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【連続テレビ小説】本日も晴天なり(150)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

大介を見送り、元子(原日出子)たちは吉宗に戻る。トシ江(宮本信子)は死に目には会えないと覚悟して送り出したという。正道(鹿賀丈史)は傷心の元子をいたわるように家に帰ると、中に道子(川上麻衣子)と弘美(谷口美由紀)が笑顔で座っていた。元子が淋しがるだろうと弘美が泊まりに来たのだ。元子はその気遣いがうれしい。しかし、大介が置いていった封筒の中に、生命保険の証書を見つけて元子は動揺する。

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ジャパンエアラインの飛行機が飛んでいくところを長々映す。

 

銀太郎

座敷席にいる善吉、藤井、順平。

順平「とうとう行っちまったな…」

善吉「けど、何ですね、汽車の見送りと違って飛行機ってやつは、顔が見えねえだけに味気ねえもんですねえ」

藤井「だから、大介君も見送らなくていいって言ったんだ」

善吉「そうはいきませんよ。あっしはおかみさんの名代でしたからね」

 

銀太郎「それにしても、どうしてそんな遠い所へ行きたいんだろう。ねえ、彦さん」

カウンター席に座る彦造は無言でうなずく。

 

善吉「しかたねえやな。河内山の孫だもんな」

順平「まあ、俺にしたってでけえことは言えねえけどよ、10年前(めえ)だよ、俺が旅してえって言いだしたのは」

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藤井「あ~、そういえばあの時、お義父(とう)さん、あっさりいいって許可してくれたね」

順平「うん。こっちも反対されたら家出る覚悟だったから、かみつきそうな勢いで談判したんだけど分かったって言われた時には逆に拍子抜けでよ」

銀太郎「やっぱり、それが血なんですかねえ」

善吉「出たがる方も血なら、うんと言う方も血。となりゃあね、あとはもう大介坊ちゃんにね、こりゃ思いっきり、うんとやってきてもらわなきゃいけねえや。なあ、彦さん」

 

彦さんは一人酒を飲む。

 

善吉「おい、彦さ~ん! こっち来て一緒に飲まねえか!」

銀太郎「あっ…」

善吉「すっかり耳遠くなっちまってさ…」

 

店に入ってくる正道。

銀太郎「あら、いらっしゃい」

正道「お待たせしました」

銀太郎「どうぞどうぞ」

善吉「ご苦労さんでござんした」

藤井「ご苦労さま」

正道「無事、送り届けてきましたよ」

善吉「そりゃどうもご苦労さん」

 

↑この辺の会話ゴチャゴチャッとして正道以外のセリフ誰が誰だか。

 

順平「圭子さん、どうでした? やっぱり泣かれたんじゃないですか?」

正道「内心は分からんけどね、まあ、坊やに英語も教えとくってね、張り切ってましたよ」

藤井「へえ~、そりゃ大したもんだ。2年たったら本当に行くつもりですかね」

正道「まあ、大介次第だろうけどね、ハハ…」

銀太郎「とにかく、さあ、お熱いところをどうぞ」

善吉「さあさあ、さあさあ、さあ」

 

桂木家台所

甘酒を作っている巳代子と福代。

 

桂木家茶の間

キン「もうだいぶ行っちまったでしょうか」

元子「ええ…もう完全に日本からは離れたんじゃないかしら」

キン「けど元子さんも一人(しとり)息子さんなのによくお出しになりましたですよねえ」

元子「若いうちだ、出しておやりって、お母さんがそう言ってくれたからよ」

キン「そりゃ口で言ってもさねえ、おかみさん」

トシ江「ああ…でもあの子は言いだしたらなかなかきかない子だったからね。死に目にあえないって覚悟さえすれば遠い近いは関係ありませんよ」

元子「お母さん」

 

トシ江「あら、元子、そう考えなかったの? 私はね、別に大勢の人(しと)にみとられて死んでいきたいとは思わないけどさ間に合わなきゃ合わないで大介だって心残りだろうから、まあせいぜい丈夫で長生きしたいと思ってますよ。けどね、人間、生身の体だから、まあ覚悟だけはしといた方がいいと思ってね」

キン「そこがやっぱり私と出来が違うんでしょうか。私なんざ善吉が慰安旅行に行って無事に帰ってくるまでは、もうおちおち何にも手がつきませんですよ」

トシ江「それはね、おキンさんは情が深いからよ」

キン「いえいえ、私はいつになっても業が深くて、ハハ…」

 

巳代子「さあさあ、出来ましたよ」

福代「それじゃあ、まず熱いところから」

キン「おや…まあ、こりゃ甘酒じゃございませんか」

元子「どうせ正道さんも銀太郎さんでみんなと大介をさかなに一杯やってるんですから、こっちも大介の健闘を甘酒で祝ってやりましょうよ」

トシ江「そいじゃ、まあ、頂きます」

一同「頂きます」

 

キン「ん…熱い」

巳代子「大丈夫ですか」

キン「おいしく出来ておりますこと、フフフ」

 

真っ暗な大原家前の路地を歩いてくる元子と正道。家に入ろうとすると玄関に明かりがともる。

 

大原家玄関

道子・弘美「お帰りなさい!」

元子「あなたたち…」

弘美「伯母さんたちが寂しがるとかわいそうだから今夜は泊まりに来てあげたの」

元子「まあ」

正道「ハハハ…それはそれは」

道子「いつでも入れるようにお風呂もちゃんと沸いてるわよ」

元子「ありがとう」

 

お風呂上がりにタオルで顔を拭きながら出てくる元子。パジャマじゃなくてきちんとした服を着ている。

 

大原家ダイニング

正道、自ら茶を入れる。

元子「あら、先に休んでくださればよかったのに」

正道「うん、大介がな、これをあとで開けてくれって置いてったもんだからな」

元子「大介がですか?」

正道「まあ、おおかたてれくさくて言えなかったことでも書いてあるんだろう。いいか、開けるぞ」

元子「ええ、どうぞ」

 

正道が封筒を開け、中身を見る。「うん? 何だこれ、生命保険じゃないか」

元子「えっ?」

正道「ええ? 受け取りが元子と圭子さんで500万ずつ入ってるよ」

元子「冗談じゃないわ。あの子ったら一体何のまねかしら」

正道「『危険なことはないはずですが人間、生身の体だからとよくお母さんが言われるので帰ってくるまでこれを預かっていてください。では行ってまいります。父上様、大介』」

元子「バカにしてるわ。こんなもの預けていけば私が安心するとでも思ってるのかしら」

正道「ちょっと待ちなさい」

元子「何を待つのよ。あなたこれでさすが我が子だとでもおっしゃるつもり?」

正道「いや、いささか僕も驚きだ。しかしな、あいつにしてみれば、わがままを通したことのこれは精いっぱいのお礼のつもりなんだろう」

 

元子「お礼ですって!? どうして親は子供からこんな形でお礼もらわなきゃならないんですか」

正道「そう言ったら身も蓋もないだろう」

元子「だってあんまりですよ。こんなことして行くんだったら、私、大介行かせませんでしたよ。何と言われようと泣いて騒いで反対したわ」

正道「それがな、君の正直な気持ちだったんだろうけど」

元子「ええ、そうですよ。お母さんにしたってね、死に目にはあえないかも分からないけどって、みんなにそれほどの思いをさせておきながら、何よこんなもので一人でいい気になって」

正道「そうだ、そのとおりだ」

元子「本当に男の子なんか産むんじゃなかったわ」

正道「そうそうそう…もっと言ってやれ」

元子「いつだって我慢するのは女なんですから、何よ偉そうに…」

正道「そのとおりだ」

 

元子「あなた…」

正道「いや、構わんから続けなさい。僕にしたってな、おばあさんやおふくろにおんなじような思いさせてきたんだ。ただあの2人はな、口に出して言わなかったから、僕は今、おふくろに言われてるつもりで聞くから。なあ、続けなさい」

元子「そんなこと言ったって…」

正道「いいからいいから。あんなやつどこで野垂れ死にしても構わんって元子が言う方がよっぽど心配だからな。続けなさい」

元子「もう、いいんです。いくら心配したからって切りがないのは分かってるんですけど。本当は私、ずっとその心配がたまってたんですよ。けど、これでよかったんですよね。親はいつまでもついてやれるわけじゃないし…。これでいいんですよ」

正道「うん」

 

元子の扱いをよく分かってる正道さん、やっぱりすてき。そして、元子のためにお茶もいれてくれる。

 

正道「とんぼ釣り 今日はどこまで行ったやらってな」

元子「えっ?」

正道「ん? 男の子を持った親の心境だ」

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江戸時代の俳人・加賀千代女の作といわれているが定かでない。幼い息子を亡くしたとされるが、それも定かじゃないらしい。

 

⚟道子と弘美の笑い声

 

何のかのと言いながら、元子はその翌日、大介の写真をこの居間に飾りました。

 

大原家茶の間

タンスの上に飾られた大介の写真を見る元子。

 

⚟女性「ごめんくださ~い」

 

元子「はい」

 

お茶の準備をする元子。

小宮「あの、どうぞお構いなく。大先輩にそんなことしていただいては恐縮ですから」

元子「いえ、そんなこと…。けど、編集長から私、若いライターが行くからとしか聞いてなったんですよ」

小宮「どうも突然ですいません」

元子「強引なんだから、編集長は」

小宮「ええ、そのようですね」

元子「そうなの。でも、もっともその強引さで鍛えてもらうにはもらったんですけどね」

小宮「でも、今回のタイトルはもう決まってるんです。『子供の出発(たびだち)・親の出発(たびだち)』。それにはやはり、お子様をケニアへおやりになったばかりの大原さんがぴったりだと私も思いますし」

 

元子「さあ、どうぞ」お茶を出す。

小宮「あっ、すみません」

元子「けどそんなかっこいいもんじゃないんですよ。あっ、嫌だわ…私、いつも聞き役だからしゃべるの苦手なのよ」

小宮「すいません。でも話していただかないと私、仕事になりませんので」

 

元子「ところで小宮さんはおいくつ?」

小宮「あっ、23歳です。まだ駆け出しです」

元子「いつからこのお仕事を?」

小宮「まだ3か月です」

元子「それまでは?」

小宮「はい、大学を出てすぐに勤めたんですけれど、お茶くみばかりのOLじゃどうにも我慢できなくって。書くことが好きだったものですから、それで」

元子「じゃあ、フリー?」

小宮「はい」

元子「だったら大変でしょう」

小宮「ええ、当たって砕けろで…。それで女性時代の編集室へ思い切って飛び込んでみたら編集長からいきなり仕事を渡されて、大原さんに会ってこいって言われたんです」

 

元子「じゃあ、初仕事?」

小宮「そうです」

元子「あっ、そう。まあでもね、鉛筆一本で食べていくつもりだったら書いたものが勝負だから頑張ってね」

小宮「はい。あっ、いけない、私がインタビューしてるんです」

元子「ハハッ…でもね、逆に聞かれちゃうことなんて年中なのよ。まあもっともそれを糸口にまとめるよりほかしょうがないんだけどね」

小宮「はい…」

 

元子「大丈夫よ。分からなくなったら自分に置き換えればいいのよ。子供の出発(たびだち)って…そうだ、あなた、OLを辞める時に、ご両親に反対されなかった?」

小宮「ええ、されました。普通なら結婚する年なのに新しい、しかも、収入も身分もはっきりしない仕事していくなんてって、それはもうすっごい親不孝してるみたいに怒るんです」

元子「フフッ…で、あなたは親不孝してると思ってらっしゃる?」

小宮「いいえ。ただ妹が先に結婚したものですから親が気をもんでるのは、よく分かるんです。でも、結婚なんて相手さえいればいつだってできるし、それまでに私、自分で納得できる仕事をしてみたかったものですから」

元子「すてきよ。頑張ってね」

小宮「はい。大原さんが目標です。結婚しても子供が出来ても続けていけるんですもの」

元子「そうよ、そのとおり」

小宮「ですから私…」

元子「あら…これ録音ボタン押してないわ」

小宮「あっ、いけない!」

 

小宮敏子…坂上味和さん。歌も出してる女優さん。この方もいろんな出演作の中に「本日も晴天なり」は書いてないんだよな~。原日出子さんより実年齢は2つ下。

 

この分では新米ライターさんのインタビュー、なかなかまとまりそうにもありません。

 

女性時代編集部

元子「おはようございます」

福井「かわいそうにあなた、昨日、小宮さんに一体何を話してやったの?」

元子「えっ?」

福井「おかげで大原元子さんのインタビュー記事はメタメタだわよ」

元子「あっ…どうもすいませんでした。でも私、インタビューするのが仕事でされるのは初めてなんですもの。私の方がメタメタになってしまって」

福井「そうかな? でもね、いわゆる婚期を前にして転職をはかる娘と母親の話はとてもよくまとまってるの」

元子「そうですか。それはよかったですね」

福井「誰かがうま~くそっちへ話を持ってったのではないのかな」

元子「さあ」

 

福井「まあ、それはそれとしていい後釜に育ちそうだし、あなたはこれをまとめなさい」

元子「読んでいただけたんですか?」

福井「ただし、前半は全面カット」

元子「はっ?」

福井「放送局を辞める前後から息子さんの出発についてお書きなさい。まあ、また書き直しは出ると思うけど、私が引き受けるわ。出版は私に任せてね」

元子「編集長」

福井「頑張ってよ。自分の本を出すいいチャンスなんだから」

元子「ええ…でも今までどおり女性時代の仕事もさせていただけるんでしょうか」

福井「もちろん引き続いてお願いするわ。ただ小宮さんのような新人がどんどん育ってくるんだから、あなたも経験の上にだけあぐらをかいてると追い落とされるわよ」

元子「はい」

福井「だからこそここで一冊、ママさんライターの経験を集大成して母と子の問題を世に問わなくちゃ」

元子「はい。一生懸命書かせていただけますので、よろしくお願いいたします」

福井「じゃ、どうぞ」

 

再び厳しい道へ挑戦していく元子でした。

 

つづく

 

明日も

 このつづきを

  どうぞ……

 

人間のできた正道さんだけど、そんな正道さんが好きなのが元子なんだよね~と思うとニヤニヤしちゃう。ここにきて初登場の人がいるとは思わなかった。同世代くらいの俳優相手に堂々とした原日出子さんに日々感心する。