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【連続テレビ小説】芋たこなんきん(131)「山があるから...」

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

登から「清志(尾上寛之)と連絡が取れない」との電話が徳永家に入る。会社も辞めたらしい。そこへ、清志が中川利男(阿南健治)を連れて徳永家を訪れる。清志は、「中川の村で山小屋の主人になり、登山のガイドと農作の準備を進めている」と町子(藤山直美)と健次郎(國村隼)に打ち明ける。一方、上司と手術の方法でもめた晴子(田畑智子)に、部下の東條祥吾(山口智充)から、緊急手術の電話が入るのだが…。

茶の間

健次郎「辞表? 会社、辞めてるてか、あいつ」

 

「清志と連絡がとれない」という登の電話でした。

 

健次郎「うんうんうん…う~ん、分かった。まあ、何か言うてくるやろ。こっちに連絡あったら、そない伝えとくわ。はいはいはい、はい」受話器を置いて、ため息。

町子「清志君、どないしたんです?」

健次郎「うん。こないだから家に電話しても通じへんし、どうも電話、解約してるみたいやて。それで会社に電話してみたら、先週、辞表出して辞めたて」

町子「何でやろ?」

健次郎「さあ…」

 

町子「別の会社に移るつもりなんやろか?」

健次郎「さあな…」

町子「どこにいてんのやろね…。さすらいの男になるつもりなんかな?」

健次郎「アホ」

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藪下「先生」

健次郎「うん?」

藪下「今村さんのご家族の方が来てはるんですけど…」

健次郎「ああ、そう」

藪下「はい」

 

町子「今村さんて寝たきりのおじいちゃん?」

健次郎「うん」

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↑この回でも健次郎が往診に行ってるね。

 

診察室

今村「父のことでご相談に参りました。あの…もう、家で母が見るのは限界やないでしょうか? 父に病院に入るように言うても聞きません。先生の方から、なんとか言うてもらえませんでしょうか?」

健次郎「ええ…。けどねえ、お父さんは…本人は『家にいたい』と言うてはりますし、お母さんもそうさしてあげたいて、おっしゃってますんでね」

今村「はい。『最後は家で死にたい』て昔から、そう言うていましたんやけど、正直…見てる方もつらいし…」

健次郎「あの…ご心配は、よう分かりますけども、お父さんが『家にいたい』と言うてはるうちは、その意思を尊重してあげた方がいいと僕は思いますよ」

今村「…」

健次郎「あの…夜中でもかまいませんから、いつでも呼んでください。僕ができるかぎりのことはしますから」

 

う~ん、患者ファーストであるべきとも思うけど、家族の苦悩も分かって欲しいとも思う。家ですべての面倒を見るというのは、いくらかかりつけ医が近くにいたとしても並大抵のことではないと思う。

 

夜、茶の間

健次郎「あの、後で今村さんとこ、ちょっとのぞいてくるわな」

町子「はい」

 

晴子「ただいま」

町子「あっ」

健次郎「あ、お帰り」

町子「お帰りなさい。早かったね。ごはん、食べるでしょ?」

晴子「ええわ」

 

健次郎「何や…何かあったんか?」

晴子「部長とやり合うてしもた」

健次郎「え!? あの外科部長と? 何でや?」

晴子「腹腔鏡の胆嚢結石の手術したんやけどね」

町子「腹腔鏡って何ですのん?」

晴子「内視鏡使って切らんと手術する方法。患者さんの負担も少ないから去年から日本でも増えてんの。けど、難しい手技やからね、まだ私らもそんなに慣れてへん」

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細菌やってる再放送で見た気がするなあ。

 

晴子さんのセリフには”腹腔鏡”に”ふくこうきょう”というふりがながついていた。平成初期にはそんな呼び方だったんだろうか?

 

健次郎「今日、お前が執刀したんか?」

晴子「途中までやって、けど、ちょっと難しいて判断したから開腹に切り替えた。それが部長が気に入らへんかって『何で最後までやれへんのか』て」

町子「え? 何で?」

健次郎「そら、内視鏡を使た成功例を一つでもようさん作りたいねやろ」

晴子「患者さんの安全よりそっち優先するやなんて…」

健次郎「そら、お前が正しいわ」

町子「うん」

 

晴子「けど、部長の許可とってないから処罰の対象になるみたい。勤務終わってへんのに帰らされた」

町子「そんなアホな!」

晴子「ほんま、アホなことやわ…」

 

仕事部屋

執筆している町子。

 

「こんばんは!」

 

玄関

清志が立っていた。

町子「清志君!」

健次郎「おう!」

清志「こんばんは」

町子「もう…」

 

清志「あ…お客さん、連れてきてん」

町子「え?」

清志「お客さん」

 

中川「いや~、こんばんは!」

町子「中川さん!」

中川「急にすんませんな!」

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丹波の中川さん、再登場。

 

健次郎「いや~、お久しぶりです。いつもいろいろとありがとうございます」

中川「いやいやいや!」

 

清志「おばちゃん、おばちゃん、これ見て」クーラーボックスを開いてみせる。

町子「えっ? あら、シャコやんか」

健次郎「動いてるがな、これ」

清志「これな、今朝から瀬戸内の室津ちゅうとこ行っててん。まあ、山もええけど、たまには海もええなあ言うて、中川さんと」

中川「うまい魚、た~んと食べてきました! アハハハハハハ…! なあ、うまかったなあ!」

町子「何や、もう…」

 

茶の間

清志「言うてへんかったかな、会社辞めるて…」

町子、うなずく。

清志「あ…こないだ来た時、忙しそやったから言うてへんかったんやわ」

町子「のんきやなあ。登君、どんだけ心配してたと思うの。連絡つかへん言うて」

清志「大した用事あれへんねんで」

中川「いや、そら知りませんでしたわ。おうちでも前々からてっきり、そういう話はしてはるもんやと思てましたから、のんきに魚釣って…」

 

町子「ほんで、仕事辞めてどうするの?」

清志「山小屋の主人」

健次郎「え?」

町子「は?」

清志「山登りのガイドと農業しよ思て準備しててん。中川さんとことか青年団の人、お世話になったし、これからもお世話になると思う」

中川「こっち来ては山入って勉強してましたわ」

健次郎「そやったんですか。そらもういろいろお世話かけてどうもすいません」

中川「いえ…」

 

健次郎「お前もそれやったら、そうとひと言、言うてから行け」

清志「え…予定では、もうちょっと先や思ててんけどな。けど、この前、起きて、空見たらものすごい天気ようて」

健次郎「天気?」

清志「スーツ着て会社行くの何や悲しなって…。ううん、別に今の仕事が嫌で嫌でっていうわけであれへんねんで。けど、こんな日に山にいて、鳥の声で目、覚めて空見上げてたいなあて思たら…涙出てきた」

町子「フフフフ…」

健次郎「何がおかしい?」

町子「いや~、何か恋の話を聞いてるみたいなんやもん」

 

清志「そう! そんな感じやねん! 恋しいねん、あそこが。さすが、おばちゃんやわ!」

健次郎「アホ! お前、山の仕事でそんな、なまはんかなことじゃでけへんで。ねえ、中川さん」

中川「ワシも何べんも止めたんですわ。『遊びで来てるからええねんや』て。『仕事にしたら何でもつらいぞ』て。それでも気持ちが揺るがしまへんでなあ」

 

町子「フフフフフフ…!」

健次郎「何やな?」

町子「ハハハハハハ…!」

健次郎「どないしたんや?」

町子「いや…いや、そうかてやね、いきなり生きたシャコを持って帰ってきたりやね、何か昭一兄ちゃんみたいやなあと思て」

清志「ほんまやわ」

町子「ねえ、あんたね、さすらいの男の気質をちゃんと受け継いでんのと違いますか?」

健次郎「アホ! あの…これからもいろいろお世話かけると思いますけども、どうかよろしくお願いします」

中川「いやいや、こちらこそ。うちの村、こんなに気に入ってもらえて若い仲間ができて、ワシ、喜んどります」

町子、清志に向け、笑顔。

 

当時二十歳の邑野みあさんをそのまま30代後半役で残したため、他のきょうだいも亜紀以外は30代なのに、二十歳そこそこの若者に演じさせてるから(登も隆も亜紀もどんな人が演じるのかよく分からないけど)、ちょっと違和感あるかもね。

 

尾上さんは当時21歳で役年齢は35歳ぐらいだから、入社数年の若者が辞めたわけじゃなく、そこそこ会社勤めも長かったんではないかな。ここでガラッと子供たちまで30代くらいの役者にしちゃうと年齢層が上がりすぎるからだったのかな~。晴子さんも今の年齢とギャップあるけど。

 

1991年といえばバブルがはじけた年とはいえ、景気がよく、忙しすぎたのかもね。バブルだからって調子こいてお金関係の思い切った商売とかしないだけましな気がする。

 

茶の間

シャコを食べている町子と健次郎。

町子「うん! うわ~。うん、おいしいわ! うん!」

健次郎「お母さん、残念やな」

町子「うん?」

健次郎「せっかく寝てはんのに起こすのも悪いしな」

 

町子「いやいや、まだたくさんありますから。けど、清志君、思い切ったことやったね」

健次郎「うん。途中で投げ出さへんかったらええけどな」

町子「うん。けど、中川さんとこね、あのツチノコ以来、お世話になりっぱなしや」

健次郎「ほんまやな」

町子「はい、どうぞ健次郎さん」

健次郎「あ、いや、もうやめとくわ。ひょっとしたら電話かかってくるかもしれん」

町子「あ~、往診?」

健次郎「うん」

 

町子「今村さんの息子さん、病院入れたがってはるの?」

健次郎「うん…。まあ、家族の気持ちとしては分かるけど…。本人は『最期をベッドの上でチューブにつながれて人生終わるの嫌や』言うてんねや」

町子「けど、考えたらね、昔と違て自分のうちで最後を迎えるっての、ほんとになくなりましたもんね」

健次郎「うん…。まあ、大事な人を自分で見送る。夫婦二人でパートナーを見送るて、そらもうぜいたくなことなんかもしれんな」

町子「夫婦二人っきりか…」

 

その夜中でした。

 

茶の間

晴子「そやから、ちょっと落ち着いて。ねっ。うん。うん…」

 

健次郎「病院からか?」

町子「うん。こないだ来はった晴子さんの同僚の東條先生から。えらい慌ててはるみたいなの」

晴子「そやから、それは分かってるけど。あっ、ちょっと東條先生?」受話器を置く。

 

健次郎「どないしたんや?」

晴子「事故で右足にひどいけがした患者さんが救急車で運ばれてくるらしいの。安全を考えると普通は膝上切断するんやけど『まだ中学生やから腓骨移植いう方法で足、残してあげたい』て言うのよ」

健次郎「そら、そないしてあげたらええやないか」

晴子「うん。簡単な手技やないの。うちとこでは私以外誰もしたことないから、そやから来てくれて言うてるんやけど…。今夜の担当は外科の副部長やし、私が行って横取りするわけにはいかへんのよ。すんなり譲るとも思われへんし」←昨日にミニ予告はこういう場面でのセリフだったのね。

 

健次郎「そんなの言うてみな分からへんやないか。患者さん、もう着くのやろ?」

晴子「命に別状はないみたいやけど…」

町子「晴子さんやったら足切らんでも助けてあげられるんでしょ?」

晴子「診てみな何とも言われへんけど…」

 

健次郎「何を迷てんね?」

晴子「あのね、私、今日、部長に現場から帰されたとこなんよ。そのうえ、そんなことしたら病院いてられへんようになってしまうやないの!」

健次郎「それで迷てんのか?」

晴子「勤務医が病院放り出されたらおしまいでしょ!」

 

健次郎「そん時はそん時や」

晴子「お兄ちゃん、無責任によう言うわ!」

健次郎「どっちが無責任やねん。できると分かってんのに何もせえへんつもりか?」

 

玄関のチャイムが鳴る。

「こんばんは! ごめんください!」

 

健次郎が玄関を開ける。

男「徳永晴子さんはこちらでしょうか?」

健次郎「ええ」

男「尼崎大学病院の東條様からお迎えにあがるように連絡を受けました」

 

晴子「はあ…これや…」決心したように玄関へ出ていく。「これで私、クビになるかも分かれへん」

町子「頑張って!」

健次郎「行っといで」

最後に振り向いて、うなずき、玄関を出ていく晴子。

 

町子「やるやん、東條先生」

健次郎「確かに面白いやっちゃな」

 

茶の間に戻った二人。

町子「あ~、どないしよ…。目、さめてしもた」

健次郎「ああ、僕もや」

町子「けど、今日、いろいろありましたね。由利子ちゃんのこと、清志君のこと、晴子さんのこと…。一日、長かった~」

健次郎「まっ、家、出たと思ても何やかやと言うてきよんな」

 

町子「うん。何かね、子供たち晴子さん、それぞれの人生が分厚くなってくるような気がしてる」

健次郎「分厚うな…」

町子「ねえ、私たちも分厚なってるのかな?」

健次郎「そらそやろ。年月分はな」

町子「そらもう、この年やもんね」

健次郎「まっ、それにあんたの場合は、わざわざ自分でつくった人らの分厚い人生の面倒みなあかんしな」

町子「え? ああ、小説のこと?」

健次郎「うん」

町子「ああ、ほんまやね」ふと新聞記事に目をやる。銃を持った若い少年兵の写真。

 

健次郎「ちょっとずれとったら時期が…僕もあの戦争でこうやって鉄砲担いで戦場行っとったかもしれんな。僕ら世代の男は、みんなこういう写真見たら胸が痛うて見てられへん」

町子「そや…。そう、健次郎さんかて…」

 

その夜、町子には、ある思いが生まれたのでした。

 

ミニ予告

晴子「結局、泣き落とし」

 

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健次郎がケンムンの話をした時の回想で、昭和9年に10歳ごろと出ていたので、町子の4歳上、大正13(1924)年生まれで、吉行淳之介さんと同じ年。ジュンノーちゃんは文系だったので徴兵されたが、気管支喘息と分かり即日帰郷。

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健次郎さんは医専に行ってたし、理系だったから大丈夫だったんじゃないかな?