

新二「うん」

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小宮役の日吉としやすさんは子役から活動されてた方で、出演作に「サラリーマン目白三平」があって驚いた。次男の冬木? お菓子を買って、一人で養老院まで行った冬木なの?? 27歳で17歳を演じる大和田獏さんよりさらに年上なのね。

 

端野家

いせが帰ってくると、家の中からクラシック音楽が聞こえる。

 

部屋でレコードを聞いていた石田に声をかけるいせは、石田にお茶を出し、部屋を出ようとしたが、呼び止められ「今月分です」と封筒を渡された。

いせ「確かにありがとうございます」

 

<2階に下宿する人を置くようになって石田さんは3人目の人だったんですが、栃木の旧家の息子さんで好感の持てる青年でした。石田さんから入る下宿代は私たち親子にとって生活を支える大切なお金でした>

この中央の方が石田役の長澄修さんでしょうか。今は演出をされてるのね。

 

封筒からお金を取りだし、数え、棚の上に置く。仏壇から蒸かし芋をもらって食べ始めるいせ。

 

立派な門構えの小宮家

♪レコード『アイネ・クライネ・ナハトムジーク 第1楽章』

 

新二「君んとこのお父さんのおかげで相撲部はなんとかやってけるようなもんだからな」

小宮「パトロンか。親父の道楽だよ。君には悪いんだけどな、どうもああいうスポーツは苦手で。嫌い?」テーブルの上を指す。

新二「いや、頂くよ」

 

室内もこりゃまた豪華。外は和風だけど、中は洋風だね。

 

小宮「この紅茶はね、ダージリンっていって、僕はこの味が一番、気に入ってるんだ。妹のヤツはオレンジペコが好きだけど」

新二「ああ…あ~」

小宮「どう?」

新二「うん、うまいよ」

 

ノックがし、小宮の妹の亜紀子が顔を見せた。小宮が紹介し、新二も自己紹介した。

亜紀子「モーツァルトね、お邪魔していい?」

新二「あっ、どうぞ」

亜紀子「端野さんのこと、いつも兄から聞いてました。相撲部に入ってらっしゃるんでしょう?」

新二「ええ」

亜紀子「お父様がいたら喜ぶのにね」

小宮「うん」

 

亜紀子「ねえ、今夜、お夕食、一緒になさったら?」

小宮「あっ、そうだ。端野君、そうしろよ」

新二「いや、おふくろに何も言ってこなかったから」

亜紀子「あら、端野さん、お母さん思いなのね」

新二、照れ笑い。

 

音楽が鳴りやみ、亜紀子は「今度はベートーヴェン聴かない?」と立ち上がる。

小宮「あっ、『運命』かけろよ」

亜紀子「ええ」

小宮は本棚から「三人姉妹」を取り出し、新二に渡した。

新二「あっ、ありがとう」

小宮「今度、君んちに遊びに行っていいかな? 君ともっと親しくなりたいんだ」

新二「ああ、そのうちにな」

 

まあ、石田さんいるし、石田さんと仲良くなれるかも。

 

端野家

壁の時計は午後6時10分。

 

石田の部屋からはまだレコードが流れている。いせは、まだ帰ってこない新二を心配しつつ石田の部屋に食事を運んだ。

 

石田「すいません。僕、おばさんたちと一緒に下で食べてもいいんですよ」

いせ「とんでもない。すぐご飯持ってきます」

 

フライや煮物など豪華なお膳。

 

いせが1階へ降りてくると、新二が帰ってきた。「遅かったじゃない。どこ行ってたの? 今頃まで」

新二「うん…」

いせ「何、その顔は? 遅くなってごめんなさいぐらい言えないの? さんざん心配させといて」

新二「いちいちうるさいなあ。ちょっと遅くなったからって騒ぐことないだろう? 子供じゃあるまいし」2階へ。

 

⚟石田「新二君、いいかい?」

 

新二「はい」

石田「おかえり。おばさん、心配してたよ」

新二「うん。友達んとこ寄ってたから」

石田「そう」

 

階段を上る音がして、いせが石田の部屋にご飯を持ってきた。「石田さん、お待ちどおさま」

石田「ああ」

 

いせ「さあ、どうぞ。新二、ご飯よ」

新二「うん」

 

石田は自室へ、新二は1階でいせとご飯を食べ始める。

いせ「なんかあったの?」

新二「別に」

いせ「おかしな子。今日、お母さん、呉服屋さんの帰りに学校のほうへ寄ってみたんだけど、あんたじゃなかった? すごく似た中学生に会ったけど」

新二「人違いだろ」

いせ「やっぱりお母さんの人違いか」

 

新二「石田さんのはフライがあったじゃない」

いせ「贅沢言うんじゃないの。うちは石田さんの下宿代でどうにかこうにかやっていかれるんだから。石田さん、お客さんだと思わなくちゃ。新二、あんた、このごろ、気が緩んでるんじゃないの? 貧乏人は貧乏人らしく暮らさなくちゃ」

新二「分かったよ、もう」

 

新二は自室へ。小宮から借りた「三人姉妹」を読み始める。

 

いせは1階でお金の計算。

 

<新二に何があったのか知りませんが、どこか足が地につかない感じが気になりました。新二や私が病気でもしたらと思い、また新二の将来のことを考えますと少しでも蓄えをしておかなくてはなりません。こうして神棚に少しずつ上げておいて月末に郵便局へ持っていき新二の名前で貯金をするようにしておりました。ホントに爪に火をともす思いの貯金でした>

 

いせが新二の部屋にお茶を運んできた。「新二、なんかあったの?」

新二「別に」

いせ「そう、はい」お茶のお盆を近付ける。

新二「いいかげんにしてよ。なんでもないんだから」

いせ「母さん、気になってね。何か心配事があるんなら母さんに言ってよ。今までだって2人で解決してやってきたんじゃないの。私たちには秘密がない、それが母さんの誇りなんだから。貧乏でもあんたが素直な子…」

新二「何もないって言ってるじゃないか。本が読めないよ。出てってよ」

 

いせは部屋を出ていった。本を閉じ、床に座る新二。

 

まわしをつけた青年たちが走っている。ほっそいなあ~。

 

相撲部の部室

柏原「やあ」

新二「柏原。どうしたんだ? 最近、学校休んでばかりいて。なんかあったのか?」

柏原「うん」

 

窪田「どうしたんだ?」

柏原「俺、学校やめるよ」

新二「えっ、どうして?」

柏原「うん。親父が死んでおふくろが商売引き継いだんだけども、どうもうまくいかねえんだ。借金は増えるし、倒産は時間の問題だ。そういうわけで学校を続けるわけには…おい、みんな。そんな顔しないでくれよ。俺、楽しかったよ、この3年間。相撲部での思い出がいろいろあって」

新二「柏原…」

 

柏原「みんな、秋の大会には頑張ってくれよな。陰ながら優勝を祈ってるよ。じゃあ、俺、今日、用事があるから。またやめる日が決まったら挨拶に来る。それじゃ」

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柏原役の福崎和宏さんも「ダイナマイトどんどん」で見たことある人だった。大和田獏さんにあわせて同世代ばかり集めたと思ったら、この方、大和田さんより6歳くらい年下だった。

 

窪田「おい! みんな、このままでいいのか? あいつがいなくなったら秋の大会に出る意味もなくなるぞ」

部員「そうだよな。柏原のヤツ、関東大会でも5本の指に入る選手だからな」

窪田「うん。どうだ? みんなであいつに金を集めてやろうじゃないか」

部員たち「うん」

 

窪田「1人1円でも2円でもいい。もっとできるヤツは少しでも多くしてくれ。俺たち仲間としてできる限りのことはしてやろうじゃないか。それから先のことは小宮の親父さんに主将から相談してもらおう」

部員たち「異議なし!」

 

窪田「お前はいいよ。お前んところ、おふくろが1人で働いてるんだろ。下宿人までいて楽じゃないんだろう?」

新二「バカにすんなよ」

窪田「そうじゃないよ」

部員「そうだよ、端野。無理するな。俺たちでなんとかする」

窪田「うん」

 

新二「それぐらい俺だってできるよ」

窪田「いいのか?」

新二「ああ」

 

端野家

仕立物をしているいせ。

 

新二と石田が出かけて行った。

 

いせは貯金通帳をかばんに入れ、出かけようとしていた。神棚の封筒を確認するとお金が足りない。「確か3円入ってたはずなのに。誰が…」

 

いせは仕立物を持って歩いている。新二の笑顔が思い浮かぶ。

 

<バカな。あの子がそんなことを…>

 

机に向かっていた石田が笑顔で振り返る。

 

<石田さんはそんなことする人じゃない。誰かよそから?>

 

蒸かし芋を頬張る新二。

 

<まさかあの子が盗みをするような…>

 

すっかり暗くなったころ、新二が帰ってきた。灯りもつけずに考え込んでいたいせは電気がついて驚く。「あっ…おかえり」

新二「電気もつけないで」

いせ「新二、座って。聞きたいことがあるの」

新二「ご飯、出来てんの?」

いせ「あとで」

 

新二「だって石田さんが…」

いせ「石田さんは大学のお友達と食事をしてくるって、だからいいの」

新二「そう」

いせ「座って」

 

新二「なんだよ?」

いせ「神棚に上げといたお金知ってるでしょう? 貯金する分」

新二「うん」

いせ「なくなってるの。あんた、知らない?」

新二「知らないよ」視線が泳ぎ、立ち上がる。

 

いせ「あんたじゃなきゃ石田さん。石田さんはそんなことする人じゃない。母さんが一番よく知ってる。でも、あんたが知らないって言うんなら石田さんに聞いてみなくちゃ」

新二「そんな…やめなよ。そんなこと」掃き出し窓を開けて縁側に座る。「石田さんにイヤな思いさせるだけじゃないか」

いせ「しょうがないでしょ。あんたが違うって言うんだったら、石田さんに聞くよりほかないじゃないの。2円もなくなってんのよ。母さんがどんな思いしてためたお金か知ってるでしょう? みんな、あんたのためじゃない。あんたを立派な人に育てたいばっかりに。あんただけが頼りで、こうやって苦労して…」

 

新二「やめてくれよ。いつも僕のためにだけ苦労してるみたいな顔。たった2円ぐらいのお金でそんなに騒ぐことないだろう? そんなに惜しけりゃ僕が稼いでくるから」

いせ「新二!」

新二「貧乏、貧乏、貧乏。たまんないよ」部屋へ。

 

かばんを壁に掛け、窓を開け、外を見る。

 

<やっぱり新二だ>

 

部屋に寝転がる新二。

 

いせは裁ちばさみに目をやる。

 

新二の部屋に入ってきたいせの手には裁ちばさみが…!(つづく)

 

今回からエンディングは2番の歌詞になりました。

 

知らない人ばっかり増えてと思ったけど、意外と見たことある人もいた。新二たちは17歳には見えないけど、70年代の人でさえ、40年代の若者をリアル10代で演じるのは難しいと思ったのか、単純に年齢幅の広い役を演じるから20代の役者になったのか…?

 

「幸福相談」から次のドラマ発表がギリギリだったのに、そこからは結構マメに宣伝してるな~。今までの木下恵介アワーでこんな場面写真付きのツイートなんて見たことないもん。

この不穏なあらすじ…友人とは誰なのか!?

 

テレビジョンも再放送番組の宣伝もしてくれてる。写真もいっぱい。

「ありがとう」第1シリーズと「あしたからの恋」は同時期で山岡久乃さんがどちらにも出演してる。娘の和枝は21歳で、光も成人してるから同じ歳くらい? でも常子さんのほうが若く見えるんだよね。25歳の息子もいるのに! 勝は、おなじみの口うるさいお母さんキャラだけど、常子は、おっとりした恋愛脳のお母さんで全然違うんだよね。他のドラマ見ても常子は山岡久乃さんが演じた役の中ではレアキャラ。

 

「あしたからの恋」は、とにかく修一&トシ子推し。週末から始まる「たんとんとん」は新さん推し。2作品の共通点は丘ゆり子さん!