TBS 1977年11月18日
あらすじ
新二(中野健)が危篤になってしまう。看病の甲斐あって助かるが、蓄えは底をついてしまう。いせ(市原悦子)は再婚を勧められるが、新二の亡き父への思いを知り、二人で生きていこうと決意する。
2024.7.5 BS松竹東急録画。
冒頭はお決まりのシーン。青白画像。船が港に帰ってくる。
いせ「石頭(せきとう)教育、13981(いちさんきゅうはちいち)部隊、荒木連隊、第1大隊、第6中隊の端野新二(はしのしんじ)を知りませんか? 端野新二知りませんか? 端野新二を知りませんか? 端野…新二~!」
端野いせ:市原悦子…字幕黄色。
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端野新二(中学生):大和田獏…字幕緑。
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端野新二(小学生):中野健…字幕緑。
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高田:上田忠好
呉服屋の店主:飯田和平
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石原:加島潤
和男:宍倉伸一郎
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音楽:木下忠司
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脚本:高岡尚平
秋田佐知子
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監督:高橋繁男
河島屋呉服店
松井「よく出来てるよ。いつもながら、あんたいい仕事するね。お客さんの評判もいいよ」
いせ「そうですか。それならいいんですけど」
松井「これからもいい仕事してくださいよ」
いせ「はい」
松井「ところで例の話、考えてみたかね?」
いせ「あれ、もうちょっと待ってくださいませんか?」
友禅の仕立物が無事仕上がってて安心した。
松井「これから先、新ちゃん抱えて女一人じゃ大変だ。もう一度、身を固める気はないかね?」
いせ「ああ…」
松井「再婚すれば生活にも余裕が出来るし、新ちゃんの将来にも何かと…いせさん、新ちゃんのためにもここはよ~く…」
いせ「旦那さんのご親切はいつもありがたいと思ってます」
松井「失礼だが、年から言って再婚するなら今がいいときだと思うがね。あと2~3年もすると、なかなか…先方もあんまり待たせてもね。まあ、よく考えてみなさいよ」
いせ「はい」
初回で33歳と言ってたので、今35歳か。
新しい反物を風呂敷に包むいせ。「いつもありがとうございます」
松井「ご苦労さま」
呉服屋の店主に松井と名前が付いた。河島屋だけど世襲じゃないのね。
端野家
石原「あっ、お暑うございます」
いせ「あら、お出かけ?」
石原「ハハハッ。こいつにせがまれましてね」
いせ「いいわね、和男ちゃん」
和男「新ちゃん、海水浴に行くんだよ」
石原「和男。それじゃ、また」
いせ「いってらっしゃい」
和男「行ってきます!」
キャストクレジットは役名が付いてたり付いてなかったりするので、ここ数日の”宍倉伸一郎”は誰なんだと思っていたら、和男ちゃんの名前だった。父の加島潤さんは「兄弟」の25話に出演してるので、今日ちょうど再放送もあるので確認しよう。
新二は石原親子を見送ると、すぐ2階へ行き、夏休みの宿題をやっていた。
いせ「新ちゃん、ちょっと話があるんだけど。新ちゃん、お父ちゃん欲しくない?」
首を横に振る新二。
いせ「あっ、そう。実は、お母ちゃん再婚勧められてるんだけど、どう思う?」
新二「再婚って?」
いせ「新しいお父ちゃんが出来ることよ」
新二「ふ~ん」
いせ「どう思う? 新ちゃん」
新二「お母ちゃんは?」
いせ「新ちゃんに聞いてんのよ」
新二「僕、どっちでもいい。お母ちゃんがいいんなら、僕もいい」
いせ「和男ちゃんみたいにどっかお父ちゃんに連れてってもらいたいでしょう?」
新二「どっちでもいい」
いせ「あっ、そう。じゃ、よく考えてみようね」
新二が1階に下りてきたので、いせも1階で作業を始める。
松井の言葉が頭に残っていた。<<失礼だが、年から言って再婚するなら今がいいときだと思うがね。あと2~3年もすると、なかなか…>>
そういや、「ちょっといい姉妹」もドラマが始まった当初は悠子が33歳バツイチだったな。子供は小学6年生だけど。
縁側に置いていたほおずきの鉢からほおずきの実を一つ取って、いせの目の前に差し出す新二。
いせ「びっくりするじゃない」
新二「お母ちゃんって呼んだのに」
いせ「そう、ごめん。考え事してたもんだから。何?」
新二「これ鳴るようにして」
いせ「むつかしいんだよ、これ」実を慎重に触っている。
新二「早く」
いせ「ダメ。焦ったら切れちゃうの」ほおずきの実を口に含み、中の種を慎重に除く。「出来た」
新二「鳴らして」
ほおずき笛の音
新二「鳴った!」いせの背中にくっつく「もっとやって」いせに何度も鳴らすようせがんだ。
新二の絵日記
八月十二日 はれ
おかあちゃんがほおずきをならしました。くさのみのふえ、ぼくもやってみましたが、ぜんぜんなりませんでした。
小学3年生ならもう少し漢字を使うんじゃないかと思ったし、この時代、カタカナ使うんじゃないかなとも思ったりして。
日めくりカレンダーは昭和8年8月25日
児童「新ちゃん!」女の子が迎えに来た。
いせ「はい。先行って」
児童「うん」
いせ「新ちゃん、早くしなさい! 宿題ちゃんと持ったの?」
新二は飛行機の模型と家の模型を手に持って、1階へ。
いせ「早く早く」
新二「これ持って」
いせ「何?」
新二「おしっこ」トイレへ
いせ「まあ…早くしなさい。うまく出来てるね、この飛行機」
⚟新二「うん」
いせ「フフフッ、早くしなさい」
トイレから出てきて、いせの前掛けで手を拭く新二。
いせ「ほらほら、戸閉めて急ぐのよ。今日からいよいよ新学期ね」
新二「うん」
いせ「今日、授業は?」
新二「宿題だけ持ってこいって」
いせ「じゃ、お昼ごろ帰れるの?」
新二「うん」
いせ「三浦先生によくお礼言うのよ」
新二「うん」
いせ「病気のときに一生懸命心配してくれたんだから」
新二「うん」
いせ「ほらほら。新ちゃん、どこへも出かけられなくてごめんね」
新二「僕が悪いんだ。病気したから」
いせ「今度、行こうね」
新二「うん」
いせ「じゃ、いってらっしゃい。気をつけて」
新二「いってきます!」家を出てすぐ転ぶ。
いせ「ほら、気をつけてって言ってるじゃない。危ない。大丈夫? ほら…工作、大丈夫だった? はい」
新二「いってきます」
いせ「いってらっしゃい。気をつけるのよ!」
雑巾で足の裏を拭いて家に上がったいせはラジオの電源を入れ、作業に取り掛かる。
♪雨の日も風の日も 泣いて暮らす
わたしゃ浮世の 渡り鳥
泣くのじゃないよ 泣くじゃないよ
泣けば…
小林千代子「涙の渡り鳥」1933/昭和8年2月公開の映画の主題歌
松竹映画なんだね。
松井「毎日暑いねえ」
いせ「あら、旦那さん。まあ…いらっしゃい」
ラジオを消して、玄関へ。
松井「新ちゃん、学校かい?」
いせ「はい、今日から。あの…まだ出来てないんですけど」
松井「うん。それはいいんだ。ちょっと一緒に行ってもらいたい所があってね」
いせ「は?」
よそ行きの着物を着て、松井と歩くいせ。
松井「手間は取らせないよ」
いせ「はい」
松井「暑いねえ。あっ、いせさん、このうちだよ。例の高田さんのうちだよ。だますつもりはなかったんだが、こうでもしないと、あんたなかなかふんぎりがつかないと思ってね」
いせ「まあ…」
松井「高田さんも今日が都合がいいっていうんで、いい機会だと思ってね。とにかく会ってみなさい。会って気に入らなきゃ断ればいい」家の中へ。「こんにちは。高田さん」
奥から高田が出てきた。毛髪のない頭頂部、瓶底眼鏡、白いスーツ。
高田「いらっしゃいまし」
松井「端野さん」
高田「高田さん。さあ、どうぞ」
いせさん、ちょっと引いてる?
高田は松井の脱いだ草履を丁寧に並べる。
松井「よさそうな人だろ?」
いせは返事をせず。
高田「今、冷たい物が参ります」
松井「いや、お構いなく。さてと…じゃ、私はこれで」
いせ「旦那さん?」
松井「いや、2人でゆっくり話し合うほうがいいでしょう。あっ、いいよ、送らなくて。まあ、お互い恥ずかしがる年でもないからね。じゃ、高田さん、よろしく」
氷屋が氷水を運んできたので、高田も玄関へ。
高田「松井さんもお一つ召し上がってくださいませ」
松井「いや、私は歯がね…まあ、何分よろしく」
高田「はあ、どうも」
氷水…今でいうかき氷の入った岡持ちを持って、高田が戻ってきた。「とけないうちにどうぞ」
いせ「はい」
高田「松井さんとは死んだ親父が知り合いでしてね」
いせ「ああ、そうですか」
高田「あなたのことはいろいろお聞きしました」
いせ「はあ」
高田「大変ですね。お子様、抱えてらして」
いせ「はい」
高田「わたくしのことは何かお聞きになりましたか?」
いせ「は?」
高田「5年前に女房を3年前に一人娘を病で亡くしましてね、財産というほどのものはありません。まあ、親父が残してくれた、この家ぐらいです。おふくろは中学生のころに死にましたし、兄弟は一人もおりませんし、親戚らしい親戚はありませんので、その点、煩わしいことは何もないと思います」
ずり落ちる眼鏡をあげ、氷水の器を倒す。「あっ…失礼しました」いせが手持ちの手ぬぐいで拭き始めたので「あっ、そ…それはいけません」と慌てて奥へ行き、布巾を持ってきた。「あっ、こっち洗います」とまた奥へ。流しで手ぬぐいを洗っている姿に笑顔になるいせ。
高田「一応洗っときましたけど、ちょっとシミになっちゃったみたい」
いせ「すみません。よろしかったのに」
高田「どうも目が近いうえにそそっかしいもんで。ハハッ。あっ…1つ余分だと思ってたらちょうどよかった。ハハハハッ」松井の分の氷水を食べ、いせも食べ始める。
見た目にインパクトのある高田役の上田忠好さんは「3年B組 金八先生」第2シリーズの荒谷二中の清水! あの役とは全然違って悪い人ではなさそう。
金八先生の脚本の小山内美江子さんが書いた朝ドラ「マー姉ちゃん」でも取次店の人で出てたな。なにげに「マー姉ちゃん」には荒谷二中の音羽、清水両方出てる。
学校から帰ってきた新二は玄関が施錠されいて「お母ちゃん?」と呼びかけたが返事がなく、家の裏手に回る。塀の隙間からランドセルを投げ込み、庭へ。縁側に座る。
ちょうどいせが帰ってきて玄関から入って、ため息をついた。「あれ? 新ちゃん、帰ってたの。ごめん」縁側の鍵を開け、手ぬぐいを干した。「早かったねえ。あら、なあに? ランドセル。ダメじゃないの。勉強の道具をこんなにして。汚して、どうしたの?」
新二「なあに? いい着物、着て」
いせ「ごめん、ごめん。ちょっと用事があったの。何怒ってんのよ? お土産あるよ」紙袋から出したのはキャラメル? 新二の口に放り込む。いせも自らの口に入れる。「新ちゃん。これからどっか行こうか。おにぎり持って」
新二「ホント?」
いせ「どこがいい?」
新二「海」
いせ「よし」
浜辺
日傘をさし、裾をまくって足をつけているいせと砂山を作る新二。
いせ「新ちゃん! おにぎり食べよう、おいで。海で手洗っといで」
上半身裸の新ちゃんは細いなあ~。
海で手を洗ってきた新二に「はい、おあがり」と竹の皮で包んだおにぎりを渡すいせ。「落ち着いて食べなさい、落ち着いて。おいしいね」
新二「うん」
いせ「新ちゃん。お母ちゃんね、今日、お見合いしてきたの」
新二「ふ~ん、どんな人?」
いせ「そうね…」
新二「背、高い?」
いせ「ううん。そんな高くない」
新二「お父ちゃんより低いの?」
いせ「うん。でも、いい人よ。眼鏡…眼鏡かけてんの。こんな厚い。そして、何度も何度も話しながらこうやるの。フフフッ」眼鏡をずり上げるしぐさ。
新二「太ってる人?」
いせ「痩せてる。フフフッ」
新二「何? 何よ?」
いせ「フフフッ。すごく慌てん坊。氷水こぼして、ものすごく慌ててた。その人みんな病気で亡くして1人だって」
新二「かわいそうだね」
いせ「かわいそうだね。新ちゃんに会いたいって。子供がすごく好きなんだって」
ルッキズム的なこと言ってなんだけど、どんな人?って聞かれて、頭頂部のことを話さないいせさん、ステキだね。まっさきにあの○ゲとか言ってしまいそう。
新二は砂山づくりの続きを始めて、いせも砂山の頂上に日傘を立て、手伝う。「お母ちゃんがその人と結婚したら、新ちゃん、その人が新ちゃんのお父さんになるんだよ」
新二「うん」
いせ「どう思う?」
新二「分かんない」
いせ「でも、これだけは分かってよ。お母ちゃんのためじゃなく、新ちゃんのためにお母ちゃんは…」
新二「じゃあ、結婚しなよ」
いせ「新ちゃん」
新二「僕はいいよ」
砂浜に駆け出しカニを捕まえた新二。「お母ちゃん、カニ! ほら!」
いせ「どら? キャーフフッ。わあ、かわいいカニ」
新二「僕、イヤだ。やっぱりお父ちゃんと違うもん。僕、お父ちゃんいらない」
いせ「あ、痛たたた…」カニに挟まれて驚いて浅瀬でしりもちをついた。
新二「お母ちゃん!」
いせ「いや~、ハハハハッ」
二人でキャッキャッとびしょ濡れでじゃれ合う。
この笑い声、「まんが日本昔ばなし」を何となく思い出しちゃう。
いせ「ハハハハッ。お母ちゃんも結婚しない。新ちゃんがいればいいんだ。いいね?」
新二「うん」
<私のよそ行きがもうビチョビチョでした。でも、なんとも言えず、いい気持ちだったんです。再婚なんてクソ食らえ。ごめんなさい。お行儀の悪いことを。でもね、妙にモヤモヤしたものがあの海のようにきれいさっぱりなくなりました>
昭和十六年
<新二の母親として生きる決心をして数年が過ぎました。その間にもいろいろなことがありましたが、どうやら無事に過ごすことができました>
端野家の玄関には「貸間有り。下宿も可」の貼り紙。
<世の中は一応、平穏でしたが、だんだん物が不足していくのが身にしみるようになってきたんです。早いもんで昭和16年。新二は昔の中学校の高学年になりました>
帰ってきた新二は玄関の戸を開けたが、表札が曲がっているのに気付き、手を伸ばして直した。
新二は昭和6年に1年生だったから、1924/大正13年生まれかな? 昭和16年は誕生日を迎えて17歳になる年。当時27歳の大和田獏さんが演じてます。
新二「ただいま」
いせ「はい、おかえり」仕立物をしている。
新二「ただいま!」
いせ「言ってるでしょ、おかえりって」
新二「聞こえないぞ」
いせ「お か え り!」
新二「よし」
いせ「偉そうに」
うわ~、「ちょっといい姉妹」の悠子と一正とか大山親子とか息子が妙に母親に威張ってるのを見るのがすごい嫌いなんだよな~。
家に入ってきて、鴨居にぶら下がる新二。
いせ「やめて! そんな大きいのがぶら下がったら、うちが潰れちゃうよ」
また移動してぶら下がる新二。
いせ「やめて!」
新二「おなかすいた」
いせ「お芋、蒸(ふ)けてるよ。早く着替えといで」
新二「うん」
2階へ行き、学生服を脱いだ新二は「石田さんいる?」と襖越しに話しかけた。シャツの上にベストを着る。返事がないので襖を開け、レコードをかける。
いせが1階から呼びかけた。「新二、新二! ダメじゃないの。人の物に触っちゃ」
1階に下りてきた新二はちゃぶ台から芋を手にし、いせの作業台の前へ。「石田さんは?」
いせ「大学のほうじゃない?」
新二「ふ~ん。母さんも一休みして食べたら?」
いせ「うん。これ済ませてしまってから。新二、うちに下宿した人の中で石田さんが一番好きみたいね」
新二「感じ、いい人だもん。まだあんまり話したことないけどね」
いせ「そうだね。うちへ来て、まだ間もないから。お前も上の学校行くなら、そろそろ決めないと」
新二「僕、もう決めてるよ」
いせ「どこ?」
新二「高等商船」
いせ「高等商船。じゃ、あんた船乗りになんの?」
新二「おじいちゃんやお父さんの子だからね、僕は」
いせ「だって…」と言いかけた口に自分が食べていた芋を突っ込む新二。「もう決めたんだから」
次のシーンがウッてなったのは、いせが芋をくわえたまま新二に近付き、新二が芋を食べるという疑似キスシーンみたいなことをして、ちょっと気持ち悪かった。
<あれから半年もたたないうちに私の手から新二をもぎ取っていった太平洋戦争が始まったんです>
ぐるんと回転して不穏なカメラワークでいせの顔が逆さまになった。(つづく)
先週末も書いたけど、昼ドラだけど水増し感なく毎回やれてるのがすごいな。ロケも多いし、相当撮影ハードだったろうな。



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