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【連続テレビ小説】芋たこなんきん(27)「すれちがい」

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

徳永家に入った町子(藤山直美)は、近所の工藤酒店の貞男(荒谷清水)からサインを求められる。また、寺の住職・一真石田太郎)からもサインを求められる。そして近所の住人からも同様にサインを求められ…。一方、徳永医院では、新婚旅行中の老人・有田(藤村俊二)と若い妻(今村恵子)がやってくる。有田は「胸が苦しい」と健次郎(國村隼)の診察を受ける。健次郎は、有田に早く帰って詳しい検査を受けるよう促すのだが…。

徳永家応接間

町子「赤いキレ、赤いキレやろ! 赤いキレて、こんなとこあるわけあらへんねん! 赤いキレ、赤いキレ!」

タンスの引き出しを開ける。

健次郎「朝から何をバタバタしてんのや?」

隆「赤いキレにな『5』って書いて、今日、体操服に貼ってかなあかんねん」

健次郎「赤いキレに『5』?」

隆「運動会の練習やねん。5組で紅組やから、赤いキレに『5』」

 

町子「赤いキレの『5』て、もうね、隆ちゃん、あんた、ええねんけどね、今度からおばちゃんにもうちょっと早いこと言うてちょうだいね」

隆「はい」

町子「うん。あっ、そや、健次郎さん。針と糸あります?」

隆「え? 針と糸?」

町子「うん」

 

健次郎「おふくろは?」

町子「あっ、お母さん。針と糸。針と糸あります? 針と糸」

イシ「あっ、そんなら、私の部屋に」

町子「急いで要りますねん。針と糸、針と糸、針と糸、針と糸、針と糸。(健次郎に)あっ、もう大丈夫ですから!」

 

健次郎「あ…そうか。あっ、あの…」

町子「はい」

健次郎「清志と登のも作らんでええんか?」

町子「そやんか…」

 

町子「よいしょ…。もうちょっと待ってね~。なんとか頑張るからね~」

みんなは朝食中、町子は応接間のイスに座ってぜっけんを体操服に縫い付けている。

町子「もうちょっと待って。はあ~、なんとか間に合うた。できたよ!」

3人「おばちゃん、ありがとう!」

町子「どういたしまして。はい、ほな、これ持っていきなさい。はい、持ってき…。持ってき…。あら~。」

体操服を前掛けに縫い付けていて、笑われた。

 

3人「早う、早う!」ランドセルを背負ってジタバタ騒いでいる。

町子「ちょっと待って! ちょっと待って! はい、もう、すぐすぐすぐ! 分かってるから! 分かってるから! はい、どうぞ!」

3人「ありがとう!」

町子「行ってらっしゃい!」

3人「行ってきま~す!」

 

町子「はあ…。なんとか間に合うたわ」

健次郎「よかったがな」町子にお茶を注ぐ。

町子「あっ、ありがとう。運動会、来週の日曜日やね」

健次郎「うん。行けそうか?」

町子「サイン会、お昼までやから、まあ、午後からなんとか。ほんまは朝から行きたいねんけどねえ」

健次郎「約束が先にあるんやから、しゃあないがな」

 

台所

原稿の手直しをしながら、にぼしの頭を取る町子。「え~っと…」

電話が鳴る。

町子「あっ! はい、もしもし、徳永でございます。あっ、花岡です。いえいえ、いつもどうもお世話になっております。ええ。あの今朝、間違いなくゲラ届いております。今、チェックしてるんですけども。あ、大丈夫です。来週、頭にはなんとか」

 

貞男「毎度!」

 

町子「あ、ちょ…ちょっとすいません。すいません、ちょっと人が来たみたいなんで、またかけ直しますので。はい。えらいすいません。失礼いたします」電話を切る。「すいません。あっ、どうもこんにちは!」

貞男「毎度! え~、ビールにみりんにおしょうゆですね」

町子「あっ、そうですか。ほなすぐにお金を」

貞男「あ~! 月末にまとめて」

町子「あ~、そうなんですか。ほな、どうも」

 

しかし、帰ろうとしない貞男。「どんな調子でっか?」 

町子「ええ、まあ、あのにぎやかに楽しい暮らさせてもろてます」

貞男「ご執筆の方です」

町子「あ、ボチボチです」

 

貞男「あの…頂けませんやろか?」

町子「は?」

貞男「あかんかったら、あかん言うてくださいね」

町子「いや、何をですか?」

貞男「サイン!」

町子「サイン…?」

 

貞男「近所にこんな有名な先生が来はるなんて夢にも思わへんかったさかい」

町子「いや、有名なんてとんでもないです」

貞男「僕、こう見えても結構本好きで」

町子「どんな本を?」

貞男「好きなんは『宮本武蔵』」

町子「私と同じですわ。私も同じですねん。吉川英治の『武蔵』」

貞男「ほんまでっか?」

町子「はい」

貞男「うわっ、小説家の先生と一緒やなんて…。うわ~。あの、どの辺りがお好きです?」

町子「え?」

貞男「僕なんかはやっぱり巌流島の戦いですわ。やっぱりね、あの~、何て言うんですかね、緊張感の中に…」

町子「私、もう…」

 

徳永醫院

鯛子「次の方、どうぞ」

有田「はい。ありがとうございます。失礼します」おヒョイさん!

健次郎「どうしはりました?」

優子「ゆうべから風邪気味でさっき歩いてたら胸が少し苦しいって」

健次郎「ああ。胸が?」

有田「はい」

 

健次郎「上、脱いでもらえますか?」

有田「はい」

鯛子「シャツもお願いしますね」

健次郎「あ~、ちょっと心雑音がありますね。何か持病はお持ちですか?」

有田「狭心症と言われたことが…」せき込む。

優子「大丈夫?」

 

有田「いや、旅行中なもんで主治医とも連絡が取れなくてね」

健次郎「へえ~。娘さんとお二人でご旅行ですか? 羨ましいですな」 

優子「新婚旅行です!」

健次郎「え!?」鯛子も物を落としてびっくり。

健次郎・鯛子「失礼しました…」

 

優子「2人で京都で3泊して、ついでに友人を訪ねようとその辺りまで来たんです」

健次郎「あの…一応、お薬出しときますけれども、なるべく早く、あの、お戻りになって、ちょっと詳しい検査をお受けになった方がええかもしれませんね」

有田「あの…白浜温泉に行く予定がありましてな」

peachredrum.hateblo.jp

純ちゃんも新婚旅行で行ってた。

 

健次郎「あ~、白浜ですか」

有田「いや…家内が行きたがってましてな」

優子「そんな! あなたの体の方が大事だわ!」

2人は手を取って見つめ合う。

有田「優子!」

優子「あなた!」

有田「優子!」

優子「あ、な、た!」

有田「優子ちゃん!」

優子「あなた!」

健次郎と鯛子はあきれ顔。

 

納戸あらため仕事部屋で原稿を書いている町子。

 

一真「ごめんください!」

 

町子「は~い! ああ…」原稿を切り上げ、玄関へ。「あら! おじゅっさん、こんにちは」

一真「こんにちは」

町子「健次郎さんでしたら、今、ちょっと診察中なんですけど」

一真「いやいや、その…今日はね、町子さんにちょっとお願いが」

町子「お願い?」

 

一真「実はあのね…。へへへ…。へへへへ。あの~、サイン頼んでもよろしやろか?」

町子「何やお安いご用です」

一真「私はもう小説なんて長いこと読んでへんもんで」

町子「お忙しいですから」

一真「私ね、若い時にあの時代小説がすきでしてな。特に吉川英治の…」

町子「むさ…。いえ、何でもないんです。何でもないんです…。何でもない…」

 

頬をハンカチで押さえた俊平が待合室に座っていた。

 

鯛子「お大事に」

優子「ありがとうございました。大丈夫?」

有田「大丈夫、大丈夫」

 

鯛子「次の方、どうぞ。やあ!」

俊平「ああ」

 

診察室

健次郎「おっ、どないした?」

俊平「見かけん親子やね」

健次郎「え? あ~、違う違う。旅行中のご夫婦や」

俊平「夫婦!? そんなアホな! 年寄りの方はどう見たって70過ぎやし、女の方は30てとこかやろ。そんな夢みたいな話」

健次郎「夢でも何でもええから、早う、ここ…」診察室のイスに座るよう指す。

俊平「はいはい」

 

健次郎「どないした?」

俊平「いや、そ~っとね」

健次郎「何が?」ハンカチを引っぺがす。

俊平「アイタッ! アイタ…」

 

健次郎「あら~、あんたのとこ、猫、飼うとったか?」頬に大きな引っかき傷。

俊平「しゃべる猫」

健次郎「ああ。夫婦げんかか。こらまた派手にやられたな。鯛ちゃん、傷、洗浄」

鯛子「はい」

健次郎「で、今度は何して怒らしたんや?」

俊平「何もしてません!」

 

俊平の経営するみゆき館。本日休館日の札が出ていて、妻の佐和子が掃除をしようとして自分の爪を見て、ため息をつく。佐和子役は瀬戸カトリーヌさん。俊平は若い妻を羨ましがってたけど、十分、若い妻じゃないのかな?

 

徳永家

大皿にきれいに盛り付けられたポテトサラダ。

町子「うわ! きれいにできた!」

イシ「いや~、きれ~い! あっ、こっち運ぶわね」

町子「お願いします!」

 

由利子「コラ!」

登「おなかすいた。運動会の練習、長いねんもん」

町子「はい、お待ち遠さまでした!」

一同「うわ~!」

町子「どうぞどうぞ。はい、どうぞ。はいはい。ねっ、きれいでしょ!」

健次郎「うまそうやわ~! さあ、ほな食べよか。はい、いただきます」

一同「いただきま~す!」

 

男の子たちが一斉にポテトサラダに箸を突っ込んで取り始める。

町子「いや、ちょっとちょっとちょっと、もうちょっとゆっくり食べて。ちょっときれいに…。あ、ちょっと、あ~。ちょっとちょっと…あ~、あ~」

 

隆「お兄ちゃんがとった!」

健次郎「登! ボ~ッとしてたらなくなるで」

 

町子「弱肉強食やね。一生懸命、心を込めてきれいに盛りつけてんのにな~、私」

健次郎「ハハハ! 残念やったな。うちは見た目より量や」

清志「お代わり!」

町子「あ、はい! おっ、フフフ!」←ミニ予告、ここだね。

 

台所に立っている町子。健次郎は茶の間で新聞を読んでいる。おつまみ作ってたのか~。

町子「はい、どうぞ!」

健次郎「あっ、ありがとう」

町子「はい、終わりました」

健次郎「お疲れさん」

 

町子「あ~、やっぱりおいしいわ!」急須みたいなのに入ってるのは焼酎?

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健次郎「仕事ははかどったんかいな?」

町子「え~、どうでしょうね~」

健次郎「何や? 何かあったんか?」

町子「いや、何にもない…こともないのかな。やっぱり何かあったっていうほどでもないけど、まあ、何か、もう、ぎょうさんの人たちと暮らしてたら楽しいもんやね!」

 

健次郎「朝から赤いキレに『5』やもんな」

町子「私も夜中に原稿書かなあかんねやもん。そっちどないですか?」

健次郎「こっちもいろいろあったで」

町子「うん?」

 

健次郎「俊平はひっかき傷つくってくるわ、70代と30代の新婚さんは来るわ」

町子「え!? はい、どうぞ。その30代が女性?」

健次郎「そうそうそう。そのうちあれやな、その逆も出てくるかも分からんな。70過ぎの女性が30代の若い男と一緒になるてな」

町子「それもええもんやね」

健次郎「何やあんたも若い男がええの?」

 

町子「いやいやいや、若いだけではあかんよ。かわいげがないとあかん」

健次郎「ほう。あんたの言うかわいげのある男てどんなんや?」

町子「あ~、そやね、あのね、素直でね、率直でね、で、ちょっと頑固」

健次郎「あ~。そんな若い男はおりませんわな」

町子「あっ、そう?」

健次郎「うん」

 

町子「ほんなら40代は?」

健次郎「なかなか。僕ら、そんな頑固と違うよ」

町子「あっ、そうか。50代」

健次郎「まだまだ」

町子「60代」

健次郎「もう一声」

町子「70代同士になってしまうやん」

 

健次郎「やっぱり夫婦は一緒に年とっていくのが一番やいうことや。若い相手は友達で賄いなさい」

町子「『賄いなさい』て…」

 

健次郎「何や?」

清志「あのな…玉…」

町子「玉?」

清志「玉入れの玉。キレで作ってほしいねん。赤と白のんが要るねん」

町子「いつ?」

清志「明日」

町子「明日!?」

 

健次郎「え? はよ言わんかいな、アホ!」

町子「いくつ?」

清志「2つずつ、合計4個」

町子「はい、分かりました」

ペコっと頭を下げて清志は部屋を出ていった。

 

町子「また、赤いキレ探さなあかんわ」

2人で笑う。

 

由利子「おばちゃん」

町子「はい」

由利子「リレーの赤い鉢巻き要るねん、来週」

健次郎「お前もかいな。はよ言わんかい」

由利子「リレーに出るって今日、決まってんもん」

 

町子「選ばれたんやね。立派やん。花形やないの。おばちゃん、立派な鉢巻き作っときますね」

健次郎「リレーか…。中学校の運動会は平日やから僕、行かれへんな」

由利子「中学生になったら、親なんてどこも来えへんの」

へー! 私の中学校は小学校と同じように親が来てた。高校はなかったけど。

 

健次郎「あ~、そう」

町子「明日の朝までに作っておくからね」

由利子が笑顔でうなずき、部屋を出ていく。

 

健次郎、町子、ともに大きなため息。

健次郎「原稿なんか書かれへんな」

町子「ハハハハハ!」

 

一真「こんばんは」

 

健次郎「何や? こんな時間に」

町子「うん? あ~、あら、おじゅっさん!」

一真「いや~、夜分にすんませんな」

健次郎「どないしはったん?」

一真「ワシ、うっかり口滑らせてしもてな」

健次郎「え!?」

一真「サインのこと。そしたら、『私も欲しい』『僕も欲しい』言うて…」

 

玄関の外に人がたくさん集まっていた。

「先生!」

「先生、お願いします!」

 

健次郎「あの…夜なんで。とにかく中入ってもらおか」

町子「狭いですけども、よかったらどうぞ」

健次郎「どうぞ」

 

自分はこの町のそして、この家の住人になったのだと強く感じている町子でした。

 

町子「はあ…」とため息。

 

ミニ予告

町子「♪タラ ラララララ タラ ランラン ララララ」

オクラホマミキサーを口ずさみながら歩いている。

 

この状況、よくないね~。仕事に集中できない。かと言って、これを今までイシさん一人でやってたかと思うと…。この時代、健次郎もやれ!って感じじゃないんだろうなあ。