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【連続テレビ小説】本日も晴天なり(145)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

元子(原日出子)は編集室に呼び出され、読者から町名の間違いを指摘するクレームが来たと福井(三木弘子)から叱責される。圭子(鈴木美江)と赤ん坊の世話で、クタクタに疲れていたのだ。圭子と話せば話すほど、その人間性に信頼が増し、こんな良い娘を、自分がわざわざ結婚を遠回りさせたのではないかと思う一方、その方が良かったと思いたい…。迷う元子に、正道(鹿賀丈史)は「自分のことを書いたらどうだ」と勧める。

BSのない環境にいたため、遅れ視聴しています。この回は2023年3月16日(木)放送。

 

今回も福井編集長は”泰子”になっていた。

 

大原家

正道の仕事部屋

手書きで図面を書いている正道。

 

⚟電話

 

茶の間

正道「はいはい、はい、大原です」

大介「僕です」

正道「おう、どうした?」

大介「母さんは?」

正道「さっきな、女性時代から呼び出しがあって出かけたよ。何だ?」

 

モンパリ

大介「うん…今朝、アパートへ行ったら、ずっと母さんが来ていてくれたと圭子が言ってたものだから」

正道「うん」

大介「明日から朝は僕が行きますから、夜だけお願いしますと言っておいてください。それから、ありがとうって」

正道「うん」

 

女性時代編集部

福井「まあ、つまらない電話のクレームだったけどね」

元子「申し訳ございませんでした」

福井「あなたの記事は裏がしっかりと取ってあるから信頼してたんだけど、相手の町名を間違えるっていうのは、どういうことかな? 慣れが出てきたのかな?」

元子「いえ、別にそんなつもりじゃないんですけども。以後、気を付けます」

福井「頼みますよ。本当に初心を忘れたら、もうそれだけでルポライターは失格なんですからね」

元子「はい。本当に申し訳ございませんでした」

 

編集長越し元子の後ろには冬木や名のない編集員がいるのに今日は名前が出てなかった。

 

手抜きをしたのではありませんが、このところクタクタに神経が疲れている元子でした。

 

買い物袋を両手に抱えて、ため息をつきながら圭子のアパートの階段を上る元子。

ノック

 

⚟圭子「はい」

 

元子「あっ、遅くなってしまって…。よいしょ。あら、圭子さん、あなた…」

起きて洗濯物を畳んでいる圭子。「今朝、大ちゃんが来てくれたんです」

元子「大介が?」

圭子「お母さんに電話しておくって言ってたのに」

 

ベランダにはおしめが干してある。

 

元子「ああ、だったら今日は私、出かけてたから」

圭子「じゃあ、忙しかったんですね」

元子「ううん、大したことないんだけどね…。冬彦ちゃんは?」

圭子「今、おっぱいやったばっかりだから、よく眠ってます」

元子「そう」

圭子「だけど、夜中でも何でも3時間置きにおっぱい欲しがるし、そのたんびにおしめは取り替えなきゃならないし、もう子供を育てるのがこんなに面倒くさいものだとは思いもしなかったわ」

 

今のドラマなら(SNS等でも?)絶対言えないようなセリフなんだろうけど、言えた方が健全な社会のような気がする。なんとなく。子育て経験ありませんけどね。

 

元子「何言ってるんですよ。母親はね、みんなそうやって子供を育ててきたんですよ」

圭子「だから私も頑張ってやってみるけど、もしグチャグチャになった時は相談に乗ってください。お願いします」

元子「もちろんですとも」

圭子「あとは冬彦のためにできるだけいい保育所を早く探して働かなきゃ」

元子「私もできるだけ協力しますけど、本当にそれでいいのね?」

圭子「予定の行動ですもの。あとは片親でもそんなことを気にしないように私が冬彦をしっかり育てていけばいいんです」

うなずく元子。

圭子「お母さん…」

 

元子「笑わないでね。母親なんてものは、いくつになっても迷うものなのよ。厳しすぎはしなかったか甘やかしてしまったんじゃないかって、子供のこと一生懸命考えながら、それでいて迷うもんなの。でも、ありがとう」

圭子「いいえ」

元子「頑張ってちょうだい。何か困ったことが起きたらいつでも言ってきてちょうだい。そしてあくまで生き抜いてちょうだい。お願い」

圭子「はい…」

 

夜、大原家ダイニング

元子「今朝、大介が行って洗濯なんかしたみたいですけど、そう…そんな電話くれたんですか…」

正道「うん。君にね、ありがとうって言ってたよ」

元子「今日、圭子さんと話してみて、私、できれば、ああいう人(しと)が大介と結婚してくれたらいいなって本当に思ったわ」

正道「うん」

元子「それをわざわざ回り道させるようなこと私はしたんですけど、でも、いつかきっとそれでよかったんだって、私、そう思いたいんです」

正道「うん、そうだな。大介も相当頑張んないと圭子さんに置いていかれるだろうしな」

元子「あなた」

正道「まあ、いずれにしても来年は就職だ。あいつもな、あちこちいろんなところに首突っ込んでたけれども、ここらで自分の進路をちゃんと考えないと圭子さん親子にプロポーズもできなくなるだろうしな」

元子「じゃあ、これでよかったんですね」

正道「君らしくもないな、自信のないこと言って。一体どうしたんだ?」

元子「だって、私…」

正道「負けちゃいかんよ、元子。何のためにルポライターとして母と子の問題に取り組んできたんだ」

元子「ええ」

正道「君はそこで学んだ多くのことから、あの2人に一番いいアドバイスをしてやったんじゃないか。もっと自信持ってくれなきゃ、ああいう若い者たちに歯が立たなくなってしまうからな」

元子「ええ…」

 

大原家前の路地をのぼると悦子が話しながら歩いてくる。のぼるが持っているのはケーキの入った箱かな。

のぼる「ごめんください」

悦子「ごめんください」

 

大原家茶の間

のぼる「いいのよ、どうぞお構いなく」

悦子「そうよ、お互い忙しい体なんだし、私たちお客さんじゃないんですもの」

元子「うん」紅茶を運んでくる。テーブルの上にはイチゴのショートケーキ。

 

のぼる「じゃあね、早速用件から入りましょうか、ねえ、ガラ子」

悦子「ほら、仕事を探してるっていう若い人のことよ」

元子「ええ、どっかいいところ見つかった?」

のぼる「私もね、ガンコから聞いたから、あれこれ探してみたんだけどね、ガラのが一番よさそうなのよ」

悦子「住み込みでもいいんでしょ?」

元子「住み込み?」

悦子「あら、住み込みが嫌だって言ってるわけじゃないんでしょ?」

元子「うん、そういうわけじゃないけど…ただ、そんなふうに考えなかったから」

 

悦子「じゃあ、いっそうちへ来てくれないかしら」

元子「お宅へ?」

悦子「うん。10年いてくれた子を嫁にやったばかりでちょうどうちでも次の人を探してたとこだったのよ」

元子「ええ」

のぼる「近頃ね、お手伝いさんのなり手がなくて、なっても若い子だと腰が落ち着かないでしょう。だから条件次第では案外、来てくれるんじゃないのって、私が言ったの」

悦子「そうなのよ。言われて気が付いたんだけど、いい人がいたらうちでも来てほしいのになにもよそを探すことないんじゃないかと思って飛んできたのよ。ねえ、どうかしら」

元子「うん、まあねえ」

 

悦子「じゃあ、まずいいことから並べるけれど個室は4畳半だけど自由に使ってくれて結構よ。赤ちゃんのことも今いるばあやさんがね、先代の時、やはり子連れで住み込んだ人だったのね。息子さんはもう結婚して別に暮らしてるけど、うちの経理をやってて親子で働いてるのよ。その人がどんな技能を持ってるか知らないけど、もし長くいてくれる気があるなら、ゆくゆく私の片腕にだってなってほしいし。あっ、いい人がいたら結婚させてもいいのよ。ねえ、一度会わせてもらえないかしら」

元子「あっ…何だかちゃんと立ち上がらないうちに、もう土俵に追い詰められたみたいだわ」

悦子「それはだてに相撲茶屋の看板あげてるわけじゃありませんもの」

元子「本当。じゃあ早速、大介も呼んで、その人に話してみるわ。どうもありがとう」

悦子「いいえ」

のぼる「どう? やっぱり持つべきものは友達でしょう」

元子「ええ、肝に銘じて感謝しております」

笑い声

 

外におしめの干されている圭子のアパート

圭子「お願いします。その方に会わせていただけませんか?」

大介「ねえ、住み込みなんだよ?」

元子「でもね、保育所に預けて勤めてもアパート代払ったり、保育費払ったりしたら楽じゃないわよ。その点、住み込みなら食事と住むところは保証されるんだし」

圭子「そうですよねえ」

大介「しかしだね」

元子「ううん、子供を抱えて手に職のない女性には条件のいい職場が少ないのよ。その点、茜島さんだったら絶対信用できるところだし」

圭子「それはとっても魅力的ですね」

元子「だから、圭子さんがそう思うんだったらね、周りに人がいるっていうだけでも、私はいいと思うのよ」

圭子「それに相撲茶屋なんて面白そうだし」

大介「仕事なんだよ。面白いからするってもんじゃないでしょう」

圭子「あら、面白がってやらなきゃ仕事は楽しくできないじゃない」

大介「そりゃ、そうだろうけど」

元子「駄目よ。これは大介の立ち合い負け」

大介「参ったな、どうも」

圭子「でも、お休みはあるんでしょう?」

元子「ええ、年に3回ぐらい。本場所中は無理だけど週に1回はお休みくれるって言ってたわ」

圭子「わぁ! そしたら大ちゃん、デートしましょ」

大介「ああ、いいともさ。おしめの袋、ぶら下げてな」

圭子「まあ」

元子「大介ったら」

 

桂木家茶の間

トシ江「そう。それで?」

元子「ええ、2月半ばになったら圭子さん、坊やと一緒に茜島さんに移るんですって。本当にいろいろ心配かけて申し訳ありませんでした」

トシ江「本当だよ。けど、まあ、身の振り方が決まって何よりだったねえ」

元子「はい」

トシ江「あとは大介も自分のこと考えないとね」

元子「ええ」

トシ江「あの子もいろいろつらい思いをしたろうけど、けど、何事も勉強だよ。弘美(しろみ)もね、近頃じゃ、巳代子と祐介さんの間、行ったり来たりしてるみたいだ」

元子「肝心の祐介さんの方はどうなの?」

トシ江「さあ? なるようになるんじゃないの」

元子「どうして母さん、近頃、そう冷たいのかしら」

トシ江「別に冷たいわけじゃないけど、脇で騒ぎ立てたって別にどうなるものでもないし、現に大介の時もそうだったじゃないの」

元子「けど巳代子はもう子供じゃないんですよ」

トシ江「あんたもね、みんなそれぞれに苦労してるんだから触られたくない傷口をこう暴くような、そういう仕事だけはやめておくれよ」

元子「ええ」

 

戸が開く音

順平「おう、何だい、話ってのは」

元子「ああ、話ならもう終わったわ」

順平「そんな挨拶があるかよ。俺はね、これでもたった一人の男きょうだいなんだ。姉さんたちが嫁に行ってから頭痛めることがあったら、いつでも力になってやるつもりでいたんだぜ」

元子「どうもありがとう。でもね、ちょっと人に会う約束があるもんだから、ごめんね。じゃ、お母さん、お邪魔さまでした」

トシ江「そいじゃ、くれぐれも茜島さんによろしくってね」

元子「はい」

 

宗俊のいつもいた長火鉢にどっかり座っている順平。

 

圭子の身の振り方が決まって元子がホッとすると同時に日本中が仰天するニュースが飛び込んできました。戦争が終わって28年間、南の島グアム島のジャングルに潜んでいた元日本兵が発見されたのです。名古屋市出身の横井庄一さんでした。

www2.nhk.or.jp

テレビに大きく映し出されたのは昭和47(1972)年2月2日付の朝日新聞

 

新聞の見出し

奇跡の元日本兵、28年ぶり発見

       グアム島の密林で

 

グアム島奇跡の生還

「恥ずかしいが

 まず帰りたい」

横井さん、元気に語る

 

横井さん グアムから帰国

   長い孤独の戦争 終結

「ただいま」力強く

 たまらず うれし涙 

           羽田空港

 

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大原家

正道の仕事部屋

真剣に新聞を見ている正道。

 

夜、茶の間でぼんやりして元子。

正道「元子、どうした?」

元子「ええ…。昼間…もしかしたら若旦那もどこかで生きてるんじゃないでしょうかって彦さんから電話があったの。多分、お母さんもおんなじ思いだったんじゃないかしら。ううん、日本中でおんなじことを考えた母親がどれほどいたことか。私、大介のことで随分苦労したって思ってたんだけど、兄を亡くした時の母の胸の内思えば、私の苦労なんて、まだまだ子供だましみたいなもんだわ」

正道「うん」

元子「そんなこと考えてたらね、今の大介は兄が戦死した時と同じ年だったってことに気が付いたの。私、あの子が何をやってもいいわ。何をやってもいいから、もう二度と戦争で遠い外地に連れていかれたり、28年も置き去りにされるなんてこと真っ平よ。そんなこと二度とあっていいことじゃないし。としたら、そのために私は今、何をしたらいいのかって…それを考えてたんです」

正道「うん…」

元子「私、二度と戦争は嫌なんです。そんなことするためにあの子を産んだんでも育てたんでもありませんからね」

正道「もちろんだよ」

元子「だったら今、私は何をしたらいいの?」

正道「そういう自分を書くことだ」

元子「そういう自分を?」

正道「あの焼け跡から我々がどうやって生きてきたか君は既に子供たちのノートにそれを書いてあるじゃないか。それをまとめるんだよ」

元子「ええ…」

正道「その中に君の願いも思いも必ず出てくるだろう。書きなさい、元子」

元子「はい」

正道「僕ら、終戦の同じ年に結ばれて、今、大介と道子の2人がいる。これは確かな時間だ。しかし、横井さんにとっては、それがどれほど遠い日本だったか…」

元子「ええ」

正道「その28年をしっかりと書いてほしいな」

元子「はい」

 

つづく

 

大介や圭子のことから横井さんにつながる脚本、すごいな。ニュース映像で実際にしゃべる横井さんを見て、多くの人は驚いただろうなあ。若い人にしてみれば”天皇陛下様”とか日常的に言う人もあまり見かけないだろうし。このドラマ、やっぱり好きだわ…と改めて思った回でした。たまった録画は残りあと3話!