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【連続テレビ小説】芋たこなんきん(52)「最後の一人まで」

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

女学生の町子(尾高杏奈)のいとこ・信次(宮﨑将)が花岡家を訪ねる。東京の大学に通っていたが、夏休みを利用して遊びに来たのだ。信次は、和代(鈴木杏樹)の亡き姉の子で和代が親代わりを務めていた。それだけにいずれ信次が兵隊に召されるのを和代はつらく思い、国語の教師を目指して文科にいる信次に、兵隊にとられない理科に転科するよう勧める。町子は相変わらず兵隊になることを悲しみ拒む家族の言動が理解できない。

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前回の振り返り

町子「信次にいちゃん!」

和代「あっ、町子、お帰り!」

信次「マー坊」

町子「あ~、信次にいちゃんや!」

信次「大きくなったな。分かんなかったよ」

町子「そうかな」

 

大人町子「大好きないとこの信次にいちゃんが遊びに来たのは、夏休みに入って間もなくのある午後のことでした」

 

信次「マー坊は相変わらずせっかちだな。そんないっぺんに聞かれたって答えらんないよ」

町子「ええやん、ええやん! 久しぶりやもん!」

振り返りここまで。途中のナレーションの内容がちょっと違う。

 

夜、ダイニング

食卓にはさまざまな料理が並ぶ。

信次「すごいごちそうですね。東京の1人暮らしじゃ食べられないですよ」

イト「不便な思いしてるやろ思て、和代さんがな。遠慮のう食べてや」

信次「ありがとうございます」

和代「これ、おにいちゃんのお土産。桃やで」

孝子「うわ~、桃や~!」

 

ウメ「岡山の実家に帰ってはりましたんやろ?」

信次「ええ。大学の夏休みは長いですからね」

ウメ「ほな、お母さんのお墓にも?」

信次「はい」

 

徳一「お姉さん、もう何年になる?」

和代「5年と半年やから、来年七回忌やわ。早いもんですなあ」

ウメ「しばらくいてられますのやろ?」

信次「はい」

 

昌江「はい、どうぞ」

信次「ありがとう」

孝子「昌江ねえちゃんな、もうすぐお嫁さんやねんで!」

昌江「もう~、嫌やわ、孝ちゃん、そんな話!」

信次「おめでとうございます」

昌江「もう恥ずかしいわ」

茂「てれてる」

 

徳一「信次君、今、大学、文科なんやてな?」

信次「はい。国語の教師になりたいんです」

常太郎「ほう。ほな、町子、勉強見てもろたらどや? 何やあのまたどうせ、あの訳の分からんけったいな話ばっかり書いてんねやろ?」

町子「けったいな話なんか書いてません。小説です」

信次「ふ~ん。今度、読ましてよ」

町子「あかん。まだ途中やし」

 

和代「信次、あんた手紙にも書いたけど、はよ理科に変わらんと。文科やと兵隊にとられるいうやないの」

常太郎「大学生の徴兵猶予、なくなるらしいな」

信次「和代叔母さん、猶予の期間が終わったら、いずれ兵隊に行くんだ。同じですよ」

和代「何言うてんの! 理科に変わったら大学残って勉強できるやないの。あんたにもしものことがあったら死んだお姉ちゃんに顔向けでけへん。ねえ」

 

常太郎「あんたが親代わりやからな」

信次「一般論の話ですよ。徴兵の猶予がなくなるのも単なるうわさですからね。これ、おいしいですね」

茂「あ、そやろ。和代さん、作ったんやで」

不満げな町子。

 

町子・孝子「♪童は見たり 野中のばら

和代がオルガンを弾き語り。この部屋は写場とは違うよね? 前からたまに出てくる娯楽室みたいな部屋。信次、徳一、茂もいる。

 

♪清らに咲ける その色愛でつ

♪あかずながむ

 

茂「ええで」

 

♪紅におう

野中のばら

 

和代の伴奏に拍手を送る茂たち。

和代「おおきに」

孝子「お母ちゃん、うれしそうやな」

町子「うん」

孝子「信次にいちゃん来てるからやで」

 

町子「あんた、もう遅いから、そろそろ寝え」

孝子「え~、何で?」

和代「孝子はもう寝る時間」

孝子「え~、お姉ちゃんだけずるい」

 

和代「はいはい。みんなにご挨拶して」

孝子「おやすみなさい」

一同「おやすみ」

 

部屋全体がうつるといつも写真を撮る背景が出てくるからやっぱりここは写場か。

 

孝子「まだ眠たないのに。お姉ちゃんだけずるいわあ」

信次「マー坊は眠くないのか?」

町子「もう、子供やあらへん」

ギターを手に取る信次。

町子「弾けんの?」

信次「東京の大学じゃみんなギターくらい弾くさ」

 

町子「『さ』やて。江戸っ子みたいや」

信次「おかしいかなあ」

ギターをつま弾く。

信次「何かホッとするな、こうやってみんなでいると。東京じゃみんなピリピリしてるからね」

 

茂「信次君。さっきの話な、僕はなにもすき好んで戦争行かんかて、ええのと違うか思うねんけどな。僕かていつ赤紙来るか思たら寝られへん時かてあるんやで」

信次「こんな時代だから誰もが一緒だって話ですよ」

茂「一緒やから、なるべく遅い方がええ言うてんねん。勉強できる時に勉強したらええね。お姉さん言うみたいに理科に変わったらええね」

和代「そうやよ」

茂「なあ」

和代「うん」

 

町子「お父ちゃんもそない思う?」

徳一「うん、そやな」

やっぱり不満そうな町子。

信次「よしましょうよ、こんな話。あ~、今度、僕が歌いますよ。何がいいですかね?」

徳一「何がええかなあ。『私の青空』とか」

茂「ああ、ええな。いや、ちょっと待って」

 

徳一と和代の寝室

徳一「信次君、喜んでたなあ」

和代「ええ」

徳一「明日もおいしいもん、たんとこしらえたげ」

和代「…」

徳一「どないしたんや?」

 

和代「信次、何であんなこと言いますねやろ?」

徳一「うん…」

和代「冗談でも言うてほしない。ねえ?」

徳一「そやなあ」

 

翌日、町子の部屋

ギターをつま弾いている信次。

町子「『戦争なんかに行かんかてええ』やなんて、みんなたるんでるわ。おにいちゃんは、お国のため思て言うてんのにね」

ギターを置く信次。「う~ん、国のためと言うよりさ、大事な人たちを守るためにだよ」

町子「大事な人?」

信次「家族とかね」

孝子「家族て?」

 

信次「孝ちゃんやマー坊や和代叔母さんやみんな」

孝子「ふ~ん」

町子「私らを守るため?」

信次「うん。誰かが行かなきゃ誰も守れない」

 

孝子「信次にいちゃん、お茶、いれてこうか?」

信次「あっ、ありがとう」

孝子「うん」

 

立ち上がった信次は町子の本棚をざっと見る。

鴎外全集

泉鏡花

代用食の研究

社会文学集

尾崎紅葉

漱石全集

風と共に去りぬ

読めたのはこの辺。信次が本棚からとったのは泉鏡花集と代用食の研究の間に合ったタイトルが読めなかった本。

 

信次「へえ~。随分、ゴチャゴチャといろんな本読んでるんだね」

町子「そうかな」

信次「おっ、『最後ノ一人マデ』。へえ~!」

町子「あっ、返して!」

 

信次「『銃弾に射ぬかれ倒れたアンガマダ人の女兵士に駆け寄った援軍の兵士は、故郷で別れた恋人、まさにその人であった』」

町子「返して!」

信次「何や? 『アンガマダ人』て」

町子「返して!」

 

信次「『その腕の中で最期の時を迎えた女兵士の瞳には…』」

町子「あかん、あかん!」

信次「あ~、恋愛小説か」

町子「違う。愛国小説や」

信次「へえ~。あっ」

町子「え?」

 

また町子から取り返す。

町子「あっ! あかんて、もう!」

信次「『アンガマダ軍が町に戻ったのはカメリア軍によって蹂躙されたあとだった』」

町子「おにいちゃん、返してや!」

お茶を運んできた孝子が見ている。

 

写場

軍服を着た男性が椅子に座っている。

常太郎「では、撮ります」

シャッター音

常太郎「お疲れさまでした」

男「どうもありがとうございました。で、あの、仕上がりはいつになりますか?」

 

常太郎「今、ちょっと混んでますので2週間ほど頂ければ…」

男「預かっていただけますか? こちらで預かっていただきたいんです。僕、身寄りがないんです。無事に帰ってきたら受け取りに来ます。けど…何かあった時、あそこには自分の姿が残ってんねやと、せめてそう思いたいから」

徳一「お預かりいたしましょう。そのかわり…必ず帰ってきてくださいよ」

 

軍服の男性は帽子をとる。「ありがとうございます」

常太郎「料金は先払いになってますけど、よろしいでしょうか?」

男「はい、もちろんです」

 

男が帰ったあと

徳一「あんなこと念押さんでもええの違うかな」

常太郎「えっ?」

徳一「料金のことや」

常太郎「写真屋が写真代受け取らなどないすんね」

 

夜、寝間着の町子が写場で作業をする常太郎を見かける。

町子「まだお仕事してんの?」

常太郎「町子か」

常太郎がやってるのは修正? ネガに筆で書いてる。

 

常太郎「あんたは女の子でよかったな」

町子「え? 私は男の人の方がよかった」

常太郎「アホなこと言いな」低いトーンで真顔。

 

大人町子「翌日は登校日でした。炎天下、負傷者を手当てする救護法の講習会です」

 

校庭

町子がキクの太ももに竹を使って白い布を巻く。

キクの笑い声。

町子「あかん! じっとしとき!」

キク「痛い痛い、痛い痛い痛い…。痛い。マコちゃん、やめてって。やめてって、マコちゃん。痛いわ~」

町子「我慢し! 勉強にならへんでしょ!」

キク「痛いねんて! マコちゃんやめて!」

 

土手

キク「あ~、死ぬか思た」

町子「死なへんための練習やん」

キク「けど私、道端で倒れて、あんなふうに知らん人に太もも触られんの考えただけでも恥ずかしいわ~」

梅原「男の人に触られたらどないしよう」

町子「うん…。それは恥ずかしい」

キク「恥ずかしい」

 

町子「はあ…人間てどないしたらきれいに死んでいけんねやろ。ほんまのとこ」

梅原「なあ、どないする? これから」

町子「あ~、私帰るわ。いとこの信次にいちゃん来てるよって」

梅原「信次にいちゃん?」

 

キク「東京の大学行ってはんねん。なっ」

町子「何?」

キク「マコちゃんな、そのおにいちゃんのこと好きなんやで。こないだから、おにいちゃんの話ばっかしやもん」

町子「違うて! 何言うてんの? キクちゃんこそ…。キクちゃんとこの工場の工員さんのこと…」

梅原「あ~っ!」

 

キク「そうや」

梅原「え~っ!」

キク「あっ、けどないしょやよ。お父ちゃんに分かったら辞めさしてしまうかも分からへんよって」

梅原「あの、そしたら、あれ、もう、せ…せ…せ…生年月日は聞いたん?」

町子、ちょっとガクッとなってない?

キク「そんなん知らん、私、まだ。ちゃんとようしゃべらんし…」

 

花岡家茶の間

町子「ただいま! 暑い…」

和代「あっ、町子お帰り」

町子「ただいま。はあ…。あ~、暑かった」

和代「もうダラダラせえへんの。余計、暑なるよ。信次、今、お風呂入ってるから持ってってあげて」

和代が畳んでいた洗濯物から信次の浴衣が手渡される。

 

脱衣所

町子「あの…」

ドアの隙間から信次の入浴姿を見てしまう町子。「おにいちゃん!」

信次「はい?」

町子「浴衣、ここ置いとくね」

信次「ああ。ありがとう」

 

脱衣所を飛び出した町子は台所を通りすぎて深呼吸。

イト「どないかしましたんか?」

町子は何も言わずに階段に座った。

 

大人町子「男の人を好きになる。小学校のマサル君の時とは少し違う気持ちを、その時私は感じていました」

 

ミニ予告

信次と町子と昌江と結婚相手?

 

町子の考えがガラッと変わる出来事があるのか、戦後変わるのか。

 

身寄りのない兵隊が出てきたけど、そうなると「マー姉ちゃん」の三吉を思い出す。

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三吉が自ら志願したのは昭和16年の春。三吉は田舎に家族はいるし、奉公先の人たちにはよくしてもらってるけど、よくしてもらってるだけに大して仕事もないのに三度のご飯を無理して用意してくれる奉公先に申し訳なくなり、徴用されるぐらいならと志願した。「マー姉ちゃん」は戦時パートがほかの朝ドラとは一味も二味も違ったな。