公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
町子(藤山直美)は、預かっためいの良美(山崎奈々)が将来ピアニストを目指していて、聴く音楽のジャンルを制限されていることを知り、母親の孝子(メイサツキ)の教育方針の行き過ぎを心配する。健次郎(國村隼)の子・登(神保守)は、良美が野球が上手なのを知って練習試合を見にくるよう誘うが、良美は、ピアノ教室の日だからと断念する。一方、町子の秘書・純子(いしだあゆみ)と一真(石田太郎)が親密に…?
昨日の振り返り
良美「いただきま~す!」
ひとり食べ始める良美に驚くイシ。子供たちもぼう然。
町子「良美、あんた何してんの? 行儀の悪い。まだ誰も食べてへんやないの。みんなそろってないでしょ。おっちゃんも伯母ちゃんも席座ってないし」
イシ「良美ちゃん、いつもそないして食べてるの? 座ったら1人で先に?」
良美「パパはお仕事で遅いし、ママは用事したりお電話したりするから、すぐ立っていなくなるし」
振り返りここまで
めいの良美の姿に少しショックを受けた町子です。
玄関
孝子「あ~、遅なりました」
ため息をつく町子。
孝子「え?」
茶の間
町子と孝子が話している後ろでは登と隆が台所にいる。
孝子「そやけど夕方て一番忙しいのよ、私ら。町内会の集まりがあったり、回覧板持っていったり…。で、遅なったら、うちの人帰ってくるから食事の支度せなあかんでしょ。ゆっくり座って食べる時間ないの」
町子「みんながそろう時間に一緒に食べたらええやないの」
孝子「待たせとくのん? かわいそうやん。宿題もせなあかんのに。あっ、ちょっと」
町子「うん?」
孝子「あの子、今日宿題してた?」
町子「知らんよ」
孝子「見ててよ、お姉ちゃん!」
町子「何で私に偉そうに言わなあかん…」
お風呂上がりの良美が由利子と茶の間へ。
孝子「良美、宿題は? まだやったら寝る前にちゃんとしなさいよ」
良美「はい」すぐ部屋に戻っていく。
台所から出て部屋に戻ろうとしている登、隆。
町子「ちょっと。ねえ、ちょっと、あんたたち、宿題あんのと違うの?」
登「あるよ」
町子「した?」
隆「してない」
登「忘れていく」
町子「え~っ!?」
登「うそうそ。明日の晩する。休みやねんも~ん。町子おばちゃん、おやすみ!」
町子「おやすみなさい」
隆「おやすみ!」
町子「おやすみなさ~い」
茶の間に入ってきた健次郎にも「おやすみ」を言う登と隆。
健次郎「うん、おやすみ」そのまま台所へ。
孝子「おおらかやね。昔のお姉ちゃんみたい」
町子「もうちっちゃいうちから、やあやあやあやあ言うてやりなさんなって」
孝子「ちいちゃいうちから、きちっとせんと後で困るのは、あの子なんよ。それよりお姉ちゃん」
町子「はい」
孝子「まだ『おばちゃん』て呼ばれてんの?」
町子「うん?」
孝子「あの子ら『お母さん』て呼んでくれへんの? かわいそうやな~、お姉ちゃん。こんなに一生懸命やってんのに」
笑い出す町子。
孝子「何がおかしいの?」
町子「ハハハ、何でもない」
孝子「何でおかしいのよ? 人がせっかく心配してあげてんのに」
健次郎「どないしたん?」
町子「いやな、孝子がな、私が『おばちゃん』て呼ばれてるからな、『かわいそうやな』て言うから、おかしくてかなんね」
孝子「ちょっとお姉ちゃん! いや、お兄さん」
健次郎「うん?」
孝子「ほんまのとこ、どうなんです?」
健次郎「え?」
孝子「いや、子供らとうまいこといってへんのと違いますか?」
健次郎「いやいやいや、ご覧のとおりで。楽しいやってるで」
孝子「いや、そやけど…」
町子「ねえ、孝子、私はね、お母さんと違うの。健次郎さんと結婚してね、あの子たちと家族にはなったけど、あの子たちにとって母親というのは、これはこの世に一人だけ。そやから私のことを『町子おばちゃん』てあの子たちが呼んだとしても、これは間違いでも何でもないねんよ」
孝子「う~ん…」
もしかしたら当時朝ドラを見ていた人も孝子と同じように思ってた人が多かったのかも!?
徳永家の玄関の明かりが消える。町子は茶の間のテーブルを拭いている。
健次郎「あれ? もう寝たんか?」
町子「明日、手術やからね、朝、早いんですって。おビールにしますか?」
健次郎「焼酎にしようか」
台所に立つ町子。「はい。ねえ、健次郎さん」
健次郎「え?」
町子「孝子、私のことな、けったいけったいて言うでしょ。けど、あの子のうちの方がずっとけったいやと思いません?」
健次郎「ああ…」
町子「ねえ、あの、お湯でよろし?」
健次郎「うん」
町子「子供一人で勝手に晩ごはん食べさせるてねえ…。ほな、良美ね、今日一日あったこと、うち、帰ってきてから誰に一生懸命、話、したらええの? 私ら子供の時分ていうたら、お父ちゃんお母ちゃん、話、聞いてもらおと思て、ごはんの時、先、争うてしゃべったもんなんやけれどもな~。はい、お待ち遠さまでした」
健次郎「はい、ありがとう」
町子「うれしいことがあっても『お父ちゃんお母ちゃん聞いて』て、悲しいことがあっても『お父ちゃんお母ちゃん聞いて』て、『聞いて聞いて聞いて』て普通言うたやん、子供の時分。あ、そや! 聞いて! 聞いて聞いて! 聞いて聞いて聞いて! 手紙の続き…手紙の続きの話、聞いて!」
健次郎「あんた、ちっちゃい時からいっこも変わってへんねんな」
町子「あ、ほんま?」
一方、そのころ…
貞男「寒、寒、寒…」
たこ芳から出てきた純子と一真。
純子「一真さんて意外と純情なんですね」
一真「誰にも言わんといてや。この年になって、こんな恥ずかしいこと町内の連中には、もう死んでもないしょや」
純子「分かってます。2人だけの秘密。恋は秘め事ですものね」←昨日のミニ予告。
路地を歩いていく2人に見つからないよう背中を向けて立っている貞男。工藤酒店の裏口がたこ芳の斜め前なのか~。2人の笑い声をじっと聞いている。
貞男「『恋は秘め事』?」
日曜日の昼
徳永家
子供たち「♪あなたが かんだ」
茶の間
町子「はい、どうぞ」
健次郎「ありがとう」
♪小指が痛い
きのうの夜の 小指が痛い
そっと唇
由利子「歌えへんの?」
良美「知らんもん、こんな」
由利子「こんなにはやってんのに?」
良美「音楽はクラシックしか聴いたらあかんねん」
由利子「ほんならタイガースは?」
良美「野球は好き! パパと見る!」
由利子「そのタイガースと違う。ジュリーやん。♪『君だけに』やんか」
良美「ジュリー?」
常太郎さんもいるよ。
町子「ねえ、良美、『聴いたらあかん』て、お父さんが言わはんの?」
良美「ううん、ママ」
町子「孝子が!?」
良美「『ピアニストの耳に歌謡曲は邪魔!』やねんて」
町子・健次郎「ピアニスト?」
清志「野球、やろう!」
登「うん!」
由利子「あ、ちょっと片づけてって! もう~!」
町子「良美も行ってらっしゃい」
良美「うん!」
町子「ピアニストて本気なんかな、孝子」
健次郎「うん。そやから小さいうちから習わしてんねやろなあ」
町子「聴く歌まで制限するというのは、私、やりすぎやと思うけどね」
健次郎「そら、本人が納得しとったらええん違うか?」
町子「納得してるかな~。私、こんなんしてられへんのや」
健次郎「何や?」
町子「取材の人、来はるから用意せなあかんねん」
健次郎「え? 日曜日やのに?」
町子「うん」
健次郎「ほな、矢木沢さんも休日出勤か?」
町子「もちろんです」
応接間
記者「今回の『楽天乙女』は『読者の反響が大変大きい』と伺っているんですが…」
町子「戦時中に同じような体験をされた方から、たくさんのお便りを頂いております」
記者「参考のために少し読ませていただいてもよろしいでしょうか?」
町子「はい。お願いいたします」
純子「はい」
応接間の戸が開く。
町子「ああ…ああ…。あああ…」
純子「申し訳ございません! まさかこんなラブレターが交じってたなんて、私、全く知らなくて本当に申し訳ございません!」
町子「みんな私が悪いんです。けど、恥ずかしかった~。記者の人、笑てはりましたよね」
純子「でも、うれしいじゃありませんか。昔のお知り合いがわざわざお手紙下さるなんて。かれんな少女に初恋。ロマンチックですわ。あの…どんな男性か覚えてらっしゃるんですか?」
町子「全く覚えてないんですよね」
純子「あらまあ、なおさらロマンチック! あの、ご返事とか差し上げるんでしょ?」
町子「住所、書いてないんですよね」
純子「ますますミステリアスですてき!」
町子「何でもええほうに取ってくれはる方なんですねえ」
健次郎「ハハハ。そんなん嘘八百並べてるだけや」
町子「え?」
健次郎「あんたの気ぃ引こ思て適当に書いてはんのやがな」
純子「あ…嘘でもいいんですよ。噓と思ってても酔わされるのが好きなのが女なんですもんねえ」
町子「そうそう!」
健次郎「は~ん。そのくせ女の人は『だまされた、ギャ~ッ』てすぐ泣きますがな。だまされてうれしいんやったら、アハハて笑てんかいな」
純子「いや、あの、噓も程度によります。傷つかない嘘なら…」
町子「そう。夢のある嘘やったらええわ。あ~、夢のある嘘なら、たまにはね、私…。嘘…。ちょっと待ってください。ほな、この手紙のこと、みんな内容嘘になってしもてるやないの! これ真実なんですからね、ほんとに!」
健次郎「何を根拠に」
子供たち「ただいま!」
町子「あっ、お帰りなさい」
登「なあなあ、聞いて」
町子「うん?」
登「良美ちゃん、すごいねんで。すごい速い球、投げんねんで」
町子「ほんまに?」
清志「守備かてうまいで。フライ一回も落とさんと受けたもん。なあ」
良美「うん! おばちゃん、聞いて聞いて! 登君を三振にとってんで!」
登「それは言うなて」
町子「良美、ママに報告せなあかんね」
良美「あ…。おばちゃん、ママには言わんとって。指ケガしたらあかんから、したらあかんて言われてんねん」
町子「あかんだらけやね」
登「明日のチームの練習試合、見に来るか?」
良美「うん! あ…明日あかんわ。ピアノの日やもん」
町子「休めへんの?」
良美「…」
夜、茶の間
健次郎「よかったね、手術、順調で」
孝子「はい。抜糸したら、すぐ退院できるて」
町子「はい、ミカンどうぞ」
孝子「ねえ、良美どない? おとなししてた?」
町子「うちの子供たちとも楽し遊んでくれてはりますよ」
孝子「あ…よかった」
町子「ねえ、今度の正月、正彦さんも来てもろて、みんなで楽しゅう、お酒飲んで騒ご。ねっ」
孝子「そやねえ。主人に聞いてみるね」
町子「で、その前にクリスマスパーティーがあるから、下の子連れてきたらええやんな」
孝子「そやね。主人に聞いてみるわ」
初回で孝子がおんぶしていた赤ちゃんは里美なのに、wikiに孝子の娘は良美と書いてあって聞き間違いと思って書き直したりしてたんだけど、やっぱり娘2人いるんだよねえ。初回は昭和40年で、今は昭和42年の暮れだもんね。
町子「あ、それから由利子ちゃんなんやけどもね、あの子、着ていた服ね、このごろ大きなって、もうあと誰も着る人がいてへんねん。亜紀ちゃんまで置いとくのも、まあ、気の長い話やからね、良美、ちょうどええから着てくれへんかなと思って」
孝子「ようけあんの?」
町子「ぎょうさんあんねん」
健次郎「そらもったいないなあ」
孝子「そしたら、主人に聞いてみてからね」
町子「『聞いてみてからね』て、あんた、いちいち何でもかんでも聞くわけ?」
孝子「そうかて、家のことやから」
町子「自分で判断しなさいよ」
孝子「そうかて主人やもん」
子供たち「♪あなたがかんだ 小指が痛い」
由利子、良美、清志、登、隆が歌いながら茶の間に入ってくる。
町子「ねえ、ちょっとみんな、その歌の意味分かってんの?」
清志「分かってるで! カンダさんの歌や!」
町子「は?」
清志、登、隆がそれぞれ指さしながら歌う。
♪あなたが カンダ
町子「彼らの国語力が心配です」
健次郎「まっ、今は、そう思わしとこ」
町子「はい」
ほかの子供たちは笑顔だったけど、孝子が笑ってないのを見て、スッと笑顔が消える良美。
健次郎「さあみんな、もうお風呂入って寝る時間や」
子供たち「はい!」
登「そや。明日は練習試合や。町子おばちゃん、ユニフォーム、タンスの中?」
町子「ソックスの洗濯、ちゃんとできとりますよ」
登「ありがとう!」
孝子「良美はピアノでしょ?」
町子「こっから行かすの!?」
孝子「うん。駅からバスで一本で行けるから。私も病院行きしな駅まで一緒やし。あっ、寝る前にちゃんとあの楽譜おさらいしときなさいよ」
良美「はい」
町子「一回ぐらい休ませたらええやないの。子供たちと楽し遊んでんねやから、あの子も」
孝子「高い月謝払てんねんよ。もったいないやん」
町子「あんまり楽しそうやないみたいよ、ピアノの話、してても、良美」
孝子「習い事は、つらいもん。それでも『やっててよかった』て後で思うの。先のことまで考えてあげんのが親の務めやんか。それから、あの歌謡曲、良美にはあんまり聴かせたないの。気ぃ付けててね」
あきれ気味の町子。
そのころ、たこ芳では…
チェックのシャツを一真にあてる純子。「うわ~! お似合いですわ~!」
一真「そうか?」
純子「うん」
一真「そやけどちょっと派手なことないやろかな?」
純子「すてき!」
一真「ハハハハハ!」
純子「ねえ!」
りん「うん」
一真「てれるな~」
戸の隙間から見ている俊平と貞男。
俊平「いてる。坊さん、はしゃいでるがな。頭まで真っ赤になって、ゆでだこみたいになって」
貞男「なあなあ、なあなあなあ」
俊平「え?」
貞男「確かに聞いたんや。『恋は秘め事。ないしょにしときましょね、ウフフ』て」
俊平「俺は見たんや。矢木沢さんな、角の商店街の洋品店で男もん買うてたがな。さては2人は!」
貞男「まさかな…」
健次郎「何してんねん?」
貞男・俊平「シッ!」
町子「ねえ、中、入られへんの?」
貞男「今入るとショッキングな風景が…」
俊平「いや…ちょっ…関東煮きやめとこ。あの…そう! 串カツにしよ、串カツ!」
町子「何で串カツ食べなあかんの? おでん食べんねん。妹来たからおでんを」
俊平「いやいや、おでん…」
貞男「あかんて!」
町子「何でて? のいて!」
貞男「やめときましょ、町子さん」
町子「『やめとく』て。のいてて!」
りんが中から戸を開けたので、人たちがなだれ込む。
俊平「あ~!」
町子「ちょっと待って! いや~!」
一真「あ~!」
りん「あんたら何してんねんな? もう!」
孝子「いや~、お兄さんまでちょっと!」
町子「ちょっと待って…」
孝子「あれ? あれ? 痛い、痛い、痛い、痛い…」
ミニ予告
孝子を慰める町子?
子供にとって”かわいそう”と思うポイントがそれぞれ違う。町子は一人で食事をすることがかわいそう。孝子は食事を待たせることがかわいそうと思っている。どっちも間違ってないと思う。