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ドラマの感想など

【連続テレビ小説】本日も晴天なり(99)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

彦造(森三平太)が訪ねてきた。思い詰めた様子で元子(原日出子)に、大介を吉宗の跡継ぎにしてもらえないかと言い出す。順平(斎藤建夫)が映画に夢中で、宗俊(津川雅彦)は吉宗は8代限りだと諦めているという。その順平がまたシナリオを読んでほしいと置いていく。相変わらず下手な文章だったが、彦造らしき人物の部分だけ良く書けていた。元子は、自分はいったい何を書くべきかを、考え直す時が来たと知る。

ダイニングテーブルでアイロンがけをする元子。

 

⚟「ごめんくださいまし」

ja.wikipedia.org

前々から気になっていた字幕の記号の一つ、”⚟”。外から呼びかけたりしたときなどに使われていて使ってみようかと探してみたけど、民謡の歌いだしの〽(庵点)と違ってなかなか出てこなかった。やっと字幕用符号という言葉から探し出せたけど、呼びたかが出てこないので、コピペして”せりふ”で単語登録しちゃいました。どうでもいいことだけど。

 

元子「は~い」

 

玄関

元子「彦さん!」

彦造「ハハハハ…。いやぁ、急にお寄りしてお邪魔じゃないかと思ったんですがね」

元子「何言ってんのよ。いくら言っても遊びに来てくれないんだもの。彦さんは、こっちの方角が好きじゃないんじゃないかって、ひがんでたのよ、私」

彦造「いや、めっそうもない、へへへ…」

元子「とにかく上がってちょうだいよ」

彦造「へえ」

元子「ほらほら」

彦造「どうも、どうも」

元子「大丈夫?」

彦造「いや、大丈夫ですよ、そんな、へへ…。大丈夫、大丈夫ですよ」

元子「さあさあ、ほら」

 

ダイニング

元子「だけど、久(しさ)しぶりだわね。この前来てくれたのは、いつだったかしら」

彦造「相すいやせん。けど、大介坊やが時々寄って顔を見せてくれるもんですからね」

元子「あら、大介が?」

彦造「ええ。いや、もう本当、どうぞお構いなく、もう…」

元子「いいえ、その大介も夕方には帰ってきますから。今日はゆっくりしてってちょうだいね」

彦造「へえ」

 

元子「何だかめかし込んじゃってるわね。今日はどこかへお出かけでしたか?」

彦造「いえ、へへ…ちょいと病院へね」

元子「病院? どっか悪いの?」

彦造「なあに、体は別にどっこも悪かねえんですがね、年ですよ、意気地のねえ。どうも神経痛の野郎が余計な悪さしやがるもんだから」

元子「足が痛むんでしょう。駄目じゃないの、ちゃんと座布団敷いてくれなくちゃ」

彦造「とんでもねえ。こんなものは甘やかしたらきりがねえですよ」

元子「駄目よ、大事にしてくれなくちゃ。若い時から水仕事で体使ってきてるんですもの。体大事にして、これはって仕事の時は、やっぱり彦さんの腕を仰がなけりゃならないんだからって、お母さんだってそう言ってたわよ」

彦造「とんでもねえ。あっしなんざ、もう、ごくつぶしの役立たずですから」

元子「変なこと言わないで」

彦造「へえ」

 

元子「ねえ、これちょっと食べてみてよ、このようかん。頂き物なんだけどね、混ざりもんのない甘さで甘党でなくとも、なかなかいけるんですってよ」

彦造「へえ」

元子「ねえ、近頃じゃ見てくれがよくても気ぃ付けないと変な色つけしてあるもんがあるからね」

 

彦造「実はそれなんですよ」

元子「えっ?」

彦造「変な色つけ仕事に近頃、吉宗は、だいぶ押されっぱなしで河内山の大将も店は、もう8代かぎりだなんて言ってなさるけど、わしは反対だ」

元子「彦さん…」

彦造「そりゃあね、今どきどちらさんでも若(わけ)えお人(しと)は浴衣なんざ寝巻きにする人は、ねえですよ。みんな、パジャマってやつだ。けど、浴衣なんてものはね、はなっから寝巻きじゃねえんですよ」

元子「ええ」

彦造「まあ、といったところで、うち辺りの品は、手仕事で手間はかかるし、サラサラ着るってんなら、そりゃまあ、機械染めですよ。それはそれでいいんですがね、だからって、お江戸の頃より続いた染めを捨てちゃあ、ご先祖様にバチが当たる」

 

元子「でもね、彦さん」

彦造「いえいえ、仕事がねえってんじゃねえんですよ、どうでも吉宗の染めでなきゃなんねえって昔っからのお客は、ちゃんとついてんですよ。ただ、その仕事を継いでくれるもんがいねえんで、つれえんですわ」

元子「だからといって、河内山だって、もう若くはないんだし」

彦造「だからですよ。これは、むちゃを承知のお願(ねげ)えなんですが、大介坊やを吉宗の後継ぎってわけには、いかねえでしょうか」

元子「大介を?」

彦造「へえ。うんとさえ言ってさえいただけりゃ、この彦造、先代から仕込まれたもんは全部大介坊ちゃんの腕につぎ込みます。そしたらあとは善の字がついてくれることだし、わしも安心して行くところへ行けますしね」

元子「バカなこと言わないでちょうだい!」

彦造「へえ…じゃあ、まあ、承知していただけませんか」

元子「大介のことじゃなくて、彦さんのことよ。河内山とどんなまずいことがあったのか知らないけど、吉宗に居づらいことがあるんだったら、うちへ来てちょうだいな。正道さんだって嫌と言うわけないんだから」

彦造「いえ、とんでもねえ」

元子「彦さん、人間、誰だって年を取るのよ。だけど、私たちは、どこまでも彦さんの面倒は見るつもりなの」

 

彦造「そ…そうじゃねえ、そうじゃねえんですよ」

元子「何がよ? 何がそうじゃないのよ?」

彦造「若旦那の順平さんは、あのとおりだし、このまんまだと、わしゃ死んでも死にきれねえから」

元子「だから死ぬことはないでしょ」

彦造「お嬢…」

元子「まあ、小さい時からかわいがって順平は彦さんの孫みたいなもんなんだろうし、それだけ、あの子のことを気にしてくれるのは分かるけど、ねえ、もう少し長い目で見てやってよ。ね」

彦造「へえ、それは…」

元子「あの子の一番の弱点は優しすぎるってとこなのよ。末っ子で鼻っ柱ばっかり強くて…。でもね、あの子はあの子なりに自分なりにもがいてるって私にはそう思えるのよ」

彦造「へえ…。こんな時…正大若旦那さえご無事でいなすったらと思うと…」

元子「彦さん…」

 

フランス語の原書を読めるインテリの正大あんちゃんが後を継いだだろうかという気にもなるけどね…。それを生かして海外展開を考えるタイプかもしれないけどさ。

 

吉宗作業場

型の切り抜きをしている宗俊。

 

桂木家台所

味見をしているトシ江と包丁で大根を切る巳代子。見事な包丁さばき! 昔の女優さんって料理もできないみたいなイメージが合ったけど、手作業のシーンが多くて、料理裁縫編み物何でもできるイメージに変わった。

 

宗俊「おい、彦さん、まだか?」

トシ江「はい」

宗俊「遅(おせ)えじゃねえか、バカによ」

トシ江「巳代子が浅草にでも行ったらって、お小遣い渡してくれたそうですから」

宗俊「生意気なことしやがって」

巳代子「私がじゃないわよ。祐介さんがです」

宗俊「あいつがか?」

トシ江「あっ、そうだったの。祐介さんね、本当に陰でよくしてくれてますよ」

宗俊「それにしても年なんだからな、お前、一人で盛り場へやって転びでもしたら、かえって事じゃねえか。おめえ、どうして誰かつけてやらなかったんだ。金やるだけが面倒見ることじゃねえぞ」

トシ江「そりゃ、あの、こっちも考えましたけどね、けどまあ、ああいう人だから、あんまりこっちで気ぃ遣うと病院へ行くのも我慢しちまうんじゃないかって」

宗俊「とにかくな、彦さんは、うちのおやじが残してくれた吉宗の宝だ。粗末にしやがったら承知しねえぞ」出ていく。

 

巳代子「年取ったら、ちっとはおとなしくなるかと思ってたのに口のうるさくなるばっか」

トシ江「巳代子。そういうこと言うもんじゃないの」

巳代子「だってさ」

 

⚟宗俊「おう、彦さん、どうだったい」

 

作業場

彦造「いやぁ、勝手をしてどうもすいませんでした」

トシ江「ああ、お帰りなさい」

巳代子「お帰りなさい、彦さん」

トシ江「ねえ、どういうあんばいだったの?」

彦造「ええ、今年はね、陽気がはっきりしねえから痛むんだろう、まあ、ほかは別に何ともねえって、お医者の先生が言ってくれたもんですからね。こんなことでクサクサしたってしょうがねえってんで、上野のお山へ行ってまいりやした」

 

宗俊「おう、西郷さんはいたかい?」

彦造「へえ、相変わらず犬つれて、でっけえ目ん玉むいて立っておりやした」

宗俊「俺に何か言ってたか?」

彦造「いいえ。そのかわりね、はとの野郎がね…」

宗俊「おう」

彦造「西郷さんの頭のてっぺんからあちこち見回しながら『いや、絶景かな、絶景かな』なんてやっておりましたよ」

宗俊「そいつは豪勢だ。どうだい、ス~ッとしたか?」

彦造「へえ、ス~ッといたしやした」

宗俊「よ~し、まあ上がれ。茶でもいれようぜ」

彦造「いや、そんな…遊んできたのに、そんな」

トシ江「何言ってんのよ。さあ、上がったり上がったり」

彦造「へえ」

 

シャレた会話だね。

 

買い物かごを持って勝手口から家に入る元子。「ただいま」

 

縁側

道子「それじゃあ、叔父さん、飛行機の操縦士になりたかったの?」

順平「うん、そうだよ」

道子「で、どうしてならなかったの?」

順平「片方の目がね、近眼だったから」

道子「へ~え」

順平「で、次、なろうと思ったのが紙芝居屋さんだろ、それから金魚屋さん、学校の先生だろ、ん~、絵描きさん、それから銀行員。銀行には、たくさんお金があるからね」

道子「でも、銀行のお金でしょう」

順平「うん、そうだよ。次が魔法使い」

道子「どうしてならなかったの?」

順平「うん? どんどんね、気が変わったから」

 

道子「あっ、お母さん」

元子「いらっしゃい」

順平「ああ」

元子「上がんなさいよ」

順平「いや、これからまた行く所あるから」

元子「そう」

順平「それ、暇な時でも読んどいて」

元子「ん?」

 

床に置かれた原稿の入った封筒。

 

元子「ねえ、今日、彦さんが来たわよ」

順平「ふ~ん。で、何だって?」

元子「うん、病院の帰りなんだけどって寄ってくれただけ」

順平「それの中にさ、ちょっぴりだけ彦さんのこと書いてあるんだ」

元子「彦さんのこと?」

順平「うん。読んでみろよ。じゃ。バイバイ」

道子「バイバイ」

 

元子は早速原稿を広げる。「彦さんか…」

 

夜、ダイニング

正道「あ~、さっぱりした。今日は疲れたからなあ」

元子「ビールでも出しましょうか」

正道「おっ、いいな」

元子「これからは、いつも残業になるんですか」

正道「うん、日も長くなってきたしね、あと589日なんだよ」

元子「オリンピックまでが?」

 

東京オリンピックが昭和39(1964)年10月10日で、その589日前なら昭和38年3月1日…ん? 今週月曜日から昭和38年になって、大介(昭和25年4月生まれ)が中学生になったのなら、4月以降の話だと思ったし、最近はこたつで会話していて、寒くなりかけの季節で、もうオリンピックまで1年きったくらいかと思ってた。日が長くなってきたなら暖かくなってきたということ!?

peachredrum.hateblo.jp

正道「ああ、もうどの現場でも目の色変わってきてな、ハハ…」

元子「だけど、事故だけは気を付けてくださいね」

正道「もちろんだよ。おっ…はい。やるか」

元子「あっ、頂こうかしら?」

正道「お~、珍しいな」

元子「あら、勧めてくださったくせに」

 

正道「いつも忙しくしてるし、それに、みんなが引き揚げてからが君の時間だろ」

元子「本当に順平といい勝負よね」

正道「ゆうべ、藤井が言ったことなら、気にするなって言っただろう」

元子「うん、昨日はいろいろと考えることがありすぎてしまって」

正道「うん」

元子「祐介さんの場合、あの人の言い方もあるんだと思うけど、確かにカチンときたわ。だけど、私は別に巳代子や六根がテレビに出るっていうこと羨ましいとか悔しいとかって思ってないのね」

正道「うん」

 

元子「ただ、どうしてこう私だけがモタモタしているのかって思うと、やっぱり頭にきて祐介さんに八つ当たりしちゃうのよ」

正道「おいおい、ハハ…」

元子「現実に六根やブルースは復活して活躍しているから、私だってっていう錯覚にとらわれてたのね。だから、巳代子はどんどん脚光を浴びていくのに、どうして私だけがって」

正道「元子」

元子「ううん、錯覚だっていうことは分かったし、巳代子はそれだけチャンスに強いんだとも思うし、ブルースや六根は、それなりに努力しているから活躍してるんだってことも分かったの。だから、この際、思い切って、もう一度初めから考え直してみようかと思って」

正道「うん、それじゃあ、今までコツコツ書き続けてきたことは?」

 

元子「だから、これからは別のことを書きます」

正道「別のこと?」

元子「順平が置いてったものを読んだんですけど、相変わらず下手くそなんだけど、彦さんらしい人物だけは、とってもよく書けてるのね」

正道「ふ~ん」

元子「彦さんに会って、年を取ったなあって胸が痛かったせいもあるかもしれないんだけど、読んでて涙が出てきちゃって」

正道「へえ~」

 

元子「たった一度だけにせよね、なまじ作品が放送されたのが私の間違いだったのよ」

正道「いや、そんなことはないだろう。あれはあれでとってもいいものだって僕もちゃんと思ったんだよ」

元子「けど、それからの私って放送されることを意識して書いてたみたい。音響効果のことを凝ってみたりして、純粋じゃないのよね。いくらそんなものを凝ったところで所詮、プロにはかなわないんだし、ブルースが言ったのもそのことだって気が付いたの。とすれば、私は一体、何を書くべきか。私ね、素直に書きたいことを書いていくつもり。兄のこと、彦さんのこと、子供たちのこと、松江のこと。今、書いておかなければならないことだってあるし、いずれ子供たちに読んでほしいって思うこともあるし。お金にならなくたって、あなたが頑張ってくれてるんですもの。PTAの新聞だって何だって書くわ。そもそもよ、昔1年ぐらい即席のアナウンサーだったからっていって、いつまでもそのご縁につながろうとしていることの方が、よっぽどいじましいんじゃないかって、そう思わない?」

正道「確かにそうかも分からんな、ハハハ。いずれ、子供たちに読ますっていうのは賛成だな。大介たちの親はね、どう生きてきたかって、つまりな、僕のことも書いてほしいな」

元子「ええ」

正道「ハハ…飾ることなく君の本心で。いやぁ、いいな、是非書いてもらいたいな」

元子「ええ」

正道「はい」

 

ビールで乾杯したものの、ビールを飲んだ元子はせき込む。

正道「お~、大丈夫か? うん?」

元子「大丈夫…フフフ…」

 

さて、それが元子の将来とどう関わってくるのでしょうか。

 

つづく

 

来週も

 このつづきを

  どうぞ……

 

疲れているのに、妻の話をじっくり聞いてくれる夫、すばらしい。彦さんをみんな大事に思ってるのもいいよね。大介が後継ぎというのは…う~ん、だけど。